次世代総合研究所・政治経済局

現代の日本および国際政治経済に関する隠れた視点を、国内のどのメディアよりも早く提供するページです

『週刊ダイヤモンド』最新号を読む

2006年08月31日 01時31分14秒 | Weblog
 『週刊ダイヤモンド』最新号を読んだ。
http://dw.diamond.ne.jp/number/060902/index.html

 『増大する若年層悲惨世代と中高年の「働く貧困層」』と題し、若年層と中高年層双方の「ワーキングプア」(働く貧困層)を採りあげているところが共感できる。

 「賃金格差は一目瞭然! 正社員とフリーター時給比較」(35ページ)も興味深いし、「「せめて再チャレンジをさせて」 若年層悲惨世代の声を聞け」(36ページ)では早大卒のフリーターの悲痛な叫びも採りあげられていて、早速教育室の担当者には生徒に良く読ませるように指示しておいた。

 「貧困層比率先進国2位の衝撃」(38ページ)も貴重な報告だが、「年収は生活保護世帯以下! タクシー運転手が語る残酷物語」(44ページ)を読むと、この問題は労働問題の域を超え、公共交通機関の安全性の問題にもなっていることを実感する。

 本日の報道では厚生労働省が厚生年金への加入促進を図っている(朝日)とか、フリーターの正社員転換制度を支援する(日経)など、むしろ官僚主導で労働政策が進んでいることが分かる。

 労働問題に関心のある?政治家が与党の独走総裁候補のみというお寒い状況ではわが国の将来は本当に暗い。

新潮選書『ドイツ病に学べ』を読む

2006年08月28日 00時04分27秒 | Weblog
 8月25日の新刊書、新潮選書『ドイツ病に学べ』を読んだ。
http://book.shinchosha.co.jp/cgi-bin/webfind3.cfm?ISBN=603569-3

 筆者の熊谷轍氏はもとNHKワシントン特派員。フリージャーナリストになった後にドイツに定住したというところが異色だ。

 管理人はもともと東西ドイツの統一から生活水準が平準化するには30年はかかると見ていたが、現在のドイツははるかに悲惨な状況にあるらしい。

 同書では、1)ドイツの実質GDP成長率は0.9とEU25カ国中ビリから3番目、2)全ドイツ自動車クラブでの顧客満足度でメルセデスは32位(1位はトヨタ、2位はスバル、3位はホンダ、4位はマツダ、5位は日産、6位は三菱、7位はスズキで8位がポルシェ)、3)潜在的失業者も含めるとドイツの失業率は16%などという衝撃の事実が明らかにされた後、コール元首相もついに統一に対する見通しが甘かったことを告白したことを述べる。

 こう紹介すると統計だけの書物のように思われるが、1980年代には西ドイツには身なりがきちんとした人が多かったのに2006年では運動靴を履きトレーニングウェアを着ている人が目立つようになったとか、知り合いにもホームレスになった人物がいると紹介するなど、ジャーナリストとしての嗅覚を交えている著述が好感を持て、ただの学者論文とは違うところだ。著者によるとこれは「富の偏在」のせいだという。


 また、職人たちは、中欧からの手工業者の流入で職を奪われているとか、年金改革で一番損するのは30歳から50歳の勤労者でごっそり保険料を払わされるのに本人は63歳まで働かないと年金がもらえず、しかも支給額は大幅に減らされるという(なにしろ2050年には100人で115人の年金生活者を支えるというのだから大変な話だ)このへんは日本と似ているところもあれば違ったところもある。

 また、失業女性が問題意識を持つに至り国会議員になったとの報告や、失業者はSPD(社会民主党)が社会的弱者に配慮していないという不満があるなどの記述はどこかの国のとこかの党にとっても参考になるだろう。

 個人的には複合的大企業シーメンスのことについては詳しかったがボーダーフォンによって吸収されたマンネスマンのことも知りたかった。

 いずれにせよ、日本の将来を見据えての好著、お勧めの一冊である。

『大政翼賛会』に抗した40人を読む

2006年08月24日 23時36分54秒 | Weblog
朝日選書新刊の『大政翼賛会』に抗した40人』を読んだ。従来からこの種の書籍の存在を望んでいたところ、格好の出版となった。

 そもそも高校日本史の教科書的知識では東条内閣下の翼賛選挙で非推薦の議員が466名中85名も当選していることは殆ど知られていない。

 本書では、こうした非推薦候補者が演説途中に警官によって拉致されようとするなどの驚くべき妨害を受けていたことの記述も交えつつ、斉藤隆夫、尾崎行雄、鳩山一郎、大野伴睦、三木武吉から世耕弘一(現・世耕弘成参院議員の祖父)に至るまで、人物史的に著述されている。私は不勉強にも世耕弘成参院議員の祖父がこのような政治歴を持っていることを知らなかった。

