きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

8月31日の日本民話

2007-08-31 06:06:26 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話

8月31日の日本民話

タマゴから生まれたお坊さん

タマゴから生まれたお坊さん
大阪府の民話大阪府情報

 むかしむかし、行基(ぎょうき)というえらいお坊さんがいました。
 行基は生まれ故郷である大阪やその近くで、弟子やたくさんの信者(しんじゃ)たちと一緒に橋や道などをなおしました。
 また、まずしい人たちのために無料の宿泊所(しゅくはくじょ)をつくり、その数だけでも三十にのぼったといいます。
 多くの人たちのしあわせと、世の中のためにつくした行基は、五十七歳になった天平十七年(七四五年)、お坊さんで一番高い位の大僧正(だいそうじょう)をさずけられました。
 橋などがこわれて人々がこまっているときくと、すぐにそこへでかけていって修理をします。
 行基がいくところ、いつも千人もの信者たちがあとにつづいて、工事を手伝っていたといわれています。
 さて、行基がふるさとに帰ったときの事です。
 池で魚をとって食べていた若者たちが、
「お坊さんというのは生の魚を食べないものだというが、どうだ。ためしてみよう」
と、イタズラを思いたちました。
 そして行基に、魚をうすぎりにしてお酢につけたなますをつくってすすめました。
 行基はいただいてお礼をいうと、そのなますを口にいれてかんでから、すぐにかたわらの池へいってはきだしました。
 するとなますは、たくさんの小さな魚になって水の中を泳ぎだしたのです。
 ビックリした若者たちは、自分たちがしたイタズラをはずかしく思い、行基に心からあやまったのでした。
 さて、この行基というお坊さんは、ふつうの赤ちゃんよりも二か月も長く、お母さんのおなかにいて、やっと生まれたといわれます。
 それと不思議な事に、生まれるときにお母さんのおなかの中からでてきたのは、なんと丸いタマゴだったのです。
 両親はおどろきましたが、かといって、そのタマゴをすてるわけにもいかず、鉢(はち)にいれて家の門の前にあるエノキの木の枝につるしておきました。
 そして夕方になると、そのタマゴから赤ちゃんの泣き声がきこえてきたのです。
 両親が赤ちゃんを家の前にすてていった人がいるのかと思って、いそいでいってみると、木の枝につるした鉢の中の卵がわれて、男の赤ちゃんが生まれていたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 野菜の日
きょうの誕生花 → サルビア
きょうの誕生日 → 1961年 ANRI(杏里)(シンガー)

きょうの日本昔話 → 山ナシとり
きょうの世界昔話 → 仙女
きょうの日本民話 → タマゴから生まれたお坊さん
きょうのイソップ童話 → 病人と医者
きょうの江戸小話 → 来年は同じ

