最初にいっときますが、ネタバレ注意!
「まだ最終回(最終巻)読んでない」って人は、回れ右で。
ってわけで、絶望先生最終巻です。
思えば、7年前の2005年GW前でしたね、第一話が掲載されたのは。通勤時に読んだこと、いまでもはっきり覚えてます。
「へ~、久米田康治、マガジンに移籍したんだ」「(1P目の風浦可符香(ふうらかふか)を見て)久米田さんの描く女の子って、結構かわいいんだよな~」なんて思いながらページをめくった瞬間――
桜の木の枝にロープぶら下げて首吊ってる糸色先生。
それも、
「カラーページ一面に」でしたからね(笑)。
電車の中で噴き出しちゃいましたよ(笑)。
まあ、それはそうと、この三十集、個人的に特筆すべきトコを挙げていきたいと思うんですが・・・まずはアナグラム。
文字の配列をシャッフルして別の意味にする言葉遊びみたいなもの(by まとい)なんですが・・・
やっぱ久米田さんの着眼点と発想はすごい! (笑)
「ぬりえがすなあなに」→「あ●すにえなりが」なんて、久米田さんしか思いつかないし考えつかない!
ってか、ニートネタの多さに笑った(笑)。
お次は、「間のもたせ方」。
倫ちゃんのいってた「間をもたせる天才」とは、そしてその直後の、その天才による「手法」とは・・・まあ、あだち充なんでしょう(笑)。こういうコマ割、たしかにありそう(笑)。
続きましては、「イン・ザ・クール」。
はい、ええ~、
千里、最後の猟奇ネタ(笑)。
千里ちゃん、最後のヤンデレ顔です(笑)。
上の話(「イン・ザ・クール」)が終わった中盤で、普段は巻末にある絶望絵画館が載ってます。この構成に、「やっぱ最終巻なんだな・・・」といった思いが生じ、ちょっと寂しくなっちゃいましたね。
まあ、ファンのイラストを掲載するコーナーなんですが、
アサクラさんって方が描く絶望少女はホントかわいい。
カフカと奈美だったんですが、ホント上手。この人は「プロ志望なのかな?」って思っちゃうくらい上手い。
それらを始めとする多数のイラストに対する久米田さんのコメントも相変わらずで、ネガティブなものばかりでしたけどね(笑)。
で、「新・陳・人」。これおもしろかったな~(笑)。
「人間の細胞は大体1年で変わる(諸説あり)から、昨年の4月の奈美ちゃんに比べて、いまの奈美ちゃんは生まれ変わった別人の奈美ちゃんだよ」(by あびる)ってことで、まあ、いつものごとく奈美かいじられるんですが(笑)・・・
千里「ご先祖・・・いや、ご先自分(せんじぶん)の供養は、きちんとしないといけない」
奈美「や、やめてよ! 死んだみたいじゃん!」
千里「死んだのよ! 昨年の奈美ちゃんは死んだのよ!」
これ、何となく「いかにも千里と奈美のやりとり」って感じがして、なんか好き(笑)。
それと、これは本誌(マガジン)で読んだときから爆笑! ――
奈美「左翼ゲリラが総理大臣になるわけないじゃん!」
千里「(中身が)入れ替わっているからよ」
あびる「根っこはちっとも変ってないと思うけど」
これはね、いかにも絶望先生らしい、エッジの効いたやりとりですよね~(笑)。「普通、小市民な奈美にいわせる→むしろこの子が口にしそうな千里による冷めた分析と解説→普段から冷めているあびるによる、やはり冷めたコメント」っていう台詞回しがお見事。
で、このエピソードは羅列ネタもおもしろかったです。
(テーマは「もう、中が入れ替わっているとしか思えない!」)
・思い出させておいて「ふりむくなアムロ」と言ってる歌詞。
・前半と後半のユウナのキャラ。
・戦前の朝日→戦後の朝日。
・いたす前といたした後の男の態度。
・産んだ後の夫に対する妻の態度。
これらはいずれも「久米田節全開!」ですよね~(笑)。
で、これに触発されて、久しぶりに、オレも絶望先生の羅列ネタをやってみました――
(テーマは「もう、中が入れ替わっているとしか思えない!」)
・1番で「♪人には、やさしくできるのだから~」いっといて、2番では「求めないで、やさしさなんか、臆病者の言い訳だから~」歌っちゃってる「贈る言葉」の歌詞。
・あぶ刑事、初期のカオルと中期以降のカオル。
・やたら毒吐いてたマッシュムラムラ(仮)→すっかり吐かなくなったマッシュムラムラ(仮)。「守りに入った」とかいうな!
