新古今和歌集の部屋

時雨亭方丈記 福原遷都1


かゝる事やある。たゞごとにあらず。さかるべき物のさとし
などぞうたがひ侍し。又治承四年みな月の比
俄に宮こうつり侍き。いと思の外なりし事
なり。大方比京のはじめをきけば嵯峨天皇の
御時事さだまりにけるより○○てに数百
歳を経たり。ことなる故なく○やすくあらたまるべくも
あらねど是を世の人ややすからず○へあへるさまこと
はりにも過たり。されどとかくいふかひなくて御門
より始たてまつりて大臣公卿みな悉くうつり給ひ
ぬ。世につかへる○との人たれかひとり古郷にのこり

(前田家本)
斯かる事やある。只事に非ず。然るべき者の諭し
かとぞ疑ひ侍し。又治承四年水無月の比、
俄に都遷り侍き。いと思ひの外為りし事
也。大方、この京の始めを聞けば、嵯峨の天皇の
御時、都と定まりにけるより後、既に数百
歳に及べり。殊なる故無くて、容易く改まるべくも
あらねば、これを世の人安からず憂へあへる樣、理
にも過ぎたり。然れど、兎角言ふ甲斐無くて、帝
より始め奉りて、大臣公卿皆ごと遷ろひ給ひ
ぬ。世に仕ふる人、誰か一人も故郷に残り居らむ。

(参考)大福光寺本
カゝル事ヤアル。タタ事ニアラス。サルヘキモノゝサトシ
カナトソウタカヒハヘリシ。又治承四年ミナ月ノ比
ニハカニミヤコウツリ侍キ。イトヲモヒノ外也シ事
ナリ。ヲホカタ此ノ京ノハシメヲキケル事ハ嵯峨ノ天皇ノ
御時ミヤコトサタマリニケルヨリノチステニ四百余
歳ヲヘタリ。コトナルユヘナクテタヤスクアラタマルヘクモ
アラネハコレヲ世ノ人ヤスカラスウレヘアヘル実ニ事
ハリニモスキタリ。サレトゝカクイフカヒナクテ帝
ヨリハシメタタテマツリテ大臣公卿ミナ悉クウツロヒ給ヒ
ヌ。世ニツカフルホトノ人タレカ一人フルサトニノコリ
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