 各々の政治家の政党政治に対する強い信念とともに感動するのは当時の有権者たちの意識の高さである。

 例えば、戦前の日本には政治家を強力に支援する「木堂宗」「世耕宗」ともいうべき支持者集団があり、政治に嫌気がさした犬養毅(「木堂」は犬養の号)が議員辞職すると支持者が勝手に名前を届けて補選に当選させたであるとか、世耕はタスキは一切つけず有権者には絶対頭を下げず、しかも落選すると支持者が謝りに来たのに「なぜ落とした」と叱りつけたと記されている(59~60ページ)のは興味深い。
 
 一方、政治家の意識の高さにも驚く。
例えば斉藤隆夫が議員を除名された時に「斉藤君が議席を失うことは国民にとって不幸」と議員辞職して補選を実現しようとした(実現せず)若宮貞夫の話(108ページ)、非推薦の川崎克の推薦人に頭山満、岡田啓介、若槻礼次郎らが名を連ねていることは当時の指導者層が決して一枚岩ではなかったことが分かる(134ページ)

 政治に関心を持つ人々必読の書であるとともに、現職の政治家諸氏にはこの残暑の中、頭を冷やす意味でも是非読んでもらいたい。

スウェーデン総選挙と規制緩和

2006年08月24日 02時17分05秒 | Weblog
来月のスウェーデンの総選挙で野党が勝利した場合、減税、福祉削減と並んで国営企業の大幅な民営化が行われる可能性が高い。
http://www.ft.com/cms/s/2d5a39aa-3244-11db-ab06-0000779e2340.html

 野党のレインフェルトは国家の市場への介入を制限すべきと主張、すでに売却予定企業も公表した。ノルディア(銀行)、テリアソネラ(通信会社)、OMX(証券取引会社)、そしてSAS(航空会社)がリスト・アップされている。

 一方、各種世論調査によれば、9月17日に投票される同国の総選挙では 12年間続いた社会民主党政権が終わる可能性が強い。

 スウェーデンの国営企業は57社20万人の従業員を抱え、売却時の価値はざっと5000億スウェーデンクローネ(700億ドル=8兆円)に上るといわれる。

 OMXの経営陣は規制緩和を歓迎、野党はワイン醸造、蒸留酒製造、エネルギー、郵便、製薬、運輸、公営ギャンブル等も売却予定企業に挙げている。マッキンゼーによれば、これら一連の規制緩和が実施されれば、生産性が向上し、雇用回復や税の増収が期待できるということだが、いずれにしても高福祉・重税国の同国が今後どのような経済政策を採るのか、長期的に見守っていきたいものだ。


『週刊新潮』最新号を読む

2006年08月24日 00時13分17秒 | Weblog
『週刊新潮』の最新号に「朝日「靖国社説」変節60年の記事が掲載されている。
http://book.shinchosha.co.jp/shukanshincho/index.html

 遅きに失している。私は昨年11月15日付ブログで
「昭和六十年八月十五日、当時の中曽根康弘首相が「靖国懇」(「閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会」)の答申を踏まえて「公式参拝」した時、朝日新聞は「来年からは公式にならないように」せよと述べていたのである。それがいつの間にか「私的」もまかりならんとなっているのは、中国や韓国などの近隣諸国の政府と諸国民に配慮しているからだ。」
 と指摘したが。同記事ではより詳細に検討してあり、また、「最近は、中国にとっても朝日の記事は却ってありがた迷惑」(獨協大学・上村幸治教授)との指摘もあったりして
一読に値する。

 そもそも「靖国問題」とは①歴史問題(A級戦犯の問題はこれに含まれる)②憲法問題から構成されており、中学受験生なら小学生でもこんなことは常識である。だから、真の報道機関であれば、中国に対し、①のみの強調は問題の本質を取り違えている、と堂々と反論すべきなのである。

 それがいつの間にか「中韓が批判するからいかなる参拝もまかりならん」というのは全くお門違いとしかいいようがなく、その自己反省なき「変節」振りは新潮ならずとも腹に据えかねるところだ。

