
捕鯨反対論は文化帝国主義からする論者の願望の傲慢な表明にすぎない。この経緯は、1986年に商業捕鯨の停止(モラトリアム)が国際捕鯨委員会(IWC)で決定されてから2年後に上梓された、雁屋哲・花吹アキラ『美味しんぼ』(第13巻)所収の「激闘鯨合戦」に取り上げられています。
今年度の日本の調査捕鯨船団の出航にともない、日本を批判する海外報道は、彼等捕鯨反対派の「文化帝国主義」(Cultural Imperialism)が『美味しんぼ』の当該作品が上梓されてから10年経つ今も何も変わっていないことを示しているようです。ここでとりあげたNew York Timesの記事も残念ながらその例外ではありませんでした。
畢竟、彼等が「反捕鯨論は文化帝国主義にすぎない」という批判を回避したいのなら、そうするしかないだろう「鯨の総数や鯨の個体群毎の個体数から見て商業捕鯨再開はまだまだ時期尚早」という主張と根拠となるデータはこの記事のどこにも見当たらず、ただ、ザトウクジラは the World Conservation Union(統計学-科学的根拠の提示を拒否するので有名な、国際自然保護連合)によれば絶滅危惧種であると書いているだけなのですから。国際自然保護連合やアメリカ政府の絶滅危惧種リストに掲載されていることなど、現実の鯨の個体数やその増減状況に関しては何の意味もないことなのです。
畢竟、このNYTの記事は結局、ザトウクジラがいかに神秘的な生態を持っているかを文字通り謳い上げるものにすぎず、而して、論理的にはなんの脈絡もなく日本の調査捕鯨を批判している。これを「文化帝国主義」的と言わずして他の何をそう言えばよいのでしょうか。私はそう思いました。出典は、”Japan Hunts the Humpback. Now Comes the Backlash.”November 25, 2007(日本ザトウクジラも捕鯨の対象に 日本の反撃が始まった)です。著作権に配慮して、引用紹介は全体の約半分にとどめました。

The ritual has been the same for nearly 20 years. Japan, while adhering to a 1986 moratorium on commercial whaling, has sent sturdy ships to Antarctic waters and, more recently, parts of the Pacific Ocean to kill hundreds of whales in the name of scientific research.
Vessels from the groups Sea Shepherd and Greenpeace tail and harass the whaling fleet, while strong protests are lodged by environmental groups, many marine biologists, and officials from the United States, Australia and other countries. But this year those complaints have intensified, largely because Japan has added a new animal to its planned harvest of more than 1,400 whales from seven species — the humpback, Megaptera novaeangliae.
Japan hopes to kill 50 of these endangered whales, which have long held a place in the public’s imagination with their other-worldly songs, habit of rocketing their 30-plus tons out of the sea and migrations of up to 10,000 miles a year. Melville once described the humpback as “the most gamesome and lighthearted of all the whales.”
Whaling nearly wiped it out, reducing the humpback’s numbers to perhaps a 1,000 by the mid-1960s. Today, estimates put the total at roughly 30,000. They are considered at high risk of extinction by the World Conservation Union.・・・
Once a top target of whalers because they swim close to shore, the humpback is now the centerpiece of another enterprise, whale watching, which by some measures is a billion-dollar-a-year business, making it larger in inflation-adjusted dollars than commercial whaling was even at its peak.
There is some thought among foes of whaling that Japan picked this marquee species intentionally to test the resolve of anti-whaling nations and groups.・・・The director general of Japan’s Institute for Cetacean Research, Minoru Morimoto, has defended the program, saying, “Japan’s research is a long-term scientific program that is obtaining biological and ecosystem information required for proper management.”・・・
The Japan Whaling Association, a private group representing the whaling operations, has described complaints as cultural imperialism on its Web site, whaling.jp:
“Asking Japan to abandon this part of its culture,” the association says, “would compare to Australians being asked to stop eating meat pies, Americans being asked to stop eating hamburgers and the English being asked to go without fish and chips.”

儀式は20年近くに渡って十年一日の如く続いてきた。1986年の商業捕鯨の一時停止を遵守し続ける一方で、数百頭の鯨を捕殺すべく日本は科学的調査の名の下に調査船団を南極水域、そして極最近では太平洋の幾つかの水域に派遣し続けてきたのである。
シーシェパードとグリンピースが送り出す船舶が日本の捕鯨船団を追尾して捕鯨を妨害するのだけれども、それは、環境団体や多くの海洋生物学者、そして、アメリカやオーストラリアその他の各国政府高官が強烈な捕鯨反対の抗議を表明する中でのことなのだ。しかし、今年の抗議は例年になく激烈である。なぜならば、日本が、7つの鯨種に属する1400頭以上の捕鯨対象に新たな種類を加えたから。すなわち、ザトウクジラ(学名:Megaptera novaeangliae)である。
日本はこの絶滅が危惧されている鯨を50頭捕殺するつもりなのだ。而して、ザトウクジラと言えば、この世の物とは思えない歌を歌うことと優に30トンもあろうかという身体を海中から飛び上がらせる習慣、そして、年に1万マイルも移動することで長らく一般に知られている。実際、【『白鯨』を書いた作家の】メルヴィルはかってザトウクジラを「あらゆる鯨の中で最も陽気で快活」と記している。
捕鯨はザトウクジラを一度絶滅の危機に追い込んだ。すなわち、その個体数は1960年代半ばには1000頭前後にまで落ち込んだと考えられている。今日では、その総数は概略3万頭と見積もられているけれども、国際自然保護連合によればザトウクジラは絶滅の危機にあるのだ。(中略)
沿岸近辺を遊泳するがゆえに、かって、捕鯨の一番の獲物とされたザトウクジラは、現在では他の産業の目玉商品になっている。すなわち、ホエールウォッチング。幾つかのサービスを組み合わせることでホエールウォッチングは年間10億ドル規模のビジネスになった。而して、インフレ調整後のドル換算でも、ホエールウォッチングは絶頂期の商業捕鯨を上回る産業規模に成長しているのだ【ならば、捕鯨とホエールウォッチングを併用すればよいだけのことであり、他方、食料安保と食文化の維持という捕鯨の目的からは、それがどうした、である】。
捕鯨反対論者の中では、この主役級の鯨を日本があえて【捕鯨対象に】入れたについては、反捕鯨国や捕鯨反対グループの決意の固さを試す狙いがあったのではないかという憶測が囁かれている。(中略)日本鯨類研究所の森本稔理事長はこの見方にこう反論する。「日本の調査は長期的視野に立った科学的調査プログラムであり、それは、適切な【食料としての鯨資源】管理のために必要な生物学的と生態学的な情報を収集しているものなのです」、と。(中略)
日本捕鯨協会、捕鯨活動を代表する民間団体の日本捕鯨協会は、そのウェブサイト(http://www.whaling.jp/)において、捕鯨反対論を文化帝国主義であると書いている。すなわち、「日本にその文化の一部を捨てよと言うことは、オーストラリア人にミートパイを、アメリカ人にハンバーガーを、そして、英国人にフィッシュ・アンド・チプスを食べるのを止めよと言うに等しい」、と。そう日本捕鯨協会は述べているのだ。
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