十二月十二日 日曜日 晴 南京城占領位置 南京城内東南角
一、未明全面曽家門東西の敵陣地を突破して一挙周家凹東側高地を奪取す敵の城外前後の抵抗益々頑強を極む
午前十時頃敵砲弾のため第一線に在りて活躍中の本部伝令の小林久夫上等兵壮烈なる戦死を遂け本部書記伍長小林昇同伝令旗手上等兵高木勝二は共に重傷を受く
一、午前十一時五分大隊長信澤少佐は自ら第一線に立ち立千勇敢に部下を指揮中胸部(左右)貫通銃創を受け上陸以来奮闘力戦宿望の南京城壁を目前にしつゝ壮烈なる戦死を遂く
一、大隊長戦死後大隊副官大隊の戦闘を指揮し力戦攻
午後一時二十分深津軍曹 中島伍長 新井上等兵は城外くりーく泳渡し城壁の一角を占領して日章旗を翻し大隊主力は午後三時五十分遂に大隊旗を先頭に城壁上及び城内に突入し逐次地歩を拡張し南京城内東南部を完全に占領し夜を徹するに至る
一、午後七時頃本部書記伍長廣瀬重雄城壁上に奮戦中腹部盲貫銃創を受く
一、午後七時四十分MG長永井大尉大隊長代理を命せられ爾後大隊を指揮す
状況別冊南京攻略戦等詳報の如し
本日現員 将校 四、下士官兵二〇 計二四名
十二月十三日 月曜日 晴 城外掃討 位置 南京
一、敵は夜半より退却せるものゝ如く銃声静まる
夜明るに従ひ彼我の死傷累々として終夜奮戦の跡を忍はしむ
一、午前八時頃 聯隊旗入城 城壁上軍旗を迎へて遙に遙拝式を行ひ聯隊長の荘重なる万歳の声に和して万歳を三唱す
一、午前九時大隊長の遺骸を城壁上に迎へ上陸以来の偉大の勲功を偲ひ英霊を慰めたる上大隊本部の位置に安置す
一、大隊は聯隊命令に基き雨巷門の警備に任すると共に第十二中隊を以て掃討を実施せしめ逐次地歩を西北方に拡張す又朝来戦死傷者の収容整理人員武器弾薬の調査等戦後の整理に努む
一、十一月十六日以来小行李其他の車馬材料の掩護に任したる西山小隊追求復■す行動の概要別冊西山小隊行動表の如し
一、午後一時五十五分 聯隊命令に依り左記大隊命令を下達す
大隊命令
一、数機編隊のF飛行機は南京上空をうかいあるものの如し
二、第十中隊より一け小隊を出し射撃部隊に任せしむへし編成其他に就ては別に指示す
大隊長代理 永井大尉
命令受領者に口達す
一、午後五時左記大隊命令を下達し警備を交代せしむ
大隊命令 十二月十三日午後五時 於南京東南通
一、第十中隊第九中隊関口少尉は雨巷門(城壁上を含む)警備を交代服務すへし
交代の時期は準備終了次第とす
一、午後五時頃大隊長遺骸を火葬に附す警備に支障なき将校本部下士官兵全部参集告別す
同時第十二中隊より一分隊を衛兵として服務せしむ
一、大隊は第十二中隊掃討を待って逐次北方に推進す
午後八時十分左記大隊命令を下達し各隊は更に至厳なる警戒に露営す
大隊命令 十二月十二日 午後八時十分 於南京雨巷門北方千米鉄道西側
一 占領地区の掃討尚全からす相当の敗残兵あるものゝ如し
聯隊は現在地付近に露営す
二 大隊は現在地付近に露営せんとす
各隊は設営者の誘導により露営すへし
三 部隊日直将校 天川少尉
巡察将校を兼すへし
四 1/3 12の大隊掃討区域北端の警備及び第十中隊の雨巷門(城壁上を含む)の警備故の如し其の他警戒は各隊毎に警戒すへし
五 警急集合所は本部西側乾田とす
六 給養は携行せるものによるへし
七 余は露営地中央大隊本部にあり
大隊長代理 永井大尉
下達法
要旨を伝達したる後命令の受領者を集め口達筆記せしむ
大隊日日命令
一、第9、11、12中隊より本部下士官適任者(特に能筆なる者)各一名選定し明十四日より大隊本部に於て勤務せしむへし
二、大隊本部伝令要員として左の如く適任者を選定し明十四日午前八時大隊本部に着出すへし
一、午後九時九日以来聯隊予備隊たりし第九中隊の主力復帰す
一、午後十時半左記聯隊命令を受領す
聯隊命令 十二月十三日 午後十時 於南京市
一 敵は既に南京市を退却せるも未た城内各所に敗残兵あり
二 各隊は掃討完了後別紙露営地区に露営すへし
三 露営日直将校真壁中尉巡察将校 第■中隊 木津少尉 第九中隊 関口少尉 第七中隊 中澤少尉
四 露営衛兵 第一大隊部隊衛兵として左記人員を第三中隊より連隊本部前に差出し日直将校の式を受けしむへし
左記 下士一、上等兵三、喇叭一、一二等兵一二 勤務交代十五時とす(午後三時)
1、露営地区外角に対し少なくとも一け分隊以上の兵力を特に工兵隊は(東側)露営地区入口第Ⅲ同しく北入口(出入口)第Ⅲ同しく露営地区西側出入口第一大隊■しく露営地区南側入口を警戒すへし右の外各中隊(此れに準する部隊)は特に自隊露営地区警戒すへし
