かながわ平和運動推進委員会

神奈川県高等学校教職員組合の平和について考えるブログです。

多文化共生社会を学校から

2007-02-06 21:14:35 | 平和通信vol150(2007/2)
特集
多文化共生社会を学校から
~高等学校の在日外国人~

< はじめに:平和が危ういとき >
 
 中東で戦争が始まったり、朝鮮半島の情勢が緊張するなど国際関係が悪化すると、拝外主義が蔓延します。「テロを起こした人たちはイスラム教徒だ」→「イスラム教の人はテロを起こす」・・「拉致の実行は北朝鮮だ」→「朝鮮人は日本人を拉致する」、心の中で語順がひっくり返ると簡単に意味が変わってしまいます。外国人嫌いの空気は日本で暮らす外国人を包む暗雲です。
 だれでも見知らぬ人との出会いは不安です。異質なものの出会いは、たえず緊張が伴い、時として互いに傷つけあうこともあるかもしれません。しかし異質なもの同士の出会いは、一方で予想もしなかった実りを私たちにもたらしてくれることもあります。私たちの隣人とその子どもたちに「ようこそ」といえるように願いを込めてこの特集を組みました。
(在日外国人教育小委員会2006年10月25日)


被差別体験・生徒たちの声(「全国在日外国人生徒交流会」で)

 「日本語がわからないので、転校していった時にいじめられた」「友達から変な言葉、と言われた。いじめはあったけど忘れた。今は友達になった。日本語が話せなかったときは暗かった。話せるようになって明るくなった。」「泣いたら負けだよね。いじめらても、言葉が言えずくやしかった。」
「後輩の生徒(日本人)から『フィリピン人!』と言われる。後輩だから、『ま、いいか』と許しているが、後になって『なんでそんなことを言われないといけないのか』と腹が立ってくる」「(中2)中国のまねされるのがいやで、保健室にずっといた。グループ化がいや。みんななかよく、でない。」「髪の色の違いで中学の頃いじめられた。だから髪を黒く染めている」「友達に自己紹介したとき、バイトしていると言ったら、『外国人がバイトできるんだ』と言われ傷ついた。暴力よりも言葉の方が人を傷つける。」
「前に住んでいた所で、友達が家に来て韓国のものにさわりたくない、学校で遊んでても、手をつなぎたくない、と言われて、何で韓国人の母に生まれたのか、恨んだ。」

高校受験~入学~在学~卒業:とりくみカレンダー
 高校入学前、9~10月:志願者への情報提供

①日本語を母語としない人たちのための高校進学ガイダンス
 毎年9月~10月に神奈川各地で行われます。高校の先生の参加が不可欠です。(→本文P7「高校入試の壁」参照)

②神奈川県の外国人向けの高校入試制度
「在県外国人特別募集」
 後期募集について、来日3年以内で神奈川県在住の外国籍の志願者が対象です。募 集校は鶴見総合高校、神奈川総合高校、橋本高校、有馬高校、ひばりが丘高校、愛 川高校、横浜市立横浜商業高校。
「特別な受検方法(引き揚げ者等を保護者とする志願者の受検方法)」
 日本語の習得が不充分な人向けの高校入試の特例措置です。国籍は問いません。学 力検査問題にふりがな、学力検査時間の延長、別室受検、簡単な日本語で面接。前 期募集、後期募集とも来日6年以内が対象です。

 入学前、1~3月:入試選抜と合格者への情報提供

③受験者・合格者の言語状況の把握
 本人および保護者の日本語の理解力によっては学校からの情報提供が伝わらないこ とがあります。「特別な受検方法」で受検した者や調査書の情報、中学校に問い合 わせをするなどして把握しておきましょう。

④加配要求
 学習言語としての日本語の習得が不十分な生徒のために「取り出し授業」などの方 法で日本語を学べる体制をつくらねばなりません。そのために非常勤教員の加配が 必要になりますが「国際化」という名目で要求できます。加配による授業計画を立 てて教育委員会に要求しましょう。(→学習言語についてはP13[4]言葉の  壁・言語能力の誤解)

⑤県立高校通訳支援事業
 入学手続きや合格者説明会で保護者が日本語を理解できず、困ることがあります。 神奈川県教育委員会では日本語を母語としない生徒の在籍校には必要に応じて通訳 の派遣の費用を負担する制度があります。事前に申請する必要がありますが、積極 的に利用しましょう。また、日本語の不得意な保護者のために、配布する資料は合 格者の母語訳を付けたり、ルビ振り、通訳の配置などの配慮が必要です。


 第一学年、4~5月:新入生へのとりくみ

⑥在籍握把(国籍把握、本名把握)
(→詳しくは本文P9[3]入学後-まずは在籍把握から)

⑦奨学金、授業料免除
 4月当初では、在日韓国・朝鮮人向けの奨学金や、インドシナ難民家族向けの奨学 金など、国籍やその他の条件によって、外国籍生徒向けの奨学金を出してくれると ころがあります。また授業料免除についてなど、忘れずに情報提供しましょう。

⑧神奈川県外国籍生徒交流会「クロスワールド」への参加
「神奈川県在日外国人(多文化・多民族共生)教育研究協議会」主催で外国籍生徒のための生徒交流会「クロスワールド」が行われています。 毎年5月には新入生歓迎会が実施されます。各校への案内が出されますので、生徒の参加を呼びかけてください。

学校生活の中で

⑨多文化な居場所をつくる
 孤立しがちな子どもたちのために、学校の中での居場所作りをサポートしましょ  う。たとえば日本人生徒も交えて「多文化研究会」のようなサークル活動を始める ことも1つの方法です。

⑩「かながわ外国人教育相談」の利用
 外国籍生徒は様々な問題を抱えている場合が少なくありません。いじめ、在留資 格、進路など、場合によっては学校だけでは解決できないことも少なくありませ  ん。そんなときは「かながわ外国人教育相談」を利用してください。
 (相談日 第1・3水曜 第2・4土曜 午後2時~5時)電話045-222-1209

⑪こんな場合は公欠に
 16歳になり、外国人登録のため、市区町村の窓口に行くとき。
 生徒が入国管理局に行くとき。在留期限が近づいたら、日本にさらに在留したい場 合、家族で入国管理局に出向き、在留延長申請をしなければなりません。
 出身国によっては、選挙人登録や兵役登録などのため、領事館・大使館に行くと  き。

⑫海外修学旅行は再入国許可を忘れずに
 外国籍の子どもには、いったん海外に出ると、その子に付与されている上陸許可の 効力や、在留資格は消滅してしまいます。海外修学旅行に行く場合は出かける前に 入管から、「再入国許可」を得ておく必要があります。

第3学年、進路指導・卒業

⑬進路指導で
 その生徒がどういう在留資格を持っているかは卒業後の進路に影響を与えます。生 徒の在留資格を把握しておきましょう。
(→在留資格を持たない生徒の問題については本文P21参照)

⑭卒業証書は本名で
 外国籍の生徒は日本風の通称名を名のっている場合があります。出席簿の名表、指 導要録卒業生台帳、卒業証書などの名前の欄にはどう書いたらよいでしょうか。本 文を参照して
 下さい。(→本文P16[5]卒業証書は本名で)

2006年日本語を母語としない人たちのための高校進学ガイダンスにて