きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

2月29日の日本民話 金色のトビ

2008-02-29 05:26:41 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話

2月29日の日本民話

金色のとび

金色のトビ

宮崎県の民話宮崎県情報

 むかしむかし、日向の国(ひゅうがのくに→宮崎県)に、伊波礼毘古命(いわれびこのみこと)という人がいました。
 伊波礼毘古命は、高千穂(たかちほ)というところで国をおさめていましたが、そこはあまりにもはしっこの国だったので、もっと東の方へ移ろうと思い、軍隊をひきいてそこを出発しました。
 そして海を渡ったり、陸を進んだり、長い月日をあちらこちらと歩きまわりました。
 ある年の夏、伊波礼毘古命の軍隊が、今の大阪湾から陸へあがろうとしたときのことです。
 大和の国(やまとのくに→奈良県)の、いなかのほうにいた長髄彦(ながすれひこ)という人が、
「伊波礼毘古命の軍隊がここへ来たのは、きっと、わたしたちの国をうばい取るつもりなのだろう」
と、思い、たくさんの兵隊を集めて、待ちかまえていました。
 それで伊波礼毘古命の軍隊が乗った船が浜辺につくなり、さかんに矢をいてきました。
 伊波礼毘古命の軍隊はたてを手に持ち、ビュー、ビューと飛んでくる矢を防ぎながら、陸にあがって戦いました。
 この戦いで、伊波礼毘古命の兄さんが、長髄彦の矢に当たって深いきずを受けました。
 兄さんは、そのきずをおさえながら言いました。
「わたしたちは太陽の子でいながら、太陽のほうに向かって戦ったのがまちがいだった。これから遠まわりをして、太陽を後ろにして戦おう」
 そこで伊波礼毘古命の軍隊は、もう一度船に乗って南の方へまわることにしました。
 その途中、兄さんは矢のきずがもとで、なくなってしまいました。
「ようし、兄さんのかたきは、きっと取ってみせるぞ」
 伊波礼毘古命はそう決心をし、長髄彦をにくみました。
 伊波礼毘古命の軍隊が陸にあがると、べつの新しい敵がいました。
 この敵をうつために、けわしい山道を道案内をしてくれたのは、『八咫(やた)ガラス』という、カラスでした。
 こうして伊波礼毘古命の軍隊は、ようやく長髄彦のいるあたりへ来ました。
 長髄彦も、伊波礼毘古命の軍隊が攻めよせてくることを早くから知っていたのでしょう。
 敵ながら、力いっぱい戦いました。
 そのうちに、長髄彦のほうの兵隊の勢いが強くなり、伊波礼毘古命の軍隊は負けそうになってきました。
「あぶない、味方がやられる!』
 伊波礼毘古命がそう思ったとき、にわかに空が暗くなって、大雨が降ってきました。
 そして大雨の中を、どこからか金色のトビが飛んできて、軍隊を指揮している伊波礼毘古命が持った弓のてっぺんにとまったのです。
「うわっ、まぶしい!」
 長髄彦の兵隊は、うろたえてさけびました。
 その金色のトビの光りかがやくようすが、まるでいなびかりのように見えたのです。
「これは、たまらん!」
 敵のだれもがまぶしさに目がくらんでしまい、もう戦うどころではありません。
 おかげで味方の軍隊は勢いをもりかえし、伊波礼毘古命は長髄彦をうちほろぼすことができました。
 この伊波礼毘古命という人が、神武天皇(じんむてんのう)なのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 跳躍の日
きょうの誕生花 → よもぎ
きょうの誕生日 → 1948年 赤川次郎 (小説家)

きょうの日本昔話 → もぐさのききめ
きょうの世界昔話 → ものをいう鍋
きょうの日本民話 → 金色のトビ
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2月28日の日本民話 カッパのわび証文

2008-02-28 05:55:46 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 2月の日本民話

2月28日の日本民話

カッパのわび証文

カッパのわび証文
山形県の民話山形県情報

 むかしむかし、最上川(もがみがわ→山形県)のほとりに庄屋(しょうや)の家があり、一人のきれいな娘さんがいました。
 一人娘だったので、庄屋さんは目に入れてもいたくないほど可愛がっていたのですが、最近は何となく元気がなくなり、顔色も青ざめてきたのです。
 医者に見せても病気ではないというし、娘にどこか具合が悪いかときいても首を横に振るだけです。
 こまった庄屋さんは、町の巫女(みこ)に娘の事をみてもらいました。
 すると巫女は、
「これは、カッパに見こまれて術をかけられているのでしょう。えらい坊さまなら、道切り(みちきり)の呪文(じゅもん)でカッパをつかまえられるでしょう」
と、いうので、庄屋さんは村に飛んで帰り、古いお寺のえらい和尚(おしょう)さんに道切りの呪文を頼みました。
 和尚さんは、
「カッパが人間の女に心を寄せるなど、とんでもない事だ。こらしめてやりましょう」
と、さっそくカッパのいる川で道切りの呪文をとなえ始めると、川の水がみるみるへりはじめたのです。
 そして和尚さんは、大声でさけびました。
「庄屋の娘の術を解き、二度と人間に悪さをしてはならぬ。明日の朝までに約束する証文(しょうもん)を持ってこないときは、川の水をからしてしまうぞ!」
 すると川の底から、苦しそうな声が聞こえてきました。
「悪かった。明日の朝まで待ってくれ」
 その日からカッパにかけられた娘の術がとけて、元気な美しい娘にもどりました。
 次の朝、和尚さんが山門に出てみると、一巻のカッパのわび証文がおいてあったそうです。
 今も高畠町糠野目(たかはたちょうぬかのめ)のある寺には、このカッパのわび証文が残されているという事です。

