きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

4月20日の日本民話 養老の滝

2008-04-20 06:15:17 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月20日の日本民話

養老の滝

養老の滝
岐阜県の民話岐阜県情報

 むかしむかし、美濃の国(みののくに→岐阜県)の山里に、たいへん親孝行(おやこうこう)な若者がおりました。
 貧乏で、毎日の食べる物にも不自由する暮らしでしたが、年とった父親のために一生けんめい働いて、おいしいものを食べてもらい、少しでも長生きをしてもらおうと思っていました。
 その父親は何よりもお酒が好きでしたが、しかし、米を買うお金さえろくにかせげないので、お酒などめったに手に入れる事はできません。
 それでも息子は、父親がお酒を飲むときのしあわせそうなようすを思い浮かべると、なんとかしてあげたいと、奥山にわけ入ってたきぎをとるのでした。
 そんなある日、若者は岩から足をふみはずして、あっというまに谷底へころがり落ちてしまいました。
 気を失ってしばらくすると、のどがかわいて目をさましました。
「ああ、水が飲みたい」
 体を起こしてあたりを見ると、岩かげから水の音が聞こえてきます。
「ありがたい。川があるようだ」
 若者がかけよると、そこには見上げるばかりの滝が、しぶきを立てて流れ落ちていたのです。
 若者は足もとに泡立つ水を手にすくって、口にふくみました。
「むむっ。これは!」
 なんとそれはただの水ではなく、これまで飲んだこともないような、かぐわしいお酒だったのです。
「ああ、ありがたいことだ。これを持ち帰れば、おとうがどんなに喜ぶことか」
 若者は腰にさげたひょうたんにお酒をくみとると、いそいで家に帰りました。
「遅かったな。お前の身の上になにかあったかと、心配しとったよ」
 息子はニコニコしながらうなづくと、ひょうたんのお酒を父親に差し出しました。
「なんだこれは、水か? ・・・うむ! これはうまい!」
 一口飲んだ父親は、目を丸くしました。
「こんなにかぐわしい酒を、わしはこれまで飲んだことがないぞ。いったいどこで手に入れたんじゃ」
 息子は山奥で起きたふしぎなできごとを話して聞かせると、父親はいいました。
「それは、お前がいつも親孝行をしてくれるので、神さまがごほうびにくださったのだよ」
 この話はまもなく、奈良の都の天皇(てんのう)の耳に伝わりました。
 天皇はたいそう感心すると、若者に山ほどのほうびをくださり、そればかりか年号を「養老(ようろう)」とあらため、滝に「養老の滝」という名をさずけたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 逓信記念日
きょうの誕生花 → かいどう
きょうの誕生日 → 1959年 片山まさゆき (漫画家)

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きょうの日本昔話 → 病気のお見舞い
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きょうのイソップ童話 → オオカミとサギ
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4月19日の日本民話 たからものをくれたお化け

2008-04-19 06:46:46 | Weblog

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4月19日の日本民話

たからものをくれたお化け

たからものをくれたお化け
高知県の民話高知県情報

 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おじいさんは山へ木を切りに、おばあさんは川へせんたくに出かけます。
 ある日の事、おばあさんが川へ行くと、川上のほうからピカピカと金色に光る、大きなはこが流れてきました。
 おばあさんが、
「こっちへこい、こっちへこい」
と、呼んでみると、はこは一人でに岸のほうへ流れてきて、おばあさんの前で止まったのです。
(ありがたや、ありがたや、きっと宝物が入っているにちがいない)
 おばあさんは大喜びではこをひろいあげて、家まで運びました。
(さて、何が出てくるか?)
 ドキドキしながらはこのふたを開けてみると、なんと目玉が一つに口が二つのお化けが、ニューと顔を出したのです。
「ヒェーーーッ!!」
 おばあさんはあわててふたをすると、物入れの部屋に放り込みました。
 ところがしばらくたつと、部屋の中からお化けが歌うように言うのです。
♪ここから出たい、チンチロリン
♪ここから出たい、チンチロリン
 お化けとは思えない、とてもかわいい声です。
 おばあさんはこわいのも忘れて、お化けをはこから出してやりました。
 するとお化けは、
♪げたをはきたい、チンチロリン
♪げたをはきたい、チンチロリン
と、言いました。
「げたをはきたきゃ、これでもはきな」
 おばあさんは、おじいさんの古いげたを出してやりました。
 げたをはいたお化けは、またも歌うように言いました。
♪クワを持ちたい、チンチロリン
♪クワを持ちたい、チンチロリン
「そんなら、これを持っていけ」
 おばあさんは、古くなったクワを出してやりました。
 お化けはクワをかつぐと、
♪畑へ行きたい、チンチロリン
♪畑へ行きたい、チンチロリン
と、言いました。
「ほんとに、お前はおかしなお化けだよ」
 おばあさんは、お化けをうらの畑へつれていきました。
 お化けは畑に来ると、かたからクワをおろして言いました。
♪ここをほりたい、チンチロリン
♪ここをほりたい、チンチロリン
「ほりたきゃ、ほってみな」
 おばあさんが言うと、お化けはよろこんで畑の土をほりはじめました。
 その早いこと、あっというまに深い穴をほりあげました。
「こらこら、そんなに深くほっちゃだめだ」
 おばあさんが止めようとして穴をのぞいて見ると、穴の中から大きなつぼが出てきました。
♪大判小判がどっさり、チンチロリン
♪大判小判がどっさり、チンチロリン
 お化けはそう言うと、クワとげたをおいて山の方へ歩いていきました。
「何! 大判小判とな!」
 おばあさんは穴に飛び込んで、つぼのふたをとりました。
 すると中には、金ぴかに輝く大判小判がギッシリとつまっていたのです。
 おばあさんは大喜びで、山に行っているおじいさんを呼びに行きました。
 村一番のお金持ちになったおじいさんとおばあさんは、死ぬまでしあわせにくらしたという事です。

