kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

孤狼の血

2018年06月08日 | 邦画
本作がロケされた広島では、ご当地映画としてレイティング無し!
小学生でも鑑賞できるファミリームービーとして老若男女に大ヒット!
と言うのは大嘘だが、大ヒットしているのは本当。映画館でも夫婦やカップルでチケット購入しているのをよく見かける。

で、よくある感想が「流血が・・・」「えぐい」「痛々しい」。
何を言っている。ついこないだまでこの程度のバイオレンス描写はレイティング無しで劇場にかかっていたぞ!例えば・・・閑話休題

さて、映画の方は広島県呉原市を舞台に、暴力団同士の抗争とそれを防ごうとする武闘派と新米刑事のコンビの捜査が描かれる。

最初の東映三角マークに始まり、「仁義なき戦い」に代表される実録ヤクザ映画風にスタートするのだが、結論から言うと映画にあまり乗れなかった。

ひとつには実録ヤクザ映画のフォーマットでさらにご当地映画という事情もあり、自分の中でフィクションとノンフィクションの境界があいまいになって、映画に集中しきれかったことがある。(そりゃ、これを県外の人が観たら実話だと思うぞ。)
さらに、「仁義なき戦い」の時もそうだったが、対立する暴力団の構図がすぐに呑み込めず、そっちを追っかけるのも大変だった。

もうひとつには極道側にギラギラ感が弱い。「仁義なき戦い」シリーズは言うに及ばず、同じ監督の「凶悪」にしても「日本で一番悪い奴ら」にしても悪人がもっと陰湿でたちが悪く、欲望に正直でギラついていた。
後づけの感想だが、本作の極道がほぼ金の話をしていなかったような気がする。彼らの行動原理が縄張り争いかメンツ争いで、その源泉である金への執着を見せなかったことで悪のパワーを削いでしまった。

乗れない点はあったにせよ、もちろん、信義のためにあらゆる手段を打ち、敵味方関係なく巻き込んで、生き残りを図る主人公大上の姿には共感するところも多い。(「狼=大上」つながりで「子連れ狼」を連想したが、「虎落笛」もそうなのか?)

配役の中では言うまでもなく役所広司が素晴らしいのだが、菅原文太の役回りと山本五十六と阿南陸相を同じ俳優が演じているのだから、邦画の俳優の弾数の少なさも致命的だ。
一方、松坂桃李の新米刑事役が今風で心配だったが、徐々に染まって、目つきが座っていくさまがいい。まさにニーチェの「深淵を覗く時」ですな。
全般に広島県警側が個性的で輝いていたのに対し、極道側はあまり印象に残っていないなあ・・・

ゲスい広島弁のセリフの数々も秀逸で、小学生高学年の子どもに向かって放つ「チン○に毛はえたか?」には大笑い。この頃のオッサンはみんな言ってた。(と思う。)

ところで、なぜか劇場では広島県警OBと一緒だった。「本物の血を見てきたんで、映画とは言え、思い出して嫌ですわ。」とか「室内で暴れられんよう、取調室はもっと小さかった」とか「かき氷器はなかった」とかリアルな裏話を色々教えてもらいました。





題名:孤狼の血
監督:白石和彌
出演:役所広司、松坂桃李


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