じょじょりん文庫

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告白 湊かなえ

2010-06-11 | 推理小説
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
湊 かなえ
双葉社

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随分話題になっていた本ですが,ようやく読みました。
怖い本だと思います。

物語は,子供を殺されたシングルマザーの中学校理科教師が,犯人が自分のクラスの生徒2人だということをホームルームで語るところから始まります。
子供の父親は,子供の頃ぐれていたのに見事に更生を果たして教師になったという,マスコミなどでも取り上げられている有名な教師だったのだけど,過去の行状からHIVのキャリアだと判明したので,結婚はしていないことをホームルームで説明します。
理科教師は,その説明直後に,HIVキャリアの子供の父親の血液を,犯人2人(本ではA,Bとしています)の牛乳に混入した,とクラスで発表したことからクラスはパニックになります。
この辺の発想はすごいですねえ。でも,紙パック牛乳に異物を混入するなんてできるのかな。穴が空くわけだし。しかも,誰にどの牛乳が配られるなんて予め決めておくなんてことは,通常ないのではないかとも思える。番号でもつけておくのか??怪しい。

その後,犯人Aに後で殺されてしまうクラス委員長のモノローグ,犯人Bのモノローグ,犯人Bの姉のモノローグと続き,最後に理科教師が犯人Aに電話を掛けて,手ひどい仕返しをしたことを告白して終わります。
最後の仕返しというのが,犯人Aが自殺しようとして死なばもろともと学校に仕掛けた爆弾を,理科教師が仕掛け直してしまったことです。仕掛け直した場所は,犯人Aが子供の頃に別れてしまった憧憬してやまない学者である母親の研究室でした。
なぜ母親の研究室に仕掛けたかについては,犯人Aが自殺しようとしたきっかけや,他人に対する犯罪傾向が大きくなった原因は,その母親が自分を忘れて研究室の先輩教授と再婚し子供が出来たことを知ったことが大きかったように述べられています。

理科教師は,そうした不満があるなら自分の母親に直接ぶつけろ,と最後の電話で言うのですが……
でもそういった理科教師も,直接犯人Aに手を下さず,その母親や研究室の罪もない人々をも巻き添えにしたわけで,同じ穴の狢っぽい感じもします。
この辺は怖いですねえ。

確かに刑事未成年の子に被害を受けてしまったら,刑事的には責任を問うことはできないわけで,泣き寝入りするしかないのかという気持ちは勿論あるでしょう。でも,自分で仕返しをすることを認めたら,それは仇討ちの容認になりますし,この理科教師のやったことは他人を巻き添えにしながらの仇討ち(自力救済)に他ならないと思います。この本を読んで,こうした仇討ち容認思想が安易に形成されたりしなければよいがとちょっと思ったりしました。

しかし,子育てというのは難しいのですねえ。
ちょっと間違えると,育ったのはモンスターということにもなりまねませんね。草花と違って引っこ抜くわけにも行かないし,親の責任は重いのですね。頑張っている親御さんを心から賞賛します。
だけど親もモンスター,子もモンスターなんちゃったら,もう……

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