第二次世界大戦の戦記好き、そして史学を学んできたものとして、第二次世界大戦史を研究することと自分の変化を重ね合わせた原作「HHhH」は傑作小説だった。
その映画化、「死刑執行人もまた死す」「暁の七人」「ハイドリヒを撃て」など何度か映画化されてきた1942年ナチ占領下のプラハで起きたハイドリヒ暗殺計画を描く。(「ヒトラーの狂人」は未見)
「HHhH」を完全に映画化しているわけではなく、むしろ定本としての扱いくらいで、話はハイドリヒの立身出世話と暗殺計画の二部構成のみとなっている。(原作の「私」は登場しない。)
ハイドリヒが海軍をクビになり、親衛隊(SS)で頭角を表し、プラハで襲撃される直前までが前半、後半ではチェコのレジスタンスによるハイドリヒ暗殺が描かれる。
前述した同テーマの映画と決定的に異なるのは、言うまでもなく前半。なのだが、主演のジェイソン・クラークが決定的にハイドリヒに似ていない!
これまでで一番似ていたのは、一瞬しか出なかった「ハイドリヒを撃て」のデトレフ・ボセ(Detlef Bothe)だったが、「暁の七人」のアントン・ディフェリングも「ナチを演らせりゃ、世界一ィィィィィィ」な彼らしさが活きていて良かった。
しかし、オーストリアではなくオーストラリア人のゴツゴツ顔のジェイソン・クラークはハイドリヒらしさが微塵もなく、彼にハイドリヒを見出すのはかなりハードルが高い。
キャスティングで言えばヒムラー役のスティーブン・グラハムも太り気味。突撃隊のレームは似ているが、やはりいちばん良いのは程よく年を取った「ゴーン・ガール」ことロザムンド・パイクだな。ハイドリヒに多大な影響を与える猛妻リーナを好演。
ハイドリヒが似ていない以上に映画的にしっくりこなかったのは、彼の行為を史実的になぞっただけに終わった点だろう。
アインザッツグルッペン(特別部隊)の残虐行為を陣頭指揮していることを描くのは見た目には分かりやすいのだが、彼の悪魔的なところは、娼館での盗聴や第二次大戦を引き起こしたグライヴィッツ事件、アインザッツグルッペンの編成、最終的解決の発案など、当時、誰も考えつかなかったことを考えだしたことであり、さらにそれを支持し実行させたナチスの狂気があるのだと思う。
映画ではハイドリヒだけが悪人のように見えてしまうが、当時、現場には「本当にやるんですか?」と感じた人間がいて、さらには「仕事ならちゃんとやります」と実行できた人間がいたはずだと思う。まあ、その辺まで描くとちょっとした長編になってしまうし、映画的に面白いかというと別なのだろうが。
後半はハイドリヒ暗殺に至る経過が描かれるが、この辺は詳細が明らかなので表現はラブロマンスなど交えられるものの過去の作品と大差がない。仕方ないところだろう。
ハイドリヒ暗殺の報復措置、リディツェ村の虐殺が明確に描かれるのは珍しく、その暴虐ぶりが結果として身内の裏切りにつながる展開には説得力がある。
原作が良かっただけに期待したのだが、期待以上の中身ではなかったな。
ところで、ハイドリヒの妻、リーナは事件後「プラハがチェコ人の頭蓋骨で敷き詰められたら、プラハに戻る」と言ったという記事を目にした覚えがあるのだが、改めて探しても見つからない。ワタシのナチ妄想だったのか・・・?
その映画化、「死刑執行人もまた死す」「暁の七人」「ハイドリヒを撃て」など何度か映画化されてきた1942年ナチ占領下のプラハで起きたハイドリヒ暗殺計画を描く。(「ヒトラーの狂人」は未見)
「HHhH」を完全に映画化しているわけではなく、むしろ定本としての扱いくらいで、話はハイドリヒの立身出世話と暗殺計画の二部構成のみとなっている。(原作の「私」は登場しない。)
ハイドリヒが海軍をクビになり、親衛隊(SS)で頭角を表し、プラハで襲撃される直前までが前半、後半ではチェコのレジスタンスによるハイドリヒ暗殺が描かれる。
前述した同テーマの映画と決定的に異なるのは、言うまでもなく前半。なのだが、主演のジェイソン・クラークが決定的にハイドリヒに似ていない!
これまでで一番似ていたのは、一瞬しか出なかった「ハイドリヒを撃て」のデトレフ・ボセ(Detlef Bothe)だったが、「暁の七人」のアントン・ディフェリングも「ナチを演らせりゃ、世界一ィィィィィィ」な彼らしさが活きていて良かった。
しかし、オーストリアではなくオーストラリア人のゴツゴツ顔のジェイソン・クラークはハイドリヒらしさが微塵もなく、彼にハイドリヒを見出すのはかなりハードルが高い。
キャスティングで言えばヒムラー役のスティーブン・グラハムも太り気味。突撃隊のレームは似ているが、やはりいちばん良いのは程よく年を取った「ゴーン・ガール」ことロザムンド・パイクだな。ハイドリヒに多大な影響を与える猛妻リーナを好演。
ハイドリヒが似ていない以上に映画的にしっくりこなかったのは、彼の行為を史実的になぞっただけに終わった点だろう。
アインザッツグルッペン(特別部隊)の残虐行為を陣頭指揮していることを描くのは見た目には分かりやすいのだが、彼の悪魔的なところは、娼館での盗聴や第二次大戦を引き起こしたグライヴィッツ事件、アインザッツグルッペンの編成、最終的解決の発案など、当時、誰も考えつかなかったことを考えだしたことであり、さらにそれを支持し実行させたナチスの狂気があるのだと思う。
映画ではハイドリヒだけが悪人のように見えてしまうが、当時、現場には「本当にやるんですか?」と感じた人間がいて、さらには「仕事ならちゃんとやります」と実行できた人間がいたはずだと思う。まあ、その辺まで描くとちょっとした長編になってしまうし、映画的に面白いかというと別なのだろうが。
後半はハイドリヒ暗殺に至る経過が描かれるが、この辺は詳細が明らかなので表現はラブロマンスなど交えられるものの過去の作品と大差がない。仕方ないところだろう。
ハイドリヒ暗殺の報復措置、リディツェ村の虐殺が明確に描かれるのは珍しく、その暴虐ぶりが結果として身内の裏切りにつながる展開には説得力がある。
原作が良かっただけに期待したのだが、期待以上の中身ではなかったな。
ところで、ハイドリヒの妻、リーナは事件後「プラハがチェコ人の頭蓋骨で敷き詰められたら、プラハに戻る」と言ったという記事を目にした覚えがあるのだが、改めて探しても見つからない。ワタシのナチ妄想だったのか・・・?
題名:ナチス第三の男 原題:The Man with Iron Heart 監督:セドリック・ヒメネス 出演:ジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ |
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