きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

6月30日の日本民話 ものを言うネコ

2010-06-30 06:55:48 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 6月の日本民話


6月30日の日本民話


ものを言うネコ



ものを言うネコ
京都府の民話京都府情報


♪朗読再生


 むかしむかし、山城の国(やましろのくに→京都府の南部)に清養院(せいよういん)という、お寺がありました。
 ある夏の夜の事、お腹をこわした和尚(おしょう)さんが便所に入っていると、庭の木戸(きど→庭や通路の入口などにもうけた、屋根のない開き戸の門)から、
「これ、これこれ」
と、呼ぶ者がいます。
(はて? いまごろ、だれがたずねてきたのか?)
 不思議に思った和尚さんが窓から外を見てみると、部屋の中から和尚さんの飼っているネコがかけだしてきて、庭へと飛び降りました。
 そしてネコはあわてて木戸のところへ行くと、カギをはずします。
 すると、一匹の大きなネコが現れて、
「こんばんは」
と、人間の言葉でしゃべったのです。
(ネコがしゃべるなんて!)
 和尚さんがびっくりしていると、大ネコはお寺のネコの案内で部屋に入っていきました。
 和尚さんが便所の中で、じっと耳をすましていると、大ネコがいいました。
「今夜、町で踊りがあるから、一緒に行かないか?」
「うん、そいつはおもしろそうだ。・・・でも、うちの和尚さんの具合が悪いので、今夜は行けないよ」
「うーん。そいつは残念だな。では、すまないが手ぬぐいを一本貸してくれないか」
「ごめん。その手ぬぐいも、和尚さんがひまなく使っているので、持ち出すわけにはいかないよ」
「そうか。・・・それじゃ、今夜はあきらめるとするか。おじゃましたな」
「ごめんね。せっかくさそってくれたのに」
 お寺のネコは大ネコを庭の木戸まで送っていくと、再び部屋に戻っていきました。
(わしの病気を心配して遊びにも行かないとは、なんてやさしいネコなんだ)
 和尚さんはうれしくなって、便所を出るとすぐに部屋へ戻りました。
 ネコは和尚さんの布団の横で、じっとうずくまっています。
 和尚さんは、ネコの頭をなでながら言いました。
「わしの事なら、もう大丈夫。気にしないでお前も踊りに行ってこい。この手ぬぐいをあげるから」
 和尚さんは、手ぬぐいをネコの頭にのせてあげました。
 するとネコは何も言わずに、外へ走っていきました。
 そして二度と、戻っては来ませんでした。
 ネコがいなくなって、和尚さんはがっかりです。
 そして、この事を物知りな老人に話したら、
「それは、ネコがしゃべるのを和尚さんに聞かれてしまったからですよ。ネコはしゃべるようになると、飼い主をかみ殺すと言いますからね。でもそのネコは、よっぽど和尚さんを大切に思っていたので、だまって出ていったのですよ」
と、教えてくれたそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → みその日
きょうの誕生花 → びようやなぎ(ヒペリカム)
きょうの誕生日 → 1975年 ラルフ・シューマッハー(F1レーサー)


きょうの新作昔話 → かや泥棒の長八郎
きょうの日本昔話 → 野ギツネ
きょうの世界昔話 → お姫さまとドラゴン
きょうの日本民話 → ものを言うネコ
きょうのイソップ童話 → 人間とセミ
きょうの江戸小話 → ちかづきのしるし