おしまい

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きょうの誕生花 → いちりんそう
きょうの誕生日 → 1976年 坂下千里子(タレント)

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きょうの日本民話 → たからものをくれたお化け
きょうのイソップ童話 → 冬と春
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4月18日の日本民話 弘法さまの寄り木

2008-04-18 04:59:40 | Weblog

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4月18日の日本民話

弘法さまの寄り木

弘法さまの寄り木
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、ある冬の事、一人のみすぼらしい旅のお坊さんが港町(みなとまち)にやって来ました。
 念仏(ねんぶつ)をとなえながら家いえをたずねましたが、お布施(ふせ)を出してくれる家は一軒もありません。
 お坊さんはつかれた足を引きづりながら、海岸の宮沢村(みやざわむら)にたどりつくと、村はずれの一軒の家の戸を開けて、
「旅の僧ですが、一夜の宿をお願いいたします」
と、たのみました。
 その家は夕食どきでしたが、お坊さんをこころよく家にあげてくれたうえ、自分たちの分を少しづつへらして、お坊さんの食べるごはんを用意してくれたのです。
 また、
「たき木も少なく、ろくに火も燃やす事も出来ずに申しわけありません」
と、いいながらも、ありったけの木クズを集めて燃やしてくれたので、ぬれた着物もかわき、翌日にはお坊さんはすっかり元気になったのです。
 次の朝、お坊さんは旅立つ時に言いました。
「あたたかいおもてなし感謝いたします。来年からは、この村のみなさんがたき木に不自由しないようにいたしましょう」
 それから一年近くたち、北風がふいて海があれはじめると、どこから流れて来るのか、たくさんの流れ木が海岸におし寄せて来たのです。
 次の年もその次の年も、流れ木たえる事なく海岸におし寄せて来たのです。
 まもなくその坊さんは、有名な弘法大師(こうぼうたいし)であった事を知り、冬になり流れ木が海岸に打ち寄せると村人たちは、
「ありがたい。弘法さまの寄り木だ!」
と、いって、それをひろい集めるようになったという事です。

おしまい

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きょうの日本民話 → 弘法さまの寄り木
きょうのイソップ童話 → うそつき
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4月17日の日本民話 ふるさとへ飛んだ侍

2008-04-17 05:17:36 | Weblog

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4月17日の日本民話

ふるさとへ飛んだ侍

ふるさとへ飛んだ侍
香川県の民話香川県情報

 むかしむかし、高松(たかまつ→香川県)生まれの若い(さむらい)が江戸つとめになって、目黒(めぐろ→東京都)にある侍屋敷で働いていました。
 ある日の事、若い侍は、近くにある不動尊(ふどうそん)へお参りにでかけました。
 江戸の暮らしに疲れて、ふるさとの事ばかり思いだしながら歩いていると、一人のお坊さんが声をかけてきたのです。
「あんたは、よっぽどふるさとへ帰りたいようじゃな。ふるさとはどこじゃ? 帰りたいならつれていってやろう。ついてきなされ」
 若い侍は喜んで、お坊さんのあとについていきました。
 お坊さんは木のかげに若い侍をつれていくと、片手をにぎって目を閉じるようにいいました。
 すると、若い侍の体がフワリと浮きあがったのです。
 まるで風をきって、空を飛んでいるような気分です。
「さあ、ついたぞ。目をあけてもいいぞ」
 そういわれて目をひらくと、お坊さんの姿はどこにもありません。
 いつのまにか、あたりは夜になっていましたが、そこはたしかに高松の自分の家の前でした。
「なんとも、不思議な事もあるものだ」
 そう思いながら、月の光にてらしだされているあたりを見まわしていると、家の中から父親が出てきました。
 父親は、若い侍に気づいてビックリです。
 江戸へいったはずのわが子が、家の前に立っているのですから。
 父親は幽霊(ゆうれい)かと思い、急いで家に逃げ込もうとしましたが、またすぐにふりむいて、ジッと若い侍をみつめました。
「やっぱりお前か。いつ江戸からもどってきたんじゃ? そんなところに立っておらずに、早く家の中に入れ」
 若い侍は、父親にうながされて家に入りました。
 そして喜ぶ家の者たちに、この不思議な出来事を話しました。
 若い侍はずっと目をつぶっていたので、どこを飛んできたのかまったくわからないと首をかしげるばかりでしたが、父親はあまりのおどろきで、三日ばかり高い熱をだして寝こんでしまったという事です。

