きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

4月25日の日本民話 寿限無(長い名前の子ども)

2008-04-25 05:44:11 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 4月の日本民話

4月25日の日本民話

寿限無(長い名前の子ども)

寿限無(長い名前の子ども)
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、あるところに、なかなか子どもがうまれない夫婦がいました。
 でもようやく、かわいらしい男の子がうまれたのです。
 お父さんとお母さんは、大喜びです。
「よし、この子にはえらいお坊さんに頼んで、元気で長生きできる、立派な名前を付けてもらおう」
 お父さんはさっそくお寺に行くと、お坊さんに頼みました。
「うむ、引き受けよう。元気で長生きできる、立派な名前か。そうじゃなあ・・・」
 お坊さんは一生懸命考えて、ありがたい意味や長生きした人の名前をくっつけて、大変長い名前を男の子につけてくれました。
 それは、こんな名前です。
『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』
 さて、ある日の事です。
 その長い名前の子どもが、川へ落ちたから大変です。
 お母さんがあわてて、みんなを呼びにいきました。
「みんな助けておくれ!『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』が、川へ落ちたんだよ!」
 やっと名前を言い終わったときには、子どもは川下の方へ流されてしまい、おぼれ死んでしまいました。
 ところがある日、別の子どもが川へ落ちました。
 この子どもは『ちょい』というだけの、短い名前でした。
「みんな助けておくれ! ちょいが川へ落ちたんだよ!」
 お母さんのさけび声を聞いて、畑にいる人が川に飛び込んで、すぐに子どもを助けてくれました。
 そんなことがあってから、この地方では、どのお母さんも生まれた子どもには、できるだけ短い名前をつけるようになったという事です。

※寿限無・・・以下略の名前の意味。

「寿限無(じゅげむ)」とは、
 寿命に限りがなく、永遠に死なないという意味です。

「五劫(ごこう)のすりきれ」とは、
 三千年に一度、神さまの使いが天から降りてきて、地上の岩を衣でなでるのですが、その作業がすべて終わるまでの時間を一劫といい、それが五劫あるので、何万年もの時間という意味です。

「海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)」とは、
 海の砂利(じゃり)も、水にすむ魚も、とうてい取りつくすことができないため、それだけ数が多いという意味です。

「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)」とは、
 水の行く末、雲の行く末、風の行く末には、いずれも果てがなく、広大だという意味です。

「食う寝るところに住むところ」とは、
 衣食住を表わし、それらの全てに不自由しないようにとの、願いを込めた言葉です。

「やぶらこうじのぶらこうじ」とは、
 大変丈夫でおめでたい木の名前で、春は若葉をしげらせ、夏は花を咲かせ、秋は実を実らせ、冬は霜(しも)をふせぐと言われています。

「パイポパイポ・・・以下略」とは、
 むかし、中国にはパイポという国があって、シューリンガンという王さまとグーリンダイという王后のあいだに生まれたのが、ポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫さまで、この二人が大変長生きをしたので、それにあやかっての言葉です。

「久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)」とは、
 天長地久(てんちょうちきゅう)という言葉があり、天地が永久にかわらないように物事がいつまでもつづくと言う意味で、長久命は、それだけ命が長く続くという願いを込めて、そして最後の長助は、長く助かる、つまり、長生きできるという意味です。

