かながわ平和運動推進委員会

神奈川県高等学校教職員組合の平和について考えるブログです。

6.23 慰霊の日の沖縄

2007-08-17 00:31:39 | 平和通信vol152
新採用教員沖縄ツアーに参加して        R高校 Q

 私たちの一行が立ち去った後、その一家のオジイが泡盛のビンの蓋を開け、礎(いしじ)に刻まれた名前に、流しかけた。そして、太い指で名前を優しくなぞるのだ。日に焼けた、深いしわのその顔。悲しげな目。何もしゃべらず、ただ、なぞるのである。
 6月23日、慰霊の日の「平和の礎」での光景である。今年、初めて行った新採用教員対象の沖縄平和ツアーに同行した。平和ガイドの方の話しをその礎の前で聞いていたため、オジイ、オバア、息子さん夫婦や、お孫さんたち、家族みんなを待たせてしまった。待たせたことを謝し、お話を伺った。オジイのお兄さんの名が刻まれていること。どこで亡くなったかはわからないこと。毎年この日に訪れること。オバアも負傷し右肩がえぐれている事。オジイ、オバア、家族皆が礎に向かって手を合わせるその表情と光景に涙があふれた。20数年、涙など流したことはないのに。
 肉親の死を悼む姿に同情したのか。それだけではない。今ここにいるオジイ、オバアを囲む家族は彼らが生き残らなければ、この世に誰も存在しなかった。礎に名を刻まれたお兄さんが生き残っていたら、同じように子や孫に囲まれていたに違いない。生存者への思い。死者への思い。それらが重なっての予期せぬ涙だった。
 戦死者を悼むということを考えた。多くの人は墓や仏壇の前で、手を合わせる。そこが死者を記憶し、思いを寄せる場を提供してくれるからだ。納骨というのはそこに死者の霊があるかのように、その場の意味付けがなされる。「平和の礎」には名が刻まれているだけだ。それなのに、慰霊の日には礎のあちらこちらで、家族が慰霊に訪れ、時を過ごしていく。一方、靖国神社に訪れる人も多い。ここにも、「祭神名簿」に記載された名前があるだけである。もっとも、靖国神社に祀る対象は主に軍人・軍属だけだが、個人が戦死者を慰霊するという点では同じである。慰霊という感情が同じとするなら、その違いは何か。それは戦死者の死をどう受け止めたかという認識の差といえるのではないだろうか。簡単に言うと、国家が行った戦争という行為の被害者か、戦争という時代に国のために戦った犠牲者かという違いだ。後者には戦争を遂行した主体がない。戦争は国家が起こす市民に対する殺人行為だ。さらに、後者には国家のための死を「犠牲者」とし、その行為を讃える。そこには国家のために死んだ「犠牲者」が他国では加害者以外の何者でもなかったことがなにも見えてこない。靖国神社には沖縄戦で軍による強制で集団自死した人や親に殺された子供も合祀されている。その理由は軍の機密漏洩を防ぐための死だという。
 しっかり見れば、過去の戦争の事実を隠蔽する動きは巷にあふれていることがわかる。イラクには自衛隊の派兵が続き、米軍とともに戦争の道を歩もうという今、オジイ、オバアの思いを受留めた自分がどう行動するかを考えるツアーだった。