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6月29日の日本民話 コウノトリの恩返し

2010-06-29 07:04:15 | Weblog

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6月29日の日本民話


コウノトリの恩がえし



コウノトリの恩返し
鹿児島県の民話鹿児島県情報


♪朗読再生


 むかしむかし、ある村の橋の下に、ほったて小屋で暮らしている母と息子がいました。
 息子は毎日、少しばかりの塩を仕入れては、それを売り歩いていました。
 ある年の暮れの事です。
 息子が塩を仕入れて町からもどってくると、田んぼで殿さまが仕掛けたかすみアミにコウノトリがかかっていました。
「なんと、コウノトリじゃないか。年の暮れだというのに、かわいそうに」
 息子は、コウノトリをはなしてやりました。
 そして橋のところまで帰ってきたとき、土手(どて)の石につまずいて、塩をばらまいてしまったのです。
 橋の下からそれを見ていた母親は、
「また、けつまずいたのか。ああ、塩がもったいない。あの石はあぶないから足元に気をつけろって、何度もいっておったのに」
と、あきれ顔でいいました。
 これで、今日は仕事に行けません。
 仕事に行けないので食べる物が買えず、母と息子はだまって、お湯ばかり飲んでいました。
 ところがしばらくすると、ほったて小屋へ美しい娘がたずねてきたのです。
「おや? あんたみたいな美しい娘さんが、わしら貧乏人(びんぼうにん)に何の用だね?」
 母親がたずねると、娘はまじめな顔で、
「はい。嫁にしてもらおうと思ってきました」
と、いうのです。
「な、なにをいう。うちには金も食う物もねえ。だから、お前のような娘を嫁にはもらえねえ。わるいが、帰っておくれ」
 母親は断りましたが、
「お金なら、少しは持っております。お願いですから、嫁にしてください」
と、美しい娘は、ふところからお金を出しました。
「・・・しかし」
「お願いです。嫁にしてください」
「・・・だけれど」
「お願いです。嫁にしてください」
「・・・・・・」
 母親は断り切れなくなって、娘を息子の嫁にしました。
 すると次の日の朝早く、いかめしい(さむらい)たちがやってきました。
 そして、殿さまが捕らえようとしていたコウノトリを逃がした罪として、十両(じゅうりょう→約七十万円)の罰金(ばっきん)を払わなければ息子の命はないと、きびしく言ってきたのです。
「お前がコウノトリを逃がしたなんて、知らんかった。なんという事をしたんじゃ。十両もの大金は、一生かかっても出来んぞ。ああ、どうしたらいいんじゃ」
 嫁さんは泣き崩れる母親をなぐさめると、夫にむかっていいました。
「あなたが何度もつまずいて塩をばらまいた石を、どけてみなされ」
 息子はすぐに土手の石のところへ走っていくと、土をほって石をどけてみました。
 すると大きな石はふたになっていて、その下には大判小判がいっぱいうまっていたのです。
 そのお金で、息子はすぐに罰金を払いました。
 ところが晴れて息子の命がすくわれると、嫁さんは町へ買い物に行くといったまま、姿を消してしまったのです。
「あの娘は、お前が助けたコウノトリだったんだな。恩を返しに嫁にきたんだな」
 母と息子は、うなずきあいました。
 こうして大金持ちになったこの親子が、のちに大阪へ出てきて、
『難波(なにわ)の大長者(だいちょうじゃ)』
と、いわれた大商人、鴻池(こうのいけ)のはじまりになったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 星の王子様の日
きょうの誕生花 → あじさい
きょうの誕生日 → 1959年 引田天功(2代目・奇術師)



きょうの日本昔話 → かじかびょうぶ
きょうの世界昔話 → ハエの城
きょうの日本民話 → コウノトリの恩がえし
きょうのイソップ童話 → シカとブドウの木
きょうの江戸小話 → いれ目


