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醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1081号   白井一道

2019-06-01 15:47:24 | 随筆・小説



  なまぐさし小菜葱(こなぎ)が上の鮠(はえ)の腸(わた)     芭蕉 元禄六年




 小菜葱とは、田んぼに生える水草のこと。水田農民に嫌われた雑草だ。しかし万葉歌人たちは歌に詠んだ。「なはしろ(苗代)のこなぎ(子水葱)がはな(花)をきぬ(衣)にす(摺)りな(馴)るるまにまにあぜ(何)かかな(愛)しけ 」(,読人知らず)。農民に嫌われる花を衣服に擦り付け、紫色にした。振り向いてくれない思いを詠んだものだろうか。
 鮠(はえ)とは、ウグイのこと。また日本産のコイ科淡水魚のうち、中型で細長い体型をもつものの総称でもあるようだ。
 釣りを楽しんだ子供が死んだ鮠(はえ)を打ち捨てて行った痕なのだろうか。
 支考の『笈日記』によれば、元禄7年去来の別宅桃花坊で芭蕉に会った折、支考がこの句について残暑の景であると言ったところ、芭蕉から褒められたと言われたとある。
 残暑が表現されているということか。