おしまい

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4月24日の日本民話 首なしウマの行列

2008-04-24 05:39:32 | Weblog

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4月24日の日本民話

首なしウマの行列

首なしウマの行列
福井県の民話福井県情報

 むかしむかし、越前の国(えちぜんのくに→福井県)の城下町(じょうかまち→城を中心に発展した町)にすむ人たちは、毎年四月二十四日になると、日がくれた後はけっして外へは出なかったといいます。
 それというのも、この日の夜の亥の刻(いのこく→午後十時ごろ)近くになると、城下を流れる川にかかった九十九(つくも)橋の上に、火の玉が現れるというのです。
 火の玉は、一つではありません。
 つぎつぎと現れては数をふやし、やがて橋の上いっぱいになって、あわただしくとびかうのです。
 この火の玉たちは、なんでも秀吉にほろぼされた城主(じょうしゅ)、柴田勝家(しばたかついえ)の家臣(かしん)たちの亡霊(ぼうれい)だということです。
 さて、橋の上にあつまった火の玉のむれは、いったんいっせいにきえると、今度はそこから亡霊たちの行列が町へくりだしていくのです。
 亡霊たちは白いもやのように、地面から一メートルばかりのところに現れます。
 そしてフワリフワリと行進をはじめるのですが、全員がよろいにかぶとをかぶった武者のいでたちで、ウマにのっています。
 そのウマも、ウマ上の武者もまっ白で、よろいも、かぶとも、ヤリも、も、全てがまっ白なのです。
 ところで、武者たちののっているウマは、なぜか首がありません。
 首のないウマにのったまっ白の軍団は、夜どおし城下の町をねり歩き、夜明けとともにきえていくのですが、この行列にであったものは、見た事を決して他人に話してはいけません。
 話しをすれば、たちまち血をはいて死んでしまうというのです。
 ある年の事です。
 一人の老婆(ろうば)が、若いころにつかえていた水野(みずの)という(さむらい)のやしきをたずねました。
 つもる話しをしているうちに、時のたつのもわすれて、いつか夕がたになってしまいました。
「ひさしぶりにたずねてきたのだから、今日はゆっくり夕食をして、とまっていったらいい」
 家の人にいわれて老婆もその気になりましたが、夜になると急に用事を思い出して、家にかえるといいだしたのです。
 城主だった柴田勝家が秀吉にほろぼされてから、もう百年いじょうもたっているのです。
 水野の家の人も老婆も、その日が四月二十四日ということに、少しも気がつきませんでした。
 家を出た老婆は、やがて、ついこの前完成したばかりの新橋のたもとまでやってきました。
 するとむこうから、道いっぱいに列をつくって、首なしウマの行列がやってきたのです。
(あっ、しまった! 今日はあれの出る四月の二十四日だった)
 老婆はあわててちょうちんの明りを消すと、後ろを向いて目をつぶりました。
 そして行列がとおりすぎていくのを、ジッと待ちました。
 老婆の背後を、亡霊たちの行列がゆっくりと通りすぎていきます。
 つめたいものが背すじにつたわって、生きた心地がしません。
「なんまんだぶ。なんまんだぶ。なんまんだぶ」
 老婆は口の中で、けんめいにお経となえつづけました。
 やがて行列がいってしまうと老婆はホッと息をつき、そして後ろをふりむかずに、走るように新橋をわたって家にかえっていきました。
 次の日の朝、いつもよりおそくおきた老婆が居間(いま)へ出ていくと、まご娘がいいました。
「おばあちゃん、顔が青いよ。どうしたの?」
 まご娘の言葉に、家の人たちも口をそろえて、どこかわるいのかとたずねました。
 はじめはあれこれいってごまかしていましたが、そのうちに老婆は、新橋のたもとで亡霊たちの行列に出会った話しを家の人たちにしました。
「そういえば、きのうは四月二十四日でしたな。でも、その亡霊たちの話しは、たしか見た者がほかの者に話すと・・・」
 老婆の息子はそこまでいって、おもわず口をとじました。
「なに、そんなものは迷信(めいしん)じゃ。もう百年以上も前のことじゃし。今さらたたりなどあるものか」
と、老婆は大笑いしました。
 それから何事もおこらずに、夏がすぎて、秋がすぎて、冬もすぎていきました。
 そしてまた春がやってきて、また四月二十四日になりました。
 たたりはありませんでしたが、老婆は一年前の事を思い出して、背筋がぞくぞくしました。
(あんな事は二度とごめんだ。今日ははやく寝よう)
と、その日の用事をはやくすませようと、朝早くから家を出て行きました。
 ところが老婆は、夜になっても家にかえってはきませんでした。
 次の日の朝、心配した家の人が近所の人たちと手わけをしてさがしたところ、老婆は新橋の橋の下で、両足を空に向けたかっこうで、川ぞこのドロの中に首をつっこんで死んでいたという事です。

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4月23日の日本民話 いきをふきかける亡者

2008-04-23 06:40:16 | Weblog

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4月23日の日本民話

いきをふきかける亡者

いきをふきかける亡者
青森県の民話青森県情報

 むかしむかし、陸奥の国(むつのくに→青森県)の真行寺(しんぎょうじ)に、まだ修行中の若い僧がいました。
 ある冬の日のこと、夜おそくまで一人で勉強していると、部屋のしょうじに人のようなかげがうつりました。
(はて、こんな夜中に何者だろう?)
 僧は、しょうじのすきまに目をあてました。
 するとそこには、まるでゆうれいのような女が、髪をふりみだしてたっていました。
 手をだらりと前にさげ、青白い顔がうらみをこめたようにひきつっています。
(これが、亡者(もうじゃ)というものだろうか?)
 わかい僧は顔をこわくなり、頭からふとんをかぶりました。
 ヒューゥ、ヒューゥ。
 なんだかすきま風のような音がするので、ふとんの中からこっそり顔を出してみると、あの女がしょうじのやぶれたところに口をつけて、部屋の中に息をふきこんでいるのです。
 その息は雪のようにつめたく、部屋の中はどんどん冷えていきます。
 若い僧は、一心(いっしん)にお経(きょう)をとなえました。
 すると女はあきらめたのか、息をふきこむのをやめて部屋の前をはなれていきました。
(ああ、こわかった)
 若い僧はホッとしてふとんからはいだすと、そっとしょうじを開けてみました。
 すでに女のすがたはなく、台所の方から火の明りがもれています。
(おや? まだだれかおきているようだ。ちょうどいい、少しあたたまらせてもらおう)
 若い僧は手をこすりながら、台所の方へいきました。
 ところが、かまどに火がもえているのにだれもいません。
(おかしいな)
と、思いながらも、かまどの火に手をかざそうとしたら、目の前にさっきの女がいて、ニヤリとわらいかけたのです。
 若い僧は、
「あっ!」
と、さけんだきり、気を失ってしまいました。
 やがて夜が明けて、朝食係りの僧たちが、かまどの前でたおれている若い僧を見つけました。
「おい、どうした? しっかりしろ!」
 やっと気がついた若い僧は、昨日の事をみんなに話した後、十日間も寝込んでしまったという事です。