・斉藤一、「これが本人である」と伝えられている写真と、「いやいや、こっちの、西南戦争出征時の警視庁抜刀隊のが本人だ」とされている写真(後者であってほしい/笑)。
・リメイク前とリメイク後のシンジくん。
・TV版とDefineのクワトロ大尉(っつーか、後者の大尉はやたらカッコいい)。
・アニメ版とDefineのレコアさん(っつーか、後者のレコアさんはやたらかわいい)。
・原作とスパロボZのシン、レイ、ルナマリア(後者はキャラ立ちまくり)。
・イケイケで超攻撃的だったり、あるいはエロかったりするB0φWY初期→やたら内省的だったり、切ない失恋ソングだったりするB0φWY後期。 >ヒムロックによる歌詞。
・陰気で暗い桑田真澄→やたら多弁になった桑田真澄。
・加持さん、スパイク・スピーゲルな山ちゃん→「おっはー!」な山ちゃん。
・綾波な林原さん→フェイ・バレンタインな林原さん。
・初期の羽美と中期以降の羽美。
び、微妙・・・(笑)
お次は、「(あと)五回の憂鬱」。
まさか、縁兄さんが出てくるとは思いませんでしたね~。両親と同じく、最後まで出ないのかと思ってたわ。
っつーか、兄さん、目つき悪すぎ(笑)。
その兄さんが、糸色先生に生徒たちへ手渡すための卒業証書を持たせることから、物語は一挙にクライマックスに進みます。このときの先生、妙に真剣な面持ちを浮かべてます。
で、「籍替え」。
時期外れの卒業式。絶望少女たち全員に、卒業証書が授与されます。
ってか、まといと霧の制服姿が、最終回近くにして新鮮です。
そして、全員、
鬼籍に入ります。
この卒業式のあと、絶望少女たちとお別れをした糸色先生は、いままで勤めていた高校をあとにし、小さな離島の小学校へと赴任します。
で、ラス前と最終回。
当初、交くんは「絶望少女たちは全員、すでにこの世にいない幽霊」「自分の叔父である望(糸色先生)は、彼女たちを成仏させるために教鞭をとっていた」と考え、ひとり衝撃を受けるのですが・・・これは「半分正解、半分誤り」でした。
真相としては、
「絶望少女たちは、イタコや巫(かんなぎ)、依代のような存在」(by 霧)
といったものでした。
じつは彼女たちは、自殺をはかろうとしたものの死にきれず、あるいは助けられてしまった、という過去の持ち主たちで、それとは逆に「生」を望んでいた者たちの魂と邂逅し・・・
死にたかった魂と生きたかった魂。出会ってはいけない二つの魂が出会ってしまった・・・
絶望少女たちに乗り移った少女たちの霊。それは成仏できない昭和の霊たちであり、このため、(作中は)平成17年改め昭和80年としていた、ということになってたりします。
で、じつはここしばらく姿の見えなかった、メインヒロインといえるカフカ(本名・赤木杏(あかぎあん))についてですが・・・
彼女は、臓器移植のドナーでした。つまりは、すでにこの世にいません。
事故で死んで、自分のあらゆる体内器官を絶望少女たち(自殺未遂により器官を失った、あるいはその前に失い、未遂の原因となった)に移植することで、彼女たちの中に生きている、ということになっています。臓器移植に伴い、ドナーの記憶の一部も受容者たちの中に移ることもあり、このため、絶望少女全員の中に、カフカの記憶も存在するということになっているようです。
そういえば、この最終話、単行本で加筆されてますよね? 男子生徒について、久藤くんのことは本誌でも描かれていたけど、対象GUY(笑)や、木野くんの友達ふたり組――芳賀くんと青山くんについては描写がなかったと思う。
ちなみに、対象GUYも芳賀&青山も、糸色先生のバックアップメンバーだったようです。4,5年前に「二代目絶望先生、三代目絶望先生」なんてタスキを渡し合うネタがありましたが、それがこの伏線となっていたようです(って、これについては後付けかな?/笑)。
また、これも加筆と思われますが、カエレも久藤くん同様、この離島出身のようです(カエデでねぇか/笑)。
そんなこんなで、「本編」のラスト。生徒である小学生による「先生は結婚せんと?」のあと、
絶望少女たちのウェディングドレス姿。
「やっぱり、卒業だけだと、成仏できないと思うんです。死後結婚もさせてあげないと」
「先生、私と・・・結婚してください! 死後結婚してください!」
いったときの千里の表情が、妙にいきいきとしてかわいかったです。上の猟奇(ヤンデレ)顔が嘘であるかのような晴れやかな表情でした(笑)。
それをきっかけに、「私も私も」とばかりに、絶望少女たちが糸色先生に結婚を迫ります。
この辺はやっぱり「萌えマンガ、ハーレムマンガのパロディ」ですよね(笑)。このことについては久米田さん本人も紙ブログで明記してますが、それはともかく、やはり先生も、萌えマンガ主人公よろしく、少女たちから逃げ出します。
そして逃げ込んだ先の教会で――
あなたは誰の中のカフカさんですか?
