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英語と書評 de 海馬之玄関

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気楽に英語 de パラグラフ(09): キャビアから見えてくる世界と日本

2006年03月10日 14時10分08秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)

●Caviar poachers find Japan glad to look other way

The caviar industry is shrinking in Iran and Russia due to rampant poaching, smuggling and a lack of resources management. Japan is one of the biggest importers of the delicacy, but it lags behind Europe and North America in shutting out illegally obtained products.

This has sparked calls among environmental organizations for strong measures, including a labeling system to verify that the caviar was obtained legally. ・・・

The Secretariat of the Convention on International Trade in Endangered Species of Fauna and Flora said the legal caviar trade amounts to about 12 billion yen annually, but the illegal trade is five times larger. To prevent illegal fishing and smuggling, the CITES secretariat decided in January 2004 to require exporters and traders to label all products to show their origin.・・・

According to Traffic East Asia-Japan, a private-sector organization monitoring wildlife trade, Japanese imports totaled about 16 tons of caviar in 2002. It ranked fourth after the United States, Germany and France. On the Japanese market, 18 grams of caviar can fetch as much as 30,000 yen.・・・

The European Union has started to require exporters and traders to put on labels. But Japan has so far failed to take strong measures.

Japan has been cool about labeling. An official at the Ministry of Economy, Trade and Industry said there is no precedent for such action.・・・
(By TETSUJI IDA:Kyodo, The Japan Times, Mar. 7, 2006:221 words)



■Vocabulary&Idiom
caviarキャビア,  poacher 密漁者/密猟者
look (the) other way 見て見ぬふりをする(theの省略)
shrink 縮小する,  rampant 猛威をふるう
smuggling 密輸,  delicacy 珍味/美味
lag ぐずぐずする, call 要望/要請/要求
measures 対策の手段, verify 証明する 
secretariat 事務局(the Minister’s secretariat大臣官房)
endangered 絶滅の危機にある, wildlife 野生生物
fauna and flora 動物と植物, fetch 値段がつく
so far 今までのところ, precedent 前例/慣例
the Ministry of Economy, Trade and Industry 経済産業省


■Comment
本文テクスト第2パラグラフに名詞と動詞の同形の好例があります。
call:[動詞]呼ぶ [名詞]要求/要請
measure:[動詞]測る [名詞]手段/法案


本文テクスト第3パラグラフの” but the illegal trade is five times larger.”はその後ろにthan the legal tradeを補ってください。比較の対象が自明の場合にはthan+αはほとんど省略されます。

また、比較表現としては、本文テクスト第4パラグラフの” It ranked fourth after the United States, Germany and France.”つまり、「the -th after ・・・」の形で「・・・に次いで第何番目の」もビジネス文書では頻出です。尚、「第何番目」という序数が補語になる場合には定冠詞はつきません(∴このfourthにはtheが付いていない)。


■試訳
●見て見ぬふりを通したい日本、キャビア密漁者の目にはそう映る
キャビア産業はイランでもロシアでも衰微し続けている。密猟・密輸が猖獗を極めていることと計画的な資源管理の欠如がその原因だ。日本はこの珍味の世界最大の輸入国の一つではあるが、違法に収穫されたキャビアを締め出すことでは欧州や北米諸国に比べ遥かに遅れている。



環境諸団体はこのような状況を鑑みて強力な対策を要請している。その対策には、キャビアが合法的に収穫されたことを証明するラベル表示制度も含まれる。・・・

絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約事務局(★KABU註:CITESは「サイテス」と呼ばれているが、日本では「ワシントン条約」として知られている)は、合法的に取引されるキャビアは年間に120億円なのに対して、違法取引はその5倍には達すると語っている。よって、密猟と密輸を防止するためワシントン条約事務局は、輸出業者および貿易業者に対してすべての製品にその原産地を表示するラベルを貼ることを要求することを2004年1月決定した。・・・

野生生物の貿易を監視している民間の財団法人トラフィックイーストアジアジャパンによれば、2002年における日本のキャビア総輸入量は16トンに達した。それは、アメリカ・ドイツ、そして、フランスに次いで世界で4番目に位置づけられる規模である。日本の市場では、18グラムのキャビアに30,000円の値がつくこともありうるのだ。・・・



EU(ヨーロッパ連合)は輸出業者と貿易業者に対してラベルを貼るよう義務づけ始めた。それに比べ、今までのところ日本は強い対策を取ろうとはしていない。

日本政府のラベル制度に関する態度は冷淡でさえある。そのような施策には前例がないと経済産業省のある官僚は述べた。・・・



■感想&感慨
本文テクストにも出てきたトラフィック イーストアジア ジャパンのサイトには、ワシントン条約についてこう書かれてあります。

人間は、ずっと昔から動物や植物を食べ、皮や骨で道具などを作り、木や草で家を建ててきました。人間も含めたすべての動物は、他の生き物の命をもらわなければ生きることができません。

