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『構造改革の真実』を読む

2007年02月14日 02時29分38秒 | Weblog
『構造改革の真実』(竹中平蔵 日本経済新聞社 12月20日刊)を読んだ。

 本書によって改めて牢固とした官僚組織の厚さ、族議員の跳梁振りを確認したわけだが、その中で孤軍奮闘した竹中氏の行動がもっぱら実務面から、抑えられた筆致で記録されている。また、経済財政担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣と小泉内閣の「構造改革」の全てに関わった著者ならではの実話に富んでいる。

 内容は大きく分け、金融システム再生や郵政民営化、地方自治の変革についての回顧談が大半、そして最終章が「経済財政諮問会議」の運営についての記述となっている。

 思わず膝を叩いたのは、竹中氏は、民主党が郵政民営化について、政府案よりラジカルな案を出すことを恐れていたが、法案に反対したため本当に助かったと述懐しているくだりである。そしてこのことを知って小泉首相は笑みを浮かべたというくだりだ。民主党幹部は本書を熟読玩味すべきであろう。


 さて、回顧談についてだが、細部はともかく、各制度改革についてはマスコミの報道を見ていればその概略は分かるわけで、本書の価値はまさに第4章の「経済財政諮問会議の真実」の記述内容にある。

 私は、同組織をはじめ各審議会は事務局がアルファでありオメガであるとの認識を持っている。というのもこうした組織はそのほとんどが官僚のお膳立ての上での「パフォーマンス」にすぎないからだ。それを実ならしめようとし、しかもそれを実行した著者の実務能力(スタッフも含め)は賞賛に値すると思う。本書ではその内容(秘訣)が細部にわたり公開されたという意味で価値がある。やはりというべきか、民間議員のペーパーも実は竹中氏がお膳立てしてストーリーを綿密に造っていたことが明かされている。

 たとえば同氏が経済財政担当大臣を退いた後、与謝野氏が担当大臣になると、みるみる民間議員が官僚のペースにハマっていく様や、「完全民営化」と「完全に民営化」の大違いなワケなど、官僚の手練手管の数々に、官僚組織を熟知していない人々は思わず息を呑むのではないか。

 5年5ヶ月にわたる小泉内閣で唯一最初から最後まで閣内にあり、その経済政策の全てにかかわったのが、(もともと)民間人の著者であったこと、そして、著者が再三にわたって「特定の利害関係のない」民間人が政策をリードすることの重要性について触れていることは、「ではいったい国会議員とは何のためにいるのか」ということを逆説的に示唆しているようだ。

 本書全体を読むと(もし記述が事実だとすれば)小泉総理の、官僚組織の実態についての認識、ブレない姿勢、大筋の理解力の確かさ、要所要所での締め、人間の機微についての配慮がとりわけ印象的だった。読後、たしかに小泉は歴史的に稀有の総理であったという感想を得た。そして竹中氏が小泉退陣とともに政治家を辞めたことは誠に時宜を得ていたと感じたのである。


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