振り向きざま微笑を浮かべる、ウェディングドレス姿のカフカ。
と、本編は、本誌同様、フルカラーで描かれたカフカのウェディングドレス姿で終わっています。
ただ、ここからは「一つの可能性としての第30X話」。単行本のための描き下ろしです。
まあ、パラレルといっていいのでしょう。前述のとおり、それぞれカフカのあらゆる器官を移植され、同時に彼女の記憶も一部有している絶望少女たち。それゆえに、カフカを愛した先生が、彼女を愛するために、絶望少女たち全員を愛することになります。
横断歩道ですれちがう先生とカフカ。カフカが帽子を落とすと、それを拾い上げた先生が、彼女に帽子を渡そうと呼び止める。直後、カフカは・・・。それに責任を感じた先生の、彼なりのけじめ、彼なりの純愛というわけです。
そしてラスト。そんな先生を取材していた女性記者が、暴風の中、無理を押して船を出し、島をあとにしようとするも、船は座礁し、彼女の身は波によって先生たちの住む離島へと引き戻され、大けがを負ったことから、絶望少女たちの血液を提供され――そう、カフカの血や記憶を含んだそれを輸血され・・・
♪わが血がほしいか、わけてやろう。
♪明日は嫁入り、うれしいな。
――これについては、巻末の紙ブログで、久米田さん自身が「ギャグのつもりで描いたのに、想像以上に不気味なものになってしまいました」なんていってますが、たしかに、いつもの「単行本おまけマンガ」のつもりで読むと面食らいます。オレもビビリました(笑)。
ただ、久米田さんはこういう感じに、やっぱギャグ以外のジャンルも描けるんだろうね。それを実感できたのはうれしかったかな。
さて、今回のレビュー、ってか、ウチのサイトでの絶望先生レビューも、そろそろ終わりのときが近づいてきました。
巻末の紙ブログです。
これは、まあ、久米田さんによる後書きみたいなもんなんですが、貴重な話もあってね。
久米田センセ自身の言葉によると、
このオチ(終わらせ方)は、連載開始前が構想してたようだね。
この人、見栄っ張りなことはいわない人だから、多分、ホントだろうね。
それを考えると、すっげぇよな~。
長期連載にもなると、他の作品とのネタかぶりを回避するため、あるいは、(これは本人はコメントしてないけど)そのときのノリなんかで、想定していた流れから逸脱したりするんだろうけど、それでも軌道修正して(というより軌道を戻して)、当初のオチに持っていくんだからねぇ。
もちろん、「開始前から考えていた」というだけでもすごいんだけど、なによりそういった手腕に、ただただ頭が下がる思いです。やはりオレは久米田信者ですね(笑)。
最後に・・・久米田さんの新作って、どんなのになるんでしょうね?
さすがに、改蔵、絶望路線はないと思うんですよ。まあ、もはや芸風なんで、改蔵、絶望的ギャグや台詞回しはあるでしょうが(笑)。
この人はどちらかといえば鬼才であって、前述のとおり、着眼点と発想力で勝負する人なんだけど、それはストーリーものにも転用できるものだし、やはり前述のとおり計画性と軌道修正の能力にも長けてるんで、どんなジャンルでもやってけると思うんですよね。
個人的には、
「ちょっとシリアス、所々久米田ギャグありの歴史もの」
が読んでみたいかな(笑)。歴史パロディまではいかない感じね。
源平でもいいし、南北朝でもいいし、戦国でもいいし、幕末・明治でもいい。
正直いうと、新撰組ものを読みたい気もするけど・・・マガジンには「ばくだん!」があるからなぁ・・・(まあ、またマガジンで描くかはわからんけど)
ってわけで、
久米田流「坂の上の雲」とかどうですかね?
