次世代総合研究所・政治経済局

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米国の対北朝鮮軟化をどう見るか

2007年02月16日 00時17分59秒 | Weblog
 6か国協議が合意され、日本は完敗した。
 いうまでもなく米国が得意の二枚舌外交により中国を重視した結果である。

 拉致問題で米国が肩入れしてくれるのではという日本政府の甘い思惑は見事に外れ、恐らく原油100万トンを得た後に合意を反故にするであろう北朝鮮の独壇場、そして、このならず者国家を子分に持つ中共政府の威信だけが限りなく高まった結果となった。

 この時期に米国が軟化した理由として中間選挙での敗北が挙げられているようだがそれは見当違いというものだろう。そもそも北東アジア情勢については米国民主党は関心が低く、また、クリントン政権でオルブライト長官が対北朝鮮宥和政策を採ったことからも分かるようにそもそもこの地域の情勢についての同党関係者の知見レベルも低い。

 とすると考えられる可能性はただひとつ、米国にとってこの地域の地政学的優先度が低くなったということに尽きる。

 こうした中、欧米メディア(特に英国)では米国のイラン攻撃の可能性が必ずしも低くないというニュースが複数ある。例えばフィナンシャル・タイムスだが
http://www.ft.com/cms/s/a092ae74-b7e2-11db-bfb3-0000779e2340.html

 ラフサンジャニ前イラク大統領がイラクは米国からの攻撃の可能性にさらされているとしてそのような攻撃に対しては断固反撃すると警告したと報じている。

 前大統領はさらに、「米国大統領は自分の行動の結果が計算できず、計算できるような賢明さを期待することはできないとの見方がある」とも述べブッシュ大統領を牽制したのだ。

 イラク国内の紛争を助長しようとしているとして米国はより敵対的な態度を示しているためイラン米国間の緊張はここ数週間高まっているというのがFTの見方だ。

 すでに米国はイランに対しては金融制裁を課している上、欧州諸国にも同調を呼びかけている。これに対しては英国ですら国連の措置(核関連の通商制裁)を優先するとして難色を示している。イタリアに至ってはいまだイラン向け輸出の促進に熱心なほどだが。

 先月米軍はイラク北部のクルド人都市アルビルでイラク人を捕縛、バグダッドでイラン外交官の身柄も拘束している。

 イスラエルとヒズボラの戦闘が人質問題を発端としていることからすれば、イラク戦争がイランに飛び火する可能性も皆無ではないだろう。ラフサンジャニの発言に訂正する余地がないのが悲しい。

 それにしても北朝鮮に対する金融制裁を解除し、イランへの金融制裁を課する米国。6か国協議が米国にとって既に「消化試合」であった可能性は高い。

唯一日本にとってメリットのある結果にできたとすれば、今回の合意内容にまとまる過程で「こんな合意は呑めない」といって席を蹴ることだったろう。それこそ北朝鮮の「想定外」の出来事になるからだ。北朝鮮から米国追従国とのレッテル(まさにその通りなのだが)を貼られている日本がそのようなことをしないと踏んでいるからこそ、北朝鮮は「安心して」拉致問題を無視したのである。

 無論、席を蹴ることになれば、北朝鮮以外の4カ国も慌てたろうし、北朝鮮は日本を合意をぶち壊した「張本人」にするであろうことは明らかだ。しかし、ここで何らかの進展を北朝鮮から引き出してテーブルに戻るという芸当を期待したいところだった。中国や韓国も北の暴発については懸念を抱いているのだから。

 恐らく北は食糧危機がかなりの程度まで進んでいるはずであるし、特にエネルギー危機は深刻で、しかも中国は昨今の経済発展で北へのエネルギー援助は極く僅かしか出来ない状態になっていたのだから、北も相当弱っていたはずなのだ。

 後はアジア開銀を最大の出資国たる日本が対北朝鮮向け融資をどれだけ値切れるかだが恐らく何も期待できないだろう。




『構造改革の真実』を読む

2007年02月14日 02時29分38秒 | Weblog
『構造改革の真実』(竹中平蔵 日本経済新聞社 12月20日刊)を読んだ。

 本書によって改めて牢固とした官僚組織の厚さ、族議員の跳梁振りを確認したわけだが、その中で孤軍奮闘した竹中氏の行動がもっぱら実務面から、抑えられた筆致で記録されている。また、経済財政担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣と小泉内閣の「構造改革」の全てに関わった著者ならではの実話に富んでいる。

