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アディクションとかその他日常の事

アルコール依存症の治療、その2:二重拘束

2006-06-23 13:39:24 | アルコール依存症
さて、今まで説明した理論が正しいとすると、アルコール依存症を治療するためには酒に対する嫌悪感・飲酒に対する罪悪感をなくせばいいという事になります。

酒に対する嫌悪感・飲酒に対する罪悪感は、どこから発生するのでしょうか(これは原因の部分で論ずるべきでしたね)。
当然の事ですが「アルコールを嫌悪し罪悪感をもつ遺伝子」なんて存在しませんので、それらは生育環境の中で培われます。
最も影響が大きいのは両親、配偶者です。例えば自分が酒を飲む時に、親、配偶者に嫌な顔をされたり説教されたりしたらどうなるでしょう。そう、酒が不味くなります(^_^;)。
そして次第に飲むことに罪悪感を感じるようになるでしょう。

例えば親がアルコール依存症の家庭に育った場合なら、当然酒が嫌いになるでしょう。また、夫が酒を飲むことを良しとしない妻が「お酒飲んでばっかりで、暴言ばっかりで、私の事虐めるあなたが嫌い!イヤイヤ!!ウザイ!お酒やめて!虐めないで!」というメッセージを伝えると、嫌悪感と罪悪感がいや増すばかりで症状は悪化の一途をたどります。

そのように培われたものは、やはり親密な関係にある人によってしか解消し得ないものです。例えば妻が「あら、お酒を飲むのはいい事よ。気持ちよく飲んでね」というメッセージを伝えつづければ、次第に罪悪感や嫌悪感が低減します。こうする事で同時に二次嗜癖(アルコール等の物質依存)から一次嗜癖(人間関係依存)へ、そして最終目的である「基本的欲求に基く甘えの充足」へと続く転換を開始することができます。

ところがここに大きな問題があります。それは二重拘束です。
二重拘束とは、ベイトソンという人が提唱した現象で、簡単に言えば言葉と逆の意味が言外に伝わるという現象です。
例えば、登校拒否児童の親には「子供に学校に行かなくてもいい」とメッセージを送りなさいと指導されるわけですが、言葉で「登校は不要」といったとしても、親に「学校に行って欲しい」という気持ちがあると、口調やしぐさにそれがあらわれて、「登校は不要」とともに「学校に行け」というメッセージが伝わる事があります。二重拘束とはこういった現象を指します。

二重拘束は親密な二者間に生じる現象で、一度発生すると解消する事が出来ません。 これがあるために、妻(母)が「あなた、お酒を飲むのは悪い事じゃないのよ、気持ちよく飲んでね」と言っても、言外に「飲むな!」という逆の意味が(発した本人にまったくその気持ちが無くても)伝わるために、飲酒の罪悪感の払拭が出来ないというものです。

又吉氏の定義するところの二重拘束は
1:親しい人間関係で生じる(甘えが関係しているため、他人の関係では発生しない)
2:原因は言語を発する方、または受け取る側に「甘えたくても甘えられない状況からくる拗ね・僻み(すね・ひがみ)」があるため。発する側に拗ね・僻みが有る場合を第一種二重拘束、言語を受け取るほうに拗ね・僻みがある場合を第二種二重拘束と呼ぶ。
3:理論的には双方が互いに完璧に甘えられる関係になれば、この状況は解消するのだが、それは不可能なので、心理的に他人にならない限り解消出来ない。
というものです。

二重拘束を外すのためには、例えば第三者を間に入れる事で可能です。カウンセリングでの夫婦面談などがそれにあたるでしょう。妻が夫に伝えたい気持ちをカウンセラーに話し、それを夫が横で聞く形の場合は二重拘束が外れます。

しかし、毎日毎日飲む前に夫婦でカウンセラーに会いに行って、妻が飲酒は悪くないといい続けるのは、物理的にも金銭的にも無理があります。

そこで登場するのが「神」です。


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アルコール依存症の治療、その1:しがみつきと依存症

2006-06-09 14:49:19 | アルコール依存症
色々と、頭の中だけが(笑)、忙しかったので更新が滞ってました。

さて、いよいよアルコール依存症の治療法に関してですが、今日は治療法のとっかかりとして、「しがみつき」と「依存症」の違いについて書きたいと思います。

「しがみつき」というのは、よく子供が汚れたタオルをいつも離さず、いくら父母が頼んでもそれを洗わせてくれないような状態を指し示します(この場合はタオルにしがみついている事になります)。
タオルを無理やり子供から奪い取ると、子供は半狂乱になってタオルを奪い返そうとしたりします。

しがみつきは、しがみつく対象物が安心感を与える存在になっている時に発生します。子供にとってタオルは自分に安心感を与えてくれる大事な存在になっています。いわばタオルは母親の代替物になっているわけです。

一般のアルコール依存症ではない大酒飲みは、この「しがみつき」の状態であるといえます。彼らにとってお酒は自分に安心感を与えてくれる大事な存在です。 また、大酒飲みではなくても、有る程度常習的に飲酒を行う人はこの「しがみつき」状態にあると言えるでしょう。

模式的に書くと
「アルコール依存症」-「酒への嫌悪感、飲酒に対する罪悪感」=「アルコールへのしがみつき」

ということになります。

アルコールを常習的に摂取する人が「しがみつき」か「依存症」かを見分けるには、本人のアルコールに対する態度を観察すればわかります。 しがみつきの人はお酒を大事に、愛おしむように飲み、味にもこだわりを見せます。
一方依存症の人はお酒を大事に飲みません。まるで水のように粗末に飲みます。 アルコール依存症の治療とは、この「しがみつき状態」に移行させることを意味します。

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