基地の街でピースフル子育て

2007-08-17 00:29:18 | 平和通信vol152
しばらくご無沙汰してしまった基地の街たよりです。4月22日の市長選で我が大和市の首長が変わりました。土屋前市長の4選を阻んで、元県議の大木哲市長が誕生しました。大和市が抱える重要テーマは「厚木基地の騒音問題」。けれど、今選挙でも「基地問題」の争点が見えにくく…。「基地問題」こそがこの街に暮らしている市民には最重要課題なのに。沖縄からも聞こえてくるように、「基地」は選挙の争点にはならない時代なのでしょうか。結果的に地元で長い歴史と実績をもつ市民団体の厚木基地爆音防止期成同盟が大木支援にまわったことが、勝敗を分けた一因でした。
ところで、この選挙から2週間、連休明けの8日~11日、厚木基地でのNLP実施通告がされました。そして10、14、15日には7年ぶりにジェット戦闘攻撃機による夜間離発着訓練がおこなわれました(11日は中止)。地元神奈川新聞(5.12)によると、「戦闘攻撃機によるNLPの実施は開始まで6時間を切った10日の午後、在日米軍司令部から防衛施設庁に連絡が入った」とされています。実施をうけて施設庁には苦情の「電話が鳴り続いた」としていますが、国の立場は毅然と「NLPは必要不可欠」(同神奈川新聞)。以前にもこのページで記した通り、実際に訓練をしている最中にはすでに各省庁は「留守電対応」になっています。地元県庁や大和市役所では、夜間にかかわらず宿直室が丁寧に苦情・問い合わせの対応をしてくれる一方、横浜と座間(座間といっても、所在地は大和市内で小田急線鶴間駅近く)の両施設局も厚木基地広報室も、宿直がいないわけがないのに「留守電」。どうしてもこの対応がゆるせない。「周辺住民には多大なご迷惑をかけている。深刻な問題」と、ことある毎にコメントを出しているのだから、直接、住民の声を聞く(その多くが怒りや批判であっても)「仕事」を怠るな!!と思う。日本の「国益」のために苦難を背負っている私たちに対してあまりにひどい仕打ちではないでしょうか。日米安保堅持!日本を守る米軍を支援するのは国民の義務!だ等々説く人たちにこそ、この国側の対応を批判して欲しいと思うのです。
そもそもジェット戦闘攻撃機の騒音はとりわけひどく、地元の粘り強い反対運動の成果で最近6年間は行われていませんでした。基地騒音に「慣れている」住民にとっても、今回の騒音には驚きがあったはずです。ましてや、この間に市内に転居してきた人々の生活-結婚を転機に市内に居住する若い世代が多く、やがて子どもの成長とともに市外へ去っていく。大和市には若年人口が定着しない人口流動現象があります-に少なからず影響があったのでは、と危惧します。そして、米軍再編によりこの騒音が「移転する」岩国の市民にどれだけ現実が知らされているのかが気になります。やはり、戦争のための基地と人としての暮らしは共存し得ない。あらためて住宅街の、それも人口密集地に基地が存在する不合理を感じます。14日には松沢神奈川県知事、大木市長、内野海老名市長らがそれぞれ横浜防衛施設局長、在日米海軍司令部大佐と司令官に14、15日のNLP中止を要請しましたが、ともに「必要不可欠」として要請拒絶という結果でした。その日の夜、知事と周辺4市(大和、綾瀬、座間、海老名)の各市長が基地から1キロの地点で訓練の様子を視察し、あらためて同大佐に15日の訓練中止を要請したものの、これも「安保の責任を果している」(5.15神奈川新聞)との対応に終わっています。さらに16日の朝日新聞によれば同基地司令官は「中止要請が硫黄島に代わる恒常的に訓練施設を早期に見つけことにつながるよう期待する」とのコメントも出しており、再編報告(岩国移転)の早期実現を催促しているものと伺え、ますます基地被害の解消にむけては、厚木基地周辺住民の運動にとどまらず、移転先とされる岩国市民との連携的な運動の必要性を実感させられました。
ところで、NLPの実施に際しては、その前後には「訓練のための訓練」(陸上離発着訓練=FCLP)と「訓練の結果、合格するための訓練」がおこなわれ、実質の被害は長期に渡ることはあまり知られていないように思います。今回のNLPについては、この前後訓練がGW期間に重なり(23日~)、非常に長時間にわたる騒音でした。NLP本体は22時頃には終了したものの、その前後では、長いときには深夜0時を過ぎても飛行していました。再編計画の報告が出た昨春はこれほど激しい騒音もなかったため、もしや…政治的判断があったのか?と疑いたくもなります。
さて、その再編報告に至っては、1年経って各方面で「現実」が見えてきました。岩国への移転が実現されても、厚木基地での訓練やメンテナンスは今までと同様に行われることが、日本政府以外の各方面から明言されはじめました。再編後も何もかわらない!という、根拠についてはまた別の機会で述べたいと思いますが、政府・防衛省だけが、「騒音は減る方向」にと言い切っていることにこそ何の根拠もなく、自国民への裏切りに他なりません。さらに、再編を拒んでいる自治体には再編交付金を配当しない米軍再編特措法案(つまりは再編受け入れを条件で出される新交付金)が2月9日に閣議決定されています。すでに移転反対を公約に当選した岩国市長に対しては、市庁舎建設費の07年度分の補助金をストップしており、県内においては同様に拒んでいる座間市に対して政府との再編協議を昨年8月以来行なっていないという圧力も始まっています。キャンプ座間(相模原市・座間市)では、再三にわたる中止要請も無視され、昨年9月に続いて4月に空母キティホーク所属のヘリコプターの離発着訓練が行われており、ここにも再編受け入れをめぐる自治体への政府・米軍の思惑が働いているのではと勘ぐりたくなります。
日本政府の「圧力」がもっとも目立ったのが沖縄です。すでに全国紙でも報道されていますが、普天間飛行場の移設に伴う辺野古海域の現況調査に海上自衛隊が動員されました。機雷の敷設任務をもつ5600トンの掃海母艦「ぶんご」は、76ミリの大砲を積み、ダイバーを乗せ、呉、横須賀と経由して、沖縄に向かいました。自衛艦の派遣は単に反対運動に対する威嚇とは受け取れません。基地の負担を強いられている「国民」をより一層見下す、侮辱する行為であり、国との折衝を続けている自治体首長をも愚弄する態度に他ならないのではないでしょうか。もともと日米両政府とも住民の意向を無視はしないといった再編協議。今回の行為は、それまで再編受け入れに軟化姿勢をとっていた他の自治体にもマイナス要因を残すに違いないと思います(全国紙での取り扱いは少ないか…)。国会では「自衛隊法上の根拠を」という野党追及に対し「札幌の雪祭りと同様」と解答する顛末。現地では海自のダイバーが非暴力抵抗を続ける人々を蹴散らしていく光景。戦後60年以上経った沖縄で、またしても住民に武器をむける「軍隊」自衛隊。軍隊は住民を守らない-沖縄戦が私たち市民に残した教訓を思い出します。あまりにも愚かな日本政府の姿です。
  (6月17日記/G高校 R)


アフガニスタン通信

2007-08-17 00:25:24 | 平和通信vol152
アフガニスタン通信


Date: Sat, 16 June 2007 17:46

当地(アフガニスタン東部のジャララバード市、パシュトゥン人のいわゆる「トライバルゾーン」の中心地)の状況は、私が感じるかぎりは、いたってのどかで平和そのものです。日本で案じているような「危険」はほとんど感じません。ただし、アフガニスタンとパキスタンとの関係は日々悪化しているらしく、両国国境のカイバー峠もいつ閉鎖されるか分からない情勢のようです。
 一方、ペシャワール会が4年前に取り組み始めた灌漑用水路建設はこの3月に第1期工事を終え(13キロが完成)、この6月から第2期工事(さらに7キロ延長する)が本格的に始動しました。日本政府がアメリカ追随の姿勢で対アフガニスタン政策を今後選択していくようなことになれば当地における対日感情も急激に悪化することが予想されますが、そうした先行き不透明な状況の中で用水路工事は現在急ピッチに進行しようとしています。
 このところ日中の気温は50度(寒暖計の最高目盛)、井戸から汲んだ冷たい水と仕事を終えた後に食べるスイカが最高においしいです。