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8月30日の日本民話

2007-08-30 06:39:21 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話

8月30日の日本民話

だまされたオオカミ

だまされたオオカミ
京都府の民話京都府情報

 むかしむかし、あるところに、とてもいじわるなオオカミがいました。
(ひまだなー。だれかいじめるやつはいないかなあー)
 川のそばをプラプラ歩いていると、むこうからウサギがやってきました。
「やあ、ウサギどん。おらと一緒に遊ばないか?」
「・・・・・・」
 ウサギがだまって通りすぎようとすると、オオカミはしつこくさそいます。
「川むこうの森に、すてきな花がさいているんだ。とりに行こうよ」
 ウサギはしかたなく、オオカミについていくことにしました。
 オオカミはさっそくかれ木を一本ひろってきて、川の上にかけました。
「さあ、ウサギどんから先にわたりなよ」
「だって、何だかおれそうだよ」
「大丈夫。ぼくだって平気なんだから」
「うん、じゃあ・・・」
 ウサギはこわごわと、かれ木の橋をわたりはじめました。
 ところが、橋のとちゅうまで行くと、
 ポキッ!
 かれ木の橋がおれて、ウサギはあっというまに川におちてしまいました。
「た、たすけてー!」
 ウサギはもがきながら、どんどん流されていきます。
「あははははは。ざまあみろ」
 オオカミは流されるウサギを見て、手をたたいて喜びました。
 でも、川下へ流されたウサギは、うまいぐあいに岩につかまり、やっと川からはいあがることができました。
(オオカミめ! 見ていろよ! 必ずしかえしをしてやるからな!)
 ウサギはオオカミに見つからないよう、こっそり家へ帰りました。
 次の日の朝、オオカミがまだ寝ていると、
「オオカミどん! オオカミどん!」
と、戸をたたく者があります。
「うるさいなあ、だれだよ」
 オオカミが戸を開けてみると、なんとウサギが立っているではありませんか。
「う、うっ、ウサギどん!」
 オオカミはビックリです。
 昨日、たしかに川でおぼれ死んだはずなのですから。
「ま、まさか幽霊(ゆうれい)?」
 すると、ウサギが言いました。
「何をねぼけているんだい。この二本の足が見えないの? そうじゃなく、オオカミどんのおかげで竜宮(りゅうぐう)まで行ってきたんだよ」
「竜宮だって? もしかして、あの竜宮かい?」
 オオカミが、身をのりだしてきました。
「そうさ。あれから川をどんどん流れていって海へついたら、大きなカメさんがやってきて、竜宮へ案内してくれたんだ。きれいな乙姫(おとひめ)さまと一緒にごちそうを食べて、魚たちのおどりも見せてもらった。そりゃ、もう楽しくて楽しくて」
 それを聞くと、オオカミが待ちきれずに言いました。
「おらも、行きたい!」
「そうさ。だからこうやって、知らせに来たんじゃないか」
「ありがとう。でも、おらはおよげないよ」
「大丈夫、このふくろに入って流れていけば、一人でに海へ出られるさ」
「なるほど、そいつはありがたい」
 ウサギはオオカミをつれて、川のそばにいきました。
 それから大きなふくろの口を開けて、オオカミを中に押し込みます。
「ほらほら、まだしっぽが出ている。もっとおくへ」
 オオカミはふくろのおくへもぐって、体をまるくしました。
「そんなら、ふくろの口をとじるよ」
 ウサギはひもで、しっかりと口をとじました。
「苦しくて、息ができないよ」
 オオカミが、ふくろの中から言いましたが、
「なに、大丈夫さ。すぐにカメさんが来てくれるから。じゃあ、乙姫さまに会ったらよろしくね」
 ウサギは、力いっぱいふくろをけりました。
 ふくろはゴロゴロところがり、川の中へどっぷん。
 それから、プカリプカリと流れていきました。
 でもそのうちに、水がしみこんできて、ふくろがしずみはじめました。
「く、く、苦しい。だれか助けて」
 オオカミは、ふくろの中であばれまわりましたが、どうする事もできません。
(しまった、ウサギにだまされたんだ!)
と、思った時には、オオカミは川のそこにしずんでしまい、二度と浮き上がる事ができませんでした。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 冒険家の日
きょうの誕生花 → かやつりぐさ
きょうの誕生日 → 1948年 井上陽水(シンガー)

きょうの日本昔話 → キツネのさいなん
きょうの世界昔話 → パーベルじいさんの小石
きょうの日本民話 → だまされたオオカミ
きょうのイソップ童話 → 少年と肉屋
きょうの江戸小話 → 大食らいの三太郎

