次世代総合研究所・政治経済局

現代の日本および国際政治経済に関する隠れた視点を、国内のどのメディアよりも早く提供するページです

『文藝春秋』8月号を読む

2006年07月17日 23時46分33秒 | Weblog
『文藝春秋』8月号「中国と靖国どっちがおかしい」では、上坂冬子が加藤紘一、古賀誠ら政治家と靖国参拝について対談している。このふたりの政治家はご存知の通りもとは宏池会同士である。

 上坂はあいかわらずのしゃべりだが、ここではいつもながらの靖国神社についてのくだくだしい議論の蒸し返しの紹介はしない。

 印象的なのはすでに政治家としての長老の域に入る加藤紘一の戦争観が80歳過ぎの体験者に拠らざるをえなくなっている事実である。また韓国の盧泰愚大統領が国会本会議で創氏改名を強いられた民族の心の痛みに触れながらも「それを阻止できなかった私たち自身の弱さを反省」する必要性について述べたとの話や、現在の中共政府要人の発言は以前とは違い、風格のないものになっているとの加藤の指摘が印象的だった。

 一方、古賀氏は「ウルトラC」といえる「靖国神社の国家護持」=神社を脱神道化(国営化)して鳥居を撤去=を提案しているが「頭の体操」として面白い。

 上坂氏は最近は新しい追悼施設建設の可能性についても論及しているらしく、靖国神社前宮司と靖国神社の敷地内に神道以外の宗教を包括する追悼施設の建設を一案と述べているのは新鮮だった。

 このほか、「白州次郎 プリンシプルの男」では個人的に親交のあった細川護煕(元首相)の語るエピソードが興味深いし、「何で小学校で英語やるの」では、小学校の人材不足が反対の大きな根拠として挙げられており現実論として説得力があった。もうひとつの理由は「日本語もできないのに英語ができるわけない」というおきまりの理屈である。私は「じゃあ、いまの中高生や大人は日本語が満足にできるようになっているのか」と思っているが、今ここでは論じないことにする。

 「団塊はフリーターと連帯せよ」ではごくごく当たり前の論が展開されている。政治家諸氏は一読すべきだろう。

強まる中国のメディア規制

2006年07月17日 00時53分22秒 | Weblog
強まる中国のメディア規制  中国政治経済
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 中国では先月28日に国務新聞弁公室がブログ規制強化について表明したが、実は外国メディアを含むメディアに対し、突発的事件の取材に対して政府の許可が必要で、これに反した場合には罰金最高12500ドル(140万円)とする法律が現在中共によって練られていることについては日本メディアではほとんど紹介されていない。

 これまでかずかずの中国国内暴動について書いてきたが、年間数万にも上るといわれる国内の騒擾が、今後、北京五輪開催に向けての大きな障害になる恐れは十分あり、この法律は情報を遮断することによって何よりもまず五輪を成功させ、かつ、中南海の権力者たちの地位を安定たらしめるために必要なのであろう。

 それにしても全く国際社会の水準に逆行してまでこのような法律の策定を企図しているとは中共もよくよく独裁社会だ。わが国の政府あるいはマスコミはいつまでも「大国」中共に臆し屈することなく、大いに叩いてもらいたいものだ。

『アメリカもアジアも欧州には敵わない』

2006年07月15日 00時30分21秒 | Weblog
『アメリカもアジアも欧州には敵わない』(八幡和郎・祥伝社新書)を読んだ。著者の八幡氏は元通産官僚で現在評論家とちょっと異色の経歴だ。フランス国立行政院(ENA)への留学歴も持つなど欧州の実情に詳しいほか、「江戸300藩 最後の藩主』の著書もあるなど日本史への関心も強い。

 1~2国の歴史や社会についてのべる類書は多いが、本書は少し違う。欧州に関するユニークな入門書であると同時に著者の欧州に対する単なる関心を超えた愛着を感じる。

 30年戦争が近代欧州の源流であることなどスタンダードな歴史を説きながら、現在の北欧、西欧社会の隠れた側面について述べ、果ては各国によって異なるテーブル・マナー、そしてあえて日本人の好みを無視したお勧め観光スポット一覧を掲載するなど、欧州の背景を深く理解したいひとには格好の入門書となっている。

