きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

2月28日の日本民話 人形のお嫁さん

2010-02-28 11:41:36 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話


2月28日の日本民話


人形のお嫁さん



人形のお嫁さん
青森県の民話青森県情報


 むかしむかし、あるところに、一人暮らしの若者がいました。
 若者は貧乏なので、お嫁さんをもらう事が出来ません。


 ある日の事、若者は長者の屋敷へ仕事に出かけました。
 暖かくなって来たので、若者が庭木の雪囲いをはずしていると、そばに小さくてきれいな娘さんが立っていました。
「ああ、これは始めまして」
 若者が娘さんにあいさつをしましたが、娘さんはじっと立ったまま口も聞かず、動こうともしません。
「おや?」
 不思議に思った若者が娘さんに近づくと、何と娘さんは人形だったのです。
 そこへ長者と奥さんが出てきたので、若者は、
「これは見事な出来ですね。てっきり、本物の娘さんかと思いましたよ」
と、言いました。
 すると長者は悲しそうにため息をつき、人形の事を話してくれました。


 実は長者には、この人形とそっくりな娘さんがいたのです。
 娘は年頃になってお嫁入りをする事になりましたが、長者も奥さんも娘さんをとても可愛がっているので、お嫁になんかやりたくありません。
 でも、そう言うわけにもいかないので、有名な人形細工師に娘さんにそっくりの人形を作らせて、娘さんの代わりにそばへ置く事にしたのです。
 ところが娘さんは、お嫁に行ってすぐに病気で亡くなってしまいました。
 長者と奥さんは人形を見ては娘さんの事を思い出して、毎日の様に泣き暮らしているのだそうです。


「そうですか」
 この話しを聞いた若者は、この人形の事が好きになってしまいました。
 でも、ゆずってもらうお金もないし、たとえお金があったとしても、長者が大切な人形をゆずってくれるはずはありません。
 そこで若者は頭を下げて、
「お願いです。たったの一日でいいから、この人形を貸してください!」
と、お願いしたのです。
「と、とんでもない。これはわたしたちの宝物だ」
 長者は断りましたが、それでも若者は必死でお願いしました。
「おらは貧乏で、嫁さんをもらう事も出来ません。そこで一度でいいから、この人形のそばでご飯を食べてみたいのです」
「そうは言っても」
「お願いします!」
「しかし」
「お願いします!」
 若者があんまり熱心に頼むので、長者はとうとう根負けして、しばらくの間、貸してやる事にしました。
「ありがとうございます!」
 若者は大喜びで、さっそく人形を家に連れて帰りました。
 若者は家の中に人形をかざると、まるで自分のお嫁さんの様に話しかけました。
 仕事に出かける時は、ほこりがつかないように頭に白い布きれをかぶせて、
「それじゃ、仕事に行ってくるからね」
と、言いました。
 そして仕事から戻って来ると、今度は白い布きれを取り、
「ただいま。今、戻って来たよ」
と、言いました。
 例え口の聞かない人形でも、若者は美しいお嫁さんをもらったみたいな気持ちになり、毎日が夢の様でした。


 そんなある日の事、若者が仕事から戻って来ると、家の中がきちんと片付いていて、ご飯まで用意してありました。
「おや? 誰が、こんな事をしてくれたんだろう? まさか、人形がしてくれるわけがないし」
 若者は不思議に思いながらも、用意されたご飯を食べました。


 次の日、若者が仕事から戻って来ると、やっぱり家の中が片付いていて、ご飯の用意がしてあります。
「これは、おかしいぞ?」
 いよいよ不思議に思った若者は、その次の日、仕事に行くふりをしてこっそりと天井裏にのぼって家の中の様子を見張っていました。
 すると、どうでしょう。
 家の中にかざってある人形がむくむくと動き出したかと思うと、人形は白い布をねじってたすきがけにして、家の掃除を始めたではありませんか。
「・・・・・・」
 若者はびっくりして、声も出ません。
 そのうちに人形はかまどに火をつけて、ご飯を炊き始めました。
 もくもくとのぼってくる煙に若者は思わずせき込んでしまい、そのひょうしに若者は天井裏から足を滑らせて、人形の上に落ちてしまったのです。
「きゃあー」
 びっくりした人形は小さな悲鳴を上げると、ぶつかった勢いで火のついたかまどの中に飛び込んでしまいました。
「たっ、大変だー!」
 若者はあわてて人形を助け出そうとしましたが、人形はあっという間に火だるまになって燃え上がりました。
 そして若者の目の前で、人形は燃え尽きて灰になってしまいました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → バカヤローの日
きょうの誕生花 → みすみそう(ゆきわりそう)
きょうの誕生日 → 1978年 菊川怜 (タレント)



