英語と書評 de 海馬之玄関

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懐かしい英語教材(9)『GRE :Big Book』

2005年08月03日 17時53分47秒 | 英語教材の話題

◆GRE Practicing to Take the General Test:Big Book
 (Educational Testing Service)(1995年10月) 

<絶版・ネットで古書版は入手可能?> 



★念のため
この記事を「GREの対策に何か役立つことが書いてあるかもしれない」と思って読み始められた方に老婆心ながら申し上げておきます。この記事を始めこのブログのほとんどの記事は、GRE対策やGMAT対策には全く役にたちません。よって、そのような方は「留学予備校のサイト」やETS(GREを制作・実施しているニュージャージ州プリンストンにあるアメリカの公益法人)のサイトを訪問されることをおすすめいたします。特に、2006年度にはGREのテスト形式が大はばに変更されることになっていますのでETSのサイトは要チェックだと思います。GRE対策もエッセーや推薦文の作成のためにも"Time is money."が肝要ですし、時間がないのなら「時間は金で買う」べきでしょうから。では頑張ってください。

本書『GRE Practicing to Take the General Test:Big Book』はGREのGeneral Test(★)の受験参考書です。受験参考書というより過去に実施された実際のGRE・Generalテスト27回分を収録した<オフィシャルガイド=過去問題集>と呼ぶべきでしょうか。そして、愛称「Big Book」の由来は、収録問題数・5000問、総ページ数・約1100頁に迫るそのボリュームです。そう、本書はGRE版の『赤本』、GREの『巨大赤本』なのです。

★註:GRE
GRE:Graduate Record Examinations は、米国の(ビジネススクールやロースクール、メディカルスクールなどのプロフェッショナルスクールを除く)一般の大学院に出願するほとんどの入学志望者に要求される適性テストであり、そのテスト内容は、純粋の「一般適性テスト」と大学院の専攻に対応した「科目適性テスト」に分かれ、前者の一般適性テスト(=General Test)は、更に国語(=英語=Verbal)・算数(=Quantitative)・論理的思考のセクションに分かれています。


本書は1995年の出版から絶版になる2003年までの8年間、世界中のGRE受験者とGRE対策講座を教える講師の双方にとってバイブル的な存在でした。実際、2005年8月3日現在でも、例えば Amazon ではユーズド価格18,500円から入手可能ということです:定価2,969円(価格はいずれも税込み)。マーケットに出回る数量に限りがあるとはいえ定価の6.23倍で売れる書籍がなぜ絶版になるのか? 逆に言えば、出版側が絶版にした本をなぜに二萬円近くも出して購入したいという顧客が世の中に存在するのか、しかも、たかだか受験参考書なのに? ここに1995年の出版に際してマーケットが本書を熱烈に歓迎した理由があると思います。

これは「懐かしい英語教材(7)Cliffs TOEFL Preparation Guide」でも申し上げたことですが、GREやGMAT、TOEFLやTOEICを制作・実施しているETSはよくそれらのテスト形式を変えます。GRE・General Testに関しても、ここ10年あまり紙ベースでの試験(PBT)からコンピューターで実施する試験(CBT)への移行が進められる他、2002年10月実施のPBTから形式が変わりました:新形式ではそれまでの論理的思考(=Analytical)の問題に代わって小論文作成(=Analytical Writing)が課されるようになりました。GRE自体の変更に伴ってか、本書は絶版になり、過去問を本試験7回分収録した本書の現在の<後継機種>:『GRE:Practicing to Take the General Test,10th Edition』がETSから出版されています。

さて、その<後継機種>も出版されているのに、なぜ『Big Book』の used 版に18,500円以上の値がつくのでしょうか;しかも、<後継機種>は税込2,079円で、かつ、新しいGREのテスト形式・Analytical Writing の解答例と採点法はもちろん、『Big Book』には欠けていた、テストの構成についての説明、正解を導く模範的な手順、英語と算数(VerbalとQuantitative) の問題の解説、算数の知識の整理、受験対策のTips もこの『GRE:Practicing to Take the General Test,10th Edition』には収録されているというのに『Big Book』を手に入れたいという方がなぜ今も世界中に存在しているのでしょうか? その理由はシンプルである。それは、<後継機種>には7回分しか過去問が収録されていないのに対して『Big Book』には27回分が収められているからだ。と、私はそう考えています。