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8月29日の日本民話

2007-08-29 06:40:26 | Weblog

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8月29日の日本民話

死神の魂袋と扇

死神の魂袋と扇
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、あるところに、病気で寝込んでいる娘がいました。
 娘の病気は日に日に重くなって、もう、今日明日には死ぬだろうという状態です。
 娘の枕元には親類や近所の人が集まって、娘の最後を見守(みまも)っていました。
 真夜中になって、一人の若者がかけつけて来ました。
 すると娘の家の回りを、黒い服を着て大きなカマを持った奇妙(きみょう)な男が、ウロウロしているではありませんか。
「気味の悪いやつだな」
 若者がそれとなくその男の様子をうかがっていると、その男は時々、家の壁のすき間から家の中をのぞいているのです。
 若者は思い切って、男に声をかけました。
「あの、あんたは誰です? この家に、何か用でも?」
「わしか? わしは死神だ。わしは一番どりが歌うまでに、ここの娘の魂(たましい)を取らねばならんので様子をうかがっておるんじゃ。じゃが、人の出入りが多くてわしが入り込むすきがない。すまんがお前、わしの手伝いをしてくれんか?」
 若者は死神と聞いてビックリしましたが、とっさに名案がうかびました。
「ああ、いいよ。それで、何をしたらいい?」
「そうか、手伝ってくれるか。それならお前は、外で見張りをしておくれ、人が来たら知らせておくれ」
 死神はこういうと、スーッと家の中に入りました。
 そのとたん、家の中にいた人々が、突然居眠りを始めたのです。
 若者は、壁のすき間から死神が何をするのかをのぞいていました。
 死神は娘の枕元に座ると、ふところから皮袋と扇(おおぎ)を取り出して、まず皮袋の口を開き、そして娘の片方の耳元で扇をゆっくりひとあおぎし、もう一方の耳元でまたひとあおぎし、次に口元でひとあおぎしました。
 娘があくびを一つしたとき、死神は皮袋の口をキュッと閉めます。
 すると娘は、コロッと死んだのです。
「やれ、終った」
 死神はニヤリと笑って、外へ出て来ると若者に言いました。
「ご苦労じゃった。手伝ってくれた礼に、お前の魂をもらいに来るときは、出来るだけゆっくり来てやるからの」
 そして、墓場の方へと歩いて行きます。
 その歩き方がとてもしんどそうだったので、若者がたずねました。
「死神よ、どうした?」
「どうやら、さっきの人の出入りで気をつかい過ぎて、くたびれたようじゃ。それに、この魂の入っとる袋が重くて」
「なら、その袋はおらがかついでやる」
「そうか、悪いな」
 死神は皮袋と扇を、若者に渡しました。
 若者は皮袋と扇を持って死神の後ろを歩き、墓場の入口に差しかかった時、
(よし今だ!)
と、扇で脇腹をバサバサとたたいて、
「コケコッコ―!」
と、一番どりのなき真似をしたのです。
 それを聞いて、死神は大あわて、
「しまった。もうそんな時間か!」
と、言って、そのまま姿を消してしまいました。
 若者が娘の家に帰ってみると、家では娘が死んだことで、みんな泣いています。
「泣かなくてもええぞ。おらが娘を生きかえらせてやる」
 そう言うて娘の枕元に近寄ると、皮袋の口を開けて、片方の耳元で扇をゆっくりとあおぎし、もう一方の耳元でひとあおぎ、次に口元でもひとあおぎしました。
 すると死んだはずの娘があくび一つして、生きかえったのです。
 その後、若者は娘のむことなって、二人仲良くくらしたという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 焼肉の日
きょうの誕生花 → けいとう
きょうの誕生日 → 1950年 八代亜紀(歌手)

きょうの日本昔話 → 天井に現れた大目玉
きょうの世界昔話 → 騎士と水の精
きょうの日本民話 → 死神の魂袋と扇
きょうのイソップ童話 → マムシとキツネ
きょうの江戸小話 → はっぱの手紙

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8月28日の日本民話

2007-08-28 06:22:08 | Weblog

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8月28日の日本民話

子どもの好きな地蔵さん

子どもの好きな地蔵さん
福島県の民話福井県情報

 むかしむかし、ある村の道ばたの草むらに、小さな地蔵(じぞう)さんがころがっていました。
 ある日のことです。
 村の子どもたちが地蔵さんをゴロゴロころがしたり、ウマにしてまたがったりして遊んでいると、通りかかったお百姓(ひゃくしょう)のおばあさんが、
「これこれ。地蔵さんをおもちゃにしておると、ばちがあたるぞ。なんとも、もったいない。こんな事をするなら、このばばがもらっていくよ」
 そういって背負っていたカゴの中に地蔵さんを入れて、村はずれの見はらしのいい丘の上に持っていきました。
 そして草花をそなえて、まつってあげたのです。
 すると、どうしたことでしょう。
 地蔵さんをおもちゃにして遊んでいた子どもたちが、次々と熱を出してしまったのです。
 それほど苦しむようすはありませんが、何日も何日も、熱はなかなかなおりません。
「どうしたんだ? 元気な子だったんだがな」
 家の人たちが心配していると、一人の子どもの親の夢に地蔵さんが現れていいました。
「わしは、子どもたちと遊びたかったのに。丘の上などにまつられて、おもしろくもない。はやく、子どもたちと遊びたい」
 子どもの親たちはビックリして、さっそく丘の上から地蔵さんを村へつれてきました。
 そして病気にかかっている子どもの家を地蔵さんをつれて一軒一軒まわると、子どもたちはすっかり元気をとりもどしたのです。
 子どもの親たちはたいへん喜んで、地蔵さんを「子育て地蔵」と名づけ、もともと地蔵さんがころがっていた道のかたわらに、小さなお堂をたててまつることにしました。
 この子育て地蔵さんは子どもたちと遊ぶのが大好きで、鬼ごっこや、かくれんぼなどをするとき、子どもたちはお堂から地蔵さんを出してきて一緒に遊ぶのでした。
 地蔵さんと一緒に遊ぶ子はますます元気になり、けがや病気をしないので、村の親たちは大喜びです。
 やがてこの子育て地蔵さんの話は、近くの村々へもひろがっていきました。
 子どもが病気でこまっている人たちは地蔵さんをかりにきて、しばらくその子と一緒にしておきます。
 すると子どもは元気になり、お礼として地蔵さんにかわいらしい着物を着せてやるので、地蔵さんの着物はふえるばかりでした。
 するとますます、地蔵さんをかりにくる人たちもふえていきます。
 その後、毎月二十八日には村のお堂に集まって、にぎやかなお祭りをするようになったという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → バイオリンの日
きょうの誕生花 → ききょう
きょうの誕生日 → 1955年 宮川花子(漫才師)

