「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのかー有料座席列車導入は鉄道活性化のカギ

こんにちは。大塚良治『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)で鉄道活性化策を提言しています。

京王電鉄、有料座席列車導入検討へ―京王線特急&JR中央本線特急「あずさ30号」実見

2015-05-08 23:18:16 | 日記
皆様、こんにちは。

本日、京王電鉄株式会社より「京王グループ中期3カ年経営計画(2015年度~2017年度)~向上と拡大に向けて~の策定について」が公表され、その中で「有料座席列車導入の検討」に着手することが明らかとなりました。

今から4年前に、私は拙論「通勤輸送向け着席保証列車の可能性-企業価値向上と利用客の満足度向上の両立に向けて-」『湘北紀要』第32号(2011年3月)で、京王電鉄にTJライナー方式の有料特急導入を提案し、採算ベースに乗せることが可能であることを明らかにしました(また、「通勤ライナー」の詳細な分析については、拙著『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)も併せてご参照ください)。

京王電鉄の鉄道路線は、新宿~京王八王子間37.9km、新宿~高尾山口間44.7km、新宿~橋本間38.1kmなどと比較的短距離あり、これまで有料特急の運行がない鉄道会社として知られてきました。

しかし、2020年までにJR中央本線快速へグリーン車が導入されることが明らかとなり、京王電鉄も何らかの対抗策を打ち出すことが必要な状況になったと言えます。

本日飛び込んできたニュースに接して、早速夕方の京王線下り特急を実見するべく、新宿駅へ出かけました。



京王線新宿駅5番ホームは、着席を狙って次の特急を待つ旅客の長い列ができていました。



同駅3番・4番ホームは降車専用であり、有料着席列車の運行が開始された際には、その専用ホームに充当される可能性があります(詳しくは、拙論「通勤輸送向け着席保証列車の可能性-企業価値向上と利用客の満足度向上の両立に向けて-」『湘北紀要』第32号(2011年3月)をご覧ください。無料でダウンロードできますので、是非ご覧ください)。



18時20分発特急京王八王子行き(列車番号:0089)5号車に乗車し、京王八王子に向かうことにします。

車内は立錐の余地もない程混雑し、たとえ着席できても目の前の立席からの圧迫感が相当程度感じられるほどです。立席の人たちの苦痛はさらに大きいものでしょう。

明大前では井の頭線からの乗換客等でさらに混雑がひどくなりましたが、新宿から16分、明大前から10分の調布で乗車定員の5割程度が下車したのと入れ替わりで、乗車は3割程度にとどまり、車内に若干のゆとりが生まれました。

その後、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野と停車するごとに徐々に乗車率は下がり、新宿時点では1両当たり200人は詰め込まれていたであろう5号車は、終点の京王八王子では80人程度まで減っていました。



京王八王子駅到着後、JR中央本線八王子駅へ徒歩移動し、19時34分発特急「あずさ30号」千葉行き(列車番号:4080M)5号車普通車自由席に乗車しました。

JR長野支社松本車両センター(長モト)所属E257系0番台M205編成2両+M101編成9両による運行でした。



車内販売のコーヒー(310円)を頂きながら、くつろぎました。



自由席は帰宅する勤め人らで徐々に混雑し、立川から立席が生じました。

そして、新宿では相当数の下車と入れ替わりに、「千葉都民」が大勢乗車し、再び満席となりました。



私は、2014年9月9日に「あずさ30号」千葉行き(列車番号:4080M)に松本から千葉まで全区間を乗り通しましたが、やはり新宿から多くの「千葉都民」が乗車し、車内はさながら通勤列車の様相を呈していました(「『千葉都民』の『通勤ライナー』特急『あずさ30号』(4080M)に乗る」)。「あずさ号」「かいじ号」の自由席は、帰宅するサラリーマンやOLらに重宝されているのです。

しかし、本年3月14日のダイヤ改正で常磐線特急から自由席が廃止されたことで、近い将来に中央本線特急からも自由席が廃止される可能性が高まってきたと言えます。

2020年までの中央本線快速グリーン車導入で、割安な自由席特急料金を廃止したいとJR東日本が思っていることは間違いありません。

また、現在510円のホームライナー料金で乗車できる「中央ライナー」「青梅ライナー」(グリーン車は720円)についても、廃止または快速グリーン車の料金水準(現在の平日事前料金は、50kmまで770円、51km以上980円)へ合せた値上げ、のいずれかが実施される可能性が濃厚と見られます。

JR東日本によるこのところの特急料金制度の相次ぐ改訂は、在来線特急料金・指定席料金・グリーン料金(これらをひとまとめに「在来線料金」と呼ぶことにします)を、国土交通省への届出だけで、鉄道会社が自由に決められることに起因していると思われます(鉄道事業法第16条第4項)。

「在来線料金」を運賃や新幹線特急料金と同じく認可制(鉄道事業法第16条第1項、2項、鉄道事業法施行規則第32条第1項)に戻し、消費者保護を図る必要があります。

JR東日本の「独走」を阻止するためにも、京王電鉄の有料座席列車には大いに期待したいところです。

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