 他にもたとえば、かつてのドイツ社民党党首のラ・フォンテーヌの名前がフランス風でフランス次期大統領候補のサルコジの名前がフランス風でない理由が書いてあったり、「イギリス人の会計係、フランス人の料理人、イタリア人のウェイター、ドイツ人の警察官が理想の国民別職業割り当て」というところは深く納得してしまった。

 欧州に関心がある、あるいは欧州への訪問を考えている方にはお勧めしたい。

中国による北朝鮮の「説得」とは

2006年07月11日 21時50分32秒 | Weblog
中国が北朝鮮を「説得」しているという。

 説得といっても当然のことながら「そんなことをしたら国際社会から非難されるよ」というようなものでないことは確かだ。以下、考えられる「説得の仕方」を考えてみよう。

1.「まずいことになった。まさかロシア向けのあの程度の「実験」で日本があそこまで敏感に反応してくるとは思わなかった。すっかり米国の筋書きに乗っている。逆にいえばオタクは米国の筋書きに載せられているよ。日本ではここぞとばかりに「先制攻撃論」が浮上してきた。日本のタカ派政治家の思う壷になってきている。」

2.「いまロシアのプーチンと「足並み」を合わせて目立たないようにしようとしているところだ。ロシアはサミット開催国なので万一サミットがボイコットされたら顔がつぶれるし、米国や英国は密かにそうやって圧力を掛けてきている。時期がまずい。発射するのはサミットが終わってからにしてくれないか。その代わり今度は日本の領海に発射したとしても安保理では否決に回る。ただ領土に向けての発射はまだやめておけ。」

3.米国には決して撃つな。燃料を入れずにわざと届かなくしたことが専門筋には分かるようにしておけ。とりあえず日本だけを標的にしておき、日本の疑心暗鬼を誘って日米を分断せよ。日本では安倍の支持率が上がってきたが、このままじわじわと脅威を続ければ間違いなく後継は安倍になる。安倍になったところで一気に恥をかかせるようなことをすれば政権を潰せて一石二鳥じゃないか。ウチラにとっても「靖国に行くやつは罰が当たる」といえるので威信を回復できて都合がいい。」

 などであろうか。食糧援助中止などをちらつかしているなどとはとても思えない。なぜなら中国と北鮮の利害は一致(唯一北から難民が来ることだけは中国の不利益)しているからだ。

 ところで英国のBBCの放送では北朝鮮のミサイル発射は「North Korean Missile Test 」と報道されている。つまり実験であったという立場だ。さらにいえばよく日本のマスコミで「日米韓」などと能天気なくくりがされているがBBCでは「中ロ韓」とまとめられている。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5168218.stm

 私も過去のブログで示したように英国金融庁は北朝鮮関連のファンドの上場を認めているし、国交もあってBBCにはよく「前駐北朝鮮大使」なる人物が出てくる。英仏の今後の動きも予断を許さない。

ミサイル発射に関する諸問題

2006年07月10日 23時32分40秒 | Weblog
1)先制攻撃について
 安倍晋三官房長官は10日午前の記者会見で、自衛隊の敵基地攻撃能力向上を検討する必要性の議論を深めていく必要があると述べた。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060710AT3L1002R10072006.html

 確かに過去、政府が国会で「他に手段がないと認められる場合、敵基地をたたくことも自衛権の範囲と考える」と答弁していることは事実であるし、この解釈が自衛権な範囲内であるという解釈も正当であると思う。

 ただし、理論的に可能ではあっても、先制攻撃した場合、「他に手段がなかった」ことをどうやって証明するかが問題になることは自明である。このことの証明ができない場合、実際には攻撃不可能ということになる。防衛庁は慎重だと言うが、技術的にどこまで可能なのか、あるいは何が問題で不可能なのかをはっきりとさせ、一日も早く改善する必要があるだろう。

 2)情報の信憑性について

 私は5日付ブログで述べたが、テポドン2「失敗」説についても額賀防衛庁長官も含め、懐疑的な状況となっている。
http://www2.asahi.com/special/060705/TKY200607050589.html


 3)事実と希望的観測の混同
  麻生太郎外相が国連安全保障理事会に提出した制裁決議案について、ロシアと中国が拒否権を行使せず、棄権に回る可能性があるとの見方を示したという。
 http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20060710STXKA010409072006.html