 ちなみに今週号の広告が朝日新聞にも掲載されていたのには大いに笑った。


 まあ、朝日はどうしようもないので無視するとしても、その他のマスコミのA級戦犯合祀問題に対する取り上げ方も浅薄皮相極まりない。

 あるワイドショーでは、A級戦犯(東条英機と広田弘毅)の孫2人の気持ちを述べさせているが、そもそも孫が「遺族」に当たるかどうかは微妙であって、何か「見識」らしきことが期待できるのか私は疑問だし、もし遺族に当たるとしたらそれこそ「当事者」なのだから意見を聞くのはむしろ控えるか参考程度にとどめるべきだろう。

 そういう意味では、次期首相最有力候補の安倍晋三も(A級ではないが)「戦犯」岸信介の孫ということになると完全な部外者ではなく、むしろ当事者であることに注意する必要がある。

 ところで先日のTV取材で、東条英機元首相の孫が「靖国に祀られても別にいいと本人は思っているのでは」と述べているが、2つの理由から私はそれはないと思う。
1)東条英機は拘束される直前に自決を試み、失敗している。自決した場合靖国に合祀されないことは本人周知のはずである。すでにその覚悟が出来ていた人間が今更絞首刑になって祀られることを希望するだろうか。(その意味では終戦時の陸相阿南惟幾や最後の特攻をした宇垣纏海軍司令官も変則的合祀である)

2)「生きて虜囚の辱めを受けず」との教えで知られる「戦陣訓」は東条の手になるものである。その意味ではまさに作成した本人がこの訓戒に反している。通常の神経の持ち主であれば尚更神として祀られようとは思わないだろう。

 そもそも東条は能楽師の家系の出という。江戸時代の能楽師出身の政治家といえば、6代将軍に仕えた側用人・間部詮房(まなべ・あきふさ)がいる。能楽師出身の側用人ではもともと武士でないから自決ができないのも無理ないだろう。

 阿南陸相は「介錯は」と尋ねた部下に「無用」と叫び激痛に煩悶しつつ息絶えたという。武士にとって切腹時の介錯は斬首とは違い必ずしも不名誉ではないが、「一死をもって大罪を謝す」との立場とは相容れなかったのだろう。

 軍人でありながら拳銃での自決にも失敗した東条、その子孫にあれこれ聞くこと自体、彼を過大評価することにつながると思う。

『若冲と江戸絵画展』を観覧

2006年08月22日 21時51分49秒 | Weblog
 東京国立博物館のプライスコレクション『若冲と江戸絵画展』を観覧した。
http://www.jakuchu.jp/

 伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)は正徳6年(1716年) 生まれの京の絵師。図様について狩野派の絵本との類似点も指摘されているが、宋元画(濃彩の花鳥画)に学び、実物写生に移行、濃彩の花鳥画を得意とし、独特の感覚で捉えられた色彩・形態が特徴だ。代表作は鹿苑寺大書院障壁画50面(国重要文化財)。高校日本史程度では殆ど学習されることはない。若冲を専門的に見直したのは美術史家の辻惟雄(つじのぶお=東大教授を経て現在多摩美術大学学長)である。

 今回は江戸時代の個性的な画家の作品を収集したジョー・プライス氏の若冲を中心としたコレクションの展示となっている。

 伊藤若冲は近年に至るまであまり知られていなかったと思う。が、今回は観覧者の多さに驚いた。しかも若い人が多い。今回、『R25』や『BRUTUS』でも紹介されていたからだろうか。作品を端から順番に丹念に見ていた人が多かったことからも美術史通というよりはアートとして楽しみに来ていた人が多かったように感じる。


 展示中の圧巻は大作「鳥獣花木図屏風」(NO.50)である。象、虎、ロバをはじめ多種多様な動物や花を描いた六曲一双の屏風は威容を誇っており、モザイク様の部分からなる技法は大変珍しい。しかしこの作品には署名がなく100%若冲の作品といいきれるわけではない。

 今回の展示では若冲の作品の定番となる「鶏」を扱った作品は比較的少なく、3点余にとどまっている。オーソドックスなものは旭日雄鶏図(NO.45)であるが若冲40歳ころの作品と推定され、有名な「雪中遊鶏図」(細見美術館蔵。今回は出品されず)のような躍動感は感じられない。

 実は若冲の展示会は近年各地で行われているが、首都圏では一昨年の2月~3月に横浜高島屋で開催された『若冲と琳派』の作品が秀作揃いだった。ここには上述の「雪中遊鶏図」のほか、江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一の秀作も展示されていた。

