kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

カティンの森

2010年02月23日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:2月22日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版700円。明朝体のテキストを中心とした構成で、20年ほど前の何かの取扱説明書を思わせる。

第二次大戦中のソ連軍によるポーランド軍捕虜虐殺を描いた、「ポーランド人によるポーランドのための」映画。

オープニングでは、独ソ不可侵条約、ドイツ軍侵攻、ソ連軍侵攻といった時代背景が日本語字幕で解説される。

最初は、捕虜となったポーランド将校とその妻子の話で、この妻が夫の行方を探すストーリーなのかと思いきや、次いで同じく夫が捕虜になった大将夫人の話に移る。さらに新しい登場人物が現れては消え、ストーリーの語り手のバトンが次々と渡されていく。
虐殺事件からからくも逃れたポーランド軍将校、ワルシャワほう起に参加した元レジスタンス、ソ連支配体制に反対する国内軍の兵士、体制派につく学校教師などなど、実に多くの登場人物でストーリーが紡がれていく。
一人一人について、多くは語られず、断片的な物語で、途中死ぬ者もいれば、生死がはっきりしない者もいる。「カティンの森」事件を通したポーランド戦後史の映画なのだ。

最初、時代背景が日本語字幕で解説されると書いたが、途中も時代と場所が何回も字幕で説明される。この字幕がオリジナルの映画でも出てきたかどうか不明なのだが、これがないと背景知識のない観客にはストーリーについていけないだろう。

途中、独ソ戦の開始は説明されないし、ワルシャワほう起でロンドン亡命政府側のレジスタンスが事実上、壊滅したことも分からない。(そういえば、ソ連国策映画「ヨーロッパの解放」では、「英国政府に支援された一部の勢力が勝手にほう起し、全滅した。」と紹介されていたよなあ。)

そういった意味で「ポーランド人のための映画」という感じを強い。ひと昔前のハリウッドなら、オールスター映画になりそうな気がするし、ドルの重みが役の重みだったので、ストーリーもすんなり把握できたのだが、やはり知らない顔ばかりだとズロチの重みが分からないよね。(演出的につながりが悪く、不自然な部分も気になる。)

結末が分かっている(NKVDの仕事に抜かりはない)だけに余計につらい映画なのだが、この映画を見ていると、歴史的事実が政治の狭間に翻弄され、2000年代までかかった映画の製作そのものの重みがひしひしと伝わってくる。(歴史改変のくだりは「1984年」を思わせるね。)
題名:カティンの森
原題:Katyn
監督:アンジェイ・ワイダ
出演:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジュミイェフスキ


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