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今春、神奈川県立三浦臨海高校教頭を2年前倒しで退職した梅本霊邦さん(58歳)が、NGOペシャワール会(代表・中村哲)の現地ワーカーとして、この5月からアフガニスタンのジャララバード近郊で灌漑事業の活動に参加している。
9.11に始まった、アメリカの「テロとの戦争」の最初がアフガン攻撃だった。タリバン政権崩壊後、日本政府もカルザイ政権を全面的に支持し、マスコミもアフガンに自由が訪れたという報道があふれた。しかし、ここにきて米軍の統治がイラク同様うまくいっていない。マスコミが殆ど取り上げない中、現地の生の情報を提供したい。なお、本文は梅本さんの私信であり、本誌の原稿用に執筆したものではないが、今回、掲載の許可をいただいた。
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Date: Thu, 17 May 2007 19:03
 ムシケル・ニシタ(No problem)
 パシュトゥー語で「問題なし」「平気、平気」の意味です。道具が壊れている、体調が悪いとかなんとか口実を設けて仕事の手を抜こうとするとき、現地の作業員達はかならず「ムシケッレ」(問題あり、具合が悪い)と訴え、こちらが彼等の仕事ぶりにこれで大丈夫かどうか心配すると、きまって「ムシケル・ニシタ」とかなんおとか、いい加減で大雑把なその民族性を発揮します。とりあえず私も今のところ「ムシケル・ニシタ」です。食べ物にも風土にも今のところ順調に適応しつつあります。
 当地に来て1週間が過ぎました。私の仕事は総延長13キロの用水路うちの後半の6キロほどの植樹作業です。具体的にはすでに植えられた楊(やなぎ)や桑の木に灌水することと用水路の先端2キロほどを新たに植樹しアフターケア(灌水)することです。この時期、雨がほとんど降らない当地ではクナール河の水位や用水路の水位よりも高いところに植えた樹木の水やりが意外と大仕事です。乾燥が激しいうえに、土中に礫(日本でも川原に沢山転がっている大小の丸石)が非常に多く混ざり、土は粒子がまるで白粉のように細かくて水に溶けやすく、保水力など植物を栽培するにはいろいろ問題があるためです。2人~5人の作業チーム5つが区域を分担し私の担当する6キロの灌水作業を毎日やっています。水揚げポンプが自由に何台も使えるわけではなく(区域の半分は、バケツを使い人の手で2.5メートル下の水面から水を汲み上げる)、灌水の区域が長いこともあって、これが想像以上に重労働です。植樹もただ穴を掘って苗木を植え挿木をすればよしというわけではなく、事前の準備として用水路の石ころだらけの両岸に土嚢を積み、土を入れ整地するという単調で骨の折れる作業がついて回ります。この事前準備に毎日20人以上の現地人労働者が当てられ、灌水作業や苗木の植えつけを併せると30名以上の現地人を同時に動かすことになります。
 とりあえず写真を1枚送ります。1時半に仕事が終わり頭(かしら=当地では一般に「エンジニア」と呼ばれる)が1人1人に日当を渡している光景です。みんなうれしそうに見えるでしょう。写真でも分かるように、働く人達の年齢はさまざま、でも一見ふけて見えても私より年上はたぶんひとりもいないはずです。年齢に関係なく日当は1人100アフガニー(240円)です。ちなみに当地ではペプシコーラが1缶20アフガニーします。




Date: Sun, 27 May 2007 22:51
 5月20日、日曜日と言っても、当地では通常の営業日です。今日も朝3時半に起き5時に出勤、車で約45分の作業現場に出かけ午後1時半まで第1期工事の最終区の用水路沿いに植樹の事前準備として土嚢を積み、土を盛り整地する一連の作業とすでに植樹した5キロほどの区間の灌水作業を指揮しました。朝から晩の気温は30度~50度の間を行ったり来たりしています。空気が乾燥しているのとクナール河の川面を渡ってくる風が涼しいのとで、日射しは強烈なものの意外にしのぎやすいです。私は相変わらず元気です。

<一昨日の金曜日にジャララバードとその近辺で起きたこと(すべて伝聞です)>
1 《妻に鼻を削ぎ落とされて夫が死ぬという事件があったそうです。》
 でも、アフガニスタンにウーマン・リブの兆しか?と言うのは性急かもしれません。当地では女性は適齢期になると外では皆ブルカを被ります。ブルカを被っていないのは14、5歳未満と40歳(?)を過ぎた女性のようです。小さな女の子を見るかぎり、総じて美人が多いなと感じます。ただし、気楽に声をかけたり、手を振ったり、まじまじと見ることは禁物のようです。
 日課で井戸に水汲みに行くと、先に水汲みに来ていた女性は私達の姿を見てそそくさと水汲みを済ませ家内に引っ込んでしまいます。後から水汲みに来た女性は、私達が水汲みを終えるまで物陰に隠れて順番を辛抱強く待っています。農作業や水汲みのときにはブルカは、もちろん、どの女性も被っていません。たぶんそのためでしょう、他の男性に顔を見せないようにとても気を使っているように感じます。年頃の女性がブルカを着けずに水汲みをしている場合は、井戸の20メートルほど手前で私達は車を止め水汲みの済むのを待ちます。

2 夜9時頃、私達の宿舎の近くにあるインド領事館前のゴミ箱(ドラム缶)に爆弾が仕掛けられ、発見した警察がこれを爆破処理したため、もの凄い爆発音とともに宿舎の建物も大きく揺れたようです。他の日本人ワーカーは何事かと思って食堂に集まったそうですが、私はその10分前に就寝し熟睡していたため、翌朝その話を聞くまで何も知りませんでした。誰が何の目的で爆弾を仕掛けたかは不明です。インドとパキスタンの関係悪化の兆しではないかとの観測もあるようです。

3 私達がいるナンガルハル州の郡警察のトップが爆弾を仕掛けられて爆死したそうです。カブールの中央政府の要人でもあるということで、土曜日は沿道にふだんよりも多くの警官が重装備で配置され物々しい警備でした。アフガニスタンの各地方では政治的権力をめぐってファミリー間(当地では血縁による結びつきが強いとか)の抗争が絶えないそうで、殺された警察長官は反対勢力からいろいろ恨みを買っていたのでは、との推測です。ただ、彼の実績は高く評価されていて、例えば、かつてここジャジャラバード周辺の道路ではそこここに勝手に検問が設けられ通行料が徴集されていたのが、今ではそれがまったくなくなったとのことです。