 むしろ今回の展示では、技法の確認という点で美術史的な興味を満たすものがいくつかあった。例えば『雪中鴛鴦図』(NO.48)では後の「雪中遊鶏図」にも共通する、雪を溶解風に描く独特の技法が用いられていたし、京の森狙仙による『梅花猿猴図』(NO.26)の毛の描写法や酒井抱一の十二か月花鳥図(NO.90)では若冲にも見られる、樹木の枝ぶりの躍動的なリズム感やバランス感覚を楽しむことができる。

 27日まであと僅かの展示となったが、平日に行かれると楽しめるのではないだろうか。



韓国、対北コメ支援再開

2006年08月20日 01時59分56秒 | Weblog
韓国の一部団体が北朝鮮に対して、洪水を口実に、世界食糧計画(WFP)と共同で支援物資を送ることになり、北も受け入れる意思を示したとのことだ。
http://www.iht.com/articles/2006/08/17/news/nkorea.php
http://www.iht.com/articles/2006/08/18/news/web.0818korea.php

世界食糧計画によるコメ支援は4千トン、小麦粉150トン。別途韓国赤十字が10万トンのコメ支援を行うという。現在韓国政府が停止しているコメ支援は50万トン。 韓国大学のNam Sung Wook教授は「韓国政府は本音では支援停止はしたくないので災害は米国の反発を招かずに人道支援再開を行う絶好の口実になる」と解説している。

 今回この発表したのは韓国統一省、ということは韓国赤十字は韓国政府のダミーということだ。

 いずれにしても北朝鮮政府が苦境に陥っており、しかし、面子から米国をはじめとする諸国に支援を要請できないというのは事実のようである。

 実は北朝鮮の被害の実態は謎のままで韓国統一省でも把握していないという。
北に対して友好的な韓国の支援団体「良友」の推定では、230もの橋が倒壊、死亡者5万7千人が死亡もしくは行方不明で240万人が家を失ったというのだがいくらなんでも大げさすぎる。大体どうすればそんなに死亡できたり行方不明になれるのか全く不可解だ。同団体は90年代の北朝鮮の死亡者は300万人だというが、これまた針小棒大である。

 韓国統一省では「良友」の推定は余りに誇張されているとしている。ただし「良友」がかつて推定した飢饉による2百万人の死亡はその後米国議会の調査で肯定されている。

 今回の北朝鮮の被害について、韓国の政府系メディアは死亡550人、300人不明としているが、これが正しいところだろう。

 韓国政府は直接7200万ドルの寄付を行う。同政府はこの動きはミサイル発射に対する姿勢を変えるものではないとしているが、分かったものではない。

 いずれにせよ、金泳三・前韓国大統領が言うように、韓国の現政権は北朝鮮の応援団のようだ。


マイク・モチヅキの靖国論

2006年08月18日 21時28分29秒 | Weblog
 16日付FTに米国の知日家マイク・モチヅキ氏の靖国問題への提案が掲載されている。
https://registration.ft.com/registration/barrier?referer=http://search.ft.com/searchResults?queryText=Yasukuni+shrine+&javascriptEnabled=true&x=19&y=3&location=http%3A//www.ft.com/cms/s/1a567b88-2cc3-11db-9845-0000779e2340.html

 同氏は、中韓両国は後継者へ抑制を促すため今年になってから小泉首相の靖国参拝に対する批判を自制してきたが、もし後継総理も参拝した場合には却って反動が大きくなると指摘、以下の方法により後継者(安倍氏)は問題を解決してはどうかと提案している。

1)靖国神社内の「遊就館」の展示内容を抜本的に改め、バランスの取れた歴史観に基づくものとする。

2)日本人自身が自発的に戦争行為・責任問題への取り組みを行う。

3)神社境内の「鎮霊社」が差別のない戦死者の鎮魂の場となっており、閣僚や天皇も問題なく参拝できるような施設となる可能性を秘めている。

 最後に、同氏は、野党民主党の小沢代表はあえてこの問題を内政問題化し、来年参院選の争点化しようとしているとも指摘している。

 FTでは8月14日から16日にかけて靖国問題だけで8本の記事が掲載されている。いずれにしても欧州の1メディアでこれだけ詳細かつ具体的に靖国問題が取り上げられている事実そのものに注目したい。


カミーユ・クローディル展を鑑賞

2006年08月16日 22時53分35秒 | Weblog
 府中市美術館のカミーユ・クローディル展を鑑賞した。

http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/frame/frame-01.html

 カミーユ・クローデルは、19世紀の女性彫刻家で巨匠オーギュスト・ロダンの弟子かつ愛人であった女性で、1988年には「カミーユ・クローディル」という題名の映画もフランスで製作(日本でも上映)されている。

