カウンターの中から客をのぞくといろんなことが見えてくる

日本人が日本食を知らないでいる。利口に見せない賢い人、利口に見せたい馬鹿な人。日本人が日本人らしく生きるための提言です。

誰にも話せないことは誰もが持っている。でもそれが、ますます自分を苦しめる。

2013-01-09 | 人間観察
市場からいち早く戻り、8時前に病院に着いた。

しかし昨夜とは病院の態度が一変していた。

「ご家族がこちらに向かっておられます」

何のことかわからなかった。

ナースに何を聞いてもわからない。

僕は医師に尋ねた。

「深夜、まるっきり体が動かなくなった」

どういうことなのかよくわからなかった。

彼女は僕に泣きながら、追及した。

「私が死ぬとき、手を握っていてくれるって言ってたのに。
どうして、どうして・・・」

最後の力を振り絞っているかのような厳しくて弱弱しい声だ。

僕も涙が止まらない。

しっかりと手を握った。

彼女に反応はほとんどなかった。

先ほどの言葉が最後sだった。

「ご家族がお見えになりますが、お会いになりますか?」

医師が、僕たちの立場を知っているからの言葉だ。

僕はその場から離れた。

「もう意識はありません。昼まで持つかどうか」

医師の言葉は冷たい。

「私からお話ししておきます。ご家族に。
アパートに帰る頃、行ってあげて下さい」

もう何も考えられない。

店に戻り、やる気のない仕事をやる。

何も考えられない。

仕事はできない。

頭が真っ白だ。

悲しい。

辛い。

同じように、血液の免疫障害の病気を持つ者にしかわからない恐怖感。

明日は我が身。

それでも悲しい。

医師からの連絡はない。

もしかしたらまだ頑張っているのかも。

無理やりそう考えようとした。

時間がなかなか進まない。

生きていることが嫌になる。

電話はまだかかってこない。

どうなってるんだ。

僕は、病院に行こうとした。

それしかない。

彼女が生きていたら、僕が手を握ってやることしかない。

生きていてくれ。

僕の涙は止まらない。