kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

2016年05月25日 | ★★★☆☆
日時:5月23日
映画館:サロンシネマ

1947年、93歳になったシャーロック・ホームズは自分が引退することになった事件を回顧する。しかし、記憶力が衰え、事の顛末が思い出せない。日本の妙薬「山椒」にすがりながら、自分の過去の「謎」を解きあかしていく・・・

と、なかなか面白い切り口のホームズもの。

93歳のホームズを演じるのはイアン・マッカラン。「ザ・キープ」の頃からジジイ役だったが、文字通り円熟の演技。

隠居中のホームズは、お手伝いさんのローラ・リニーの寡婦とその息子と同居し、面倒を見てもらっている。先日、「ラブ・アクチュアリー」を観たばかりだったから、ローラ・リニーの容姿に特殊メイクが入っているのかと思ったが、あの映画も10年以上前のもの。単にオバサンになっただけなのね。

この映画、第二次大戦直後の現在、日本での近過去、第一次大戦前のロンドンと3つの時代を行き来しながら、ホームズの記憶を辿るユニークな構成となっている。最初、とっつきにくいが、イアン・マッカランの老衰具合がバロメーターです。(笑)

ホームズは山椒を求めて、時代や国籍がちゃんぽんになった日本を訪れ、原爆で焼け野原になった広島にやってくる。この時、原爆ドームを見て愕然とする姿はこの映画の見どころの1つ。さりげないシーンだが、原作の「最後の挨拶」を知っていると、19世紀から大量殺戮の時代になってしまったことへの絶望感・喪失感が伝わってくる。

007やホームズものは原作にあったエピソードや固有名詞、ディテールをいかに盛り込むかで、製作者側のこだわりが見えて面白い。事件の背景に「死後の世界」があるあたり、コナン・ドイルがオカルトに傾倒したことを思い出させる。

本作では兄マイクロフトもハドソン夫人もすでに鬼籍に入っている。エンディングでホームズが彼らを偲ぶシーンは一つの時代の終焉を感じさせ寂しくなってしまう。
(余談だが、正典のホームズものは長編・短編あわせて60の事件がある。昔、暇な時にはこの60の事件を書き出してみていた。(笑)

この映画で全編通して語られるのは、老いや孤独の哀しさであり、そう遠くない自分の未来を重ねてしまう。救いとなるのは同居する少年。印象的な顔立ちで、利発そうな少年と頑固な老人の交流は、憧れの構図だ。(現実はそうではない。)

ところで、老人の介護について、似たような状況を抱える我が家。あるシーンをウチの奥さんに話したら「全くその通りだ。」と激しく同意していました。






題名:Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
原題:Mr. Holmes
監督:ビル・コンドン
出演:イアン・マッケラン、ローラー・リニー、ミロ・パーカー

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