 土曜日(21日)に第1期工事の終了点の植樹作業をしながら、ひとりですぐ目の前の尾根に登ってみました。自分の仕事の全体像を地理的に把握してみたかったからです。ごつごつした岩山ですが、樹木が一本も生えていないために見通しがよく、登路も自在に選べて、とても気楽に登れました。クナール河を渡ってくる 風が冷たくとても心地よかったです。そのとき撮った写真を送ります。左(北東)から右(南西)にクナール河が流れているのが分かるでしょう。向いの山脈は2千メートルほどで、パキスタンとの国境になっています。この山脈に沿って毎日幾度か軍の小型ヘリと大型ヘリが偵察巡視飛行をしています。
 写真の通り水利に恵まれた流域の低地は木々が茂り青々としていますが、乾燥した茶褐色の山肌には樹木は一本も見られません。低地と高地の 色が水利の如何でこれほど違ってしまう景色は日本ではまずないだろうと思います。当地では今が冬蒔きの小麦の収穫期(写真では茶色に見えるのは小麦畑です)で、私が当地入りしたときは「麦秋」という言葉さながらの風景が展開していましたが、この2週間でほとんどの畑では刈り取りが済み、畑のあちこちで機械を使った脱穀作業が行われています。農作業の風景を見るかぎり、当地では農民は男も女も大人も子どももよく働くな、と感心します。

 月曜日(22日)には警察の車両が爆破され警察官4人が死亡するという事件がありました。作業現場へ行く途中の村々ではいつになく人集りがあちこちにできていました。が、全体としてさほどの緊迫感はありませんでした。
 用水路沿いの幹線道路では毎日ISAFの装甲車とアフガニスタンの警察車両の車列が道路の中央を傍若無人に走り去るのに遭遇します。装甲車のなかは冷房がガンガンに効き、冷えたコーラやビールが飲み放題だそうです。ただし、私にはその真偽のほどは分かりません。


自衛隊は何を守るのか①

2007-08-12 10:09:50 | 平和通信vol152
 自衛隊が市民を監視している。自衛隊法のどこにも市民を監視するという任務は無い。国内で最大の軍事力を持った組織の市民監視は、市民の自由な意見表明への圧力になる。シビリアンコントロールへの重大な挑戦だ。そんな旧日本軍の憲兵隊のような活動に対して・・・
「盗聴するとか尾行して情報収集するならけしからんと言われていいが、公開の場に出掛けていって情報収集することは今までもやってきたし、悪いことではない」「マスコミなどでもパチパチ撮っている。取材は良くて自衛隊は駄目だという法律の根拠はなく、デモや抗議行動の風景を撮ることは違法ではない」(産経新聞より)と。
 6月7日、参院外交防衛委員会での久間章生防衛相の発言だ。この日、防衛相は自衛隊の情報保全隊がデモや集会の写真撮影をしていたことを認めたが、違法ではないとし、「年金改悪反対」や「消費税反対」などの自衛隊に関係のない分野の情報収集について問われると「公開の場に出かけて、事実として把握するだけの話」と一蹴した。

 「盗聴」などとんでもない話だが、「盗聴」していないからいいとでも言うのか。「情報収集活動は今までもやってきた」と明言する。さらにはマスコミの写真撮影と自衛隊の写真撮影はその使用目的がまったく違うだろう。自衛隊の情報保全隊の情報収集活動が、自衛隊法の中のどのような法に基づいてなされたかまったく説明せず、それなのに、「違法でない」と言い切る。はっきりしたことは、この人に自衛隊のシビリアンコントロールはできないということだ。もっと恐ろしいのは、このような大事件を共産党以外の野党は追及しないこと、マスコミの多くが沈黙していることだ。沖縄・辺野古への海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」の派兵は米軍基地建設反対の運動への威嚇、排除を目的としたもの以外何物でもない。税金を使って市民に監視、威嚇する軍事組織という自衛隊の本当の姿が見えてきた。やはり、庁を省にすべきではなかったのだ。

6月6日、日本共産党が入手し、公表したのは、2種類、計11部、A4版で総数166ページという膨大な内部文書である。ひとつは、陸上自衛隊・東北方面情報保全隊が作成した5部の文書だ。調査期間は2004年1月7日から2月25日まで、収集した情報を週間単位でまとめ、分析している。二つ目は情報保全隊本部が作成したもので「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題した6部の文書だ。調査期間は2003年11月24日から2004年2月29日までの6週間分と「11月総括」(次ページに掲載)、「1月総括」だ。
 
東北方面情報保全隊の文書の「配布区分」には「情報保全隊長、東北方面総監部調査課長、仙台派遣隊3部 北部、東部、中部、西部各方面情報保全隊長」とあることから、全国五つの各方面の情報保全隊が同様の調査活動を恒常的に行っており、それを中央の情報保全隊に定期的に報告されていたことが推測される。全国から、報告されたものを集約したものが、二つ目の文書であろう。
新聞でも報道されたように、反自衛隊活動とされた個人には映画監督の山田洋二、情報誌「インサイダー」編集長の高野孟、民主党の衆院議員、新聞記者も含まれた。団体については41都道府県の289団体におよぶ。さらには、イラク派兵に反対した地方議会の動向や議決も含まれる。
久間防衛相は「3週間で廃棄するような報告書」というが、どうして、6週間分の文書が残っているのか。また、わずか6週間で、41都道府県、289団体もの調査・監視を行ったというから、自衛隊の情報収集にかける並々ならぬ検討ぶりが伺える。どのくらいの要員や税金が使われたのかを是非聞いてみたいところである。

資料の中身は
「イラクに行った留守家族がいろいろと心配している、あられもない中傷のビラを投げ込まれる等、いろいろな事があるから、どのような状況なのか心配はいりませんという事を調べて、本人に連絡してあげる等、情報保全隊が情報収集に回っていた。」久間章生防衛相の記者会見での最初の発言だ。留守家族を安心させるために全国で調査を行ったというのだ。「年金改悪反対」や「消費税反対」の集会にも出向いて、こっそり情報収集していたのだから、そのように言われても信じようがない。
各方面の情報保全隊が収集した情報は運動団体別に次のように分類された。
「P」日本共産党および「日本共産党系」とされた労働運動・市民運動。
「S」社会民主党および「社会民主党系」とされた労働運動・市民運動。
「GL」民主党および連合系労働組合やそれに関連すると区分された市民運動など。
「CV」それ以外の市民運動。
「NL」新左翼等とされた運動。
「その他」個人、地方議会の動向など。

