日本の中学校・高校の授業に使用される教科書に【南京大虐殺】の記述を全く削除すべきであるという意見について

2021年04月05日 12時00分00秒 | 1937年 南京攻略...

日本の中学校・高校の授業に使用される教科書に【南京大虐殺】の記述を全く削除すべきであるという意見をSNSで見ることがある。
しかし【南京大虐殺】の記述を全く削除する必要はないと考えている。
寧ろ、次の点を留意して記述される必要があると考える。

①日本国内および国際社会で、現在も【事実】と【事実の解釈】を巡っての係争が行われ続けている。確かに主要な学術会や知的エスタブリッシュ(通称知識人)の面々は学内や組織の政治的な意向から現在は学術論争をしていないことは事実と考えている。ただ少なくとも、日本国政府はユネスコ記憶遺産での中国側主張の【南京大虐殺】を認めていない。

②日本では、議論のためのⅠからⅢの3つ程度の類型が存在する。
Ⅰ、事実関係という類型(人数、行為エリア、期間を巡っての証拠〈史料、画像、証言〉の分析
Ⅱ、国際法からの解釈による類型(戦闘行為そのもの違法性:不戦条約・九ヶ国条約、殺害行為の違法性:ハーグ陸戦条約)
Ⅲ、インテリジェンスヒストリーからの類型(戦争宣伝・謀略)で、近年ヴェノナ文書が大きな影響を与えた。

南京にまつわる【論旨】には4種類がある。

A)南京大虐殺論(中国側主張)
Ⅰ(1.30万人以上。2.南京城内及び15km圏内での殺害。3.12月13日〜1月末)、Ⅱ(不戦条約違反による侵略戦争により全て違法、南京軍事法廷・東京裁判の判決を肯定。戦争犯罪として理解)、Ⅲ(存在しない。虐殺を否定する場合は右翼や軍国主義者によるデマ)

B)南京事件論(【虐殺】という用語を使用する。4万人から10万以上を設定し、兎に角大量の人間を虐殺したと主張。)
Ⅰ(1.4万人、5万人、6万人、10万人とバラバラ学者で異なる。2.上海から南京の周辺エリアを含む。1937年11月末から1938年7月程度)、Ⅱ(不戦条約違反による侵略戦争により全て違法、東京裁判の判決を肯定。戦争犯罪として理解)、Ⅲ(事実に影響しない程度の極小規模の戦時宣伝を認識。)

C)南京事件論(【虐殺=陸戦法規違反】と定義。旧日本軍親睦会である偕行社や編集者の板倉由明氏、畝本正己氏等の事件の解釈)
Ⅰ(1.2,000人から約2万人。2.南京城内及び周辺攻略拠点。3.12月9日〜3月初め)、Ⅱ(ハーグ陸戦条約の陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則に反する行為のみ軍律違反。南京法廷・東京裁判判決を否定。)、Ⅲ(A、Bの大部分が、戦時及び戦後の戦争宣伝という虚偽。)

D)南京事件(【虐殺を否定】又は【虐殺という用語使用を否定】。日本国で起きる平時の犯罪率程度の兵士個人による殺害事件。その他はほぼ戦闘行為に依る合法殺害。違法行為は推測に過ぎず戦争宣伝という虚偽。)
Ⅰ(1.推測不可能。2.南京城内及び周辺20km圏内。3.12月3日〜3月初め)、Ⅱ(ハーグ陸戦条約の陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則に反する行為のみで、当時の国際法では犯罪行為ではない[戦争犯罪否定]。南京法廷・東京裁判判決を否定。)、Ⅲ(現在のABの主張は戦時及び戦後の戦争宣伝という虚偽として認識)

補足として、日本国政府の外務省が現在も公開しているホームページの内容が【南京大虐殺】および【虐殺】を公認しているという主張もあるが、文言的には【虐殺】は一切見られず、又【根拠と成る史料】の指定及び公開もしていない。
2021年初めに、自民党の山田宏議員の活躍で、外務省ホームページの英語版に於ける【a number of】という大量を示すともとれる文言は紛らわしいので削除された。このことで【数量】的にも何かを示しているわけではなくなった。

