
●Farmers are buttonholed as carnation wars loom
They have clashed over history books, fought legal skirmishes over trade tariffs and nearly come to blows over gas-drilling rights. Now a new dispute has erupted between Japan and China ― the carnation wars.・・・
Japanese breeders assert that their precious strains are being grown illegally by Chinese farmers in a grand-scale intellectual property theft tantamount to DVD piracy or fake Gucci handbags.
Whether pinned to a bridegroom’s lapel or displayed at a banqueting table, the carnation commands a huge market in Asia. Japan alone buys more than half a billion of them a year, and Kirin Green & Flower, a subsidiary of the Kirin Breweries, is the world ’s biggest carnation patent-holder, with the intellectual rights to 35 per cent of all varieties.
But a carnation grown in China is probably a rip-off, according to Kirin, also the world ’s largest breeder of the flowers. Efforts to force China to comply with patent law have failed. ・・・
Of the 6,000-odd Chinese farms that grow its patented carnations, Kirin receives royalty payments from only eight. The company notes that the extreme delinquency on payments is peculiar to China: Colombia is the largest exporter of carnations and is a scrupulous respecter of intellectual property.・・・
Since 2002 annual Chinese carnation shipments to Japan have quadrupled, to 55 million flowers, and Kirin forecasts that the figure will soon surpass the 97 million a year imported from Colombia.・・・(By Leo Lewis:The Times, May 10, 2006:232 words)

■Vocabulary&Idiom
buttonhole (嫌がる人にあえて)話しかける
loom (恐ろしいもの/不吉なものが)ぼんやりと姿を現す
skirmish小競り合い, erupt 爆発する/噴火する/勃発する
strain品種/血統, intellectual property 知的財産権
tantamount to~ ~に等しい, piracy 知的財産の侵害/海賊版
command 命ずる/場所や市場占有率を占める
subsidiary 子会社 cf. affiliated company 関連会社
variety品種, rip-off 盗品/いかさまの結果や行い
comply with~ ~に従う/~を守る, delinquency 義務の不履行
cf. compliance (法律などを)遵守すること/コンプラィアンス
peculiar to ~に特有な, scrupulous 公平で誠実な/良心的な
quadruple 4倍になる, surpass 上回る/数量で優る
■Comment
本文テクスト第4パラグラフの”a carnation grown in China is probably a rip-off.”は不定冠詞に注意が必要ですね。無味乾燥に(?)文法用語で言えば、「代表単数のa/an」です。例えば、次のA lion や An elephantは「目の前にいる一頭のライオン/象」ではなく、「世界中のライオン/象」を代表する「一頭のライオン/象」ですよね。
A lion is a strong animal. (ライオンは強い動物です)
An elephant is a large animal. (象は大きい動物です)
ですから、A carnation grown in China is probably a rip-off.のA carnationも目の前の1本のカーネーションを通して「中国で栽培されている数千万本のカーネーション」を連想しているものです。では、A carnationとThe carnationはどう違うのか? もちろん、後者は「その(君も知っているあの)カーネーション」という意味ではなく、「世界中のカーネーション」を表すととらえた場合です(定冠詞のこの用法を文法用語では定冠詞の「総称用法」と言います)。
実は、この問いは(教養のある)英語のネーティブスピーカーに聞いても「うぅん・・・、同じじゃないかな」という返答が帰ってくることも多いのですが(笑)、原則としては、「定冠詞+普通名詞」は「不定冠詞+普通名詞」に比べて抽象度が高いとは言えると思います。要は、A carnationの場合にはまだ「目の前の1本のカーネーション」がビジュアルにイメージされているのに対して、The carnationでは最早カーネーションは「カーネーションそのもの」という抽象的なイメージしか持たないと考えられます。難しい? では、補助線を一つ。
今度の母の日に家族でお寿司屋さんに行ったとしましょう。楽しい家族との団欒。目的はお母さんに家族の皆で感謝の言葉とカーネーション(中国製?)を贈ること。だから、その日に限っては何を注文するかなんかは大した問題ではないとします。こんなシチュエーションなら、誰もがお店の人にこう言いかねないのではないでしょうか。
人数分、握りの上に取り敢えずのビール。
そして、何か魚を適当にお造りで・・・。
考えてみてください。この世に「ビール」という「ビール」は存在しません。存在するのは「キリン」であり「アサヒ」であり「サッポロ」。くどいですが、「ギネス」であり「ハイネケン」であり「オリオン」・・・。あるいは、「瓶ビール」であり「生ビール」であり「缶ビール」。
また、この世に「魚」という「魚」は存在しません。存在するのは「鯛」であり「ヒラメ」であり「マグロ」。もう一つしつこいですが「サバ」であり「コハダ」であり「ブリ」・・・。何が言いたいのか、もうお分かりでしょうか?
「カーネーション(ビール/魚)そのものという抽象的なイメージ」しか持たない「定冠詞+普通名詞」などと大上段に構えると難解に感じる事柄も、実は、「取り敢えずビール」や「何か魚を適当に」という日常の普通の会話表現の中に含まれているということです。