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6月28日の日本民話 お花とごんべえ

2010-06-28 06:38:12 | Weblog

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6月28日の日本民話


お花とごんべえ



お花とごんべえ
福島県の民話福井県情報


 むかしむかし、ある村にお花というキツネと、こんベえというタヌキが住んでいました。
 二匹とも、化けるのがとても上手です。
 ある日の事、お花とごんベえが道でバッタリと出会いました。
 ごんべえは、わざとていねいに言いました。
「お花さんは化けるのがとても上手だそうだけど、おいらとどっちが上手かな?」
「さあ? どっちが上手か、化け比べをしてみないとわかんないわ」
 それを聞いたとたん、ごんベえがはらを立てました。
「よし、そんならどっちが上手か、化け比べをしよう」
「いいわよ。明日の晩、お宮さんの境内(けいだい)へきてちょうだい」
 お花はそれだけ言うと、帰っていきました。
(女のくせに、なんてなまいきなキツネだ。見ていろ。かならず負かしてやる。・・・だが、何に化けたらいいのだろう?)
 ごんべえは何に化けたらお花に勝つか、いっしょうけんめい考えました。
 なにしろお花の化ける花嫁姿ときたら、ごんべえもほれぼれするぐらいきれいで、いつも人間の娘さんとまちがえてしまいます。
 それに化けるのが上手なごんべえでも、男なので花嫁姿にだけは化けることができません。
 さて、キツネのお花はというと、
「ごんべえったら、どうせわたしに勝てっこないのに。まあいいわ。もう二度と化け比べをしようなんか言い出せないようにしてやる」
と、言って、何度も何度も花嫁姿に化ける練習をしました。
 さて、いよいよ化け比べの夜がきました。
 お花はさっと、花嫁姿に化けました。
 練習をしただけあって、とても美しい花嫁姿です。
 そしてお花は、本物の花嫁みたいにはずかしそうにうつむきながら、お宮さんへ行きました。
 ところが鳥居(とりい)をくぐろうとして、ふと下を見ると、ホカホカとゆげのたっているまんじゅうが落ちているではありませんか。
 お花は、思わずつばを飲みました。
 あたりを見回してみましたが、ごんべえはまだきていないようすです。
(今のうちだわ)
 お花は急いでまんじゅうをひろって、口の中へ入れようとしました。
 そのとたん、まんじゅうがパッとタヌキに変わったのです。
「あははははは。なんだ、いくら美しい花嫁に化けても、やっぱりくいしんぼうのキツネだなあ」
 はずかしくなったお花は花嫁姿に化けているのもわすれて、しっぽを出したまま逃げてしまいました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ニワトリの日
きょうの誕生花 → ざくろ
きょうの誕生日 → 1971年 藤原紀香(女優)


きょうの新作昔話 → お釈迦さまの誕生
きょうの日本昔話 → イモころがし
きょうの世界昔話 → カイコになったお姫さま
きょうの日本民話 → お花とごんべえ
きょうのイソップ童話 → 漁師とマグロ
きょうの江戸小話 → 急病


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6月27日の日本民話 身投げ石

2010-06-27 06:26:35 | Weblog

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6月27日の日本民話


身投げ石



身投げ石
大分県の民話大分県情報


 むかしむかし、豊後の国(ぶんごのくに→大分県)に、岡の殿(おかのとの)という豪族(ごうぞく)が住んでいました。
 岡の殿には大変美しい姫がいましたが、姫は重い病にかかってしまったのです。
「姫が不憫(ふびん→かわいそう)でならぬ、何としてもなおせ」
 岡の殿は家来たちに命令しましたが、しかし、どんな薬をあたえても、姫の病気には効かないのです。
 姫の病気は、日に日に悪くなるばかりでした。
 そんな、ある日の事。
 どこからか一人のお坊さんがやって来て、岡の殿に言いました。
「不治(ふじ)の病には 黒い花の咲(さ)くユリの根を煎(せん)じて飲ますとよいと、聞きおよびます。しかし、そのようなユリの花がどこにあるのやら」
 岡の殿は、あちこちにおふれを出しました。
《黒い花の咲くユリの花を探し出した者には、姫を嫁にとらす。一刻(いっこく)も早く探し出せ》
 それを読んだ人々は、山も川も海も、草の根を分けるようにして探しましたが、けれども、黒い花の咲くユリを見つけることは出来ませんでした。
「ええい、どこを探しておる。もっとよく探せ!」
 しかし、やっぱりどこにも見つかりません。
 屋敷の人々があきらめかけたとき、岡の殿がかわいがっていた栗毛(くりげ)のウマが、激しくいなないて屋敷にかけ込んできたのです。
 そのウマの口には、なんと黒いユリの花が一本くわえられています。
 岡の殿は夢中で栗毛にまたがると、栗毛は矢のようにかけ出しました。
 そしていくつもの山をこえた栗毛は、やがて深い谷で止まりました。
 そこの岩間には、黒いユリの花が何本も咲いていたのです。
 それからほどなくして、ユリの根を煎じて飲んだ姫は、元気になっていきました。
 さて、黒い花の咲くユリを見つけてきた物には、姫を嫁にやるという約束でしたが、相手がウマではどうしようもありません。
 ところが、あの栗毛はその約束を知っているのか、いつも姫に寄りそっていて、姫の側を離れようとしないのです。
 岡の殿も姫も気味悪くなり、栗毛をウマ小屋に閉じ込めてしまいました。
 しばらくたち、姫は病気全快のお礼参りに、八幡宮(はちまんぐう→八幡神を祭神とする神社の総称)へ詣(もう)でました。
 ところが、カゴにのって帰る途中、ウマ小屋から逃げだした栗毛が、狂ったように姫の行列めがけて走ってきたのです。
「あっ、あぶない!」
「姫のお身を守れ!」
 お供の者たちが姫を守ろうとしましたが、栗毛はお供の者たちを蹴散(けち)らすと、とうとう姫を、川に突き出た大きな岩の上に追いつめてしまったのです。
 岩の下では川の濁流(だくりゅう)が、ゴウゴウ音をたてて流れています。
 栗毛の目は怒りに燃えており、姫に一歩一歩近づいていきます。
「いやじゃあ!」
 姫は叫び声をあげましたが、栗毛は姫を道連れに、川へ身を投げたのです。
 いつのころからか、身投げ石と呼ばれるようになったその大岩は、栗毛のひづめのあとを今も残しているという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 日照権の日
きょうの誕生花 → びわ
きょうの誕生日 → 1980年 優香(タレント)