おしまい

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きょうの誕生花 → みすみそう(ゆきわりそう)
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きょうの日本昔話 → クラゲのおつかい
きょうの世界昔話 → トラになった王さま
きょうの日本民話 → カッパのわび証文
きょうのイソップ童話 → 足をけがしたふりをするロバとオオカミ
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2月27日の日本民話 カッパと伝次の約束

2008-02-27 05:48:13 | Weblog

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2月27日の日本民話

カッパと伝次の約束

カッパと伝次の約束
熊本県の民話熊本県情報

 むかしむかし、ある村に、一匹のカッパがすんでいました。
 このカッパは力が強くて、大変なすもう好きです。
 おまけにイタズラも大好きだったので、村の人たちは手をやいていました。
 ある時、お百姓(ひゃくしょう)の伝次(でんじ)が仕事をおえて、川辺でよごれたウマを洗っていました。
 すると川の中からカッパがでてきて、ウマのしりこ玉をとろうとしたのです。
 村一番の力持ちである伝次は、
「何を悪さするか。ひねりつぶしてやるぞ!」
と、いうと、カッパは逃げようともせずに、
「ふん! 伝次よ、お前は村一番の力持ちというが、おいらには勝てねえ。いっちょう勝負だ」
と、身がまえました。
「なにを、なまいきな。かかってこい!」
 こうして、伝次とカッパのとっくみあいが始まりました。
 するとそのとき、カッパの頭のお皿に入っている水がこぼれおちたのです。
 水は、カッパの力のみなもとです。
 こうなっては、カッパは力がでません。
 たちまちねじふせられて、ウマ小屋の柱にしばりつけられてしまいました。
「日干しにしてやる。そこにずっとおれ」
 伝次はいいすてると、家の中へ入ってしまいました。
 しばらくすると伝次のおかみさんがウマに水をやるため、おけに水をいれて持ってきました。
 するとカッパは、おかみさんをからかったのです。
「このブサイク女。鼻ペチャ女」
 おかみさんは怒って、おけの水をカッパの頭の上からザブッとかぶせました。
「ウッヒヒヒ。ありがとよ」
 頭のお皿に水がたまって元気をとりもどしたカッパは、なわを引きちぎって川へ逃げていきました。
 それからしばらくたった、ある夜のことです。
 伝次が畑の中の道を歩いてとなり村から帰ってくると、あのカッパが畑でイモほりをしているのが月明かりに見えました。
「こらっ! イモをぬすむとはなにごとか! お前はまだ悪さをしておるのか!」
 伝次が大声でどなると、カッパは、
「すもうをとるべえ」
と、いって、かかってきました。
 伝次はまた、カッパとすもうをとることになりましたが、今度も勝負はあっけなくついてしまいました。
 カッパが伝次のおなかの下へ頭をおしつけてきたとき、うっかり頭のお皿の水をこぼしてしまったのです。
「どうだ。もうぜったいに悪さはしないと約束するか。しなければ、今度は本当に日干しにしてくれるぞ」
「約束する」
「それは本当か? お前は、平気でうそをつくからな」
「カッパは、うそはつかぬ」
「よし、なら証文(しょうもん)を書け」
と、伝次はカッパに証文を書かせました。
 紙ではやぶれてしまうので、二つの石に証文をきざませて、おたがいに一個ずつ持つことにしました。
 その石には、
《この石がくさるまで、人間に悪さはしません》
と、きざまれていました。
 その後、カッパは約束を守って、村の人たちにイタズラはしなくなりました。
 けれども、ウマにはときどきイタズラをするので、村の人たちはこまっていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

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きょうの誕生花 → サキシフラガ(くもまぐさ)
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きょうの世界昔話 → わすれな草
きょうの日本民話 → カッパと伝次の約束
きょうのイソップ童話 → ライオンの皮を着たロバとキツネ
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2月26日の日本民話 おたつ女郎

