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インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会 最終報告書(案)

2006年07月11日 05時27分10秒 | Weblog
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第3 プロバイダや電子掲示板の管理者等による自主的対応の現状
1 プロバイダや電子掲示板の管理者等による対応の限界
(1)情報に対する関与形態による限界
インターネット上において流通に置かれた情報に対して、情報の流通を媒介するプロバイダや情報の流通の場を提供する電子掲示板の管理者等が自主的に行う対応には、流通する情報に対する関与の態様等に応じて技術的理由等に基づく限界がある。

大別して、以下のとおり考えられる。

① 電子掲示板等の管理者として、自己が管理する電子掲示板等に掲載された情報に対する措置
自己が管理する電子掲示板等に掲載された情報については、電子掲示板等の管理者は、当該情報又はデータファイルごとに送信防止措置を行うことが可能である。(個別の書き込みや画像単位での送信防止措置が可能)

具体的には、電子掲示板の管理者による電子掲示板への書き込みへの対応、インターネットオークション事業者によるオークションの出品情報への対応等が当てはまる。

② サーバの管理者として、自己が管理するサーバ内に他人が開設した電子掲示板、ウェブサイト等に掲載された情報に対する措置
自己が管理するサーバ内に他人が開設した電子掲示板、ウェブサイト等に掲載された情報について、サーバの管理者は、技術的にデータファイルの一部について送信防止措置を行うことが可能な場合もあるが、データファイルの一部について送信防止措置を行うことによりデータファイル全部が消失したり、他の書き込みや情報が正確に表示されなくなるなどの影響が生じる危険性がある。
また、サーバの管理者は、データファイル全部について送信防止措置を行うことが可能である。(特定のウェブページないし電子掲示板自体についての送信防止措置を講じることが可能)
具体的には、ウェブサイト開設のためのホスティングを行う場合において、サーバの管理者によるウェブサイトに掲載された情報やデータフ

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ァイル等に対する対応等が当てはまる。
③ インターネットアクセスの提供者として、自己がアクセスを提供する他人のサーバ内の電子掲示板、ウェブサイト等に掲載された情報に対する措置
他人が管理するサーバにインターネットアクセスを提供しているだけのプロバイダ(以下「アクセスプロバイダ」という。)においては、通常、当該サーバ内へのアクセスがサーバ管理者により制御されており、当該サーバ内の情報に手を加えること自体が不可能である。
また、アクセスプロバイダにおいて、特定の情報が当該サーバ内に蔵置されていることは認識できても、当該サーバ内に他にどのような情報が蔵置されているか知ることができず、当該サーバに対するアクセスを停止した場合には、適法な情報を含むすべての情報について送信を停止することになるため、影響が予測できないという問題がある10。

(2)インターネットの特性に起因する限界
インターネット上の違法・有害情報は、膨大な量の情報が日々新たに流通に置かれる状況にあるため、プロバイダや電子掲示板の管理者等による対応には限界がある上、仮に、プロバイダや電子掲示板の管理者等により送信防止措置が行われた場合でも、同一の情報が他のプロバイダや電子掲示板等を利用して掲載される、検索サイト等に蓄積されたキャッシュ情報が閲覧可能な状態のままである等のインターネットの特性に起因する限界がある。

(3)検討
第3の1(1)③のとおり、インターネット上を流通する違法・有害情報に対して、アクセスプロバイダという立場から、自らがアクセスを提供する他人のサーバ内の電子掲示板、ウェブサイト等に掲載された違法・有害情報への対応を行うことは技術的理由等により困難を伴うことが多い。
そこで、本研究会においては、電子掲示板の管理者やサーバの管理者等といったデータファイルやサーバの管理権限を有する者(以下「電子掲示板の管理者等」という。)による送信防止措置を念頭において検討を行うこととした。
〔脚注〕
10 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第6条により、プロバイダは、インターネットアクセスの提供について不当な差別的取扱いをしてはならず、特定のサーバに蔵置されている適法な情報を含むすべての情報についてアクセスを停止することができる場合は相当限定されるものと考えられる。