Ⅰ〜Ⅲの分類と、A〜Dの論旨が大学などの高等教育研究機関では、学内及び組織の論理(政治的理由)で検討されているとは言いがたい。
しかし、民間の出版物ではそれぞれ自由に研究した分析文献が発表されているので、過去の公刊された文献などを含めると理解が深まる。
また、インターネットでも国立公文書館アジア歴史資料センターや国会国立図書館デジタルアーカイブ、各大学のアーカイブでは、史料や論文などが公開されているので、根拠と成る史料・資料を探すことの習慣を身につけさせることにも繋がる。
それによって、メディアやインターネットで流される情報の真否を判断できる素養をつけることになるかと考える。
そして、現状を正しく認識することで、海外で流布されている主に(A)や日本の学術会に蔓延している(B)への真否を判断できるのでは無いかと考えている。
むしろ、臭いものに蓋をするのではなく、時間を取って様々な情報を提示することで考える力を養わせることも必要である。
又、明治以降の日本国の近代化の歩みを考えれば、【国際法】は絶対に無視することが出来ない要素である。【戦時国際法】については、現在【国際人道法】という名前に変わっている。批准した国家は国民にそれを教育・周知して行くことを義務づけているが、この国際人道法ですらまともに国際社会でも日本国内でも義務教育及び周知されているとは程遠い現状を打破するためにも並列的に教育していく必要がある。

この辺を考えると中学や高校の社会科の教師は非常に大量の知識が要求される専門性が必要であり、一人の人間ではほぼ不可能だろう。
なので、ネット会議のように一人ではなく複数の教師による同時進行的な授業が必要と考えている。現場にいる教師は司会進行役(又は教育補助)といった役割の方が良いかも知れない。

国際刑事裁判所規定(ローマ規定より)



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2 コメント

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こんにちは (goozmakoto)
2021-05-27 16:54:56
小生はしいて言えばDの見解です。ただし、歴史上の「事件」なるものがあの時点で起きたとは言い得ないという立場です。事件という限りは歴史上に特記すべき、事柄が起きたというということではなければないからです。いうなれば「南京攻略戦」がおきたということにすぎないということです。事件と言ってしまえば、通常の都市攻略において起きる以上の国際法違反の軍事行為が攻略の目的達成以上に起きたということになってしまいます。
 例えば米軍の那覇攻略戦においても、米人自身が日本人に対して、国際法違反の行為を多数米軍が犯したことをみとめいています。(天王山)にもかかわらず、米国は那覇事件などとは呼んではいません。それと同じことなのです。まして那覇攻略に際して行った米軍の国際法違反の残虐行為を以上の行為を南京攻略において行ってはいません。かくほど左様に、日本軍は歴史上南京攻略戦において、南京事件と呼ばれるような歴史的事件を起こしていないのてです。
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お読みいただきありがとうございます。 (南京渋多(プロテスティア))
2021-05-28 11:27:32
ある程度、知識量が溜まってくると、殺害自体は行われていたことは事実です。しかし「戦闘」という行為自体が殺害をも目的としていますし、それと何が違うのかを知ろうとするのですが、戦後の日本は戦時国際法を棄て去り、【戦争=悪】としてしまったため、【戦争による殺害】も又単なる【殺人】にしてしまったのだと考えています。現在まで日本が偶々平和であった間に、世界では粛々と戦闘行為が行われ多数の人々が殺害されているのですが、何も出来ずに傍観している又は無視しているだけなのです。
基本的にグローバル社会ですから、さまざまな国の人々とやり取りする上で、自分達の無知を棚に挙げて日本人は何も知らないのにディするためにキーワード使う連中が居ます。それらに対応するように教育として、南京大虐殺肯定派の論旨とその反駁材料と成るCやDの知識への習得は必要と思いますので、今回このようなテキストを用意しました。
相手の言い分を知った上で、何に対してどう反論するべきかを知る・学ぶと言うことが重要であろうかと考えています。
中学生高学年及び高校生向けとは考えますがね。
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