次世代総合研究所・政治経済局

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『正論』8月号を読む

2006年07月04日 23時48分54秒 | Weblog
『正論』8月号は「媚中政権なら中国は尖閣を占領する」という日高義樹の論文を表紙に大きく取り上げている。表題で結論が分かってしまうし、その結論も当たり前なのだが、この論文の貴重さはむしろ前段部分の、ワシントンにいる日本専門家の分類(①政府をやめた元外交専門家、②国務省、ペンタゴン、CIAの日本専門家、③ホワイトハウスの日本専門家)やホワイトハウスの国家安全保障会議の日本極東部長はライス元補佐官に情報を4年間一度も上げることがないほど軽視されている、という事実の指摘である。

 ついで、日高氏はホワイトハウスの日本に対する関心度はその程度のものであり、小泉後継なども対中国・北朝鮮に弱腰でなければ誰でもいいと無視(軽視)されているといい、たとえ日本が中国から攻撃されたとしても紛争程度であれば米国は動かないと断じていて、小泉訪米における歓迎は米国の極東戦略とは無関係であることが分かる。

 軍学者・兵頭二十八氏は、中国(シナ)は弾道弾を北朝鮮に開発させてイランに売りつけ、欧州を牽制する可能性がありとし、中距離弾道弾は高速で飛ぶので現在開発中のMD(ミサイル・ディフェンス)システムでは迎撃の余裕はないという事実も指摘されている。たしかに日本が米国からMDを購入するというが、どの程度有効なのか、過度な期待は大やけどの元だろう。

 そのほか、連載中の筆坂秀世・元共産党政策委員長と佐藤優・休職外務事務官との対談では鈴木宗男衆院議員の参考人質疑の直前に入手された外務省の内部資料の取り扱いの裏話が大変面白い。

 さらに、私がこのブログで再三にわたって指摘している、バチカンと中共の対立についてついに論文が掲載(評論家の宮崎正弘氏)された。

 以上のように、今月号は貴重な記事にみちていてなかなか読み応えがあった。


中国の対アフリカ戦略(2)

2006年07月04日 12時19分23秒 | Weblog
『CURRENT HISTORY』5月号の「中国のアフリカ政策」内容の続きをご紹介する。
http://www.currenthistory.com/currentissue.html

(1)で紹介したように、中国が対アフリカ外交を重要視する理由は
①資源、②市場、③国際機関での中国外交への支持、④米国への対抗が必要なためとしているが、具体的には、

①-1 中国は世界第二の石油消費国になっており、その他の資源の輸入も毎年20%づつ増えている。
  -2 中国には重要な石油備蓄戦略がない。
  -3 中国は市場で形成される価格に依存したくない。
  -4 中国は石油とガスの28%(米国は15%)をサハラ以南のアフリカから輸入している。
  -5 ジンバブエには石油はないが世界第2のプラチナの埋蔵量があり、クロム、ウラン、金、銀、銅などの非鉄金属が40以上も産出する。


② -1 中国の対アフリカ貿易は2004年から5年にかけて35%増加、エチオピアへの輸出は93%増加
  -2 05年に中国はアフリカ25カ国からの輸入品190品目について関税を撤廃。


③ -1 国連人権委員会など国際機関での自国権益擁護のため、常任理事国の力を使ってジンバブエやスーダンやエリトリアなど人権蹂躙が甚だしい諸国の擁護に回り、相互に協力している。ダルフールでの虐殺の実態を明らかにせず、スーダンを擁護したことはひとつの例。

  -2 台湾を国として認知するアフリカ諸国を減らすことに腐心しており、05年にはセネガルが台湾認知を撤回、エチオピア国会は中国の「国家分裂(防止)法」を支持した。

  -3 中国の2002年のアフリカ諸国への経済援助は18億ドル、2000年には債務帳消12億ドル、03年に7.5億ドルを行ったが、最近は正確な数字を公表していない。

  -4 中国へのアフリカ人留学生は03年に1793人。中国は1万人へと計画している。

  -5 中国はエチオピア、ケニア、ジンバブエをはじめとするアフリカ16か国につき海外旅行渡航先制限を解除、2005年には11万人と1年で倍増した。

④ -1 中国はアフリカ諸国への通常兵器の輸出で世界最高で、特にジンバブエ、スーダン、エチオピアといった戦略的に最重要な諸国との軍事交流に力を注いでいる。

  -2 05年にはジンバブエに戦闘機6機を04年には12機の戦闘機、100両の戦闘用車両を輸出、総額は2億4千万ドルに上る。

  -3 中国のスーダンへの最大の武器供与国でもあり、内戦時には戦車、戦闘機、ヘリ、マシンガン等々を供与、

  -4 98年から02年までのエチオピアとエリトリアの戦争では米国の武器禁輸を迂回して両国に総額10億ドルの武器を供与。エチオピアと中国は05年に軍事訓練、武器技術供与等で相互に協力することに合意。

 以上、これらの記述については部分的に(特にエネルギー政策などは聞き書きになっており)事実や背景についてより精査する必要はあるが、現在の米国の中国研究のひとつの水準を示すものとして興味深い。

中国の対アフリカ戦略(1)

2006年07月04日 02時22分03秒 | Weblog
『CURRENT HISTORY』5月号のJoshua Eisenman、Joshua Kurlantzick 両氏による「中国のアフリカ政策」が興味深い。
http://www.currenthistory.com/currentissue.html

 著者はそれぞれの米国外交政策評議会(AFPC)とカーネギー財団の客員研究員だが、
http://www.afpc.org/eisenman.shtml
http://www.carnegieendowment.org/experts/index.cfm?fa=expert_view&expert_id=260&prog=zch

中国の対アフリカ戦略が平明、簡潔にまとめられていて有益である。

 同論文によれば、中国が対アフリカ外交を重要視するのは、
①経済成長のための資源。
②輸出先としての市場開拓。
③国連など国際機関での中国外交への支持。
④中国国益を促進(&米国に対抗)する同盟国。

の4つが必要なためだという。そして、米国が過去数十年間にサハラ砂漠以南のアフリカ諸国を軽視している間に中国は着々とこれら諸国に死活的経済援助を行い、諸国の政治・経済首脳と強固な関係を構築し、40以上の諸国と主導的通商関係を築き、更には軍事関係にまで発展させていると説く。

こうした中国関係の専門家の意見がホワイト・ハウスに届くことはあまりないのだろうが、米国でも遅ればせながら中国のアフリカ重視外交が注目されているひとつの例であろう。内容については引き続きご紹介していきたい。