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また、インターネット上を流通する違法・有害情報に対するアクセスプロバイダや電子掲示板の管理者等による対応に限界があることから、違法・有害情報については、発信側への対応(違法な情報の発信者の取締り等)、受信側の対応(受信者による情報のフィルタリング等)を組み合わせて対応することが必要不可欠である。特に、受信側の対応については、受信者の選択により導入されるものであるため、法的な問題(送信防止措置等の対応に伴う法的責任)を回避することができること、日々新たに流通に置かれる違法・有害情報に迅速に対応することが可能であること11などの利点があり、積極的に推進していくことが重要である12。

インターネット上の違法・有害情報への対応主体
アクセスプロバイダ(A)
(インターネットへの接続サービスを提供する者)
インターネット
サーバ管理者(B)
(ウェブサーバ全体を管理・運営する者)
ウェブサーバ
(情報の蓄積、送信を行
【電子掲示板】
・・・・・・・・
・・・・・・・・
電子掲示板等の管理者(C)
(ウェブサーバのうち、特定のサイト・電子掲示板を管理運営する者)
うコンピュータ)

①電子掲示板等の管理者が、サーバ管理者、アクセスプロバイダと同一の場合(A=B=C)
②電子掲示板等の管理者とサーバ管理者が同一であるが、アクセスプロバイダが異なる場合(A≠B=C)
③サーバ管理者とアクセスプロバイダが同一であるが、電子掲示板等の管理者が異なる場合(A=B≠C)
④三者がそれぞれ異なる場合(A≠B≠C)の4つの場合がある。
〔脚注〕
11 フィルタリングソフトの開発、提供等を行っているデジタルアーツ株式会社によれば、平成18年1月現在、約1億3700万ページのブラックリストデータを保有しており、1日当たり約7万ページを新たにデータベースに追加しているとのことである。同社のウェブページ(http://www.daj.co.jp/filter/db.htm?lid=1 )参照。
12 なお、ウェブサイト開設者(発信者)が第三者機関の審査を経て自らのコンテンツの表現レベル等の情報をマーク表示などにより提供、利用者(受信者)がウェブサイトの安全性等を容易に判断できるようにする仕組みについて、学識経験者、保護者、コンテンツ事業者、プロバイダ、フィルタリング事業者などが参加する「コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会」(会長:堀部政男 中央大学大学院法務研究科教授)で検討されている。(http://www.amd.or.jp/activity/advice_mark.html )参照。

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2 電子掲示板の管理者等による自主的対応に関する現状
(1)他人の権利を侵害する違法な情報
インターネット上を流通する違法な情報のうち、他人の権利を侵害する情報については、電子掲示板の管理者等が対応を行う際の行動指針として、プロバイダ責任制限法第3条第1項において、電子掲示板の管理者等が権利侵害情報を放置していた場合の損害賠償責任について、同条第2項において、電子掲示板の管理者等が他人の権利を侵害しない情報について誤って送信防止措置を行った場合の損害賠償責任について、それぞれその範囲が明らかにされている。
これら損害賠償責任の範囲については、さらに、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会により、個別具体的な事例において、同条第1項第2号に規定する「情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合」に該当するか否か及び同条第2項第1号に規定する「情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき」に該当するか否かに関する判断指針として関係ガイドラインが策定され、法解釈及び法適用(事実認定)の両面において、電子掲示板の管理者等の行動指針として活用されている。
関係ガイドラインの定める手続のうち、プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドラインにおける法務省人権擁護機関からの送信防止措置の依頼13手続は、インターネット上を流通する特定の情報に対して送信防止措置を行った場合における責任について、最終的には裁判所によって決定されることを前提としつつ、法務省人権擁護機関からの送信防止措置の依頼については、人権侵犯事件の調査・処理などに関する事務を行う法務省人権擁護機関であって、人権侵害に関する専門的知見を有する者が多段階にわたり、慎重な検討を加えた結果として依頼がなされるものであるため、法務省人権擁護機関からの依頼に基づき電子掲示板の管理者等が送信防止措置を行った場合、プロバイダ責任制限法第3条第2項第1号の「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由がある場合」に該当し、送信防止措置による責任を負わない場合が多いと考えられ、送信防止措置が促進される仕組みとなっている。
〔脚注〕
13 法務省人権擁護機関とは、各法務局長及び地方法務局長並びに法務省人権擁護局長をいう。法務省人権擁護機関が行う削除依頼とは、人権侵犯事件調査処理規程(平成16年法務省訓令第2号)第14条第1項第1号に規定する「人権侵犯による被害の救済又は予防について、実効的な対応をすることができる者に対し、必要な措置を執ることを要請すること。」に該当するものである。