 自衛隊員が集会などにこっそり参加し、このような分類で、1週間おきに集計し、さらに、「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題して、本部で表やグラフにまとめる。本誌表紙に掲載したのはその一つだ。また、下に示したのは各方面の報告書の一部だが、主催団体や代表者の個人名、内容欄には参加者数や集会の概要だけでなく、どのような発言があり、またコメントまで書かれているものもある。その次には「反自活動」と書かれた欄があり、自衛隊が認定する。
 今回明るみになった文書に、私たち「神奈川高教組」や本誌編集の「平和運動推進委員会」が無かった。「神奈川高教組」は積極的に基地反対を掲げているし、この間の自衛隊のイラク派兵にも反対してきた。「国際紛争を解決する手段として武力は行使しない」という憲法の崇高な理想の実現をめざそうとするからだ。従って「反自衛隊」と言われることもあるだろう。だが、「反自衛隊」と言える権利を有しているのは市民やさまざまな団体ではないだろうか。しかし、政府や行政はその権利を有するのだろうか。あるいは政府や行政に、違法行為もしていない市民や市民団体にそのようないわゆるレッテル張りを与えることはいいのだろうか。そうなれば、「神奈川高教組は反自衛隊活動をしている」と政府がレッテルを貼り、政府が反政府運動として、弾圧のターゲットとすることは十分起こりうる。事実、2004年2月、イラク戦争についてのビラを立川自衛隊宿舎に投函しただけで、3名が逮捕連行され75日もの間、拘束された。一審が無罪、二審が有罪、現在最高裁で係争中だ。今回の調査と公安警察の連携プレーと考えられるのではないだろうか。
 多様な意見があることを許容することが民主主義の根幹に関わることである。民主的な国家、そんなものは無いと言われるかもしれないが、少なくとも、多様な意見の存在や意見表明が認められていること、さらに、それを政府が行政に反映させていることが民主的国家のバロメーターではないだろうか。政府に「反自活動」と言わせたくないし、いわんや自衛隊にはなおさらだ。他国から侵略を受けたとき、国民を守るとしてきた自衛隊に「反自活動」とレッテルを貼られることは、敵国のスパイと見なされるのと同じ意味を有するのではないだろうか。
 日本軍と同じ、自衛隊は国家権力と自衛隊自らを守る組織だと言うことが明らかになった。

情報保安隊とは
 今回の情報活動を機に、情報を公開した共産党はその他の情報活動の公開を求めるほか、情報保安隊の活動の全容を明らかにするように求めているが、防衛省は一切拒否している。この組織自体がベールに包まれていた組織なのだ。市民運動監視のスパイ組織ということなのだろうか。
 もともと自衛隊には「調査隊」という自衛隊内部の反自衛隊活動の情報収集する部隊があった。自衛隊発足時、旧ソ連抑留者の自衛官の情報収集を主な任務としていたとされる。2000年の海上自衛隊幹部の秘密漏洩事件を契機に、当時の防衛庁が内部情報の漏洩防止に乗り出した。2003年3月、「調査隊」を再編・強化して発足させた。主な任務は防衛情報の保護と漏洩防止とされている。2002年、衆議院安全保障委員会で当時の中西防衛庁長官の答弁では「自衛隊に対して不当に秘密を探知しようとする行動、基地、施設などに対する襲撃、自衛隊の業務に対する妨害などの外部からの働きかけから部隊の秘密、規律、施設などを保護するのに必要な資料や情報の収集など」とされている。(朝日新聞より)
 今回、公開された情報収集活動には高校生のピースウォーク、小林多喜二の写真展、年金・消費税・春闘の集会も含まれる。これらが「不当に秘密を探知しようとする行動、基地、施設などに対する襲撃」「部隊の秘密、規律、施設などを保護するのに必要な資料や情報の収集」なのか。
情報保全隊の定員は陸海空自衛隊合わせて約900人。全国で5つの方面に分かれている。さまざまな集会にこっそり参加し、週ごとに報告を中央に送る。今も何処かに、ひっそり隠れて情報収集しているのだ。
 そんな資料も久間大臣は、「三週間くらいで破棄してしまった。だから確かめようがない」と言う。三週間で破棄する資料なら、税金のむだ遣いだ。そして、この人は隊員の苦労などまったく知らない。
それにしても2003年の発足以来、皮肉なことに自衛隊の情報漏えいは増加するばかりだ。イージス艦の極秘データまで漏洩し、米国からもクレームがつくほどだから危機的状態である。自衛隊では漏洩防止の組織の情報も漏洩する。それとも、漏洩防止という本来業務より、イラク戦争以降市民監視が主要な任務となったから、わきが甘くなったのだろうか。いずれにせよ、内部では情報漏洩の犯人捜しに躍起になっていることだろう。それが、本来任務なのだが。



久間大臣臨時会見概要  (防衛省HPより)


1 発表事項   なし
2 質疑応答
Q: 陸上自衛隊の情報保全隊が国民の行動を監視していたという文書を共産党で公表されましたが。
A: 共産党が公表したことは承知しております。情報保全隊は、イラクに行った留守家族がいろいろと心配している、あられもない中傷のビラを投げ込まれる等、いろいろな事があるから、どのような状況なのか心配はいりませんという事を調べて、本人に連絡してあげる等、情報保全隊が情報収集に回っていた。その文書か何かを共産党がまとめたかどうか分かりませんけれども、手にしたというそういう話なので、私は未だ見ていませんが、あのような資料は3週間くらいで破棄するようになっている文書ですから、調べようもないです。