量は質に転化する。要は、『Big Book』は27回分のGRE・General Testが収録されている『巨大赤本』にすぎない。しかし、この膨大な量によって『Big Book』は、①本書を解くだけで自動的に自分の弱点が補強されGREのスコアが必ず向上する優れものの教材になり、②英語が母語ではない読者にとっては、更に、アメリカ人の思考パターンが体得できる一生ものの教材になったのだと私は思っています。

TOEIC730点の英語力の方を想定した場合(★)、GRE・General Test1回分の教材を学習するのには最低4時間は必要でしょうから、本試験27回分のボリュームの本書を学習するためには100時間強(2回通りやるとすれば210時間余り)が必須になります:毎日2時間学習してもこれをなし遂げるには50日から100日かかる! しかし、1回分4時間とかの付け焼刃ではなくて、しっかり6時間かける;1~2回通りなどとケチなことは言わず、がっちり3回通り『Big Book』を愚直に学習するとしても(要は、トータルで500時間近く本書に取り組むとしても)、本書『Big Book』は充分それに見合った成果が確実に得られる、ある意味、実にコストパフォーマンスのよい教材と呼べるのかもしれません。成果が望めない教材にタックルする時間は5時間でも無駄でしょうが、予備校の早稲田塾のキャッチコピーではありませんが「一生ものの実力」が確実につく教材に投入する500時間は、これまた予備校の城南予備校のキャッチではありませんが、学習者が「本気なら」fruitfulだろうからです。

★註:GRE対策を始めるために必要な英語力
GRE対策は、TOEICで言えば730点(TOEFL・PBT換算で550点、TOEFL・CBT換算では213点)程度の英語力がなければやってもほとんど無意味でしょう。「無意味」という言葉は暴言としても(少なくとも)、TOEICのリーディングセクションで350点を超える読解力がなければ効率的ではない。今までGRE対策講座で1,000人以上の方々を直接指導してきた経験から私はそう思っています。これまた理由は簡単。TOEICやTOEFLとは異なりGREは英語の母語話者、しかも、大学学部卒か卒業予定の受験者を対象としたテストだからです。英語(Verbal)セクションの問題が英語的に難しいだけでなく、算数(Quantitative) や論理的思考(Analytical→Analytical Writing)の問題をクリアするために必要とされる英語力:算数や論理的思考で出題される問題のそのまた出題の意味を理解すること自体にかなりの英語力が必要なのです。


◆『Big Book』は天然スパイラルメソッド教材:
本書『GRE Practicing to Take the General Test:Big Book』は、収録問題を解くだけで自動的に自分の弱点が補強されGREのスコアが必ず向上する優れものの教材である。本書の前身『Practicing to Take the GRE General Test』の時代から過去問を収録したGREのオフィシャルガイドでは、テスト問題一問一問に実際のテストでの受験者の正答率が表記されています。よって、『Big Book』にタックルする中で問題の一般的な難易度と同時に、学習者は嫌でも自分自身に特有の弱点を把握することになる。「難易度が高くはないらしいのに、いつもこのタイプの問題にひっかかるんだよね」ということが、27回分もの問題にタックルしているとわかってくるということです。

もちろん、弱点の把握のためだけなら27回分もの問題は多すぎるでしょう。そう確たる根拠はありませんが、『Big Book』の<後継機種>『GRE:Practicing to Take the General Test,10th Edition』が7回分の本試験問題を収録しているのを見ても、自分の弱点を把握するためには、大体それくらいで充分かなと私も思います。けれども、弱点を知ることと弱点を克服できることはまったく別ものです。野球のバッティングで喩えれば、「自分が内角高目のストレートが弱い」ということを自覚しているからといって、その球種が次に来た時に確実に/3割以上の確率で/他の球種に対すると同じ確率で撃ち返せるとは限らないでしょう。そして、GRE対策において弱点を克服するためには(優秀な指導者が周りにおられるのでない限り)、本試験27回分のボリュームは心強くはあっても必ずしも無駄ではないと私は考えています。正に、『Big Book』はETSがはからずも作り上げたスパイラルメソッドの教材なのかもしれません。