これも別の人がやってましたが、まあ、その人は途中で投げ出しちゃったんでOKでしょ(笑)。
豪気すぎてどっかズレてる信さん、電波な淳さん、ひとり常識人でツッコミ役なノボさん、ヤンデレな多美さん、カフカばりの超ポジティブ(かつ、大抵、事の黒幕)な季子さん、病気の兄を支えるためにヤバい内職までやっちゃってるお律さん・・・ダメですかね? (笑)
そんなこんなで、絶望先生もついに終わりのときを迎えました。私が書く絶望先生レビューも、おそらくはこれが最後でしょう。
この絶望先生は、最初の5,6巻はリアルタイムで買ってたんですよ。ただ、そのあとマガジン自体を読まなくなって、しばらくはこの作品からも離れてました(それまで揃えてた単行本も売っちゃった/笑)。
「復活」したのはアニメ化したころですね。何となくアニメのほうを見てたら、やっぱりおもろくってね(単行本も、また一から集めることに/笑)。
で、まあ、改蔵のほうも後追いで手出して・・・元々、南国のころも好きでしたが、それ以来、10数年ぶりに久米田ファンに(笑)。
で、この絶望先生には、いろいろ救われましたね~。現実逃避にすぎないんだけど、絶望先生で笑っちまうことで、どれだけ救われたことか・・・この作品なかったら、いまごろ精神的に病んでたかも(いや、大げさな言い方ではあるけど/笑)。
そんなわけで、この絶望先生という作品は、オレにとって特別な作品といってもいいと思います。
久米田先生、楽しい作品をホントにありがとうございました。そして、お疲れ様でした。
まあ、ご本人や関係者がこんなトコ見てるわけないけど(笑)、どうしてもいっておきたくて。
P.S.
この三十集収録の話は、全部アニメで見たい! 神谷さんや野中さん、井上さんらの演技で楽しみたい!
ブルーレイ1枚で、特典とかいらんので、どうですかね? (笑)
絶対、売れますって(笑)。
終盤からの怒涛の伏線回収には本当に驚かされましたよね。
最終話の男子生徒の正体とカエレの出身地は、単行本の書き下ろしで良かったと思います。
まぁおそらくは後付けなんでしょうけれど、自然にすんなりと納得してしまうんですよね。
これも久米田先生の凄さと言うべきでしょう。
30X話は本当にぞっとしましたよね。
あれは「一つの可能性としての」話であるので、IF的な後日談で間違いないでしょう。
絶望先生風に言えば「禁断の五コマ目」とでも言いましょうか。
どことなく、江戸川乱歩や夢野久作、現代の作家さんで言うなら京極夏彦が書きそうな話だと感じました。
僕も絶望先生がなかったら、鬱病にかかっていたかもしれないので、本当にこの作品は人生の救いとなりました。
久米田先生、素晴らしい作品をありがとうございました!
そして、クラウドさんのおっしゃる通り、最終巻の内容を是非アニメ化してもらいたいですよね。
しかし、現在のシャフトさんは昔と違って物語シリーズやまどか☆マギカの劇場版でそれどころじゃないからなぁ…。
この二作品の他にもアニメ企画が持ち込まれているようですし、絶望先生4期の道は遠い…。
それが無理なら、「複数の作家による別の可能性としての話」として、こち亀みたいなトリビュートノベル企画を立ちあげてほしいです。
特に成田良悟先生や山本弘先生は絶望先生のファンであるので、このお二方ならノリノリで書いてくれそうですし、今をときめく作家である西尾維新先生ならば、ジョジョやデスノートみたいに、作品の補完的な話を書いてくれそうですしね。
アニメをはじめとした他メディアでの絶望先生の復活は僕も祈っています。
まあ、後付けもあったんでしょうけどね(笑)。でも、多くは連載前や初期から考えて貼っていた伏線なわけなんで、やっぱ久米田さんは大したもんです。
30X話は、まさに「後付けパラレル」でしょうね。こういう後日譚もあるかもよ、って感じの。
たしかに、昔の、エロかったころの土曜ワイド劇場にありそう(笑)。>江戸川乱歩等
まあ、私の「精神的に病んでたかも」はネタですが(笑)、それでも、嫌なことあったときなんか、絶望先生のギャグでプッと笑ってしまい、それにより一時といえど忘れることができましたからね。たしかに感謝しています。
アニメ業界のことはよくわかりませんが、シャフトってそんなに大きくない会社のようですからね。いま現在、ほかに大作を抱えてるのなら、難しいかもしれませんね。
でも、見たい(笑)。
ノベライズはいアイデアですね。
鬱エンドは西尾維新、ハッピーエンドは萌え系のラノべ作家といった感じに、小説のほうもマルチエンドにしてね。
まあ、改蔵みたいに、1度か2度は復活ありそうですけどね(笑)。今度はジャンプとマガジンでスワップ企画なんて(もういいって?/笑)。