きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

12月31日の日本民話 おさかべひめ

2008-12-31 06:23:46 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 12月の日本民話


12月31日の日本民話


おさかべひめ



おさかべひめ
兵庫県の民話兵庫県情報


 あまりの美しさに白鷺城(しらさぎじょう)とよばれ、国宝であり世界遺産でもある姫路城に、古くから伝わるお話しです。
 むかしむかし、このお城の天守閣(てんしゅかく)に、幽霊(ゆうれい)がすみついているとのうわさがたちました。
 そのため昼間でも、天守閣には誰一人、近づきません。
 ある雨の夜の事。
 お城にとまりこんで、一晩中おきている役目の五人の(さむらい)たちが、
「幽霊の正体(しょうたい)は、何者だろう?」
と、話していました。
 すると、一番若い侍が、
「わたしが、見届けてまいります」
と、ロウソクを手に、天守閣への暗い階段を登っていきました。
 天守閣は、お城のてっぺんにある部屋です。
 侍が天守閣に登り着くと、戸のすき間からボンヤリと、明かりがもれているではありませんか。
 侍が、中の様子をうかがっていると、
「だれじゃ? そこにおるのは、だれじゃ?」
 部屋の中から、声がかかりました。
 侍が名前を名乗って、なぜ、ここに来たのかをありのままに話しました。
「では、お入りなさい」
 侍は恐る恐る、戸を開けました。
 するとそこには、女の人が一人、机の前に座っていました。
「・・・!」
 侍は、声をあげそうになりました。
 髪の長い女の人は、十二ひとえの着物に、赤いはかまをはいています。
 美しい顔立ちですが、その顔色の青白さは、生きている人間ではありません。
「よく来ましたね。わたしはおさかべ姫。このお城の主じゃ。お前の勇気をほめて、これをとらせましょう」
 おさかべ姫は侍に、かぶとの切れはしをわたしました。
「ありがとうございます」
「しかし、ここは人の来るところではありません」
「はっ」
「では、おさがりなさい」
 侍は無事に天守閣を出ましたが、背中が冷や汗でグッショリです。
 侍の仲間は、若い侍が無事に戻ってきたので、
「どうだ? 正体を見届けたか?」
「どんな幽霊だった?」
と、口ぐちにたずねました。
 若い侍は、かぶとのきれはしを見せると、全てを仲間に話しました。
 そしてその話は、さっそくお殿さまの耳に入りました。
 次の朝、お殿さまは若い侍をよんで、
「おさかべ姫にもらったという、かぶとのきれはしをみせてくれ」
と、いいました。
 侍が、かぶとのきれはしを差し出すと、
「ふむ。見覚えのあるきれはしじゃ。調べてみよう」
 お殿さまはお城に昔から伝わっている、よろいかぶとやをおさめた部屋を調べました。
「やはりこれだ、これにまちがいない」
 かぶとの一つのうしろのしころ(→よろいかぶとの左右から後方にたれて、あごを守る鉄製の物)が、ひきちぎられています。
 きれはしをあててみると、ピッタリとあいました。
「かぶとのしころを引きちぎるとは、恐ろしい力の持ち主。おさかべ姫のたたりをうけないよう、天守閣のわきに明神(みょうじん)さまのほこらをまつろう」
 このときから、姫路城ではお殿さまがかわっても、おさかべ姫を恐れて、ほこらを大切にしつづけたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 大晦日
きょうの誕生花 → ゆず
きょうの誕生日 → 1967年 江口洋介 (俳優)


きょうの新作昔話 → 鬼がつくった鬼の面
きょうの日本昔話 → かさじぞう
きょうの世界昔話 → マッチ売りの少女
きょうの日本民話 → おさかべひめ
きょうのイソップ童話 → イヌとオオカミ
きょうの江戸小話 → 切腹浪人