 中国が棄権した場合、北朝鮮に対する影響力は逆にゼロになる。北朝鮮に対して中国がそう簡単にそうした判断をするだろうか。事実と希望とを混同してはないないだろう。

 4)為政者の意識の低さ

 小泉首相が「プレスリー邸にいるときにミサイルが発射されず、ついていた」「国会を延長しなくて良かった」と自民党幹部らに語ったとのことだ。麻生外相に到っては(国民の意識を高めたという意味でむしろ)北朝鮮に感謝すべき」とすら語ったといわれている。

 ここには危機意識も、また、「護民官」として国民と苦楽をともにしたり、国民を辛苦から救おうという意識はまるで感じられない。悪人ではにのだろうが、つまりは国民の生命・財産を預かる為政者としての意識が低いのである。

アズーリ優勝

2006年07月10日 06時09分34秒 | Weblog
アズーリ(イタリア・サッカー代表)がPK戦の結果、24年ぶり4度目のW杯優勝を決めた。延長戦になって両チームの動きに鈍さが見られたものの、PKも僅差と最後まで拮抗した決勝戦に相応しいゲームだった。
http://fifaworldcup.yahoo.com/06/jp/

 前半PKを決めたフランスのジダンが延長戦で頭突きのため退場になり、有終の美を飾れなかったのは客観的にも悔やまれる。これでPKの結果も変わったかもしれない。最後まで何があるか分からないW杯をよく表した試合だったと思う。

 今回も、あのイングランドのルーニーを一発退場にしたアルゼンチンのエリゾンド主審であったが、冷静で的確なジャッジでゲームをよくコントロールしており、見ていて気持ちが良かった。
http://fifaworldcup.yahoo.com/06/jp/w/ref/38922_ELIZONDO_Horacio.html

 それにしても試合前アズーリの全員が国歌を大合唱していたのは大変印象的だった。どこかの国の代表とはえらい違いだ。

『歴史街道』8月号を読む

2006年07月10日 05時37分03秒 | Weblog
『歴史街道』8月号は白州次郎の特集をしている。
http://www.php.co.jp/magazine/detail.php?code=84220

 最近は白州次郎ブームのようで、書店でも「白州コーナー」が設けられていたりする。
 ケンブリッジ大学に留学し、吉田茂の補佐をして占領下の日本で憲法の草案にも関わったほか、GHQとの直接の交渉に携わり、サンフランシスコ平和条約の締結にも随行する戦後日本の枠組みに大きな影響を及ぼした白州次郎についてはこれまで一部のひとにしか知られていない面があったと思う。

 これまでのもっとも簡便な解説書は新潮文庫の『風の男 白州次郎』であろうが、最近は実に多くの類書が出版されている。
http://www.heiando.co.jp/2005/shirasu.htm

『歴史街道』では、私にとって特に目新しい情報はなかったが、多くの写真が掲載されていて貴重だ。白州の「語録」ではGHQのホイットニー民生局長に「あなたももう少し勉強すれば立派な英語になりますよ」と言ったのが有名だが、「電力の鬼」松永安左衛門に対して「そりゃ、ジイさん、あんたの理屈だ」といったのと「日本ぐらい自分でものを考えるやつが少ない国はない。違ったことをいうと、そこらへん全部ご機嫌が悪い」といっていたのは初めて知った。

 戦後日本について改めて考えるひとびとが増えていることがこの「白州ブーム」につながっているのではないかと思う。

ダバディ氏が日本サッカー協会会長に立候補

2006年07月09日 00時48分45秒 | Weblog
かつてトルシエ・元サッカー日本代表監督の通訳だったフローラン・ダバディ氏が日本サッカー協会会長に立候補?した。昨日8日の朝日新聞に本人のコラムが載っているが、その主張は正論である。
http://dabadie.cocolog-nifty.com/blog/main.html

 いわく、「日本サッカーの成長速度は落ち続けるばかり」「何より気にかかったのは分析や反省の不在」「検証を担うべきマスコミも川淵会長の「失言」に引っ張られ、後任監督の人事ばかりを追っている」「(トルシエ監督のとき)見えたのは商業主義という毒が日本サッカーを害していく様子と、強まる川淵会長の威光を恐れて批判を自粛していく関係者の姿」「Jリーグを創設した会長の功績は偉大だが同じ人が権力のトップに長く座り続ける現状はやはり良くない」「「日本は強国」といった幻想を伝えない」