2、戦備の度各中隊此れに準する部隊は本十三日夜は的申数の人員を待機の姿勢にあるへし
六 本部宿舎(高等法院東側)に露営司令官は宿舎西側五十米にあり
七 警急集合に際しては約3/1(三分の一)兵力を以て自隊宿営地の警戒に任し残余の部隊は(高等法院広場)に集合すへし
八 住民に対しては警戒を怠らず所要の訊問を行ひ敗残兵は自隊にて処分すへし合い言葉は國定とす
九 余は高等法院連隊本部にあり
連隊長 矢け崎中佐
会報事項
一、戦死傷者調査報告の件
一、戦死人馬総計表提出の件
一、八日以降射耗弾薬補給弾現在弾数報告
一、独立行動詳報提出
一、各隊は夜に入るも尚城外戦場の死体の収客仕末
十日の戦場に残置の背嚢取寄せ等にて休養の暇なし
一、第十一中隊は以前兵工廠の警備に服しあり
本日現員 将校四、下士官兵二〇 計二四名
十二月十四日 火曜日 晴 南京駐留
一、午前四時歩一一五作命六九号舎営に関する聯隊命令を受領す
一、同時に舎営及野戦倉庫開設くりーくの水に毒なし等会報を受く
一、午前八時信澤大隊長遺骨を収め本部内に安座す
一、午前十時宿舎前全員整列(本部、九中隊、十二中隊(二小隊欠)MG(弾薬小隊欠))
大隊長代理の挨拶あり直に設営者の誘導に依り宿営地を移動す
一、午前十一時配宿完了
一、各佐藤主計の指示を以て物資を徴発し補給す
一、本日より大隊本部勤務を命せられたる下士官の内二名(第九中隊角田伍長第十二中隊本間伍長)本部に転入す
一、正午左の如き要旨の聯隊命令を受領す
歩一一五作命七〇号
聯隊命令 十二月十四日 正午/於高等法院北側聯隊本部
要旨
一、舎営に関すること
一、巡察将校のこと
一、警備部隊として第三大隊より歩兵一け小隊を本日午後三時迄に雨巷門に差出し舎営日直将校の私記を受けしむへし共和門二八歩一五〇聯隊より南門二八歩一二七旅舎営衛兵は一五〇聯隊より之を担任す
一、第三大隊より小銃一け小隊(喇叭一名を含む)機関銃一小隊を差出し其の宿営地に於て十四日午後三時より十五日午前十一時に至る間防空に任せしむへし
右部隊は八十五日午前十一時以降歩一二七旅団に於て担任す
一、師団司令部旅団司令部の位置を示す
連隊長 矢け崎中佐
一、午後二時五十分左の如き大隊命令を発す
歩一一五のⅢ作命第四号
大隊命令 十二月十四日 午後二時五十分/於南京城内
一、師団露営区防空襲撃部隊として即刻左記の通り差出すへし
位置其他に関しては直接指示す
第九中隊一小隊 第三MG一小隊
二、雨花門(城壁上共)警備は引続き大隊に於て担任す第十中隊は引続き警戒に任し歩一五〇聯隊安田少佐の指示を受くへし
大隊長代理 永井大尉
下達法要旨を伝達後命令受領者を集め筆記せしむ
一、第十一中隊より本部勤務下士斉藤伍長転入す
一、午後六時大隊命令を下達す
一、部隊日直将校 十四日 平石少尉 十五日 飯塚少尉とす
巡察将校の兼すへし
二、警戒は各隊毎に実施すへし
三、警急集合所は本通りくりーく橋梁の右翼とし道路上とす
四、歩一一五Ⅲ作命 第四号防空射撃部隊の服務は十五日午前十一時以降歩一二七旅団に於て担任す
五、予はくりーく橋梁西側大隊本部に在り
大隊長代理 永井大尉
一、午後七時三十分より本部勤務となりし下士官三名に対し諸注意を与ふ
一、大行李到着大隊長の指揮下に入る
自十一月十二日以来の行動概要別冊 自十一月十二日/至十二月十四日 大行李行動表の如し
一、大行李大隊の宿営地に到着す 本日午後七時三十分迄に必要の行李を受領すへし而して明日午前七時に預ける事其れに遅れたる場合は其の隊にて携行すること
大行李長に連絡の上受領すへし
一、午後十時左の如き聯隊要旨命令を受領す
要旨命令
一、破損忘失兵器の有無種類員数の報告
一、明午前九時迄に軍靴の破損、使用不可能の物は員数表を作製提出の事靴下の交付をなすこと
一、入場式は十五日午後一時の予定
一、慰霊祭は十六日(入場式一日延期の場合は其の翌日)
場所其他は別紙の通り
一、時刻は午後一時の予定なるも別に示す
一、入場式実施要領
参加部隊
一 師団司令部(師団長幕僚)
二 旅団司令部(旅団長副官)
三 聯隊本部
一、注意事項
一、午後六時迄に提出すへき戦死者名簿は走り書きにても可なれば必ず提出の事
二、火災予防には深甚なる注意を要す
三、軍紀風紀を厳守する事
一、本十四日午後九時三十分迄に各隊兵器掛下士一名筆記具携行集合の事
一、本日の現員 三〇名
馬匹 二二頭
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