次世代総合研究所・政治経済局

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ライスの不注意発言の代償とは

2006年08月01日 01時04分49秒 | Weblog
ライス米国務長官の対中東政策が批判を浴びている。

 すでにライスの対アジア、中東政策が実質的に破綻していることはこれまでブログでも繰り返し述べてきたことなので敢えて多言は要しないかもしれない。しかし、今回はあまりにも顕在化しすぎたために国内外から集中砲火を浴びることとなった。

 まずライスは、第5次中東戦争にもなりかねない今回のレバノン紛争を「新たな中東への生みの苦しみ」("birth pangs of a new Middle East")とコメントしている。このコメントは日本国内ではあまり語られることがないのだが、最初英米系の報道メディアで読んだときに私は唖然とした。中東の専門家か関係者ならば誰でも同じ感想を持つのではないだろうか。

 このことについて本日付FT(アジア版・電子版)ではようやく詳しく述べている。
http://www.ft.com/cms/s/9d8f61bc-2030-11db-9913-0000779e2340.html

 同紙によれば、ライスのこのコメントが、カナでの虐殺によってただでさえ反イスラエルのみならず反米になっているアラブ世論の、米国政府に対する怒りに油を注いだという。

 同紙はライスに対してはやや好意的でライスの発言はこれまでの米国の対中東政策を繰り返しただけだったのかもしれないとのべているが、この表現がパレスチナやレバノンの抵抗勢力を排除し、米-イスラエルによる中東の覇権確立の意図を感じさせるものだけに過激派のみならず穏健勢力の怒りも買ったのは事実だと指摘した。

 さらにアラブ人を怒らせているのは、中東地域をテロとの戦いという視角からしか見ないため、アルカイダも他の合法的抵抗運動も同列にみなしていることだともいっている。

 また、レバノンでライスは即時停戦ではなく、ヒズボラの武装解除の可能性のある持続的("durable" )停戦を求めたこことについて、世界はこれをヒズボラ掃討までのイスラエルへの時間稼ぎを見ていると述べる。

 最後に、レバノン市民の犠牲者が増えるにつれてヒズボラの政治的勢いは高まっているとし、ベイルートの『デイリースター』紙で89%が米国を誠実な仲介者とは見ておらず、ヒズボラのイスラエルへのロケット攻撃を89%が支持しているという世論結果を報告している。

 最後の締めはエジプトの政治アナリストである Mostafa Kamel al-Sayed氏の発言「米国はアラブ人のメンタリティやヒズボラの本質を理解しておらず、米国の中東政策や民主主義に関する発言はアラブでは信用されていないのでレバノン政策は失敗する」を掲載していた。