「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのかー有料座席列車導入は鉄道活性化のカギ

こんにちは。大塚良治『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)で鉄道活性化策を提言しています。

交通権学会シンポジウム「交通政策基本法を考える」で講演しました

2014-02-28 22:12:25 | 日記
皆様、こんにちは。

今日は、交通権学会主催のシンポジウム「交通政策基本法を考える」が衆議院第二議員会館で開催されました。告知がネットのみであったにもかかわらず、予想を上回る多数の皆様にご参加いただきました。議員の先生方や交通業界の幹部の皆様にもご聴講いただき、交通政策基本法への関心の高さを感じました。

私も演者として登壇いたしました。



私の報告テーマは「JR三島会社・JR貨物の経営改善と夜行列車活性化に向けた一試案」で、主に以下の2点の提案を発表しました。

(1)国鉄分割民営化による弊害を緩和するために、「日本鉄道グループホールディングス株式会社(仮称)」を設立して、三島会社(JR北海道、JR四国、JR九州)およびJR貨物のみならず、本州3社(JR東日本、JR東海、JR西日本)を傘下に収め、本州3社からの配当収入を三島会社およびJR貨物への支援に充当する。

(2)夜行列車の運行をJR貨物に移管することで、運賃・料金収入をJR貨物1社に独占させるようにして、夜行列車の運行確保につなげる。

最後の総合討論では、私の質問に対して、多くの質問をお寄せいただきました。

私の他にも、交通政策基本法をめぐる諸問題について、興味深いご発表がありました。シンポジウムのプログラムは以下の通りです。


プログラム:

挨拶:「法案について」 辻元清美(衆議院議員)

基調報告:桜井徹(交通権学会会長、日本大学商学部教授)

報告テーマ:
「交通政策基本法の意義と限界」安部誠治(関西大学社会安全学部教授)
「日本の交通基本法を考えるにあたって-フランスのLOTI『国内交通の方向付けの法律』及び、交通権にかかわるメモ」望月真一(アトリエUDI代表、カーフリーデージャパン代表理事)
「福祉交通の現状と課題」秋山哲男(福祉のまちづくり学会会長)
「交通権と地域交通」市川嘉一(日本経済新聞記者)
「徒歩・自転車と交通政策」杉田正明(クルマ社会を問い直す会代表)
「交通基本法の創設を待つ東京大気汚染公害被害者の道路環境再生のたたかい」大越稔秋(東京公害患者と家族の会)
「JR三島会社・JR貨物の経営改善と夜行列車活性化に向けた一試案」大塚良治(湘北短期大学総合ビジネス学科准教授)
「北陸新幹線開業に伴う並行在来線と垂直在来線の諸問題」松原光也(京都大学大学院低炭素都市圏政策ユニット)
「東北復興と交通」小祝慶紀(東北工業大学工学部准教授)

討論、フロア発言(司会:上岡直見)


今後も、JRグループの経営問題をはじめとする、鉄道を巡る諸問題について、調査・研究を進めて参ります。

小田急線平日朝下り方面特急の通勤利用

2014-02-21 17:23:54 | 日記
皆様、こんにちは。

2014年1月20日(木)、小田急小田原線新宿7時15分発特急さがみ57号(列車番号0357)9号車に乗車しました。30000形EXE30257編成6両(座席定員358人)+30057編成4両(座席定員230人)による運行です。



新宿出発時点では116人の乗車がありました。乗車率は19.7%です。大半が通勤利用と思われる旅客で占められていました。



「さがみ57号」の前後に、7時00分発特急「はこね1号」箱根湯本行き(列車番号0201)および7時28分発「はこね3号」箱根湯本行き(列車番号0203)があります。

「はこね1号」および「はこね3号」とも、小田原までの途中停車駅は、向ヶ丘遊園、町田、本厚木、新松田であるのに対して、「さがみ57号」は、新百合ヶ丘、相模大野、本厚木、秦野であり、棲み分けが図られています。

さがみ57号の乗車率が高くないにもかかわらず、「はこね1号」および「はこね3号」の間にわざわざ運行されている理由は、主に以下の2点に集約されるものと思われます。

(1)「はこね1号」および「はこね3号」はともに、箱根への観光輸送と通勤輸送を兼ねており、乗車率が比較的高く、別列車を運行することで混雑緩和を図る必要性があること

(2)「はこね1号」および「はこね3号」が停車しない、新百合ヶ丘、相模大野、秦野を利用するニーズに応える必要があること


「さがみ57号」運行の理由としては上記2点のほか、2012年3月17日ダイヤ改正まで平日の新宿7時15分発は「あさぎり1号」であったのを同日以降6時45分発に変更になったことに伴い、7時15分発のスジの有効活用策として、「さがみ57号」の運行を開始した、という側面もありそうです。

