消毒は、証人がやったんですか。
種痘の場合には、アルコールでふいた後、よくその部分を乾かさなくちゃいけないので、早く、補助の衛生係の方がふいてくれました。
証人が直接消毒をして接種するんじゃなくて、衛生係の人が消毒をして、乾くのを待って、接種をすると。
はい。皮膚消毒はそういうことです。それと、種痘の場合は、注射と違いまして、皮膚を切ったり痘苗を塗ったりするのに1人に要する時間が掛かりますので、介助の人が準備をしてくれるという形を取っておりました。
それは、1日に何か所も回らなくちゃいけないから、1人でやっていると大変だという意味もあったわけですね。
時間が掛かるからです。
それで、消毒した部分が乾いたら、今度は、証人が痘苗を塗って、接種をするということになるんですね。
そうです。
どういうふうに塗って、接種をするんですか。
皮下注射のときと同じなんですけれども、お子さんの腕を裏側からしっかりと握って、そして、メスでシャーレから痘苗を取りまして。2か所の場合には、2か所、1個の場合には1か所ですけれども、痘苗をすくって、皮膚に塗り付けまして、1辺が5ミリくらいのバッテン印に皮膚を切ります。そして、切り終わったら、さっきかきましたけど、メスの背中のところで、きったところに痘苗がまんべんなく行き渡るようになでて、それで終わりです。
当然、皮膚を切りますので、血液がにじんできたり、出たりするということはあるんですね。
はい。にじむくらいですめばいいんですけれども、小さいお子さんが動いたりして、ちょっと深く切り過ぎちゃったり、私は下手ですから、よくそういうことは。
そういうときになったら、どういう手当をするんですか。
あんまりだらだらと流れるほどは出ませんけれども、それでもそのときは酒精綿でふいてあげるわけにはいかないので、乾くまで他をよごさないように、綿をあげて、そこはふかないようにして、乾くまで待ってもらいました。
そうすると、メスに血液が付くということがありますね。
はい。
1回終わると、そのメスは酒精綿でふくんですか。
酒精綿でふきます。
血液は取れちゃうわけですね。
取れちゃいます。
そうすると、さっきかいてもらった、痘苗を入れたところに血液が付くなんてはないんですか。
左手でお子さんの腕をしっかり動かないように握っているわけで、右手だけでメスを使うんですけれども、動いたり逃げたりなんかしていて、塗った痘苗が乾いちゃってから切っちゃうというようなことがあって、ちょっと足りないなと思うことがありますね。それから、ここに切ろうと思って痘苗を塗った部分以外のところを切っちゃう、ちょっとずれて切っちゃうというようなこともありまして、切ったところに痘苗をたっぷり付けてあげなくちゃ疱瘡は付かないですよね。それで、右手でもう1度ちょっと追加をして塗ってあげるというようなことはやりましたから、メスに血液が付いたものをシャーレの痘苗の中に入れるということはありましたね。
そうすると、いったん切って、失敗したりして、メスに血液が付いたまま、追加の痘苗を塗るために、メスを痘苗の中に入れるという現象ですね。
そうです。
例としては少ないかもしれないけれども、痘苗の中に血液が混じるという現象も発生するわけですね。
少し大げさに言うと、そういうことになります。
例えば、痘苗が真っ赤になるということはないんでしょうけど、やっぱり血液が混じるということはあり得るわけですね。
はい。それと、何しろ、泣き叫んでいる子供さんと、それを必死で押さえるお母さんと、私も未熟でしたので、結構 ぼおっとなりながら必死にやっている状況なので、血液を中に付けるなんていう意識はこちらにはありませんけれども、私はあんまり上手じゃなかったもんですから、よくそういうことはやりました。
今おっしゃった、種痘のときの血液が痘苗の中に混じるというようなことは、川北でやっただけ
じゃなくて、その後もそういうことというのはほかの地域でもあなた自身が経験したことですか。
広島町とか。
そういうところでもそういう現象はあったわけ。
はい。
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