きょうの日本民話 gooブログ編

47都道府県の日本民話をイラスト付きで毎日配信。

3月31日の日本民話 花散る下の墓

2010-03-31 08:22:58 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話


3月31日の日本民話


花散る下の墓



花散る下の墓

大阪府の民話大阪府情報


♪朗読再生


 むかしむかし、大阪の町に、河内屋惣兵衛(かわちやそうべえ)という人がいました。
 惣兵衛(そうべえ)の屋敷には、年を取った一匹のぶちネコがいます。
 このネコを一人娘のお千代(ちよ)は、まだ子どもの頃から大変可愛がっていました。
 お千代のそばにはいつもネコがいるので、町の人は、
「お千代の婿さんは、ネコだよ」
と、陰口を言っていました。
 それを耳にした惣兵衛は、
「こんな事では、娘がお嫁に行けない。何とかしないと」
と、いつも考えていました。


 さて、春も浅い、ある晩の事。
 家の者が集まって、ひそひそ話をしています。
「ネコは捨てても、必ず帰ってくるというからのう」
「かわいそうじゃが、殺すしかほかあるまい」
 この話を聞いていたのか、その日から、ぶちネコはどこかへ行ってしまいました。
 ところが、いく日かたったある晩の事。
 惣兵衛がふと、まくらもとを見ると、ぶちネコがいます。
「おお、ぶちか。なんでお前は、姿を隠しおった」
と、尋ねると、ぶちネコは悲しそうに言いました。
「はい。
 わたくしがおりましては、お嬢さまの為にならないと申されましたので、このまま姿を消そうと思いました。
 ですが、そのようなわけにもまいりません。
 と、言うのも」
 ここまで言うと、ネコはきちんと前足をそろえて、真剣な顔で惣兵衛に言いました。
「この屋敷には、年をへた化けネズミが一匹、住みついております。
 そいつがお嬢さまに見いって、おそばに近づこうといたしますので、わたしがお守りしておりました」
「おお、そうか。
 それはすまぬ事をした。
 だがお前はネコでありながら、なぜネズミが取れぬのじゃ?」
「はい、旦那さま。
 ネズミを取るのがネコの役目なれど。
 この化けネズミだけは、とうてい、わたしの力ではかないませぬ。
 そこでお願いがございます。
 島の内の市兵衛(いちべえ)さまの家にとらネコが一匹おります。
 とらとわたしとが力を合せれば、必ずその化けネズミを退治する事が出来ましょう」
 そう言ったかと思うと、ネコの姿はかき消す様に消えてしまいました。
「ああ、夢であったか」
 あくる朝、惣兵衛が夢の事を妻に話すと、妻は、
「まあ。さようでしたか。実は私も、同じ夢を見ました」
と、言うので、さっそく惣兵衛は島の内の市兵衛さんのところへ出かけて行って話しをしますと、市兵衛はすぐにとらを貸してくれたのです。
 とらを抱いて家へ着くと、ぶちネコが玄関に座って出迎えました。
 二匹は仲良くご飯を貪べると庭へ出て、今が盛りの桜の下で舞い落ちる花びらにじゃれあって楽しく遊んでいました。


 夜になるとネコは夫婦の夢に現れて、二人に語りかけます。
「いよいよ、明日の夜は化けネズミを退治します。
 日が暮れましたら、わたしたちを二階にあげてください」


 そして次の日、夫婦は二匹のネコを日が暮れると言われた通り二階にあげました。
 家の者は、心配そうに夜のふけるのを待ちました。
 すると突然、二階で物音がしたかと思うと、『ドシン!』、『バタン!』と物を落すような音や、走りまわる音がします。
 フギャー!
 チューチュー!
 長い長い時が過ぎて、やっと二階の物音が止むと、あたりはしーんと静まりかえりました。
「それっ」
 惣兵衛が灯りを持って二階ヘかけあがると、何とネコよりも大きなネズミが倒れていたのです。
 大ネズミは、ぶちネコにのど首をかまれたまま死んでいます。
 そしてそのぶちネコも、大ネズミに頭をかまれて死んでいました。
 島の内のとらはと見れぱ、大ネズミの腹にかみついたまま虫の息です。
 さっそく手厚い治療をすると、とらは命を取り留める事が出来ました。


 惣兵衛はとらネコを抱いて市兵衛宅へ出かけると、あつくお礼をのべて帰ってきました。
 死んだぶちネコは桜の木の根元に、千代が墓を立ててほうむったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → エッフェル塔の日
きょうの誕生花 → はまかんざし(アルメリア)
きょうの誕生日 → 1970年 宮迫博之 (芸人)


きょうの新作昔話 → カイコの犬
きょうの日本昔話 → 百七十歳の九尾キツネ
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きょうの日本民話 → 花散る下の墓
きょうのイソップ童話 → アリとキリギリス
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3月30日の日本民話 オオカミばあさん