Q: 今日、共産党が公表した文書は、防衛省内で作成された物という事でよろしいでしょうか。
A: それが本物かどうかというのは、分かりません。何年も前の話ですし、イラクに行った当時の話ですから。しかも、その文書というのは、連絡をして3週間位で破棄しているはずですから、こちらには残っていないのではないでしょうか。

Q: 事実関係が正しいとすると・・・。
A: 正しいかどうか調べようがありません。3週間経ったら破棄するような文書ですから、内容自体におかしい事があるのでしたら別ですが、内容自体も正確かどうか分かりません。あの当時は、反対運動もありましたし、家族に対して随分と圧力がかかっていたらしいですし、そういう事に関するいろいろな話について、どのような話が持ち込まれたか、あるいは心配はいりませんからということを、色々と一生懸命情報収集をしたのではないでしょうか。

Q: 防衛省内の自衛隊の関係者に聞けば、こういう活動があったかどうかと言う事は直ぐ分かると思うのですが。
A: それはやっていると思います。家族が心配ですから。いろいろな所から、自衛隊であるが故に「あなたのご主人はイラクに行っている。けしからん。」という事等、当時いろいろな事があったらしいですから、そういう事について、「何かありますか。」というような事を聞いて、「心配入りませんからね。」というような話はしていると思います。合っているかどうかと言うのは別ですけれども。資料の中身が正しいかどうかについては、分からないと言っているのです。

Q: この形式での調査・報告はまだ行われているのですか。
A: 今は、しておりません。イラクに陸上自衛隊が行った当時の話ですから。

Q: していないというのは、それは調べて報告を受けたということですか。
A: いや、そうではありません。すでに陸上自衛隊は帰ってきているじゃないですか。そして心配なく、非常に評価されて帰って来ました。あの当時はイラクに行ったために、戦争がさも起きているかのようなことを言っていたような人達がいたわけだから。あなたもそう思いますか。違うでしょう。

Q: 取材活動自体が反自衛隊・・・。
A: 記者ではないでしょう。

Q: 記者の活動が外に出てくる人を取材しようとしたという記録に、反自衛隊活動という名前が付けてあった・・・。
A: 反自衛隊活動をした人のことを聞いたのであって、記者さんがそうしているのではない、その時にあなたは居たのかね。

Q: 書いている・・・。
A: 書いていることではない。書いていることが正しいかどうか、わからないと言っているでしょう。そうではなくて、あなた自身がその圧力をかけたのかね。そうではないでしょう。

Q: ここに書いてあることが、正しいかどうかということを聞いているし・・・。
A: 正しいかどうか分かりません、そんな3週間くらいで破棄しているような文書なのですから。

Q: 今と同じような調査・・・。
A: 今、していないと思うよ。
Q: 他のテーマで・・・。
A: それは圧力をかけられ、嫌がらせ等があった時は、どういうようなことをされているのかについては、情報収集に回ります。それは当たり前のことですから。自衛隊の隊員が朝晩、ひっきりなしに、家族がつけ回されるようだったら大変だから、「そういうようなことがありますか。」というようなことは、聞きにまわります。貴方たちはそういう失礼なことをしますか。しないでしょう。今とは空気が違うから、あの当時は。

Q: 隊員の留守の家族を安心させるというのも目的・・・。
A: そうです。

Q: ということは、あれに基づいて、家族にこうだから心配ないという報告もしているのですか。
A: たぶんしていると思います。

Q: 大臣、あの中にはイラクの反対だけではなくて、医療費の値上げ反対だとか、国民春闘の運動の動向等、直接イラクに関係のないことまで書かれているのですが。
A: それは、イラクの事を中心に情報収集をやったのではないですか。その時に、相手の人が、こんな事も言われた、こうですよと言われたら、そうですかというような調子でその報告に乗せたのではないでしょうか。

Q: 国民年金の値上げ反対や、医療費の値上げ反対とか、直接イラクとは全く別の項目のところに、そういう事も出ているので、それを共産党は国民監視だと言っているのですが。
A: それは、私は知りません。私が聞いているのは、イラクに行っている隊員の家族への情報収集を情報保全隊が行ったと聞いております。それ以外の年金の話はよく分かりません。

Q: そういう内部の資料が外に漏れたという事については、どう思いますか。
A: 注意文書ですから、秘密文書ではないのです。3週間経ったら破棄して良い事になっていて、また逆に破棄しなさいとなっています。そういう文書を、丁寧に集めれば、外に出て行く事もあり得ます。だから、秘密文書としての位置づけではないので、秘密文書だったら問題だけれども、秘密文書じゃないわけです。

Q: 特にどこから漏れたかについては。
A: それは分かりません。

Q: それは調べられますか。
A: 調べようがありません。6時40分頃から事務次官が記者会見しますから、そこで聞けばいいと思います。秘密文書でもなんでもないわけですから、報告文書ですから。報告文書をまとめたものです。

Q: 関係者の記憶に聞けば、こういうものがあったかどうか・・・。
A: 詳しいですね。そういう対象になっているのですか?

Q: こちらからお伺いしているので、そういう話は全然関係ないと思いますが。
A: 答えづらいのですか。

Q: 民主党の増子議員が「イラク戦争に派遣するのは反対だ。」という発言をしていたということが書かれていて、それが反自衛隊活動だという分類になっていて・・・。
A: それは政治家なら、反対する場合もあるし、賛成する場合もあるし、政治家であれば堂々と胸張って「反対だ」と言えばいいわけですから。

Q: 反自衛隊活動だという分類になっていて、・・・。
A: 反自衛隊活動と、書いた人はそう思うかもしれないけれども、反自衛隊活動ではないでしょう。ただ、イラクに行っている家族を非常に困らせないようにしなければなりませんから。

Q: 自衛隊法に、そういう情報保全隊の活動根拠がないのではないかと、共産党では言っていましたが。
A: そんなことはありません。情報収集は、自衛隊の仕事として、当然、情報を集めなければいけないし、特に自衛隊の家族がどんな思いでいるかというのは絶えずケアしないといけない。そのためには、家族のところに行ってどんな話を、どんな圧力がかかっていますかというのを聞くのは仕事として当然です。それは共産党の認識違いです。