きょうの日本昔話 → 大福虫
きょうの世界昔話 → 鼻の白いネコ
きょうの日本民話 → 身投げ石
きょうのイソップ童話 → 父親と2人の娘
きょうの江戸小話 → 病人がへた


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6月26日の日本民話 村をおおった大木

2010-06-26 08:04:06 | Weblog

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6月26日の日本民話


村をおおった大木



村をおおった大木
滋賀県の民話滋賀県情報


 むかしむかし、ある殿さまのところに、ある村から手紙にそえられて、たくさんのくさった木の枝や葉っぱが届けられました。
 手紙には、こう書かれています。
《村の土をほったところ、このような、くさった木の枝や葉がいくつもの層になってでてきました。ためしに村のあちこちや川むこうの土もほってみましたが、どこからも同じものがでてきます。あまりにもおかしなことですので、現物(げんぶつ)をそえておとどけいたします》
「はて、これはどういう事だろうか?」
 殿さまも、不思議に思いました。
 ひろい村のあちこちから、同じような物が出てくるのはおかしなことです。
 殿さまは家来たちに、あれこれと書物を調べさせました。
 するとある古い書物に、世にも不思議な事が書いてあったのです。
 そのむかし、天皇(てんのう)が重い病気になったので、御所(ごしょ→天皇の住むところ)の人たちはこまっていました。
 えらい占い師を呼んで、占ってもらうと、
「東のほうに一本の大きな木があります。その木が天皇にうらみをいだいているのです。木をきってしまえば、ご病気はたちどころに治るでしょう」
と、いうのでした。
 大きな木は、琵琶湖(びわこ)の近くの村にありました。
 御所ではたくさんの木こりにたのんで、すぐにその大木をきりたおす事にしました。
 ところがその大木は、幹(みき)のまわりが百メートルもあるという、信じられないほどの太さの木だったのです。
 村中を木かげにして天高くのびるその大木は、きってもきっても次の日の朝には、また元どおりの姿になっているのでした。
 御所ではまた、占い師を呼んでたずねました。
 すると占い師は、
「きった木のくずをまわりに残しておくと、木が元どおりになってしまうのです。天皇をよく思わない者が、それほど強いのろいをその木にこめたのでしょう。きった木のくずを毎日残らず焼いて、灰にしてしまわなければだめです」
と、いいました。
 そこで毎日、きった木のくずを焼きすてていると、七十日目にようやく、大木は山がくずれるようにたおれて、枝や木の葉が村じゅうにとびちって土にうまったのです。
 この木がたおれてから天皇の病気は一度はよくなりましたが、すぐにまた病にかかって、とうとう亡くなってしまいました。
 御所でほかの占い師にたずねたところ、こんどは、
「古い大きな木をきったことがわるい。どうしてそんなことをしたのだ」
と、いわれたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 雷記念日
きょうの誕生花 → グロリオーサ
きょうの誕生日 → 1928年 中松義郎(Dr.中松・発明家)



きょうの日本昔話 → いたずらタヌキと木こり
きょうの世界昔話 → 頭のいいヒツジ
きょうの日本民話 → 村をおおった大木
きょうのイソップ童話 → ロバのかげ
きょうの江戸小話 → 川の字


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