スパイラルメソッドとは、同じ論点が多様な問題に加工されつつ(その装いをを変えて)繰り返し繰り返し出題される教材です;または、その教材を用いた教授法のことです。スパイラルメソッドを使うことで学習者は、一度学習した内容にあたかも「スパイラル=らせん状」に何度何度も遭遇することができます。スパイラルメソッドは、初級レヴェルの外国語やPCスキルのような「知識を運用するスキルを学ぶ」領域では一般的に優れたメソッドとされていますが、そのメリットを『Big Book』にも期待してよいと思います。


◆『Big Book』は一生ものの実力を養成する教材:
私は、1995年から足掛け5年間、本書『GRE Practicing to Take the General Test:Big Book』を教材に使ったGRE対策講座で教えていました(QuantitativeとAnalyticalの講師:Verbal部分の日本語解説執筆)。その経験を通して、『Big Book』の最大の利点と私が思ったのは、本書が(特に、NPOやNGOの活動を含むインターナショナルビジネスに今後従事される方にとっては、)異文化コミュニケーションのスキルアップが期待できる教材であるということ:アメリカ人の思考パターンが体得できる教材なのではないかということでした。

その経緯はQuantitativeとAnalyticalの部分に顕著です。「ああ、アメリカ人も自分が今運用している論理と同じ論理を使って考えているんだ」という体験は地味ですが強烈です。しかも、本試験27回分の問題の中でこの<同じ論理を自分と違う言語で運用しているという感覚>が自分の内面に定着していく。その自分の内面に定着できた感覚は、アメリカ人相手に交渉したり討議する上での確かな武器になります(★)。

これに対して、「そりゃ、数学の公式や論理学の図式なんて英語で書かれようがドイツ語で書かれようが中国語で書かれていようが、日本語で書かれたものと同じ意味に決まっているじゃないか」と思われる方もおられるかもしれない。違うのです。完成された作品が<論理>という同じ形式で表現されていることを理解することと、作品が完成されるプロセスにおいて異なる言語が同じ<論理>を運用していることを体得することは違うのです。そう私は考えています。よって、もし5,000円くらいで入手できるのならGRE対策本としてもそうですが異文化コミュニケーションのスキル開発教材としても『Big Book』はお薦めではないでしょうか。


★註:GREのQuantitativeとAnalyticalの問題例
Quantitativeの出題レヴェルは、日本の中学入試以下のものが三分の2:高校入試程度が残りの三分の2:それ以上の水準のもの、または、日本の算数・数学に含まれないような問題が残りの九分の1です。Analyticalは現在のGREにはありません(!)。これは論理的に考える頭の体操です♪ QuantitativeとAnalyticalも楽しいですよ。尚、ETSの著作権を侵害しないよう下記のサンプルには若干手を入れています。

Sample1:
In the repeating decimal 0.0157901579・・・,
the 34th digit to the right of the decimal point is
(A)0 (B)1 (C)5 (D)7 (E)9

Sample2:
If p is an integer divisible by 6 but not by 4,
Then which of the following CANNOT be an integer?
(A)p/2 (B)p/3 (C)p/6 (D)p/10 (E)p/12

Sample3:
The manager of a computer store is planning a show window
display of five products. Three are to be hardware items
selected from K, L, M, N, and O, and two are to be software
manuals selected from R, S, T, and U. The display items are
to be selected according to the following conditions:

If K is displayed, U must be displayed.
M cannot be displayed unless both L and R are
Also displayed.
If N is displayed, O must be displayed, and if O
is displayed, N must be displayed.
If S is displayed, neither T nor U can be displayed.

Which of the following is an acceptable display?
(A) K, L, M, R, U
(B) K, M, N, O, R
(C) L, M, O, R, S
(D) M, N, O,T, U
(E) N, O, R, S, T


Answer Key & Percentages of Examinees
answering each question correctly:
Sample1: D – 87% Sample2: E - 22% Sample3: A - 92%



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