 内容は大きく分け、金融システム再生や郵政民営化、地方自治の変革についての回顧談が大半、そして最終章が「経済財政諮問会議」の運営についての記述となっている。

 思わず膝を叩いたのは、竹中氏は、民主党が郵政民営化について、政府案よりラジカルな案を出すことを恐れていたが、法案に反対したため本当に助かったと述懐しているくだりである。そしてこのことを知って小泉首相は笑みを浮かべたというくだりだ。民主党幹部は本書を熟読玩味すべきであろう。


 さて、回顧談についてだが、細部はともかく、各制度改革についてはマスコミの報道を見ていればその概略は分かるわけで、本書の価値はまさに第4章の「経済財政諮問会議の真実」の記述内容にある。

 私は、同組織をはじめ各審議会は事務局がアルファでありオメガであるとの認識を持っている。というのもこうした組織はそのほとんどが官僚のお膳立ての上での「パフォーマンス」にすぎないからだ。それを実ならしめようとし、しかもそれを実行した著者の実務能力(スタッフも含め)は賞賛に値すると思う。本書ではその内容(秘訣)が細部にわたり公開されたという意味で価値がある。やはりというべきか、民間議員のペーパーも実は竹中氏がお膳立てしてストーリーを綿密に造っていたことが明かされている。

 たとえば同氏が経済財政担当大臣を退いた後、与謝野氏が担当大臣になると、みるみる民間議員が官僚のペースにハマっていく様や、「完全民営化」と「完全に民営化」の大違いなワケなど、官僚の手練手管の数々に、官僚組織を熟知していない人々は思わず息を呑むのではないか。

 5年5ヶ月にわたる小泉内閣で唯一最初から最後まで閣内にあり、その経済政策の全てにかかわったのが、(もともと)民間人の著者であったこと、そして、著者が再三にわたって「特定の利害関係のない」民間人が政策をリードすることの重要性について触れていることは、「ではいったい国会議員とは何のためにいるのか」ということを逆説的に示唆しているようだ。

 本書全体を読むと(もし記述が事実だとすれば)小泉総理の、官僚組織の実態についての認識、ブレない姿勢、大筋の理解力の確かさ、要所要所での締め、人間の機微についての配慮がとりわけ印象的だった。読後、たしかに小泉は歴史的に稀有の総理であったという感想を得た。そして竹中氏が小泉退陣とともに政治家を辞めたことは誠に時宜を得ていたと感じたのである。

映画『墨攻』をみる 

2007年02月13日 15時47分59秒 | Weblog
映画『墨攻』をみた。

 香港のジェイコブ・チャン監督、アンディ・ラウ主演の、日中韓三カ国の共同による、中国戦国後期における思想集団「墨家」の活躍を描く歴史スペクタクルである。
http://www.bokkou.jp/

 「墨家」は一時期、儒家と並ぶほどの思想勢力を誇っていたが。秦の始皇帝の統一後は全く姿を消し、中国史上でも重く扱われてはいない。現在、日本では中国思想全集の一部に収録されてはいるが、一般のひとびとにはなじみのない思想家であろう。

 しかし、「墨守」という言葉は今でも使われることが稀にはあるだろう。この「墨」こそ「墨家」の「墨」であり、墨守とはすなわち死守の意味である。「兼愛」と「非攻」を説いた平和思想が墨家の思想の真髄である。

 むしろ、「墨攻」は酒見賢一の小説、あるいは小学館の「ビックコミック」で読んでファンになった人のほうがずっと多いのではないだろうか。事実、私自身もビックコミック連載当時は欠かさず読んでいた。