「さがみ57号」は新百合ヶ丘と相模大野で各号車数人ずつの乗車がある程度であまり大きな動きはなかったものの、本厚木で約100人前後の下車がありました。新宿および途中停車駅からの旅客の大半の目的地が本厚木であったということになります。

本厚木からも各号車5人前後ずつの乗車がありました。秦野や小田原へ向かう一定の需要があることを伺わせました。

「さがみ57号」に乗車していつも感じることは、「はこね1号」および「はこね3号」の補完列車的な役割を担っていることから乗車率が高くないことです。もう少し停車駅を増やして、乗車率を向上させる施策が必要と思われます。

例えば、海老名に停車することで、新宿や新百合ヶ丘から海老名へ向かう需要を掘り起こせるとともに、海老名から秦野や小田原へ向かう旅客も拾うことができるようになります。

小田急ロマンスカーの海老名停車は検討する価値が高いと考えられます。


※小田急ロマンスカーの海老名停車のメリットについて詳しくは、拙著『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)166~167ページをご参照ください。

北総線値下げ裁判二審判決―京成成田空港線運賃の原告適格初認定

2014-02-19 22:02:25 | 日記
皆様、こんにちは。

今日は、北総鉄道の運賃値下げを求める控訴審の判決が東京高裁で言い渡されました。

北総線の運賃に関して訴訟を起こす資格(原告適格)については、地裁判決と同様に高裁でも認められました。また、地裁判決では認められなかった、国による京成成田空港線運賃認可取り消しに関する原告適格についても認める初判断が下されました。

しかし、北総線および京成成田空港線運賃認可取り消しの訴えは棄却されました。



判決終了後、原告団への判決説明が代理人弁護士より行われ、活発な質疑応答が交わされました。



裁判では、北総鉄道と、北総の線路を使用して列車を運行している京成電鉄との契約関係(京成が北総に支払う線路使用料と、北総から京成への運賃収入分配額が相殺されて、北総線の線路使用料収入が実質ゼロになっている問題)についても争われましたが、訴えは認められませんでした。

北総線運賃に関する裁判を起こす資格を原告に認めながらも、運賃認可や京成・北総の契約関係については鉄道事業法違反ではないという高裁判決は、一審の地裁判決とほぼ同じと言えます。

そして、15時より記者クラブで行われた記者会見では、多くのマスメディアが同席し、注目の高さを伺わせました。

今後は、上告手続きに入るかどうかが注目されます。


小田急線平日夕方上り方面特急の通勤利用

2014-02-18 23:12:26 | 日記
皆様、こんにちは。

18時00分以降に小田急小田原線新宿駅を出発する下り特急は「ホームウェイ」の愛称が付けられ、平日は多くの帰宅利用を取り込んでいます。

しかし、平日夕方の小田急小田原線では、本厚木、海老名、相模大野、町田、新百合ヶ丘等の主要駅から登戸、成城学園前、下北沢、代々木上原、新宿へ向かう帰宅利用も旺盛です。私も勤め帰りに本厚木から新宿までの上り方面を利用している一人です。

平日夕方17時30分以降の本厚木駅は、学生だけでなく、周辺の事業所から退勤したサラリーマンやOLも交じって、かなりの混雑となります。急行や快速急行は着席することが困難なことが多く、町田や新百合ヶ丘までの比較的短距離での特急の通勤利用が見られます。



今日は17時45分発特急「さがみ82号」新宿行き(列車番号:0382)を利用することにしました。

「さがみ82号」の前に、17時42分発新松田始発の各駅停車相模大野行き(列車番号新松田→相模大野6812・相模大野→新宿1068)10両編成が3番線に入線してきましたが、大勢の旅客が乗り込み、 かなりの混雑となりました。この列車は、相模大野から急行新宿行きとして続行運転されることもあって、急行や快速急行と同じくらい混雑します。本厚木からの着席は困難です。



そして、6812列車が出発した後に、同じく3番線に「さがみ82号」が入線してきました。30000形EXE30255編成6両(座席定員358人)による運行でした。



本厚木から乗車したのは、主に出張帰りのビジネスマンや勤め帰りのサラリーマンやOLといった人たちです。本厚木出発後にすべての号車を見て回りましたが、乗車していたのは156人でした。乗車率は43.6%と言うことになります。



