翁の徒然なる日々

日々是自遊

浜ちゃんは二流それとも三流社員?

2022-10-30 11:30:00 | 日々の徒然
10月15日(土曜日)からBSテレ東で『釣りバカ日誌』が再再々放送されています。昨日は3回目。

過去何度も放送されているので、ストーリーはほぼ頭に入っていますが、西田敏行さん演じる主人公浜ちゃんこと浜崎伝助氏と三国連太郎さん演じるスーさんこと鈴木一之助氏の釣りを巡る様々なドタバタが面白くて昔から見ています。

浜ちゃんは鈴木建設の一介の平社員ですが、ある意味自由人、頭の中は釣りのことで何時もいっぱい。

現役時代、この映画を見て、そんな彼をちょっぴり羨ましく感じました。地方へ飛ばされても、釣りができる所であれば、国内、例えば、北海道釧路市、長野県松本市など、そして世界中、どこでもOK、むしろ大歓迎。こんな人絶対いませんからね。

でも、職場の潤滑油としての存在感は誰にも負けない、時々大きな契約を取ってくるので、全くのダメ社員とは言い難い存在です。

ところで浜ちゃんは何流社員なのでしょうか?

もちろん一流社員ではありませんよね。
   
スーさんから「君、社長になろうと思ったことない?」と聞かれ、「それはない」と即答する浜ちゃん。妻のみち子さんも早く帰ってくる平社員の方がいいと。

それでは、ハマちゃんは一体何流社員なのでしょうか?

どうでも良いことですか、考えてみましょう。

以前読んだ仏教学者ひろさちやさんの著書『阿呆のすすめ』の中にこんな記述がありました。 

中国の思想家である莊子の著作『荘子』を引用し、
世の中の人は、大体において「役に立つ」ことばかり考えいます。いや、自分でそう考えるのではなく、知らず知らずのうちにそう考えるように仕組まれているのです。世の中の役に立つ人間にならないといけないと、幼時においては親からそう教えられ、のちには小学校、中学校、高校、大学でそう教えられ、就職してからは会社でそう教えられてきました。そのように教える仕組みが文明であり、莊子の言う人為です。その人為を捨てて無為自然に帰ることを教えた書が『莊子』です。
とし、さらに
莊子は役に立たないことのメリットを力説しています。樹木であろうと人間であろうと、役に立つものは酷使され、扱き使われ、すぐにぽいと捨てられてしまいます。だから、役に立つ人間になるな!そう莊子は教えてくれているのです。

と言っています。なかなか含蓄のある言葉ですね。

さて、ひろ さちやさんが仰っしゃる〇〇流の人とは

  1. 一流の人…素晴らしい人、天才とも言うべき人。稀にしかいない。
  2. 二流の人…政治家、高級官僚、マスコミで活躍している人々、芸能人等など。でも所詮は「世間の奴隷」、皆んな庶民の支持を得てその地位を保っている。人気が無くなれば、政治家も芸能人、タレントもすぐにただの人になる。
  3. 三流の人…俗物根性の持ち主。本当は、二流の人はこの三流の人の支持の上でその地位を保っている「奴隷」にすぎないが、三流の人は二流の人に誑(たぶら)かされて、二流の人を尊敬し、自分もまた「世間の奴隷」になるべきだと思っている。
  4. 四流の人…「莊子」おすすめの人。お釈迦様もキリストも称賛している人。
  5. 五流の人…犯罪者などまったく世の中の役に立たない人。でも、人間は世の中のために存在しているわけではなく、人間のために世の中があるので、その人の存在価値が全て否定されるわけではない。
続けて、

『莊子』が言っているのは、四流の人になれと言うことで、世の中の役に立つ人間とは所詮は世間の奴隷であり、世間の奴隷になれば世間に振り回されてくたくたになってしまいます。『莊子』は二流・三流の人になってはいけないと教えてくれています。
『莊子』「内篇・応帝王編」
名の尸(かたしろ)と為(な)ること無(な)かれ。謀(はか)りごとの府(くら)と為ること無かれ。事(しごと)の任(にな)いてと為ること無かれ。知の主(あるじ)と為ること無かれ。
をひろさん流に自由訳し、
世間からちやほやされるな。策謀をめぐらすな。仕事の責任者になるな。知恵をひけらかすな。大宇宙と一体となり、無の世界に遊び、天から与えられたものを享受して、それ以上をもとめるな。
ひたすら虚心であれ。聖人の心の働きは鏡と同じ。去るものは去るにまかせ、来るものは来るにまかせ、応じるが、止めはしない。
対応自在で、わが身を傷つけぬ。

と書いています。

そして、

世間や会社でちやほやされているうちに、つい自分を二流の人と錯覚しないこと、まぁせいぜい三流がいいとこ。そうであればもうワン・ランク下げて、四流を目指しましょう。
そう自己認識をして、仕事にあまり責任を持たないようにする。仕事をスピーディにしないこと。職場の仲間を助けようとしないこと。
などなど、徐々に自分を四流の人=役に立たない人間に変えていくと良いでしょう。ただし、急に変えると会社をクビになる虞れがあるので徐々に徐々に少しづづ。
 
また、仕事に100%の力を注いではいけない」とも書いています。なぜならそれぞれに家庭があるから、ハマちゃんには、みち子さんという愛妻が待っている家庭があるのです。 

結局

むしろ会社のほうから「あいつはあまり戦力にならない」と言われるぐらいがちょうどいい。まったくの戦力外と言われるとクビになりますので、そうならないように四流の人になりましょう、

とひろさんはまとめています。

如何がでしたか? 

この本を読んだのはまだ現役の頃、全てに納得がいくわけではありませんが、ところどころそうだな、と思う箇所がありました。

以來、肩の力を抜いてほぼ四流社員のまま(笑)、定年になりました。
もちろんあまり戦力にならなかったので、出向は免れましたし、子会社への再就職もありませんでした。

定年後は、好きなようにアルバイトもできましたし、何より念願の大学で通信制ですが、文化財学(考古学)を学び、大和の国、奈良にも数回行くことができました。

これも四流でいたからこそと今懐かしく思い出しています。

なお、断っておきますが、ハマちゃんこと浜崎伝助氏は全てが四流社員ではありません。釣りはもちろん、人を喜ばせる、組織の潤滑油として、むしろ一流の人です。翁は、そう思っています。

あともう一つ、この拙文を読んで「よし俺も」と四流になって、仮にクビになっても翁は責任をとれませんので、その点はよろしくお願いいたします。

終わり