おしまい

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きょうの新作昔話 → すぎの木、百本
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きょうの日本民話 → ふるさとへ飛んだ侍
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4月16日の日本民話 頭をそられた男

2008-04-16 05:20:36 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月16日の日本民話

頭をそられた男

頭をそられた男
山梨県の民話山梨県情報

 むかしむかし、ある村に、とても気の強い若者がいて、
「おれはキツネにだってタヌキにだって、一度もだまされたことがない。キツネやタヌキにだまされるのは、だまされる方が悪いんだ」
と、いつもいばっていました。
 ある日の事、若者が村はずれの道を歩いていると、向こうから一匹のキツネがやってきました。
(ははん。さては人をだましにきたな)
 若者は、あわてて草むらの中にかくれました。
 キツネはあたりをキョロキョロと見ていましたが、そのうちに一枚の葉っぱを取り出すと、それを頭へのせて、ドロンと美しい娘に化けたのです。
(なるほど、たいしたものだ)
 若者が感心していたら、娘に化けたキツネは道に落ちていたわらぞうりをひろいました。
 すると、そのわらぞうりはごちそうを入れる重箱(じゅうばこ)にかわったのです。
 重箱を持った娘は、なにくわぬ顔で村の方へと歩いていきます。
 若者がこっそりあとをつけていくと、娘は長者(ちょうじゃ)さんの家に入りました。
 そんな事とは知らない長者さんは、
「おう、よくきた。よくきた」
と、言って、娘をむかえたのです。
「これは、おみやげです」
 娘が、わらぞうりでできた重箱を渡すと、
「それはそれは、ごていねいに」
 長者さんの奥さんもニコニコして、その重箱を受けとりました。
 家の外からこのようすを見ていた若者は、とうとうがまんできずに家の中へとびこむなり、
「みんな、だまされちゃいかんぞ! その娘はキツネだ!」
と、言ったのです。
 でも、それを聞いた長者は、カンカンに怒りました。
「な、なんて事を言うんだ! これはとなり村の長者の娘さんで、今度わしの息子の嫁になる人だ!」
「でも、そいつはたしかにキツネだ。娘に化けるところをちゃんと見たんだ」
 すると、娘は、
「キツネだなんて、あんまりです」
と、言って、シクシクと泣き出したのです。
「わしの家の嫁になる娘をキツネだなんて、もうゆるさん!」
 長者はを抜いて、若者に切りつけようとしました。
「ひぇー、たっ、助けてくれー」
 若者はあわてて逃げましたが、長者は刀を持って追いかけてきます。
 そこへ、一人のお坊さんが現れました。
「おまちなさい」
 お坊さんは二人のあいだに飛び込むと、長者の手をおさえました。
「どんな事があっても、人を殺してはいけません。わけを話しなさい」
 そこで長者は、これまでの事をお坊さんに話しました。
「なるほどわかりました。でも、この男を殺してもしかたがないでしょう。ここは一つ、私にまかせてください」
 そう言うと、お坊さんは若者をにらんで言いました。
「本当なら、殺されてもしかたのないところです。でも、お前はまだ若い。一度死んだつもりで、今から私の弟子になりなさい」
 もう少しで殺されるところを助けてもらったので、若者はお坊さんのいうとおり、弟子になることを承知しました。
「よろしい。それではさっそく、頭をそってやろう」
 お坊さんは長者の家でカミソリを借りると、若者の頭をそりはじめました。
 ところが、その痛い事。
 まるで髪の毛を手でむしり取っているみたいです。
 あまりの痛さに、若者が思わず、
「やめてくれ!」
と、さけびました。
 そのとたん、目の前の物がみんな消えて、若者は一人で草むらの中にすわっていたのです。
(おかしいなあ? ゆめでも見たのかな?)
 そう思って、ふと頭に手をやったら、なんと髪の毛がほとんどなくなっていたのです。
 娘だけでなく、長者も、お坊さんも、みんなキツネだったのです。
 キツネにだまされないと言っていた若者は、みごとにキツネにだまされたのでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生日 → 1867年 ウィルバー・ライト (ライト兄弟の兄)

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きょうの日本民話 → 頭をそられた男
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