きょうの日本昔話 → クラゲのおつかい
きょうの世界昔話 → 大きなカブ
きょうの日本民話 → 人形のお嫁さん
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2月27日の日本民話 牛になるまんじゅう

2010-02-27 07:24:01 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話


2月27日の日本民話


牛になるまんじゅう



牛になるまんじゅう
福島県の民話福島県情報


♪朗読再生


 むかしむかし、あるところに、一軒のそまつな宿屋がありました。
 おばあさんがたった一人いるだけでしたが、とても親切そうなおばあさんだったので、時々泊まって行く人がいました。
 ところが不思議な事に、宿屋に泊まった人はみんな姿を消してしまうのです。
 そしてその宿屋では、お百姓仕事もしないのに牛を何頭も飼っていました。


 ある時、一人のお坊さんがこの宿屋に泊まりました。
「よく来てくれました。さあ、ゆっくり休んで行ってください」
 おばあさんは、一生懸命お坊さんをもてなしました。
(ほほう。見かけは悪いが、なかなか親切な宿屋だ)
 お坊さんはとても喜んで寝床につきましたが、その真夜中、ごそごそと音がするので目が覚めました。
(はて、何の音だろう?)
 お坊さんは起きあがって、音のする方の部屋をこっそりのぞいてみました。
 すると、どうでしょう。
 おばあさんがいろりの回りに、せっせとごまの種をまいているのです。
(おや? あんなところにごまの種をまいて、いったいどうするつもりだろう?)
 不思議に思いながら見ていると、床の上にみるみるごまの芽が伸びてきて大きくなりました。
 おばあさんはそれをつみ取り、何やらあやしげな粉と混ぜ合わせて、おいしそうなまんじゅうを作りました。
(これは面妖(めんよう)な。しかし、あのまんじゅうをどうするつもりだろう?)
 お坊さんは怖くなって逃げ出そうと思いましたが、こんな真夜中では、どこへ行ってよいかわかりません。
 仕方なく部屋に戻って、夜が明けるまでがまんしていました。
 すると朝早く、おばあさんがお皿にまんじゅうを乗せて持って来ました。
「お客さん、朝ごはんの代わりに、まんじゅうを食べてください」
(ややっ。これは、あのまんじゅうに間違いない)
 そう思ったお坊さんは、
「いやいや。ゆうべごちそうをいただいたから、まだお腹がいっぱいです」
と、言って、断りました。
 するとおばあさんは、がっかりして部屋を出て行きました。
 その時、近くの部屋で、
「モー」
と、言う牛の鳴き声がしました。
 お坊さんがびっくりして駆け付けてみると、部屋からおばあさんに引かれた牛が出て来ました。
「これはいったい、どうしたのです?」
 お坊さんが尋ねると、
「なに、わたしの飼っている牛が、部屋に上がり込んでしまったんですよ」
と、おばあさんはにこにこしながら、牛を庭の方へ連れて行きました。
 その時、牛の出て行った部屋をのぞいてみると、お客さんの荷物が置いたままです。
(わかったぞ。あのまんじゅうを食べると、牛になるんだ)
 お坊さんの思った通り、おばあさんは宿屋に泊まったお客を牛にして、牛買いに売っていたのです。
(なんて、恐ろしい事を)
 でもお坊さんは、何くわぬ顔で、
「すまんが、今夜も泊めてもらいます」
と、言って、宿屋を出て行きました。
 そしてお坊さんは町で本当のまんじゅうを買うと、その日の夕方、宿屋へ戻って来ました。
 すると、おばあさんは、
「お腹が空いたでしょう。すぐに夕ご飯を作りますから、それまでこのまんじゅうでも食べていてください」
と、言って、牛になるまんじゅうを出しました。
 するとお坊さんは、町で買ってきたまんじゅうをその横へ置き、
「いや、わたしもまんじゅうを買って来たところです。おばあさんのまんじゅうもおいしそうだが、こっちも食べてみてくださいよ」
と、言いながら、牛になるまんじゅうと素早くすり替えて、おばあさんに渡しました。
「それなら、先にあなたのまんじゅうをいただきましょうか」
 そう言っておばあさんは、お坊さんに渡されたまんじゅうを食べました。
 するとその途端、おばあさんの姿はみるみる牛になってしまったのです。
 こうしてお坊さんは、恐ろしい宿屋の主人を退治したのでした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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2月26日の日本民話 竜になった娘

