やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

幽霊だけど恋してる―26話

2013-07-15 18:42:19 | 小説
「ねぇ、吉村。優一に聞いてよ」

吉村は優一の横で、笑っている。

吉村の声を掛けても聞こえない。

肩を叩こうとしても、すり抜けてしまう。

確か憑依すると言う方法があると、聞いたことがある。

そう思って実行しようとするが、まったくやり方がわからない。

念を強くして、、、無理だ。

吉村以外にも、則添・道名・藤田にもやってみた。

まったく通用しない。

腹ただしく思いながら、泣きたくもなる。

こんなに距離が近いのに、まったく届かない遠くにいるんだ。

生と死の世界の距離感がわかる。

まるでTVの中の芸能人に話しかけているのと同じ。

そして、この場所に私の言葉がわかる人は誰もいない。

霊感があると豪語していた夏美も、まったく私に気付かない。

どこが霊感だ!

そう怒ったところで、まったく無反応。

疲れきってふと窓から外を眺めた。

旧校舎の屋上に、透がいる。

いつものように遠くの街を見下ろしていた。

私がいるこの校舎には興味もないらしい。

いつものように、半透明な身体と髪が、わずかに揺れている。

もう一度優一を見たが、諦めた。

そのまま校舎を抜けて、透の元に向かった。

私の気持ちを伝えることが出来るのは、同じ幽霊である透だけかもしれない。

優一とはやはり叶わぬ恋。

透となら・・・。

あっちがダメならこっちと、まるで尻軽女だと思いながらも、誰かに寄り添いたくて仕方ない。

寂しい。

辛い。

苦しい。

その気持ちを誰かに受け止めてほしかった。

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