 映画を見てまず驚かされるには時代考証の厳密さである。弓隊の衣装は秦始皇帝の兵馬俑の兵士そっくりであり、兵馬俑展を見たことのある人ならば、その酷似に思わず膝を叩くに相違ない。もっとも熱気球の登場などは脚色だが、陣を縦横に駆け抜ける戦車(もちろん曳いているのは馬)や投石器の存在などはかなり忠実に当時の兵器を再現しているといえ、歴史考証的にも一見の価値がある。

 また、その撮影スケールの大きさも迫力がある。映画館全体にこだまする戦闘シーンでの人馬の音は臨場感がとてもあった。

 また、日本映画とは違いハッピーエンドには終わらない。そして結局は勝者はおらず、戦争と権力の不条理さを問う内容となっており、そこがまた深みのあるところだ。

 『墨攻』のプログラムは専門家による解説もあり、良い出来なので観覧の際には是非購入することをおすすめしたい。

どこかおかしい番組批判

2007年02月11日 00時12分11秒 | Weblog
 納豆データ捏造に端を発した「発掘!あるある大事典2」(関西テレビ)問題はスポンサー降板、ゴールデンタイムのレギュラー番組打ち切りのみならず、総務省による報告及び改善策の要求にまで及んでいるようだ。 

 確かに視聴者がそこから何らかの有益な情報を得ようとして見ていた同番組の場合、このような捏造が行われたことは視聴者への裏切り行為といえ、番組の打ち切りは当然のことといえるだろうし、製作会社が倒産することもまた致し方ないところだと思う。

 しかし、これに「お上」が過度に関わって逐一改善を求めるというのはいかがなものか。

 そもそも娯楽番組は多種多様だ。今回のようなバラエティ番組はドキュメンタリーという意味において報道番組に近い側面を持っている。報道番組において政府が今回のように報道現場に対して「改善」を求めたらどうだろうか。相当に由々しい事態と見なければならないだろう。

 今回、確かに番組は捏造だったが、このことで何らかの実害を被った視聴者がいたわけでもない。また、たとえいたとしてもそれは「自己責任」ではないだろうか。たとえ番組内容が真実だったとしても、その効果は人により異なるはずで、番組内容を「鵜呑み」にする視聴態度の方が問題とされるべきだろう。


 それどころか昨今の番組にはそもそも真偽を確かめることすら不可能なものが多い。例えば「霊」の存在について語る番組などはどう考えればいいのだろうか。

 こうした番組については「信じるかどうかは視聴者に委ねられるべき」とするのが大方の共通認識なのではないだろうか。私には今回の番組もこうした心霊モノと五十歩百歩のような気がするのだが。

 総務省のすべきことがもしあるとすれば、それは「必ずテロップで『個人差があります』とか『信じるかどうかはあなた次第です』流せ」という指示だろう。

ドビルパンの米国批判

2007年02月09日 21時58分02秒 | Weblog
フランスのドビルパン首相がイラクへの米軍増派をバカげており、イラク国内の騒擾は全ての外国部隊の撤退まで続く。イラク民主化まで撤退しないとなれば永久にその時は来ないと批判した。
http://www.ft.com/cms/s/8e82a9a0-b616-11db-9eea-0000779e2340.html

 同氏はまた、核兵器開発をイランが行っていることに対し、諸国は想像力が乏しいとも批判、中東について近視眼的になることを戒めた。

 首相みづから米国の政策を批判するとは、どこかの国のように米国のイラク政策を批判する大臣の「真意」を必死に押し隠そうとする政府とは大違いのようだ。

ついに地球温暖化の元凶であることを認めた中共政府

2007年02月09日 02時13分22秒 | Weblog
さすがに中共政府も地球温暖化に中国が影響を与えていることを間接的ながら認めた。
http://www.iht.com/articles/ap/2007/02/06/asia/AS-GEN-China-Climate-Change.php

中国の気象庁長官が「中国は国連気候変動会議の結論に賛成する。異常高温、海面上昇、旱魃、大風台風の発生などから温暖化を憂慮しているが、クリーンなエネルギーに転換するには(中国はエネルギー源の7割を石炭に依存)余りにコストがかかる。太陽、風力エネルギーへの転換を進め、向こう5年間で温暖化ガスを4%削減する」と言明したのだ。