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12月30日の日本民話 バケモノすっとびかご

2008-12-30 03:42:39 | Weblog

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12月30日の日本民話


バケモノすっとびかご



バケモノすっとびかご
大阪府の民話大阪府情報


 むかしむかし、ある秋の夕ぐれのことです。
 村はずれの松の老木(ろうぼく)の下に、カゴが一ちょうおいてありました。
 女の人をのせる、美しいかごです。
 それを、たきぎをひろいにきた二人の男の子が見つけました。
「りっぱなカゴだな。いつからおいてあったんだ?」
 カゴを見つけた子どもに、知らせをきいてやってきた村の男たちがたずねました。
「おいらがここへきたときは、なかったんだ。たきぎをひろってかえろうとしたら、おいてあったんだ。中で音がしたから開けてみようとしたら、きれいな若い女の人が顔をだしたんだ」
「人さわがせだな。カゴかきはどこへいったんだろう? まさか、カゴが一人でここへきたわけではあるまい。ちょっと中の人にきいてみよう」
 一人の男がそういいながら、カゴの戸に手をかけようとすると、戸がするするとひらいて、中から女の人が顔をのぞかせました。
「あれ?!」
 カゴの中から顔をのぞかせたのは、頭に白いものがまじった色の白い女の人です。
 きらびやかなきものをきてはいますが、とても、若いきれいな娘ではありません。
 あたりがくらくなってきているので、男は子どもたちが年をみまちがえたのだと思いました。
「あの、あなたさまは、どちらのお屋敷のおかたですか? それからこんなところに、どうしていらっしゃるのですか? カゴかきがにげてしまったというのなら、わたしたちがお屋敷までお送りいたしますが」
 男はいろいろたずねましたが、カゴのなかにいる女の人はだまっています。
 何を聞いても、返事一つしないのです。
 そして、上目づかいに村の男たちを見ながら、ときどきうすきみわるい笑みをもらしていました。
「・・・。このおかたは口がきけないんだろう。しかたがないから、このままにしておこう」
 あたりがくらくなると、女の人の白い顔が、ますます気味悪く見えてきます。
 男たちはカゴをそのままにして、帰っていきました。
 けれども、やっぱり気になります。
「あのあたりは、夜になるとオオカミが出るところだ。ほうっておいたら、食われてしまうぞ。なんともうすきみわるい人だが、今夜ひと晩だけでも、わしらで番をしてやろう」
 村の男たちは相談をすると、五人ばかりの若者をえらびました。
 そして、たいまつをともしながら、村はずれの松の木の下へでかけていきました。
 すると、カゴはもうどこかにきえていました。
「おや? カゴかきどもが、もどってきたんだな。きっと酒でものみにいったんだろう。まったく人さわがせなことだ」
と、ぶつぶつ文句をいいながらも、ひと安心して男たちがもどってくると、
「おい、おい。あのカゴが河原にあるとよ。馬子(うまこ→ウマをひいて人や荷物を運ぶことを仕事とする人)たちがカゴの中をのぞこうとしたら、十七、八の、みたこともないような美しい娘が顔をだしたとよ」
「な、なんだと?」
 男たちは、顔をみあわせました。
 男たちの見たのは、たしかに年老いた女の人でした。
「そんなばかな。おれ、みてくる」
「おれもいく」
 今度は河原めざして、走っていきました。
 すると途中のお宮のうらの松の木の下に、あのカゴがありました。
「おかしいな。こんなところにカゴがあるぞ」
 男たちがおそるおそるカゴに近づくと、カゴの戸がするすると開きました。
 そして中から、
「ぎゃあー、出たー!」
 男たちはビックリして、逃げだしました。
 カゴの中からでてきたの、娘と、老婆と、のっぺらぼうと、二匹のヘビだったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 正月飾りの日
きょうの誕生花 → やぶこうじ
きょうの誕生日 → 1971年 元木大介 (野球)


きょうの新作昔話 → 小槌(こづち)の柄(え)
きょうの日本昔話 → うぶめにもらったかいりき
きょうの世界昔話 → ものしりフクロウ
きょうの日本民話 → バケモノすっとびかご
きょうのイソップ童話 → かじ屋とイヌ
きょうの江戸小話 → 雪やこんご