2010-02-26 06:46:32 | Weblog

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2月26日の日本民話


竜になった娘



竜になった娘
大分県の民話大分県情報


 むかしむかし、佐賀関(さがぜき)と言うところに、早吸日女神社(はやすいひめじんじゃ)という社がありました。
 その神社の神主夫婦には、いつまでたっても子どもが授からないので、夫婦は早吸日女の社に願かけをしていました。
(どうか、子どもが授かります様に)


 ある日の事、用事で沈堕(ちんだ)の滝近くを通りかかった神主は、一匹の蛇が子どもたちにいじめられているのを見つけました。
「これこれ、生き物をいじめてはいかんぞ」
 心の優しい神主は子どもたちに金を与えて、さっそくその蛇を逃がしてやりました。


 さて、その年の暮れの事です。
 ついに、夫婦に可愛い女の子が生まれました。
 女の子は夫婦の愛情を受けて、美しく優しい娘に成長していきましたが、ある時、重い病にかかってしまい、寝たきりになってしまったのです。
 そんなある晩の事、薬を持って娘の部屋を訪れた母親は、心臓が止まるぐらいにびっくりしました。
 何と部屋の中には恐しい大蛇がまっ赤な舌を出しながら、とぐろを巻いているではありませんか。
 あまりの事に口もきけない母親に、大蛇はたちまち娘の姿に戻って言いました。
「私はむかし、沈堕の滝で父上に助けられた竜の化身です。
 ご恩返しにと、おそばにおいてもらいましたが、もう帰らねばなりません。
 どうか明朝、私を沈堕の滝へお連れ下さい」


 翌朝、夫婦は娘と共に、沈堕の滝へと向かいました。
 やがて滝のほとりまで来ると、娘はくるりと夫婦の方を向いて、
「長い間、お世語になりました。私はこの滝つぼに入って、竜となります。父上、母上、どうぞお元気で」
と、言い残すと、静かに滝に身を沈めました。
 そしてしばらくすると滝の中からゴーゴーと音がして、やがて髪を振り乱した娘が現れて言いました。
「父上、どうか脇差しをお貸し下さい。この滝には悪い主がいるので、その主を殺さねばなりません」
 父親が脇差を与えると、娘は再び滝に身を沈めました。
 やがて水底の方で大きな音がすると、みるみる水がまっ赤になって滝の中から一匹の竜が姿を見せたのです。
 その口には、脇差しがくわえられています。
「おおっ、娘よ。お前は竜になったのか」
 夫婦が思わず手を合わせると、竜は大きくうなずいて水の中に消えてしまいました。


 それからは毎年一度、竜になった娘が早吸日女神社の宮の池に姿を現すのです。
 そしてその日は神社の古井戸で、竜が一夜を明かすと言われています。
 また、その井戸をのぞくとたたりがあるというので、その日は誰も近づかないそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 咸臨丸の日
きょうの誕生花 → スノードロップ
きょうの誕生日 → 1956年 桑田佳祐 (ミュージシャン)


きょうの新作昔話 → スズメがお米を食べる理由
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きょうの日本民話 → 竜になった娘
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2月25日の日本民話 酔っぱらったスズメ

