次世代総合研究所・政治経済局

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『大政翼賛会』に抗した40人を読む

2006年08月24日 23時36分54秒 | Weblog
朝日選書新刊の『大政翼賛会』に抗した40人』を読んだ。従来からこの種の書籍の存在を望んでいたところ、格好の出版となった。

 そもそも高校日本史の教科書的知識では東条内閣下の翼賛選挙で非推薦の議員が466名中85名も当選していることは殆ど知られていない。

 本書では、こうした非推薦候補者が演説途中に警官によって拉致されようとするなどの驚くべき妨害を受けていたことの記述も交えつつ、斉藤隆夫、尾崎行雄、鳩山一郎、大野伴睦、三木武吉から世耕弘一(現・世耕弘成参院議員の祖父)に至るまで、人物史的に著述されている。私は不勉強にも世耕弘成参院議員の祖父がこのような政治歴を持っていることを知らなかった。

 各々の政治家の政党政治に対する強い信念とともに感動するのは当時の有権者たちの意識の高さである。

 例えば、戦前の日本には政治家を強力に支援する「木堂宗」「世耕宗」ともいうべき支持者集団があり、政治に嫌気がさした犬養毅(「木堂」は犬養の号)が議員辞職すると支持者が勝手に名前を届けて補選に当選させたであるとか、世耕はタスキは一切つけず有権者には絶対頭を下げず、しかも落選すると支持者が謝りに来たのに「なぜ落とした」と叱りつけたと記されている(59~60ページ)のは興味深い。
 
 一方、政治家の意識の高さにも驚く。
例えば斉藤隆夫が議員を除名された時に「斉藤君が議席を失うことは国民にとって不幸」と議員辞職して補選を実現しようとした(実現せず)若宮貞夫の話(108ページ)、非推薦の川崎克の推薦人に頭山満、岡田啓介、若槻礼次郎らが名を連ねていることは当時の指導者層が決して一枚岩ではなかったことが分かる(134ページ)

 政治に関心を持つ人々必読の書であるとともに、現職の政治家諸氏にはこの残暑の中、頭を冷やす意味でも是非読んでもらいたい。


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