■試訳
●農家を巻き込み風雲急を告げるカーネーション戦争
歴史教科書を巡る対立を抱え、関税に関しては法的な小競り合いを繰り返す両者。天然ガスの採掘権を巡ってはほとんど殴りあわんばかりの両者の間でまた新たな紛争が勃発した。その両者とは日本と中国のことであり、そして、このたび持ち上がった新たな紛争とはカーネーションを巡るいわばカーネーション戦争である。
日本の種苗育成者は彼等の貴重な品種が中国の農家によって違法栽培されていて、それは海賊版DVDやグッチの贋物ハンドバックにも匹敵する途方もなく大規模な知的財産の窃盗行為に他ならないと断言する。
結婚式で新郎の襟に添えられるのかそれとも宴席のテーブルを豪華に彩るのかは別にして、カーネーションはアジアでは巨大なマーケットを形成している。日本だけでも毎年5億本が輸入されており、実際、キリン・グリーンアンドフラワー株式会社は(それはキリンビールの子会社にすぎないけれども)カーネーションに関しては、なんと全品種の35%について知的財産権を保有する世界最大の登録品種保持者なのである。
世界最大のカーネーション種苗育成者でもあるキリン・グリーンアンドフラワーによれば、中国で栽培されたカーネーションは盗品と言ってもよいくらいの代物だという。中国に特許法を遵守させようという試みは現在に至るも失敗の連続なのである。・・・
キリン・グリーンアンドフラワーがその種苗について知的財産権を持つカーネーションを栽培している、優に6,000戸を越える中国の農家の中でロイヤルティー(使用料)を同社が徴収できているのは8戸にすぎない。キリン・グリーンアンドフラワーによれば、債務の履行がこのように極端にいい加減でだらしないのは一人中国だけであり、例えば、コロンビアは世界最大のカーネーション輸出国であるが、それは知的財産権を誠実に遵守する国でもあるという。・・・
2002年以来、中国から日本へのカーネーションの出荷は4倍になり5,500万本に達している。そして、コロンビアから輸入されている年間9700万本をその数値は近々超えるだろう。そうキリン・グリーンアンドフラワーは予想している。・・・
■感想&感慨
参考に産経新聞の記事も引用しておきます。
●母への感謝につけ入る“海賊版” 中国産カーネーション急増
「母の日」の14日を控え、出荷の最盛期を迎えているカーネーションの中国産の輸入が急増している。中国産の8割強が育成者権を侵害した違法栽培のいわゆる「海賊版」とみられ、粗悪品も多く、国内の生産者からカーネーション全体のイメージ低下を懸念する声が上がっている。育成者権を管理する種苗会社は業を煮やして10日、中央卸売市場に立ちいり調査に入った。今後、輸入業者に警告した上で、改善されなければ刑事告訴も検討している。(中略)種苗法では育成者権を持つ者は権利侵害の差し止めを請求できると規定されており、そのための調査だ。(産経新聞2006年5月10日)

小泉首相の靖国神社参拝批判や、本編にも出てくる「歴史教科書問題」と東シナ海のガス採掘などを見ていると、(個人としては私などが到底太刀打ちできない見識学識をお持ちの方も少なくないけれど)中国は国として社会としては<国際法>がまだあまり理解されていないのかなと感じてきました。けれど、この記事を読むにつけ<国際法>どころか<法>そのものへの理解が不足しているとさえ感じます。
これは、他国を見下す言辞などでは多分ないです。逆に、中国のそのような現実からは目を背けて、「日本の戦争責任」なるものからか国際標準から逸脱した中国の行いをも容認するような態度こそ、実は、(相手にハンディーキャップを与えることによって)相手を見下すものではないでしょうか。ならば、現実を現実としてきちんと捉え、そして、「10年後20年後には、互いに国際法と確立した国際慣習に従い両国間の紛争を合理的に解決していきましょうよ」という姿勢こそフェアで対等な姿勢だと思います。この記事を読んでそう思いました。

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