飛んでけ、水曜日!

文学とか言語とか。ゆるく雑記。

思い出の児童書~白虎魔記

2021-01-31 15:40:01 | 読書

小中学生の頃は今よりずっと本を読んでいた。週に一度図書館で上限目一杯の10冊を借りて、学校の図書室でも借りて、次の週には読み終えていたから週12冊くらい読んでいたのだろう。今は月に5~10冊がいいところだ。

たくさん読んだ本の中で、(教科書に載っているような作品を除いて)よく思い出すのが斎藤洋著「白虎魔記シリーズ」(偕成社)だ。仙人のもとで修業して変化の術を身につけた白虎・白虎魔丸が、数百年に一度目を覚まして、人の世の移り変わりを眺めていく物語。白虎魔丸は歴史をたどりながら、人はなぜ争い続けるのか考えていく。

当時の私は、年号を覚えるのが苦手で歴史の授業を好きになれずにいたけれど、このシリーズは『源平の風』、『蒙古の波』、『洛中の火』、『戦国の雲』、『天草の霧』と夢中になってすぐに全巻(当時)読み終えてしまった。人間の気持ちは分からない狐が、一歩引いた目線で、けれども真剣に人間のことを考えている、という設定がとても良かった。

続編として2012年には『元禄の雪』、2019年には『天保の虹』が発売されている。

『ルドルフとイッパイアッテナ』の作者と知り、かなり驚いた。こちらはもう少し低年齢向けの、迷子猫の冒険譚、2016年にアニメ映画化された。同じ作者だったとは…

他に、タイトルの思い出せない思い出の本がいくつかあるので、なんとか見つけられないかと思っている。皆さんの思い出の本も聞いてみたいなぁ。


読む落語のはなし

2021-01-26 12:48:17 | 読書

初めて本で読んだ落語は『志ん朝の落語』(ちくま文庫・京須偕充編)だ。志ん朝師匠の高座を再現しているような書きぶりで、話している言葉だけでなく、カッコ書きで表情や動きも書かれているため、落語の雰囲気をつかみやすい。この本を読んだことも、落語を“聴ける”ようになったきっかけだった。

同じく、ちくま文庫から出ている『落語百選』(ちくま文庫・麻生芳伸編)は各話短めに、少し文を綺麗にして書いていると思う。話のあらすじをさらうだけならいいかもしれないが、個人的には落語を楽しむには不十分だな、という印象だった。

『古典落語』( 筑摩書房・飯島友治編)は全集で、有名どころはもちろん、特に第2編にはあまり聴かない噺も載っている。それゆえ、似た構成の噺がたくさんあること、定番になった噺の元の噺、噺がくっついたり噺の一部が独立したものになる様子を知ることができる。

最近活躍している落語家さんはあまり聴かないから、よく分からないけれど、マイナーな古典を演る方もいるのかな?そういえば新作というか新しいスタイルの落語だったら、桂サンシャインがとても面白かった。Youtubeもやっておられるので、ぜひ。

OGPイメージ

Katsura Sunshine ・ 桂三輝

 

YouTube

 

 


ちいさい言語学者の冒険

2021-01-25 16:54:13 | 読書

『ちいさい言語学者の冒険』(広瀬友紀・岩波書店)を読了。母語の習得に関心があることと、大学の先生が何度もおススメしていたこともあって、読むことにした本。

子供が母語を学んでいくとき、その頭の中では何が起きているの?ということを紹介している。

私は大学で言語学の講義も受講していて、言語学的な内容のほとんどは既に知っているもので、ページ数も109ページしかないのですぐに読み終えた。実際に子供から発せられた言葉の事例が、今まで学んだ理論に当てはまることを実感できた。子供が単なるマネで言葉を習得していくのではなく、その頭の中では色々な規則が考えられていることが、簡単に分かる一冊だった。分かりやすくまとめられた本ではあったが、個人的には既知情報が多かったこともあり1200円+税はちょっと高かったな…という印象。(大学図書館の1冊はなかなか借りられず、周辺の図書館にはなかったため購入した。)

