千葉のミシュラン小噺

物事をいきあたりばったりですすめていって成功するのは天才と偶然だけだということでして。

というのが、本日の枕。

長屋の金さんが、しいたけを見つけて
「これで鍋をやろう。」
と、思いつきましたのが、前回までのお話。

昨日から出しっぱなしの土鍋に水を入れてしいたけを入れたまでは順調だったのだが、そこまでしか考えてなかったのに気づいてにわかに慌てる始末。

鍋は火がかかってるから、チャッチャと具材を入れなきゃという強迫観念に迫られるわけです。
ま、火を止めりゃいいんだけど、「火を止めたらお前の負けだ」と見えない敵まで現れてきて、追い込まれていく金さん。
「白菜があったっけ。」冷蔵庫下段をあけて、あまってる白菜を全部投入。
「肉か魚、入れないと・・・」冷蔵庫中段をあけて、凍った豚肉を投入。
「鍋の味はどうしたらぁっぁ」冷蔵庫上段のタレなんかを必死で探す。ないないない。何にしていいのかもわからないっ。

そんな時に
「塩豚と白菜の鍋に野沢菜を一緒に入れて味をつけると美味しいんですよぉ」
なんて話をどっかで見たような聞いたような・・・と思い出す。
「確か、つまみにしようとしてた野沢菜があったっけ。」ゴソゴソゴソ

ありました。やったー。

煮立ってきてるから早く入れなきゃと、全部ドババババとぶち込む。
まさに、男の料理。主婦にしとくのがおしいぞ、金さん。
「やったな。」なんとなくギリギリセーフで大成功気分。

若干、ぶちこんだ漬物が多いような気もするけど、辛きゃ、水でのばしゃいいんだし。と、男らしさこの上なし。

と、漬物の袋を見たら「たかな漬け」でした・・・。アララ。

「やっちゃったな。」ギリギリでアウトだったか・・・。

いや、まだわからん。と、味を見る。
…うーむ。

静かにふたをする金さん。完全にアウトでした。

折りしも、塾や仕事から帰ってきた家族でにぎわうリビング。

１人キッチンで温度差を感じつつ、家族が味覚障害だったらよかったのに・・・などと思い煩うかわいそうな金さん。

おそるおそる出してみました。出すものないし。
「これ、何？」
「鍋です。」
「何鍋？」「この葉っぱは？」
「質問は一切うけつけません。」
・・・・・・・・・・・・・・・食事は黙って食べましょう。
全員で醤油で味を直して食べる新作の鍋。醤油って偉大だわ。
サンキューキッコーマン

どんな味かというと「おままごとで水と葉っぱで作った鍋」がきっとこんな味だと思う。


料理はフィーリングで作りはじめてはいけないという教訓を胸に１人ふて寝の金さんでありました。

フン。シバラクナベハヤリマセン。