 10年後には世界第1位の温暖ガス排出国となることが確実視されている中国、今冬の北京が30年振りの高温となっていよいよ認めたか、という感がある。報告書では向こう50年から80年間に中国で収穫される穀物が4割減少するとされていることも政府を動かしたようだ。事実、中国北部の旱魃はひどく河川からの蒸発が15%上昇し、最も影響を受けるのが上海だとの観測もある。

 それでもまだまだ油断できない。というのも、中国は京都議定書には参加していない上、昨年末、地方政府が排出ガスの過小報告をしたことが国内メディアによって報告されているからだ。

 いずれにせよ、隣国の大国からいらぬトバッチリを受けぬためにも同国の気候変動への取り組みについては今後とも注視していく必要があるだろう




危険なドイツの親中姿勢

2007年02月07日 01時34分42秒 | Weblog
ドイツ政府内部でG8に中国やインド、ブラジル、メキシコなどを正式な加盟国にすることを提案しようという動きがあるようだ。
http://www.ft.com/cms/s/6907f312-ac19-11db-a0ed-0000779e2340.html

この背後には外資の対中国国内投資にかかっている規制を緩和したいという独金融界などの思惑があるようで、単なる「仲良しクラブに入れよう」という単純なものでないことは確かだ。

 中国は現在、北京五輪開催に向けてネット規制を強化している。
http://search.ft.com/search?queryText=hu+seeks+to+purify&aje=true&dse=&dsz=&x=17&y=9

 インターネットの利用者はすでに1億4千万人に達しているとのことなのでどこまで規制できるか疑問ではあるのだが。

 また中国はアフリカ諸国歴訪の中でダフール虐殺問題で世界の非難を浴びているスーダンを擁護し、中国外務省筋はスーダンと軍事協力もしていることを明らかにした。胡国家主席はダフールの問題について西側との共同歩調はとらず、同地域への国連の平和維持活動へも同調しないこととしている。
http://www.ft.com/cms/s/31f9581c-ac18-11db-a0ed-0000779e2340.html

 すでにアフリカ諸国と中国との貿易は5000億ドルに達しており、昨年末にアフリカ48カ国の首脳が一堂に会する会議を主催した。理由は資源を押さえるためと国際社会、特に国連における影響力を強化するためであると思われる。今回のスーダン擁護も、中国へのスーダンの石油輸出量が足踏み状態ということと関係しているのではないか。

 中国の石油輸入の3分の1はアンゴラらアフリカからであり国営石油企業はアフリカを重視している。
2005年、アフリカ諸国に赴任している中国人は800社8万人ともいわれる。

 このような一連の動きに好条件の借款も含め、6日(電子版)のFTは社説で、資源と市場の獲得を目指した一種の植民地政策にほかならないと断じた。
http://www.ft.com/cms/s/c1a221ca-b586-11db-a5a5-0000779e2340.html

 やはり独金融界の思惑だけで動くのは危険だ。メルケルには是非慎重に行動してもらいたいものだ。

ちぐはぐな民主党の国家運営  

2007年02月06日 21時56分29秒 | Weblog
民主党が柳沢厚生相留任で与党・政府が一致したことを受け、審議拒否の方針を転換、近く国会審議に応じることとなった。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070206AT3S0501205022007.html

 柳沢氏の発言が不適切であることは論を俟たないが、それと審議拒否をすることとは別である。日経新聞は本日の社説で愛知知事選で民主党が勝てなかったのは審議拒否のせいだとまで述べている。

 そもそも今国会で審議すべきことは山積している。小沢代表が本気で「格差の解消」を考えているのならば予算委員会で積極的に政策を提案すべきであった。

 そうこうしているうちにあれほど強硬に賃上げに反対していた日本経団連の御手洗会長が業績の良い企業については賃上げを容認する趣旨の発言をした(本日日経新聞朝刊)
 
 中小企業についてはすでに昨年、労働分配率が上昇している(大企業は低下)労働分配率がすでに米国並みに低くなった日本、ただでさえ、大企業の労働分配率は中小企業に比べ製造業で25%、非製造業では35%も低い。(2006年9月15日日経記事)

 敵失依存の野党には存在価値がない。