太上天皇
秋の露や袂にいたくむすぶらん長夜あかずやどる月かな
いたくとはつよくと云事なり。長夜あかずとはこの
長夜も退屈せずと云事なり。源氏に
本歌
すゞ虫の聲のかぎりをつくしても長夜あかずふる涙かな
此哥をとり給へり。月は露をやどりとするものなり。
秋の夜の悲しさに何のゆへとはなけれども
なげきあかし侍るに袖の露もふかくなれば
月もいよ/\所えがおにひかりをまし
侍る事月もあはれと侍らん。此長夜をも袖を
とひあかすよとあそばしたる御哥なり。餘情か
ぎりなき御哥也。
※出典 常縁新古今和歌集
※源氏に 本歌 すゞ虫の聲のかぎりをつくしても長夜あかずふる涙かな
源氏物語 桐壺 靫負命婦 鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜飽かず降る涙かな