カウンターの中から客をのぞくといろんなことが見えてくる

日本人が日本食を知らないでいる。利口に見せない賢い人、利口に見せたい馬鹿な人。日本人が日本人らしく生きるための提言です。

大丈夫っていう言葉は、本当に頼りない言葉だと思う。

2013-01-05 | 人間観察
いよいよ明日から市場が始まる。

今年は、6日が日曜日だから、5日の一日だけでまた休み。

だから行かないわけにはいかない。

7日には仕事を始めなくてはならないからだ。

車に積んだ大量の水と野菜。

これだけあれば何とかしのげる。

問題は{魚}だ。

何が入るか全く予想がつかない。

それに初市は、いつも業者の奪い合いになる。

いいものは大手の旅館などが持っていくことが多い。

どこまで頑張れるかは運とタイミングだけだ。


彰子先生は機嫌が良かった。

とても対人恐怖症だったとは思えない笑顔と鼻歌で、
荷物を積み込むのを手伝ってくれる。

朝、目が覚めた時、彼女が体を重ねてきた。

そしてまた風呂に入って少し寝た。

今までの疲れが出てしまう。

昼ごろに起き、庭の野菜でみそ汁を作った。

そしてスタート。

帰省ラッシュも、ちょうど合間だったらしく、1号線で桑名まで行き、
桑名東から東名阪高速で名古屋まで2時間で着いた。

彼女の住まいまで送って行き、僕は店に向かった。

「6日の10時だよ。わかってる?」

彰子先生は子供のような笑顔で僕の顔を覗き込んだ。

「大丈夫。わかってるよ」

何と頼りない返事だろう。

「その時、わたしを抱く?」

「わからない」

「私って魅力ないんだ」

「そういう意味じゃない」

フフッと笑った表情があどけない。

僕は滅多なことで【大丈夫】なんて言葉は使わない。

その言葉は、自信のない時にこそ使う言葉だと思っていたからだ。

僕は本当に6日の10時に行くのだろうか?

自分自身にもわからなくなっている。

Y子さんに電話をした・

「行っていい?」

「大丈夫だよ」

Y子さんの言葉が僕の心に突き刺さる。

もう一度電話をする。

「食事に行こうよ。明日の仕入れの準備があるんだ」

僕はなんて情けない男なんだ。

Y子さんを選ぶのか、彰子先生に惚れてしまうのか?

僕自身、少しも大丈夫じゃないってことがわかってしまった。