言語の習得に興味のある高校生や、今まさに子供が言葉を身につけているところをみているという親御さんにおススメの本だと思う。

作中では、子供がどうやって間違って使っている語彙を修正するのか、という話題も取り上げていた。私自身は20代だが、今でも「あれ?なんか相手の反応が少し変?」と思って辞書を引くと意味を間違えて使っていた、と気づくことがある。長い間気付かなかっただけあって、大はずれということはなく、二アリイコールくらいの意味に勘違いしていたことが多い。そういえば卒論提出前の時期、多くの友人が「卒論が煮詰まっている」と言っていたのだが、従来の意味で「卒論も詰めで上手くいっている」と言っているのか、近年みられる誤用の【行き詰まる】の意味で「卒論が行き詰っている」と言っているのか分からないで、返答に困った。


新雑誌『青騎士』創刊

2021-01-23 16:49:56 | 読書

4月から、KADOKAWAが新しい漫画雑誌『青騎士』を創刊する。私が今追っている作品『北北西に曇と往け』が『ハルタ』(KADOKAWA)から移籍するので、この新雑誌の存在を知った。(他にも数作品が移籍)『ハルタ』は新人作家を多く採用する漫画雑誌だが、雰囲気に統一感があって好きな作品の数も最も多い。

雑誌名は、ヴァシリー・カンディンスキーとフランツ・マルクが創刊した芸術年刊紙『青騎士』からだろうか。コンセプトはジャンルにとらわれない漫画雑誌らしい。私は少年漫画も青年漫画も少女漫画もジャンルを問わず、読むのでこのコンセプトにあまりピンとこないが、漫画雑誌とはそんなにジャンル別になっているものだったか…『青騎士』が刊行されれば、コンセプトはより明らかになるだろう。

『青騎士』の告知イラストは、少しレトロな絵柄で好みだった。雑誌もこのイラストと同じ雰囲気をもっていたらいいな、と期待している。

とここまで書いたが、私自身、好きな作家が表紙だとか特別な理由がなければ、雑誌はあまり買わない。長く連載してもらうには、雑誌を応援するべきだとは思うのだが、単行本派でなかなか雑誌に手が出ない…皆さんはどうだろうか?


天地明察

2021-01-18 17:01:17 | 読書

冲方丁の『天地明察』(角川文庫)を読了。

『天地明察』は渋川春海を主人公とした改暦を巡る歴史小説だ。初めてこの本を知ったきっかけは、コミカライズ版『天地明察』の試し読みだった。江戸時代の算術、天文学に興味があったのも確かだが、日時計の前に立つ春海のイラストになぜだか心が動かされた。全9巻の漫画版より上下巻の文庫版の方が、安く済むし、早く読めそうだと思い、文庫を購入した。地の文で“今現在”の目線から史実を語る書き方には好みがあると思うが、さらっと読むにはちょうど良いだろう。(全篇、主人公目線で語られる時代小説と地の文で史実を示すことの多い時代小説があると思うけれど、どうだろうか?私は前者の方が好みだ。) 

家康により江戸幕府が開かれてから82年後、823年に渡り使われ続けた宣明暦から貞享暦への改暦は、単にカレンダーが変わるということではなく、戦中心の戦国時代から民生中心の泰平の時代へ転換する上で大きな意味を成したことが、この小説を通して分かる。主人公・渋川春海の人物像はおそらく創作的な要素が多く、かなり現代っぽさがあるが、読みやすさに繋がっている。物語前半で主人公は算額絵馬に熱中し、関孝和に算額対決を挑む。後半、北極出地を命じられ全国各地での観測を終えた春海は、暦に人生をかけることになる。

関孝和については子供向けではあるが、鳴海風の『円周率の謎を追う』(くもん出版)で分かりやすくまとめられている。

今読んでいる門井慶喜の『家康、江戸を建てる』と合わせて、江戸初期に行われた改革を体系的にみていくことができる。