kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

凶悪

2014年01月17日 | 邦画
日時:1月15日
映画館:八丁座
パンフレット:B5版700円。三役と監督のインタビュー掲載。

昨年の公開時期、ちょうど引っ越し前後と重なってしまい、未見のままだったが、年末年始に各種ベストテンが発表されるといずれもランクイン。
見逃したことに臍をかむところだったが、幸いなことに5か月遅れで観ることができた。

殺人犯の死刑囚ピエール瀧が自白した未発覚の3件の殺人事件、主人公のジャーナリスト山田孝之は事件の真相と黒幕であるリリー・フランキーを追う。

凶悪事件を追ううち、主人公もニーチェの言葉どおりにその闇に囚われていく様は同じ殺人事件ものの「ゾディアック」とも通じるものがある。

犯罪が起きることは最初から分かっているし、主人公がピンチに陥ることがないのも分かっているのに、映画全編に緊張感がみなぎり、一瞬たりとも映画から気を抜くことができない。見終わった後、どっと重い気分になれるのは請け合い。

ところが、もっと後味の悪いもの、「面白かったが、二度と見たくない」映画を予想していたにも関わらず、案外、そうではなかった。
理由はいくつか考えられるのだが、1つには被害者への感情移入の度合いが少なかったからだろう。どう見ても怪しい不動産ブローカーとヤクザものにカネ絡みで関わる人生は、ワタシの世界観からは少し距離がある。

もう1つはリリー・フランキーの穏やかで狂ったキャラクター。淡々とした楽しそうな口調で殺人を仕切る様は怖がっていいんだか、笑っていいんだか。

さて、この映画の構成って、期せずしてスコセッシの「グッドフェローズ」に似ているんじゃないか。
キーポイントとなる殺人事件から映画がスタートし、関係者の回想によって映画が進行していく。狂言回しのレイ・リオッタが山田、犯罪の黒幕デ・ニーロがリリー、暴力装置のジョー・ペシがピエールといった配役。
不条理で過激すぎる殺人がコメディのようなところや、最後に裁判所で独白のような演説をするシーン、最後に撃たれる(=指さされる)ところなどにも似たものを感じた。

ところで、この映画でワタシが一番怖かったのは、言うまでもなく、池脇千鶴。
「周ちゃんは大事なところでいつも逃げて、わたしばかりつらい思いをしているじゃない。」と叱責(詰問?)されるシーンが何度となく繰り返される恐怖は、陰惨な殺人の比ではなかった。
ピエールとリリーの殺人シーンは何度でもリフレーンできても、彼女のシーンは怖くて思い出せない。






題名:凶悪
監督:白石和彌
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー


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