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気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

(‘77) 7月1日 (金) お酒、飲みに行かない?

2023年07月17日 | 日記・エッセイ・コラム
午前九時。28日(火)に他の島を観に出掛けていたショーコ達が帰って来るというので桟橋へ迎えに行く。仕事の方は大方出来上がっていて、後は電気の配線などといった専門家の仕事ばかりで、お役御免になった私は再び『旅人』になっていたのである。凡そ二週間程度の事だったけれど、色んな事に関われて、それなりの経験を楽しめた。
また今日もオヤジさんが船を出すと言うので、帰って来たばかりのショーコを連れ立って一緒に潜りに行った。みんなが物珍しい珊瑚に夢中になっている間に、私は海底の貝を探していた。そしてお目当てのクモ貝を採る事が出来た。これは今日一番の狙いであった。狙い通りに採った私もであるが、それを受け取ったショーコの歓び様は、逆に、見ている私をも嬉しがらせた。オヤジさんはオヤジさんでショーコの方を見ながら、オヤジさん独特のニンマリ顔で、
「ジュンは『ウミンチュ』だから、理由もない事サ。欲しい貝があったら、ジュンにもっと採ってきてもらいなさい」
と言っていた。私にはちょっと褒め過ぎに聞こえたけれど、まあ、いいとした。好きな海に潜れて、貝などを拾えて、それが誰かを歓ばすなら、『結果オーライ!』サ。

そして夜。食事が終り少し経ってからの事である。一服しながらギターを抱え曲を作り、譜面にしていた時の事だった。ショーコが静かにやって来て、何かモゾモゾ言っていた。そして、
「お酒、飲みに行かない?」
と言い出した。『もうすぐ例の宴会が始まるのに、忘れてるのかな』と思い、
「お酒なら、もうじき宴会が始まるけど…」
と言った後、『そうかぁ、たまには外で飲むのも良いかもしれないなぁ。そうだ、隣りの赤山荘にそんなお店があったっけ』と、頭の中が急に回り始めた。
「うん、たまには良いかもね。でも、宴会が始まる前に抜け出さないと、オヤジさん、気を悪くしちゃうから、そっと行かないと…」
「うん、そっとね…」

「今、書き上げた曲を譜面にしてるんだけど、あと、ほんの少しで出来上がるから、その間に出掛ける用意をしてきて。すぐに終るから…」
何も言わずにショーコはコクンと頷いた。食事の後、宴会の場として使用される部屋での事だった。私が残りを仕上げて、その場をいそいそと離れようとしたところにオヤジさんがやって来て、
「ジュン、みんなを呼んで来なさい」
と言い終るか終らないかという時に、今度はオバチャンがグラスを運んで来た。『いけない、もう宴会が始まってしまう…』と思い、
「えっ、ええ、ハイ、じや、呼んでくるね」
と答えて、広間に集まっていたみんなに声を掛け、私はそのまま庭先で待っているショーコと二人、誰にも見つからない様にこっそりと泉屋を抜け出し、赤山荘のお店迄出掛けたのだった。


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