きょうの日本昔話 → 親指太郎
きょうの世界昔話 → ロンドン橋
きょうの日本民話 → 子どもの好きな地蔵さん
きょうのイソップ童話 → 羽根を切られたワシとキツネ
きょうの江戸小話 → 命より皮が大事

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8月27日の日本民話

2007-08-27 06:31:49 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話

8月27日の日本民話

三日月の滝

三日月の滝
大分県の民話大分県情報

 むかしむかし、京の都に、清原正高(きよはらまさたか)という横笛(よこぶえ)の名人がいました。
 そのうわさが帝(みかど)の耳に入り、宮中の宴(うたげ)の席で笛を吹くようになったのです。
 ある日の事、宮中勤めをするようになった正高(まさたか)が笛ならしをしていると、どこからともなく、その笛に合わせるように美しい琴(こと)の音(ね)が流れてきました。
 それは、小松女院(こまつにょいん)という姫のかなでる琴でした。
 その日から、宮中では笛と琴の音あわせが、毎日のように聞かれるようになったのです。
 それと、二人はおたがいに心を寄せ合う仲になったのです。
 ところが、これを知った帝は大変怒りました。
 笛吹きの正高と、帝と血のつながりのある姫とでは、身分が違い過ぎるというのです。
 正高は豊後の国(ぶんごのくに→大分県)へ、姫は因幡の国(いなばのくに→鳥取県)へと、離ればなれにされてしまいました。
 さて、それからいく年もたちましたが、どうしても正高のことが忘れられない姫は、ある夜、ひそかに豊後の国へと旅立ったのです。
 十一人の侍女(じじょ)とともに、けわしい山を越えて海を渡るその旅は、命をかけての旅でした。
 豊後の国の玖珠(くす)という所にたどり着いたのは、因幡の国を出てから百日余りもたった頃です。
 みんなは身も心も疲れ果てて、三日月の滝のほとりで休んでいました。
 するとそこへ、一人の年老いた木こりが通りかかりました。
 侍女の一人が、
「あのう、もし」
と、声をかけます。
「このあたりに、清原正高さまというお方が住んでいると聞いて参ったのですが」
「ああ、横笛の正高さまかね。正高さまなら、五、六年前からこの里に住んでおいでじゃが、今じゃ、里の主の兼久(かねひさ)さまの娘婿(むすめむこ)になってます」
「なっ、なんと・・・」
 これを聞いた姫や侍女たちは、言葉もなくたたずみました。
 生きる望みがたたれた姫は、よろよろと三日月の滝のふちに近寄ると、手を合わせて飛び込んだのです。
 そしてその後を追って、十一人の侍女たちも次々と身を投げてしまいました。
 年老いた木こりは、あまりの出来事に、息をのんで見つめているだけでした。
 この木こりから話しを聞かされた正高は、姫とその侍女たちの霊(れい)をなぐさめるために寺を建てました。
 そして心をこめて、横笛を吹いたのです。
 正高の建てたその寺は、正高寺(しょうこうじ)と呼ばれて、今も残っており、三日月の滝のほとりには、嵐山神社(あらしやまじんじゃ)が建てられて、正高の横笛が大切に保存されているという事です。

おしまい

きょうの豆知識と昔話

きょうの記念日 → 仏壇の日
きょうの誕生花 → ふよう
きょうの誕生日 → 1947年 田中星児(歌手)

きょうの日本昔話 → 山姥の顔をしたかんぴょう
きょうの世界昔話 → 笛ふき岩
きょうの日本民話 → 三日月の滝
きょうのイソップ童話 → 金のたまごをうむニワトリ
きょうの江戸小話 → お日さまよりも、足のはやい男

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