2008-02-26 05:11:19 | Weblog

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2月26日の日本民話

おたつ女郎

おたつ女郎
三重県の民話三重県情報

 むかしむかし、神島(かみじま)におたつ女郎(じょろう)と呼ばれる、美しいお姫さまが流れついて来ました。
 漁夫たちは、おどろいて、
「あなたのような美しいお姫さまが、どうしてこんな島に流れて来られたのじゃ?」
と、聞きました。
 すると、
「私はおたつ女郎という姫で、遠い国から流れて来たのです」
と、いうだけで、その遠い国がどこの国ともいわないのです。
 みんなが不思議に思っていると、ある日、お姫さまが、
「じつは、この神島とは神さまが住まわれている島だと思ってやって来たのです。金でつくった丈夫な舟に乗り、大波小波を乗り越えてやって来たのです。私はみんなに知られるのがいやで、金の舟は神島の近くの海辺にうめてしまいました」
と、いいました。
 それからというもの、漁夫たちはお姫さまの美しい顔を見ようと、毎日のようにお姫さまのところへたずねて行きました。
 お姫さまは見られるのがいやで、あちらこちらと姿をかくしますが、小さな島なので、どこにかくれてもすぐに見つかってしまいます。
 お姫さまが神島の岩屋(いわや)の中にかくれていますと、夜中ごろに庄屋(しょうや)がやって来て、
「私の家が空いていますから、ぜひ来て下さい」
と、いいました。
 そこでお姫さまは、庄屋の家に泊めてもらうことになりました。
 ある日、お姫さまがカガミを立ててお化粧(けしょう)をしていると、一人の若者が自分のカガミでしきりにお姫さまをてらしているのです。
 お姫さまは、
「どうして、私をてらすのです?」
と、聞くと、若者は、
「お姫さまが、とても美しいからです」
と、答えました。
 するとお姫さまは怒って、
「私のような者をてらしてもらっては、おてんとうさまに申しわけありません。どうか私をてらさないでください」
と、いいました。
 若者はそれでも、
「お姫さまは、とっても美しいかたです。おてんとうさまも、きっとそう思っています」
と、いうと、お姫さまはまた怒って、庄屋の井戸の中へカガミを投げこんでしまいました。
 それ以来、庄屋の井戸はもちろんのこと、島中の井戸の水は赤サビ色になってしまったということです。
 お姫さまが持って来たと伝えられる、掛け軸と守り刀が神島の波切不動(なみきりふどう)さんにまつられてあり、毎年、大晦日(おおみそか)の夜中にだけ、戸を少しだけ開けて見せてくれるそうです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 咸臨丸の日
きょうの誕生花 → スノードロップ
きょうの誕生日 → 1956年 桑田佳祐 (ミュージシャン)

きょうの日本昔話 → ひっぱりあいず
きょうの世界昔話 → ソバとゆうだち
きょうの日本民話 → おたつ女郎
きょうのイソップ童話 → 旅に出たディオゲネス
きょうの江戸小話 → 七の字

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2月25日の日本民話 よっぱらったスズメ

2008-02-25 05:06:56 | Weblog

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2月25日の日本民話

よっぱらったスズメ

よっぱらったスズメ
長崎県の民話長崎県情報

 むかしむかし、あるところに、お父さんと息子がいました。
 ある日の事、お父さんは息子に言いました。
「となりの国ヘスズメを持っていけば高く売れるそうだが、一度にたくさんのスズメをとる方法はないものか?」
 すると息子は、
「そんなことはわけもない。酒のカスとツバキの葉っぱがあればだいじょうぶだよ」
と、言って、酒のカスを買いにいき、ツバキの葉っぱをかごにいっぱいつんできました。
 それからスズメのきそうなところに葉っぱを並べて、その上に、少しずつ酒のカスをつけておきました。
「こうしておけば、スズメなんかすぐにつかまえられるよ」
 二人は木のかげにかくれて、スズメが来るのを待っていました。
 すると、チュンチュンチュンと、スズメたちが集まってきて、酒のカスを食べはじめました。
 ところがしばらくして、スズメたちは酒のカスによっぱらってしまい、ツバキの葉っぱの上へコロリと横になったまま、動かなくなりました。
「なるほど、息子はたいしたものだ」
 お父さんが感心していると、日であったまったツバキの葉っぱが、クルリンとまがって、寝ているスズメをすっぽりと包みこんでしまったのです。
「いまのうちだ!」
 息子は、ほうきで葉っぱをはきよせると、俵(たわら)の中に入れました。
「さあ、これを売りに行けばいい」
 お父さんはさっそく、スズメの入った俵を舟につみ、となりの国へ売りにいきました。
「さあさあ、よく太ったおいしいスズメだよ、買った買った」
 お父さんの声を聞いて、大勢の人が集まってきました。
「まさか、死んでいるスズメじゃないだろうな」
「とんでもない。ほれこの通り、ゴソゴソ動いていますよ」
「本当だ。それなら売ってくれ」
「はいはい。みんなきちんと並んでください」
 これほどスズメを買う人があるとは、お父さんも知りませんでした。
(全部売ったら、どのくらいのお金になるだろうか)
と、思うだけでうれしくなってきます。
 ところが俵の口を開けたとたん、スズメがいっせいにとび出して、あっというまに空へとんでいきました。
 よっぱらって寝ていたスズメは、すっかり目がさめてしまったのです。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 夕刊紙の日
きょうの誕生花 → カランコエ
きょうの誕生日 → 1972年 有野晋哉 (芸人)

きょうの日本昔話 → カニにまけたネコ
きょうの世界昔話 → やまのおかしら
きょうの日本民話 → よっぱらったスズメ
きょうのイソップ童話 → 家がらくらべをするキツネとサル
きょうの江戸小話 → まんじゅうこわい

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