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12月29日の日本民話 竜とニワトリ

2008-12-29 04:32:45 | Weblog

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12月29日の日本民話


竜とニワトリ



竜とニワトリ
沖縄県の民話沖縄県情報


 むかしむかし、海と山にはさまれた小さな村がありました。
 人びとは山の木を切ってまきをつくり、船で遠く那覇(なは)の町まで運びこんで、それを売ったお金でくらしていました。
 この村には、貧乏だけど名医とのうわさの高い、お医者さんがおりました。
 ある日のタぐれ、お医者さんのところへ金持ちの娘が一人でたずねてきました。
 お医者さんは、一目で娘が何かの化け物であることを見破りましたが、だまって、その痛いとうったえるところをみてあげました。
「どれどれ。・・・これは!」
 なんと化け物の耳の中で、ムカデが一匹、あばれているのです。
「これは大変だ。だがその前に、あんたの正体を現しなさい!」
 娘はコクリとうなずいたかと思うと、口から白い霧(きり)をふき出して、一匹の大青竜(だいせいりゅう)になりました。
 そして目に涙をいっぱいためて、お医者さんを見つめています。
「おお、よしよし。今に楽にしてあげよう」
 お医者さんはそういいながら、竜の耳の中にニワトリを入れてやりました。
 さあ、それから青竜の耳の中で、ムカデとニワトリのたたかいがはじまりました。
 ムカデとニワトリは竜の耳の中で大暴れしましたが、竜はジッとガマンしました。
 それからまもなく、竜の耳からニワトリがムカデをくわえて出てきました。
「よかった、よかった。これで大丈夫だ」
 すっかり元気を取りもどした竜は、お医者さんに竜胆(りゅうたん→リンドウの根を乾燥した胃薬)をさし出して、ニワトリには大きな頭を何度も下げて、天にのぼっていったそうです。
 それからあと、竜はどんなに腹をたてて天に黒雲を呼び、地に大雨をふらせ、海に竜巻きを起こすことがあっても、そこにニワトリの姿を見つけると、ニワトリにケガをさせてはいけないと、すぐにおとなしくなったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → シャンソンの日
きょうの誕生花 → なんてん
きょうの誕生日 → 1960年 岸本加世子 (俳優)


きょうの新作昔話 → 屋敷を救ったカエル
きょうの日本昔話 → 火正月
きょうの世界昔話 → 仕事のとりかえっこ
きょうの日本民話 → 竜とニワトリ
きょうのイソップ童話 → ヤギの番入と野生のヤギ
きょうの江戸小話 → 他行


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12月28日の日本民話 順庵先生とふたごのキツネ

2008-12-28 04:24:10 | Weblog

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12月28日の日本民話


順庵先生とふたごのキツネ



順庵先生とふたごのキツネ
茨城県の民話茨城県情報


 むかしむかし、ある町に名医と評判の順庵(じゅんあん)というお医者さんがいました。
 ある夜ふけの事、ちょうちんをかざした三人の若い男がやってきて、
「こんな、ま夜中にすみません。町はずれのお宮(みや)の裏(うら)にすむ長左衛門(ちょうざえもん)の奥さんのおさよが、急に産気(さんけ)づいて、いまにも生まれそうなのです。おさよはもう四十をこえていますので、とても苦しんでいます。どうか、すぐにきてください」
と、いうのです。
 順庵先生はすぐに道具をそろえると、それを若者たちに持たせて家を出ました。
 長左衛門の家につくと、大きなおなかをした奥さんが苦しそうにうなっています。
「わしが来たからには安心せい。さあ、お前さんたち、お湯をたくさんわかすんじゃ。そして道具が入ったつつみは、ここへ置いておくれ」
 順庵先生が診察(しんさつ)をしようとすると、奥さんのおさよが、きゅうに大きな声をあげました。
 すると元気な泣き声がきこえて、ふたごの男の子が生まれたのです。
「なんと、ふたごとはな。母親はすこし年をとっておるが、無事に生まれてなによりじゃ。まあ、わしはなにもせんかったがな。あははははは」
 順庵先生は、笑いながらいいました。
「いやいや、ありがとうございました。さあ先生、どうぞこちらへ」
 となりの部屋に案内されると、ごちそうの用意ができていました。
 順庵先生は長左衛門や親戚(しんせき)の人たちにお酒をつがれて、おいしそうにのんでいましたが、いつのまにか寝てしまいました。
 そしてふと目をさますと、順庵先生はお宮の前の原っぱに寝ていたのです。
「なんじゃ? ここはどこだ? ・・・そうか、ばかされたか」
 順庵先生は、自分がキツネにだまされた事を知りました。
 それから、しばらくたったある日のこと。
 順庵先生は、町の人からこんな話をききました。
「お宮の裏にすみついているキツネの中で、もう毛がぬけかけておる一番年をとったメスギツネが、このあいだ二匹の子ギツネをうんだんですわ。母親は子どもが心配で、一日じゅうそばをはなれようとしません。人間でもキツネでも、やっぱり子どもはかわいいもんですな」
「そうか。それはよかった」
 話をきいた順庵先生は、次の日、さっそくそのキツネたちを見にいったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → シネマトグラフの日
きょうの誕生花 → くまざさ
きょうの誕生日 → 1968年 星出彰彦 (宇宙飛行士)