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また、プロバイダ責任制限法著作権関係ガイドライン及び同商標権関係ガイドラインにおける信頼性確認団体14(著作権、商標権等に関する専門的な知識及び相当期間にわたる充分な実績を有している団体)による確認を経由した送信防止措置の申出手続においては、信頼性確認団体が、電子掲示板の管理者等に代わって一定の手続に従い、本人性の確認、権利者であることの確認及び権利侵害であることの確認を行った上で送信防止措置を依頼した場合には、その依頼に基づき電子掲示板の管理者等が送信防止措置を行ったとしても、プロバイダ責任制限法第3条第2項第1号の「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由がある場合」に該当し、送信防止措置による責任を負わない場合が多いと考えられ、送信防止措置が促進される仕組みとなっている15。
(2)社会的法益等を侵害する違法な情報
インターネット上を流通する違法な情報のうち、社会的法益等を侵害する違法情報については、法律の専門家を擁しない電子掲示板の管理者等にとっては、特定の情報の流通が違法であるか否かに関し、法解釈及び法適用(事実認定)の両面において困難が伴うことが通常であり、個別具体的な事案において情報の違法性を判断することが難しく、また、行動指針や判断を支援する仕組みが存在しないため、自主的対応に消極的とならざるを得ない場合がある。また、送信防止措置等の対応を積極的に行いたいという電子掲示板の管理者等が存在するところ、自主的対応に関する法的責任が明らかでないことが一つの障害となっている。

(3)公序良俗に反する情報
インターネット上における、違法行為を目的とした電子掲示板への書き込み、人を自殺に誘引する情報の電子掲示板への書き込み、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報の流通等を契機として違法行為(窃盗、自殺幇助、爆発物を使用した傷害等)が行われる事案が発生し、社会問題となっている16。これらの、必ずしも流通が違法ではない情
〔脚注〕
14 信頼性確認団体については、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会において、著作権関係及び商標権関係の信頼性確認団体の認定手続等が別途定められ、一定の手続に従って認定が行われている。
15 平成18年2月現在、著作権関係の信頼性確認団体の一つであるJASRAC((社)日本音楽著作権協会)を経由して電子掲示板の管理者等に対し18万件を超える送信防止措置の依頼がなされ、そのすべてについて相当の期間内に送信防止措置が行われている。また、平成17年9月に、商標権関係の信頼性確認団体が認定されて活動を行っている。
16 平成17年6月に山口県の高校生がインターネット上の爆発物製造方法を記載したサイト等を参考にして爆発物を作成して使用した傷害事件、同年7月に少年がインターネットのサイト「闇の職業安定所」において共犯者を募集し、ひったくりを行った窃盗事件等。

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報についても積極的な対応を検討している電子掲示板の管理者等が存在するところ、このような管理者等は、一般的に、利用規約や約款等の契約において、公序良俗に反する情報の流通を禁止するとともに、流通した場合には送信防止措置等の対応を行うことを定めている。しかし、公序良俗に反する情報については、違法な情報と異なり、法律の条文等の形で明確な判断の根拠が示されておらず、個別具体的な事案において、公序良俗に反する有害な情報か否かに関する画一的な基準を設けることは困難であり、自主的な対応を行うことが難しい場合がある。
(4)青少年にとって有害な情報
青少年にとって有害な情報については、有害か否かに関する画一的な基準を設けることは困難であり、電子掲示板の管理者等による自主的な対応を行うことは難しいが、受信者側での、事前に設定した基準に基づきインターネット上のウェブページ等の情報を評価判別し、不適切と判断された情報へのアクセスを防ぐ、いわゆるフィルタリングサービスによる対応が行われている状況にある。