相模大野へは12分かけて到着します。相模大野で先に到着済の「えのしま82号」(列車番号片瀬江ノ島→相模大野0582)への連結に備えて、駅到着前に減速する関係で若干時間がかかります。2号車は3人が下車し、1人が乗車してきました。

相模大野からは「さがみ82号」と「えのしま82号」は0382列車として併結運転し、10分で新百合ヶ丘に着きます。2号車では観光帰りと思われる旅客ばかり8人が下車し、代わりに出張帰りのビジネスマン風3人組が入れ替わりに乗車しました。ホームで次の一般列車を待つ多くの旅客を残して、特急列車は新宿に向けて出発します。

登戸を通過して多摩川を渡って東京都に入ると程なくして地下駅となっている成城学園前も高速で通過し、さらに2013年3月23日に地下化した世田谷代田~東北沢間を通り過ぎて、東京地下鉄千代田線との分岐駅である代々木上原を過ぎると、終点新宿に到着しました。新百合ヶ丘から22分の行程でした。

「さがみ82号」は4割くらいの乗車率で十分健闘していると言えますが、さらに乗車率を高めることも可能であると思われます。つまり、乗車率に応じた特急料金の価格設定(プライシング)を行う「イールドマネジメント」を実施することが望まれます。「通勤ライナー」のイールドマネジメントの考え方について詳しくは、拙著『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)、144~167ページをご参照ください。

折り返し、18時44分発特急「ホームウェイ81号」藤沢行き(列車番号0981)となります。



「ホームウェイ81号」は満席となっていて、2・3番ホーム上の特急券売機にはキャンセル待ちの行列ができていました。



小田急の構内を後にしてJRの構内に入ると、降雪の影響で、中央本線特急が全て運休する旨の貼り紙がありました。「中央ライナー」「青梅ライナー」は通常運行されます。



また、西武池袋線・西武秩父線飯能~西武秩父間で特急が運休となっているため、池袋駅では、特急が全て飯能行きとなっていました。


千葉ニュータウンバス運行を目指して行われたバス社会実験を振り返る

2014-02-13 23:52:44 | 日記
皆様、こんにちは。

2014年(平成26年)2月7日(金)付の朝日新聞夕刊1面トップに、「北総線の運賃『高過ぎる!』 住民たちが取った行動は…」と題する佐藤清孝記者の署名入り記事が掲載されました。その記事には、「運賃の高さから『財布より 定期落とすな 北総線』と言われる千葉県の北総鉄道。耐えかねた住民が行動に出た。別の鉄道と接続する乗換駅まで直行バスを走らせる社会実験をしたところ好評で、4月から地元のバス会社が路線バスを運行する計画だ」と記されている通り、2014年4月からのバス運行を実現させるため、2013年10月7日(月)~13日(日)の1週間、バス社会実験を実施しました。

この社会実験は、交通権学会の前田善弘会員のアイデアを基に、私も提案者の一人となって、住民主導の下、鎌ヶ谷観光バス有限会社の協力を得て実施されたものです。

実験バスは、印西市高花地区と新鎌ヶ谷駅南口・鎌ヶ谷市民病院の間を1日6便(午前・午後各3便ずつ)運行されました。乗車料金は300円でした。高花地区から最寄りの千葉ニュータウン中央駅まで路線バスで180~230円、中央駅から北総線に乗って新鎌ヶ谷駅南口まで540円、合計720~770円もかかるところを、半額以下の料金で新鎌ヶ谷駅まで行けることから、利用者から大変感謝されました。

車両は鎌ヶ谷観光バスが保有する46人乗り中型車両が使用されました。



社会実験最終日の10月13日だけは、新鎌ヶ谷駅南口ロータリーが「鎌ヶ谷市民まつり」の会場として使用されたため、社会実験バスは北口ロータリーの発着となりました。北口ロータリーは駅入口の目の前であり、路線バス運行開始の際には、北口発着とすることが利便性確保のために是非とも必要です。



バス運行終了後も、路線バス化への検討を重ね、ついに実現への最終調整の段階に入りました。しかし、まだ4月からの路線バス運行実現には越えるべきハードルが残されており、皆様の応援が欠かせません。

このバス運行には、北総線以外の代替交通機関を作り出し、住民をはじめとする人々の生活の質(QOL)の向上を図りたいとの願いが込められています。

豊かな地域づくりには、多様な選択肢が欠かせません。北総線やマイカーに頼らない、「第三の交通機関」を作り出したのは、市民の力でした。私がこの記事でもコメントしたように、「住民主導で社会実験をし、路線バス運行の動きが出てくるのは画期的」なことなのです。

バス実現へ皆様のご支援をお願い申し上げます。