特集:自衛隊は何を守るのか②

2007-08-12 10:08:51 | 平和通信vol152
 自衛隊の変遷、今危ない動き
 ついに、これまで政府が認めてこなかった集団的自衛権、簡単に言えば、米国と一体化した自衛隊の戦闘行動への解禁が迫ってきた。しかも、現行憲法のままで、である。
5月18日「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安全保障懇談会」)の初会合が開かれた。NHKニュースなどでは「有識者懇談会」と言うそうだが、防衛大の名誉教授や、イラク戦争賛成、日米同盟強化を主張する大学教授や業界人らが12人。会合などしなくても、官邸のシナリオどおり、いやそれ以上の提言が出てくるのは容易に想像できる。今秋をめどに報告書をまとめるというが、安倍首相の「有識者懇談会の答申を受けて・・・」という猿芝居の終幕が目に浮かぶ。
初会合で安倍首相は、政府がこれまで「保有するが行使できない」としてきた集団的自衛権の憲法解釈について4つの類型に分けて、協議することを求めた。4つの協議とは
(1)米国などに向かう可能性のある弾道ミサイルの迎撃
(2)自衛隊と公海上で並走中の米軍艦船が攻撃された際の海上自衛隊艦隊による応戦
(3)一緒に活動する多国籍軍への攻撃に対する応戦
(4)国連平和維持活動で妨害を排除するための武器使用
の4類型である。まさに、米軍と一体の戦闘行為を可能にするための協議ということだ。委員からは反対意見はなかったという。当然である。安部首相がそういう人材を集めたのであるから。以下は初会合での委員の意見の抜粋である。
「わが国が『侵略しない』、国際紛争に巻き込まれたくないというのは重要なことだが、それだけの『思考停止』で国を守ることが出来るのか」
「現在の政府見解には問題があり、修正する必要がある。示された4類型はいずれも議論の必要がある、現実的必要性の高いものであるが、個別類型のみならず防衛法制の根幹をなす一般的な法的基盤を考えないと、議論につぎ当てを重ねるやり方ではそろそろ限界に来ている。」
「わが国では集団的自衛権の行使を認めないという立場を獲ってきたため、逆に個別的自衛権の概念をグレイ・ゾーン等の形で不当に拡大してきた面があるが、これは不健全である。集団的自衛権の行使を認め、個別的自衛権を本来の枠の中に戻して法的にすっきりさせる必要がある。」


安倍首相は「アメリカと対等な関係のため」というが
 「集団的自衛権の行使」解禁は、アメリカが「テロとの戦争」を開始し、それに伴う米軍の世界規模での再編、「テロとの戦争」の泥沼化が大きく影響している。「テロとの戦争」はアフガン、イラクに見られるように、ブッシュ政権を苦境に立たせている。アメリカの軍事行動は常に、他国の人命をいくら奪おうが、自国の「費用対効果」が問題とされる。米兵の戦死者や戦費に見合うだけの国益が満たされたかどうかが問題なのだ。アフガン戦争、イラク戦争は石油のための戦争であった。イラクについては破壊した後、露骨に米企業が復興で儲けようとしたが、内戦状態でそのもくろみは完全に外れた。戦費がかさむ中、アメリカは米軍支援、グアムへの基地移転など、さまざまな形で日本に負担を強いてきた。そして、今回は戦闘行為の負担を求めているのだ。終わりなき「テロとの戦争」に血を流せと。
 安倍首相はアメリカとの対等な関係の構築のためにも「集団的自衛権の行使」が必要という。軍事的にも政治的にもアメリカとの対等な関係などありえない。なぜなら、そんな対等の関係などアメリカが許さない。また、戦後、日本にアメリカにNOと言えた政治家はいない。そんな本を書いて儲けた作家はいたが。アメリカにいくら貢いでもそれはアメリカの国益になる。戦後、それをずっと見てきたではないか。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争。アメリカの戦争に加担してきたのである。もし、本当に、アメリカと対等になる道を目指すなら、軍事力ではなく、「武力で国際紛争の解決をしない」という国際協調に根ざした政治力で対等となるしかないだろう。