しかし、このままでは多くの野生生物が取り尽くされてしまう危険があります。そこで、野生の動植物を利用する場合にルールを設けることが必要になってきました。それも、それぞれの国内のルールと、世界共通のルールの両方が必要です。なぜなら多くの野生動植物が、いろいろな目的のために輸出されたり輸入されたりしているからです。(以上、引用終了)


私はこの主張に納得することができません。もちろん、ある種の鯨などを除いて、「このままでは多くの野生生物が取り尽くされてしまう危険があります」という現状認識は多くの野生動物について正しいでしょう。しかし、なぜ「野生生物が取り尽くされてしまう」ことを防がねばならないのか? その理由はこの主張のどこにも書かれていない(尚、捕鯨を中心軸にこの問題を少し考えた下記拙稿を参照いただければ嬉しいです;また、捕鯨問題に関しては「Whaling Library」のサイトを是非ご訪問ください)。

鯨と日本の再生
Whaling Libraryのサイト

絶滅危惧種はなぜ保護されなければならないのか? 私はこのテーマを考えるとき、実は、この根本の点が実はそうハッキリしていないのではないか、そう何時も感じてきました。例えばある保護論者(environmentalist)の友人はこう言います。

種が絶滅するような環境は生物種としての人類にとっても快適なはずはない。だから、種を絶滅から救うような環境と人間との共生を具現するための指標として絶滅種を保護しなければならない。それに、動物資源の乱獲は、結局長中期的に見れば、その資源をもとに生計を立てている人々の生活をも危うくするでしょう。

中々、崇高なご意見ですがね。そんなん、今の生活を維持するのに精一杯の密猟者/密漁者に対して「密漁で乱獲していたら3年後困るよ」といってもリアリティーはないですよ。また、資本の論理で動いている国際貿易のプレーヤーにとってはカスピ海のキャビアがなくなれば、他の商材供給先を探せばよく;地球上からすべてのキャビアがなくなれば、その時は別のdelicacy商材をマーケットに提供するだけの話でしょう。

ならば、「絶滅危惧種を救え」という主張は、西欧的な独善的なヒューマニズム(?)であるか、資本の論理を奉ずる人々に対しては(ワシントン条約を含め無力とは言いませんが)所詮位相の異なる主張にすぎないのではないでしょうか。そう、environmentalistの主張は縁なき衆生には見れども見えず聞けども聞こえずなのだと思います。

何が言いたいのか? それは、「絶滅危惧種はなぜ保護されなければならないのか」の思想的な根拠をきちんと構築しない限り、「絶滅危惧種を守れ!」という運動などは先進国の都会のワンルームマンションでしか通用しない論理にすぎず、そのような論理に導かれる環境保護運動は、資本主義と産業主義の総体としてのグローバルな拡大の中では西欧先進国の<恥部を隠すイチジクの葉>をそう越える運動にはならないのではないでしょうか。これが私の主張の要点です。



蓋し、人類は、生産力の拡大というプロメテウスの火を手に入れ、資本主義的な対他関係というパンドラの箱を開け、そして、脱イデオロギーという智恵の実を食してしまいました。自然との伝統的な関係のあり方(=対自然関係)はここ百年で大きく変わったし、この対自然関係を与件とする他者との関係のあり方(=対他関係)も劇的に変化した。

人間は生産の技によって北米の荒野を開墾し、四隻の黒船は利潤を求めて極東の島国にまで至ったではないですか。医学の進歩によって多くの貴重な人命が救われ、先進資本主義国は現在、<生>に満ちています。東京やニューヨークに行ってみてください。そこには<死>の断片すら見つけられないのではないですか。

しかし、逆に言えば、地球全体を覆い地球全体をそれらの鎖でがんじがらめに縛り上げるような、そんな生産力の拡大と資本主義的な対他関係は、本来死んでいるべき人を生かし本来その山の頂にあって眼下の村人の生活を見守るはずだった大木を異国のプレハブ住宅の材料にしてしまったのではないでしょうか。

生に溢れんばかりのニューヨークで<9・11>が起こり、旧ユーゴやイラクを始め現在夥しい人命が世界中で失われているのは<生>の過剰に対する冥界の王ハーデスの怒りなのかもしれません。ハーデスはその巨富の故にプルートンとも呼ばれる。ですから、この資本主義と<死>との連結は象徴的であるとさえ思います。

再度、私は何を言いたいのか? それは、現在は、新しい対自然と対他の関係を構築すべき時代。自然だけでなく民族や国家と人間との間に新しい共生のルールを再構築しなければならない時代ではなかろうかということです。そして、もし、社会的な問題が本当に解決されるというのはそれが思想的にも解決されることであり、逆に、真の思想は現実の政治的・社会的な課題を解決する力を持たなければならないという見解が正しいとするならば、絶滅危惧種保護のイシューもまたその根本から考え直さなければならない問題の一つだと思うのです。








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