 今回展示の代表作には「分別盛り」「波」などがあり、前者はロダンとの離別をモチーフにしているともいわれる。

 しかし何といっても圧巻なのはパンフレットの表紙になっている『心からの信頼』であろう。展示会場劈頭に置かれているその作品は、ロダンとの親密な関係の時期に製作された作品であり、ロダンとの関係を彷彿させるようなそのみずみずしい、躍動的だが繊細なありようは、まさに当時稀有な女性彫刻家であったカミーユの天才を余すことなく示している。

 府中市美術館は企画展でありながら800円で観覧できるほか、建物そのものへの入場は無料となっている。

 さすが競馬場と競艇場、東芝府中工場等々を有する屈指の富裕市らしく、市営公園の中にある同美術館は散策、鑑賞に最適な環境といえる。

 みなさまも一度多摩にも足を伸ばされてはいかがだろうか。

靖国神社に21年振りに終戦記念日に参拝

2006年08月15日 21時24分29秒 | Weblog
総理大臣と同じく靖国神社に21年振りに終戦記念日に参拝した。前回は1985年、当時の中曽根総理の公式参拝を直接確認している。

 十年一昔というように20年もの年月はやはり大きく、以前見かけた傷痍軍人の方や「憲兵」の腕章を巻き軍刀を下げた軍服姿の人や38式歩兵銃を持ち寄った元兵士の人々の姿はなく、軍服を着ている元兵士の方は見たところ約1名で、他はコスチュームとして着ている若い人々だった。

 私が参拝したのは昼前であったが、参拝者の中に80代の方は全くといっていいほど見当たらず、大半が60代以下の戦中または戦後生まれで約2割が30代以下であった。展示館の「遊就館」では30代以下の人々が4割を占めており大混雑だった。

 出口近くの感想ノートには、小泉総理の靖国参拝について賛否両論が記されていたが、見た限り戦争を美化するような記述は見当たらなかった。

 「遊就館」は今年すでに一度訪問していたが、本日改めて展示を検討した。その結果、以前の感想と同じく歴史認識についてそれほど大きな偏りがあるとは感じなかった。

 私も不勉強な部分があるため、具体的により深く学ぶ必要がある部分として以下の点をメモした。

1)ワシントン会議(について):アメリカ主導のアジア新秩序形成、日本への抑圧が目的(との記述)
2)満州からの撤退:日本の国家防衛線の破棄を意味
3)満州民族の国家:歴史上、高句麗、渤海、遼、金、後金がある
4)北支事変:西安事件以降反日行動が激化し、中国正規軍の日本軍への不法攻撃により起こった。発端  は盧溝橋で夜間訓練中の日本軍への射撃事件が発端
5)南京虐殺:「南京攻略作戦」
6)ノモンハン、張鼓峰事件:敗北とは記述せず。ただし日ソ兵力比については詳細な記述あり= 第2次ノモンハン事件(ソ連総攻撃)戦車・装甲車・飛行機の比較日本=0,0,103  ソ連=498,385,515 張鼓峰事件(ソ連二次攻撃)戦車・飛行機の比較 日本=0,0  ソ連=285,250)

7)鉄類、石油、機械類についての日本の海外依存度(太平洋戦争直前)の展示

8)日米交渉:天皇は平和的解決への努力を要望 。米国は日本に先制攻撃させ被害を最小にする方法を  検討。 ハル・ノートは交渉決裂を迫るに等しい内容
9)ミッドウェー海戦:「打撃深刻で攻防逆転の最大原因となった」(損害詳細表示あり)
10)インパール作戦:体力の限界を超えた将兵の撤退は悲惨をきわめた
11) 特別攻撃隊:参加した中尉 の遺書 内容=大任を受けて恐懼感激、身の光栄
12)ソ連の満州侵攻:ソ連大兵団157万人5500戦車による
13)阿南惟幾・陸相の血染めの遺書(合祀=昭和34年)
14)宇垣纏中将・第五航空艦隊司令長官の終戦後特攻出撃(合祀=昭和29年)
15)東京裁判のパール判事の言葉:「 欧米こそ憎むべきアジア侵略の張本人 誤られた歴史は書き換え   られねばならぬ」
16)伏竜特攻隊:簡易潜水服、竹竿の先端の棒機雷

 いまやこれらの展示は学校教育に代わって「事実」を若者に伝える役割を果たしているようだ。ノートの感想にも事実を知って新鮮だったという感じが伝わってきた。

 遊就館の展示は、主として戦史の展示であって戦争全般の展示ではなく、むしろ実感はなかったのではなかったかと思うのだが、この結果「体験」より「知識」が優先しはしないだろうか。