日米ミサイル共同開発時代の今
 さて、先の「安全保障懇談会」の協議の1項目は「弾道ミサイルの迎撃」というミサイル防衛計画が前提となっている。ミサイル防衛計画は朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮人民共和国」)のミサイル開発や発射実験で急速に進展した。米軍再編にともなうミサイル防衛に関する日米の合意容は次のとおりである。
1.ミサイル防衛をグローバルな脅威に対抗する課題であるとの認識を共有した。
2.ミサイル防衛の協力のために、自衛隊と米軍の間で調整し、情報収集と共有、高い即応態勢、相互運用性の維持が課題と共通認識とした。
3.横田基地に自衛隊と米軍のミサイル  防衛司令部を置く。
4.米軍が日本に、新規のミサイル防衛装置を追加配備する。
4については昨年10月、沖縄の嘉手納基地にパトリオットミサイルPAC2が激しい反対運動にもかかわらず配備された。日本政府はこのミサイルの配備を横田基地にも求めているという。このミサイルの迎撃範囲は数10kmと言われ、攻撃の最終段階で迎え撃つとされている。また、イージス艦にはスタンダードミサイルSM3が配備され、このミサイルは迎撃範囲が数百kmとされている。しかし、迎撃できると言う保証はない。また、敵国が狙うとすれば、まずは米軍基地という可能性は否めない。朝鮮人民共和国についていえば、軍事的脅威をどちらが与えているかと言えば、いうもでもなく日米である。日本がミサイルで先制攻撃できる米軍基地と要塞化することのほうが、攻撃される確率は高いのではないか。
 2や3についてはミサイル防衛に実行性を持たせるための内容である。さらに1は「グローバルな脅威」とされるから、想定は朝鮮人民共和国だけではなく、アメリカに脅威を与えるすべてについてと言うことだ。日米両軍が海外でもミサイルで戦争をするということである。
こんな、ミサイル防衛計画を背景にして、「日本の上空を通過する米国をねらうミサイルを自衛隊が迎撃することができるか」という殆どありえないことが「有識者」と呼ばれる方々が協議する。殆どありえない根拠はいくつかある。まず第一に、世界の軍事費の半分を占める軍事大国に全面戦争をしかけるということは、次の瞬間、その国土の殆どが焦土になっていることを意味する。しかも、テポドンの射程は約3500~6000km、狙えるとしてもグアムかアラスカがやっとである。しかも精度が悪い。昨年、短距離の発射実験が騒がれたが、後に多くが目標地点に落ちなかったとされている。
 それでも、窮鼠猫をかむ。いや、窮鼠ゾウをかじろうとするとして、朝鮮人民共和国がミサイルを米国に発射したら、その情報を真っ先に得るのは米軍だし、日本が迎撃する前に横須賀や沖縄など米艦船からいっせいに迎撃ミサイルが発射される。10数分で日本上空を通過するミサイルを、日本が迎撃する暇はないだろう。さらに、地球儀を見るとわかる。ピョンヤンから発射されたミサイルが米国本土をねらうとすると、殆どの都市は日本上空を通過するより、オホーツク海を通過するのが最短距離で早い。ロサンゼルスかグアムかハワイかなら、日本上空を通過するが。したがって、米国を狙ったミサイルが日本の上空を通過するのは、隣国の指導者が自暴自棄になって、自らの命と国民の殆どの命を道ずれにすることを決意し、さらに政府の幹部たちも死を覚悟した。しかも、数少ないミサイルだが、目標にはグアム、ハワイ、ロスを攻撃して、アメリカに一矢を報いようとする。発射されたミサイルは日本上空を通過する。迎撃ミサイルのうち何%が自衛隊の発射したミサイルだろうか。「有識者懇談会」とはよく言った。いや、彼らは、「たとえ1%でもそれが重要だ。」というだろう。それは、自らは戦場へ行かず、国防で職を得ている人たちだからではないだろうか。







     


平和国家から武器輸出国家へ
 「(武器輸出三原則について)日米で共同開発をしていこうとするときに現在のままでいいのか、検討する時期に来ている。研究していく」久間章生防衛相の5月2日、アメリカで、ブッシュ政権に発言力のあるシンクタンク「ヘリテージ財団」主催の講演での発言である。武器輸出三原則は外国への武器や技術の輸出を原則として禁じたこれまでの政府の基本方針であり、1983年中曽根内閣が米国に限り、武器技術のみの輸出の道を開いた。昨今、中国などへの武器技術に利用される可能性のある製品や部品についても厳しく摘発されたりしているが、この発言は積極的に日本が武器輸出国になると言うことを宣言したのに等しい。その背景には日本の軍事産業の要求がある。
 昨年8月、第8回日米安全保障戦略会議が開催された。主催は国防族議員が多数参加する「安全保障議員協議会」、前述の「ヘリテージ財団」、「日米平和・文化交流協会」などだ。この会議では毎回、兵器展示がなされていると言う。2005年の同会議の写真を見ると、今回沖縄の米軍が配備されたパトリオットミサイルの模型が展示され、その背後には、富士山を背景に「統合拡張された弾道ミサイル防衛 日米のパートナーシップ」と書かれたロッキード社の大きなパネルがある。まさに、日米の防衛産業「死の商人」たちのパートナーシップを確認する場と言える。第8回の会員と協賛した企業の一覧は資料(「週刊金曜日」No624より)のとおりだ。三菱重工業、石川島播磨重工業、川崎重工業など、日本の軍事産業の主要企業はもちろん、東京電力、コスモ石油、JR東海などの企業のほか、軍事産業との共同研究をねらったのか千葉科学大学と言う名もある。
 そもそも、ミサイル防衛などと言うことが本当に可能なのか?音速の10倍近い速さの物体をミサイルで迎撃する。アメリカでも、いい条件設定で実験が成功したときのみニュースになるほどだ。専門家の中に疑問視する声も多いし、テレビで自己の国防論を熱弁する石破元防衛庁長官でさえ、「100%落とすのは困難だが、ミサイル防衛は初期的抑止力である」(「週刊金曜日」No624より)と述べている。



「美しい国」? 
 「死の商人」にとっては迎撃できるかどうかは問題ではない。戦争が起これば儲かる。問題は平和時にどうやって、不要な兵器を売って、利潤を追求するか生き残れるかである。世界の軍事費の半分がアメリカ一国の国防費といわれ、国家予算の多くを軍事費に費やすアメリカは戦争なくしては国家の存続が危ぶまれる。20世紀後半世界中で、戦争で破壊し、復興で稼ぎ、また壊す。これを最も繰り返したのが、アメリカである。自国の戦死者も多いが、殺した他国民はその数倍、数十倍かもしれない。冷戦が終了して、ソ連との軍拡競争が終焉し、アメリカの国防予算は減り、軍事産業は斜陽を迎えた。そんなときに、ブッシュの「テロとの戦争」によって、「死の商人」は息を吹き返した。
 ロシアも同じである。ソ連の崩壊で大量の兵器が無政府状態に置かれ、密輸や横流しされた膨大な兵器の実態はわからない。軍事費に国家予算が圧迫され、国民の経済が成り立たなくなったのもソ連の崩壊の一因であろう。ソ連崩壊後のロシアは軍事費どころではなかった。事実、長い間の同盟国・朝鮮人民共和国への武器援助もストップした。それが、安価で他国に脅威を与える核開発のきっかけであるとされる。そんなロシアが近年、チェチェン紛争などきっかけに「テロとの戦争」でアメリカと歩調を合わせ、プーチン政権下で武器輸出に積極的に乗り出している。中国も例外ではない。
 国連の常任理事国は全て、大量武器輸出国なのだ。しかし、日本が「武力で国際紛争の解決の手段としない」理念を堅持し、戦争を放棄し、交戦権を否定し、武力を持たない国家になることを実行していく。これが、私の思う「美しい国」だが、どうだろう。