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きょうの日本民話 → いきをふきかける亡者
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4月22日の日本民話 弥陀ケ原の弘法清水

2008-04-22 04:40:01 | Weblog

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4月22日の日本民話

弥陀ケ原の弘法清水

弥陀ケ原の弘法清水
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、弘法大師(こうぼうたいし)が立山(たてやま→富山県の南東部)にこもって修行をしていたころのことです。
 広びろとした弥陀ヶ原(みだがはら)は、行けども行けども一滴の飲み水もなく、立山に登る人たちは苦しい思いをしていました。
 これを見てかわいそうに思った弘法大師が、持っていた錫杖(しゃくじょう→修行する人が持ち歩くつえ)をトンと大地に突きさしました。
 するとそのとたん、錫杖を突きさしたところから、水がこんこんとわき出てきたのです。
 それからのち、人々はこのわき水を弘法清水(こうぼうしみず)と呼ぶようになったのです。
 今でも立山に登る人たちは、このわき水でわかしたお茶をのむと、元気になるといっているそうです。

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4月21日の日本民話 イヌが鳥を殺した罰

2008-04-21 04:41:25 | Weblog

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4月21日の日本民話

イヌが鳥を殺した罰

イヌが鳥を殺した罰
福岡県の民話福岡県情報

 むかしむかし、中国から送られてきた二羽のガチョウを、役人(やくにん)たちが天皇(てんのう)のもとへとどけようとしていました。
 ところが、ガチョウをあずかっていた役人のイヌが、ガチョウにかみついて二羽とも殺してしまったのです。
 そのときの天皇はこわい人で、いくつものおそろしいうわさがありました。
 天皇はある時、好きな狩りにでかけて、たくさんの獲物(えもの)をとらえました。
 それに気をよくした天皇は、
「狩りの楽しみは、捕らえた獲物をすぐ料理して食べることだ」
と、したがえてきた者たちに言いましたが、だれも自分が料理をするといいだしませんでした。
 すると天皇は怒って、いきなり(かたな)をぬいて、近くにいた者をきり殺してしまったのです。
「今の天皇は勝手がすぎる。これまでにも気にいらないというだけで、何人もの人を殺していると聞く」
 そんなわけで、ガチョウを殺したイヌの飼い主の役人は、死罪(しざい→死刑)をめいじられてもしかたがないと、かくごをしました。
 そして、正直に事の次第をつたえて、おわびにと、自分が屋敷(やしき)でかっている白鳥(はくちょう)十羽を御所(ごしょ→天皇の住まい)におくりました。
 すると天皇は、かわりの白鳥がお気にめしたのか、御所からは何のおとがめもありませんでした。
 一時はどうなることかと心を痛めて心配していた人たちも、ホッと胸をなでおろしましたが、こんな事は大変めずらしい事です。
 次の年、御所で飼われていた鳥が、やはりイヌにおそわれて死んでしまいました。
 天皇は怒って、係の役人の顔にイレズミの罰(ばつ)を命じて、役職(やくしょく)もうばってしまいました。
 その役人の仲間の二人は、
「われわれが生まれ育った信濃(しなの→長野県)では鳥が多く、とればすぐ小山ほどにもなる。朝夕食べても、とても食べきれない。それなのに、たった一羽の鳥がイヌにやられたと怒り、人の顔にイレズミをなさるとは、どう考えてもおかしい。今の天皇は悪い天皇だ!」
と、話していました。
 この話が天皇の耳に届き、天皇は二人に、
「それならば、すぐに鳥をとらえて小山のようにしてみよ」
と、命じました。
 けれどもそれが出来ないとなると、その場で二人の役職をとりあげて、御所から追いだしてしまったという事です。
※ガチョウという水鳥が初めて日本にやってきたのは、今から千五百年以上も前のことで、中国から天皇(てんのう)におくられたものでした。

おしまい

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きょうの日本民話 → イヌが鳥を殺した罰
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