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第4 電子掲示板の管理者等による自主的対応に関する法的責任
インターネット上の電子掲示板等に掲載された情報について、電子掲示板の管理者等が送信防止措置等の自主的な対応を行う場合、他人の権利を侵害する違法な情報については、プロバイダ責任制限法第3条により、対応を行った場合の電子掲示板の管理者等の損害賠償責任の範囲が明らかにされており、自主的な対応を行う際の行動指針となっている。しかしながら、上記以外の情報に関しては、対応を行った電子掲示板の管理者等の損害賠償責任の範囲が明らかとなっておらず、このことが、送信防止措置等を積極的に行いたいと考えている電子掲示板の管理者等において、対応を行う際の障害の一つとなっている。
そこで、本研究会においては、電子掲示板の管理者等が、他人の掲載する情報を放置した場合及び送信防止措置を行った場合の双方の場合の法的責任について議論を行い、電子掲示板の管理者等の刑事上及び民事上の法的責任について、一定の整理を行った。

1 電子掲示板の管理者等が他人の掲載する情報を放置した場合の
法的責任
(1)刑事上の責任
電子掲示板の管理者等が、他人の掲載した違法な情報を放置した場合の刑事責任については、実行行為を作為(違法情報が掲載されたディスクアレイの陳列)と捉えるか不作為(他人により掲載された違法情報について送信防止措置を行わないこと)と捉えるか、正犯と構成するか従犯と構成するか等の法的構成に関する問題があり、これらの法的構成によって問題となる点も異なるものと考えられる。17
この点、電子掲示板の管理者等について他人の掲載した違法情報に関して刑事上の責任が肯定された裁判例18は、いずれも電子掲示板の管理者等に
〔脚注〕
17 電子掲示板の管理者等が、他人の掲載した違法な情報を放置していた場合における刑事責任については、「インターネット上の誹謗中傷と責任(情報ネットワーク法学会・社団法人テレコムサービス協会編)」第3章(111頁以下)に、関連する裁判例、参考文献等が紹介、引用されている。
18 最高裁平成13年7月16日判決(刑集55巻5号317頁)、東京高裁平成16年6月23日判決(インターネット上の誹謗中傷と責任(前出注16)136頁、151頁以下参照。)、千葉地裁平成14年9月24日判決(前出注16、134頁)等

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おいて違法な情報の流通について積極的な関与が認められる事案であり、単に違法情報の存在を認識したが、これについて送信防止措置を行わず放置したことのみを理由として刑事上の責任が認められたものではないと解される。
したがって、現時点においては、電子掲示板の管理者等において、違法と思われる情報について単に送信防止措置を行わないというだけでは、他に特段の事由がない限り、刑事上の責任を問われるおそれが高い状況ではないと考えられる。
しかし、電子掲示板の管理者等として、他人が掲載した違法な情報の流通に対してどの程度の関与があれば積極的な関与があるとして刑事責任が認められることになるかについて明確な基準が示されているものではないため、今後の裁判例の動向等を注視する必要がある。
将来的に、電子掲示板の管理者等が、他人の掲載した違法な情報を放置していた場合の刑事上の責任について、その範囲を明確にする必要が生じた場合等においては、諸外国の法制度を参考にしつつ立法措置を講ずることの検討も必要になる可能性があると考えられる。
(2)民事上の責任
電子掲示板の管理者等がインターネット上を流通する権利侵害情報を放置した場合の責任については、プロバイダ責任制限法第3条第1項において、電子掲示板の管理者等が、①送信防止措置を行うことが技術的に可能な場合であって、②(a)情報の流通により他人の権利が侵害されていることを知っていたとき、又は(b)情報の流通を知っていた場合であって、情報の流通により他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があったときに該当するときでなければ損害賠償責任を負わないとされている。
流通により個人的法益の侵害が生じない情報については、放置したことについて民事上の責任が生じるものではないと考えられる。
2 電子掲示板の管理者等が他人の掲載する情報について送信防止措置を行った場合の法的責任1920
〔脚注〕
19 電子掲示板の管理者等による対応に関する法的責任については、平成12年に総務省(当時の郵政省)が主催して開催した「インターネット上の情報流通の適正確保に関する研究会」の報告書(http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/japanese/PDF/denki/001220j60101.pdf )7頁以下にも記載されている(ただし、プロバイダ責任制限法施行前のもの)。

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