次世代総合研究所・政治経済局

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『週刊新潮』最新号を読む

2006年08月24日 00時13分17秒 | Weblog
『週刊新潮』の最新号に「朝日「靖国社説」変節60年の記事が掲載されている。
http://book.shinchosha.co.jp/shukanshincho/index.html

 遅きに失している。私は昨年11月15日付ブログで
「昭和六十年八月十五日、当時の中曽根康弘首相が「靖国懇」(「閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会」)の答申を踏まえて「公式参拝」した時、朝日新聞は「来年からは公式にならないように」せよと述べていたのである。それがいつの間にか「私的」もまかりならんとなっているのは、中国や韓国などの近隣諸国の政府と諸国民に配慮しているからだ。」
 と指摘したが。同記事ではより詳細に検討してあり、また、「最近は、中国にとっても朝日の記事は却ってありがた迷惑」(獨協大学・上村幸治教授)との指摘もあったりして
一読に値する。

 そもそも「靖国問題」とは①歴史問題(A級戦犯の問題はこれに含まれる)②憲法問題から構成されており、中学受験生なら小学生でもこんなことは常識である。だから、真の報道機関であれば、中国に対し、①のみの強調は問題の本質を取り違えている、と堂々と反論すべきなのである。

 それがいつの間にか「中韓が批判するからいかなる参拝もまかりならん」というのは全くお門違いとしかいいようがなく、その自己反省なき「変節」振りは新潮ならずとも腹に据えかねるところだ。

 ちなみに今週号の広告が朝日新聞にも掲載されていたのには大いに笑った。


 まあ、朝日はどうしようもないので無視するとしても、その他のマスコミのA級戦犯合祀問題に対する取り上げ方も浅薄皮相極まりない。

 あるワイドショーでは、A級戦犯(東条英機と広田弘毅)の孫2人の気持ちを述べさせているが、そもそも孫が「遺族」に当たるかどうかは微妙であって、何か「見識」らしきことが期待できるのか私は疑問だし、もし遺族に当たるとしたらそれこそ「当事者」なのだから意見を聞くのはむしろ控えるか参考程度にとどめるべきだろう。

 そういう意味では、次期首相最有力候補の安倍晋三も(A級ではないが)「戦犯」岸信介の孫ということになると完全な部外者ではなく、むしろ当事者であることに注意する必要がある。

 ところで先日のTV取材で、東条英機元首相の孫が「靖国に祀られても別にいいと本人は思っているのでは」と述べているが、2つの理由から私はそれはないと思う。
1)東条英機は拘束される直前に自決を試み、失敗している。自決した場合靖国に合祀されないことは本人周知のはずである。すでにその覚悟が出来ていた人間が今更絞首刑になって祀られることを希望するだろうか。(その意味では終戦時の陸相阿南惟幾や最後の特攻をした宇垣纏海軍司令官も変則的合祀である)

2)「生きて虜囚の辱めを受けず」との教えで知られる「戦陣訓」は東条の手になるものである。その意味ではまさに作成した本人がこの訓戒に反している。通常の神経の持ち主であれば尚更神として祀られようとは思わないだろう。

 そもそも東条は能楽師の家系の出という。江戸時代の能楽師出身の政治家といえば、6代将軍に仕えた側用人・間部詮房(まなべ・あきふさ)がいる。能楽師出身の側用人ではもともと武士でないから自決ができないのも無理ないだろう。

 阿南陸相は「介錯は」と尋ねた部下に「無用」と叫び激痛に煩悶しつつ息絶えたという。武士にとって切腹時の介錯は斬首とは違い必ずしも不名誉ではないが、「一死をもって大罪を謝す」との立場とは相容れなかったのだろう。

 軍人でありながら拳銃での自決にも失敗した東条、その子孫にあれこれ聞くこと自体、彼を過大評価することにつながると思う。


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