きょうの新作昔話 → お雪の伊勢参り
きょうの日本昔話 → 豆つぶころころ
きょうの世界昔話 → プリンのしおかげん
きょうの日本民話 → 順庵先生とふたごのキツネ
きょうのイソップ童話 → オオカミとロバ
きょうの江戸小話 → 借金取りのこうでん


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12月27日の日本民話 米問屋のお礼

2008-12-27 11:34:55 | Weblog

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12月27日の日本民話


米問屋のお礼



米問屋のお礼
宮崎県の民話宮崎県情報


 むかしむかし、ある海辺に、おじいさんとおばあさんと息子と嫁とが暮らしていました。
 おじいさんと息子は沖に出て魚をとり、おばあさんと嫁は機(はた)を織(お)る毎日でした。
 ある日の事、おじいさんと息子が沖へ漁に出ていると、急に空模様(そらもよう)があやしくなってきました。
「こりゃ、大雨になるぞ」
「お父っつぁん、あの島へ行こう」
 二人は大いそぎで、近くの島へ逃げました。
 だんだん雨風が強まるなか、やっと舟をおかに押し上げて、洞穴(ほらあな)にこもり、大荒れに荒れる海を見ながら、二人はジッと夜を明かしました。
 次の朝、大雨がやんだので、二人は舟を出して魚とりをはじめました。
 アミを海に入れると、とても重い手ごたえがあります。
 二人がなんとかアミを引き上げてみると、アミの中には二十五、六歳の立派(りっぱ)な着物を着た男がかかっていたのです。
「お父っつぁん、こりゃあ」
「うむ、ゆうべの大雨に流されてきたお人じゃろう。かわいそうなことだ。もう死んでいる」
 二人は島に穴をほると、その男をていねいにうめてやりました。
「今日は、ひきあげよう。おばあさんに頼まれていた物を買ってから帰ろう」
 二人は大きな町がある港へ、舟をこぎ寄せました。
 おみそやお米を買おうと、お米屋へ行ったら、そこの旦那(だんな)が声をかけてきました。
「もし、あなたたちは、昨夜の大雨の時、どうしていましたか?」
「はい、わしたちは危ういところで島に逃れられました」
「そうでしたか、それはよろしゅうございました。ところでここへ来る途中、千石船(せんごくぶね→江戸時代、米を千石ほど積める大形の和船)を見かけませんでしたか?」
「いいや、見なかったですな。ですが今日、わしらのアミに若い男の死骸(しがい)がかかって、島にうめてきました」
「死骸ですと!」
「なにか、心当りでもありなさるのか?」
「実は、息子が大阪に千石船で米を積んで出て行ったのですが、そこへあの大雨。心配しているところです」
「そうじゃったか」
「ごめんどうをおかけしますが、わたしをその島へ連れて行ってもらえますまいか?」
 二人は旦那を乗せて、その島へ戻りました。
 うめた死骸をほり返してみると、旦那の顔から血の気が引きました。
「むっ、息子です」
 二人は死骸を乗せて再び港へ引き返し、立派な葬式(そうしき)にも立ちあいました。
「あなたたちには、すっかりお世話になりました。わたしの心からのお礼を港に用意しました。どうか受け取って下さい」
「いや、お礼なんぞいりません」
「いいえ、あなたたちは息子をていねいにうめて下さっただけでなく、持っていたお金も、そっくりそのままそえて下さっていた。その正直さに感銘(かんめい→感動)しました。どうぞ受け取ってやって下さい」
 あまりにも旦那が言うので受け取ることにしたのですが、旦那につれられて港へ行ってビックリです。
 なんと旦那が用意したお礼は千石船で、しかも米千石が積んであったのです。
 その上、死んだ息子がもっていた百両(ひゃくりょう→七百万円ほど)以上もの金もくれたのです。
 二人はたちまち大金持ちになり、嫁とおばあさんの待っている家へと帰っていきました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ピーターパンの日
きょうの誕生花 → やつで
きょうの誕生日 → 1950年 奈美悦子 (俳優)


きょうの新作昔話 → ハリセンボンになった嫁さん
きょうの日本昔話 → 三郎の初夢
きょうの世界昔話 →
きょうの日本民話 → 米問屋のお礼
きょうのイソップ童話 → ロバとニワトリとライオン
きょうの江戸小話 → おやのおん


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