2010-02-25 07:52:37 | Weblog

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2月25日の日本民話


よっぱらったスズメ



酔っぱらったスズメ
長崎県の民話長崎県情報


 むかしむかし、あるところに、お父さんと息子が二人で暮らしていました。
 ある日の事、お父さんは息子に言いました。
「隣の国ヘスズメを持って行けば高く売れるそうだが、一度にたくさんのスズメを捕る方法はないかなあ?」
 すると息子は、
「そんな事は簡単だよ。酒のカスとツバキの葉っぱがあれば大丈夫」
と、言って、酒屋に行って酒のカスを買うと、庭にあるツバキの葉っぱをかごに一杯につみました。
 そしてスズメの来そうなところにツバキの葉っぱを並べて、その上に少しずつ酒のカスを置きました。
「後は、スズメが来るのを待つだけだよ」
 二人は木のかげに隠れると、スズメが来るのを待ちました。
 しばらくすると、
♪チュンチュンチュン
と、スズメたちが集まって来て、酒のカスを食べ始めました。
 やがてスズメたちは酒のカスに酔っぱらってしまい、ツバキの葉っぱの上へコロリと横になったまま動かなくなりました。
 そして太陽の光がツバキの葉っぱを温めると、ツバキの葉っぱがクルリンと丸まって寝ているスズメをすっぽりと包み込んでしまったのです。
「さあ、今のうちだよ」
 息子は、ほうきで葉っぱをはき寄せると、俵(たわら)の中に入れました。

 お父さんはさっそく、スズメの入った俵を舟に積むと隣の国へ売りに行きました。
「さあさあ、よく太ったおいしいスズメだよ。買った買った」
 お父さんの声を聞いて、大勢の人が集まって来ました。
「まさか、死んでいるスズメじゃないだろうな」
「とんでもない。ほれこの通り、ゴソゴソ動いていますよ」
「本当だ。それなら売ってくれ」
「はいはい。みんなきちんと並んでください」
 これほどスズメを買う人がいるとは、お父さんは知りませんでした。
(これを全部売ったら、どのくらいのお金になるだろうか)
 お父さんは考えただけで、うれしくなってきます。
 ところが俵の口を開けたとたん、スズメがいっせいに飛び出して、あっと言う間に空へ飛んで行きました。
 酔っぱらって寝ていたスズメは、すっかり目が覚めてしまったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 夕刊紙の日
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きょうの誕生日 → 1972年 有野晋哉 (芸人)



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きょうの日本民話 → よっぱらったスズメ
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2月24日の日本民話 爺婆かぼちゃ

2010-02-24 07:53:59 | Weblog

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2月24日の日本民話


爺婆かぼちゃ



爺婆かぼちゃ
三重県の民話三重県情報


♪朗読再生


 むかしむかし、ある村にうつくしい娘が一人で住んでいました。
「ああ、おじいさんとおばあさんが欲しいなあ」
と、いつも思っていました。

 ある日の事、娘がカボチャ畑に立っていると、裏山からガラガラドスン! と、一匹のが落ちて来ました。
 鬼は頭や腰を強く打ったので、
「痛い、痛い、痛いよー」
と、泣いていましたが、村人たちは怖くて誰も鬼のそばへ寄りません。
 でも娘だけが赤い帯(おび)をビリビリと裂いて、痛いところに巻いてあげたのです。
 それから家へ連れて行き、鬼にごちそうをたくさん食べさせてあげました。
 すると鬼は、
「これはうまい、うまい」
と、腹いっぱい食べてから、
「お前はなかなか親切なよい娘じゃ。このこづちをお前にやるから、これでかぼちゃを叩いてみるがよい」
と、言ったのです。
「ありがとう」
 娘は鬼にお礼を言うと急いでかぼちゃ畑へ行って、鬼の言った様に一番大きなかぼちゃをそっと叩くと、
 ボコン!
と、音がしてかぼちゃが二つに割れて、何と中からおじいさんとおばあさんがニコニコ笑いながら出て来たのです。
 そして、
「すまないが、わしらをお前の家においてくれんかのう?」
と、言いました。
 もちろん、娘は大喜びです。
 それからは、おじいさんとおばあさんと三人仲良く暮したという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 月光仮面の日
きょうの誕生花 → クロッカス
きょうの誕生日 → 1967年 コージー冨田 (タレント)


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