 そもそも日本には「これが日本のサッカー」という形を追求はしないのだろうか。勝てればいいのか?現在の状況では「トルシエ・ジャパン」「ジーコ・ジャパン」「オシム・ジャパン」になるだけで「ジャパン」がない。

 とにかくW杯に出場しないことにはサッカー・ブームが冷えてしまうと、自転車操業を続けるべく、モルヒネを打っているようにしか映らない。監督を商品のように次々と消費しても残る財産は何もない。

 本当に日本を世界のレベルに近づけるのであれば、小学生の頃から選抜して短期サッカー留学させるとか、強化合宿をし、中学を卒業したら海外のプロリーグに行かせるなどしないとだめだ。

 今回ドイツに行った中にはJリーグのレベルを世界のレベルと勘違いした人々もいたと思う。日本人にとってのW杯を単なるマスコミと旅行会社の金儲けの手段にしてはならない。

あきれた社会保険行政

2006年07月08日 01時34分10秒 | Weblog
昨日のTVニュースによれば、64歳になったので年金受取額について確認しようとした弁護士の方で、過去に転居により大阪社会保険事務所から奈良社会保険事務所に管轄が変わっていた方が、過去に払っていた年金保険料が「未納」扱いになっていて、「領収証も持ってきたら認めてあげる」といわれたという恐ろしい事実を報道していた。

 実はこうした話はそこらじゅうに転がっているらしく、国会でも問題になっている。
http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_dispdoc.cgi?SESSION=19046&SAVED_RID=3&PAGE=0&POS=0&TOTAL=0&SRV_ID=9&DOC_ID=3770&DPAGE=1&DTOTAL=1&DPOS=1&SORT_DIR=1&SORT_TYPE=0&MODE=1&DMY=25974

 原因は電算化された時点での入力ミスや、人間を番号だけで管理しているためのミスらしいが本当に恐ろしいことだ。

 本日の報道によれば、年金不正は22万件を超え、85%は「違法」行為であったという。法を守ることを第一義とすべき公務員が違法行為を行っていたとすれば当然幹部の責任は免れがたい。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060706i214.htm

 年金制度や社会保険庁への信頼は地に堕ちたというべきだが、皆様もまず、過去にご自分が支払われていた年金の総額(総月数)や領収書は確認された方がよさそうだ。

 このような社会保険庁は当然、分割民営化するべきだろう。しかも、給付額も含めたサービスを競争させるために同一地域への複数会社並立制にすべきではないだろうか。現在の保険会社に代行させるのが一番手っ取り早い。社会保険庁職員は民間の保険会社の職員とし、使い物にならない職員には辞めてもらえばいいのではないか。民間会社に人件費が払えるか、という批判もありそうだが、多分今5人でやっている仕事は1人でできると私は思う。

公立小学校での英語教育義務化

2006年07月06日 23時11分38秒 | Weblog
公立小学校での英語教育義務化の動きが進み、英語指導者資格などもある昨今である。私の立場は「やらないよりはましか?」というものだ。

 小学校高学年の記憶力がいい時期に中学で教えている単語のうち5~6割程度を学んでおけば「中学校での落ちこぼれ」が減るかもしれないと思うからだ。

 現在、中高一貫校の生徒たちが(ご覧になればお分かりになると思うが)僅か6年間で高度な英語の試験問題を突破していくことを思えば、そもそも早く始めれば効果があるというのは間違いだ。

 上記の生徒たちは間違いなく中学受験のために英語の勉強などしているヒマはないのだから、小学生から英語を勉強させることは「落ちこぼれ」対策=日本人全員が道案内くらいはできるようにする=効果くらいしかないだろう。高校生でも中学生程度の簡単な単語や文法事項が分かっていない生徒は半数以上いるのだから。

 あとひとつ。小学校高学年ともなれば批判能力もあり、「無能な」あるいは「意欲のない」教師が英語を教えた場合にはむしろ「英語嫌いが早まるだけ」の結果になることもありうる。

 そこで提案したいのは、1)小学校の学習内容は単語の暗記と日常会話、標識の認識程度の学習にとどめ、2)文法は積極的に二の次にする、ということ

 これであれば英語学習の根本的問題である「積み重ね学習の欠如」による落ちこぼれを少なくでき、たとえ落ちこぼれても中学校で一気に挽回できる。

 英語学習を早期化することで、間違っても「ゼアイズゼアアーの分からない高校生」
を増やしてはならない