真実を知るためのタイムスリップ
地下鉄(メトロ)に乗って
2006年日本公開
監督:篠原哲雄
【長谷部真次】堤真一
【小沼佐吉】大沢たかお
【軽部みち子】岡本綾
【お時】常盤貴子
あらすじ
衣料品の営業マンの長谷部(堤真一)は地下鉄の駅で父(大沢たかお)が倒れたという伝言を聞く。彼は地下道を歩きながら、暴君の父と口論して家を飛び出し、帰らぬ人となった兄のことを思い出していた。そのとき、彼の前を亡き兄に似た人影がよぎる。必死で追いかけて行くとそこはオリンピック景気に沸く昭和39年の東京だった。(シネマトゥデイ引用)
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地下鉄の真っ暗なトンネルの奥から「ゴォー」という音が聞こえ、その音がどんどん大きくなる。やがてトンネルの向こうから明かりが見えて電車が駅のホームに到着する。
こんな地下鉄の風景を見ていると、この電車がどこか異世界からやって来た
乗り物のように感じるときがある。
タイムマシンだといわれてもなんとなく納得してしまうような・・・。
そんな地下鉄が、主人公を過去に連れて行ってしまう映画だと知り、
無性に観たくなってしまいました。
主人公真次は、43歳になった今でも父親をひどく毛嫌いしている。
子供の頃からの、母親や自分達兄弟への冷酷さをどうしても許せなかった。
ところがそんな真次が過去へタイムスリップし、若き日の父に会うことになる。
人は自分が見たものだけが真実だと思いがち。
言葉もそう。その人の心の奥底にある思いなど知らずに
聞いた言葉だけがその人の心の声だと思ってしまう。
真実やその人の本当の思いを知らずに溝が出来てしまったとしたら・・・
それはとても悲しいこと。
そんなことがテーマとなっている映画。
真次は、タイムスリップして過去と現在を行ったり来たりする。
タイムスリップする時、毎回地下鉄を利用するわけではないのがチョット残念。
いきなり過去に行ってしまう時があるので、少しとまどうことも無きにしも非ず。
分かりづらい訳ではないけど、タイトルにある「地下鉄」を
もっと使って欲しかったなあと思ってしまった。
けれど、タイムスリップして色んな年代の父親に会うたび
少しづつ変化していく真次の父親に対する思いは、
そのまま観ている側の変化となっているのは見事だなぁとおもう。
真次の父親役の大沢たかお。この俳優さんががそれぞれの年代に合わせて
若くなっていくのがとても興味深かったです。
演じる上で大変だったのは主人公よりも、真次の父親役だと思う。
大沢たかおというと、私の中では、「解夏」や爽やかな青年役の印象が
強かったのだけど、戦後すさんでしまった姿や、若き日の凛とした
青年役も無理なく完璧にこなしていたのに驚いた。
こんなに演技力のある役者さんだったんですね~。
そして、衝撃的なラスト。
全ての真実を知った時に起こる事件。
私てきには、ここまでの展開にしなくても・・・・と思ってしまったのだけど・・・・。
父や母の昔を見たい?と聞かれたら私ならどうするだろう?
知らなくていいこともあるだろう。
けど、もしかしたら知っていたほうがいい事実もあるのかもしれない。