2010-03-30 08:10:58 | Weblog

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3月30日の日本民話


オオカミばあさん



オオカミばあさん

京都府の民話京都府情報


♪朗読再生


 むかしむかし、丹波(たんば→京都府)の山間の村に、スギというおばあさんが住んでいました。
 ある年、おスギおばあさんに、待望の孫が生まれたのです。
「ああ、うちにも孫がでけた。ええ男の子や。ほんに、ええ男の子や」
 ですが、そう言って喜んでいたのもつかの間で、その年の秋、息子夫婦と可愛い孫が、流行病で死んでしまったのです。
 一人生き残ったおばあさんは、生きる気力を無くしてしまい、
「たった一人、生きていても仕方ねえ、はよう、わしも死なしてくれえ」
と、ただ泣いて暮らしていました。

 間もなく冬が来て山に雪が降り始めた頃、おそろしいオオカミが里の方へおりて来ました。
 そして里の子どもがオオカミに食い殺されたので、村人たちは大騒ぎです。
 おスギおばあさんが人前に姿を見せなくなったのは、その頃からでした。
と、言っても、決していなくなったわけではなく、夜になると家には明かりがつきましたし、かまどの煙もあがります。
 その頃、村には恐ろしいうわさが広がりました。
「なあ、知っとるか? あのばあさん、オオカミを飼っとるんや」
「ああ、聞いた聞いた。何でも朝晩、オオカミに飯を食べさせているそうだ」
 うわさはうそではないらしく、夜ごとに、
「ウォーン! ウォーン!」
と、いう、オオカミの鳴き声がすぐ近くで聞こえ、月明かりの庭先を通っていく黒いけものを何人もの村人が見たのです。
 そこである晩、男たちが火なわ銃を持って、おスギおばあさんの家の近くへ行ってみました。
 ひっそりとした、おスギおばあさんの家には、あんどんの明かりが灯っていました。
 その明かりで、しょうじに大きくおばあさんとオオカミの影が写ったのです。
「あわわわわ、オオカミ、オオカミだ!」
  鉄砲を持った男たちは、みな足がすくんでしまい、
「あんなのに飛びかかられては、このくらい夜のこと、いくら鉄砲があっても殺されてしまうぞ」
と、ぞろぞろ逃げて帰りました。

 それからしばらくしたある日、おスギおばあさんは珍しく外へ出かけると、お坊さんを連れて戻って来ました。
 お坊さんは土間(どま→台所)から飛び出して来たオオカミを見てビックリしましたが、そのオオカミに向かっておばあさんが言いました。
「わしなあ、お前が家の裏まできた日には、『はよう、わしを食べてくれ、息子や孫のところへ行かしてくれ』そう思うて戸を開けたんや。
 そやけどお前は、このわしを食べなんだ。
 それどころか、わしが炊いたごはんをうまそうに食べて、今までいてくれた。
 おかげで、わしは今日まで命をながらえる事ができた。
 お前には礼をいわんならん。
 だども、いつまでもというわけにはいかん。
 ありがたいお経を聞いて、山の仲間の所へ帰ってくれ。
 ・・・では、お坊さま、頼んます」
「あっ、・・・えっ、おほん。それならオオカミや、よう聞くがええ」
 お坊さんは、あがりがまち(→家のあがり口)に立って、お経を唱え出しました。
 オオカミはキバをむいて土間を歩き回っていましたが、次第に落ち着いてお坊さんの前に座り込みました。
 オオカミは、そばにいたおばあさんをチラリと見ると、眠った様に目をつむります。
 それを見たおばあさんは、ゆっくりと部屋を出て行きました。
 しばらくの間、お坊さんのお経が続いていましたが、突然、
 ズドーーン!
 耳をつんざく音が、後ろの山の方までこだましたのです。
 しょうじのかげには、鉄砲を構えたおばあさんが立っていました。
 お経を聞いていたオオカミは、血に染まって死んでいました。
 おばあさんの目から、涙があふれて落ちました。
「なんぼわけがあるいうても、お前は村の子どもや旅の人を襲うた。
 つらいけど、わしはこうするしかなかったんや。
 ごめんな。
 ほんまに、ごめんな」
 そしてお坊さんの手を借りてオオカミのなきがらを山へ運ぶと、手厚くほうむりました。

 それからは、村では誰一人オオカミに襲われる者はなかったそうですが、おスギおばあさんはその日から姿を消して、二度と村には戻って来なかったという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → マフィアの日
きょうの誕生花 → カルセオラリア(きんちゃくそう)
きょうの誕生日 → 1966年 村上里佳子(タレント)



きょうの日本昔話 → サルの恩返し
きょうの世界昔話 → 家の精
きょうの日本民話 → オオカミばあさん
きょうのイソップ童話 → ヘビとカニ
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3月29日の日本民話 大工の神さまと天人

2010-03-29 05:23:03 | Weblog

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3月29日の日本民話


大工の神さまと天人



大工の神さまと天人
鹿児島県の民話鹿児島県情報


 むかしむかし、あるところに、とても腕の良い大工さんがいました。
 でもこの大工さんには、まだお嫁さんがいません。
 そこで同じ村のきれいな娘さんに、
「ぜひ、わたしの嫁になってください」
と、お願いしたのです。
 すると娘さんは、嫁になるのを断る為に、
「たたみが六十枚もある、大きな家を一日で建てる事が出来たら、あなたの嫁になりましょう」
と、出来もしない事を言ったのです。
 しかし大工さんは、どうしても娘さんをお嫁にしたかったので、
「わかりました。何とかして、一日で家を建てましょう」
と、言ったのです。
(弱ったな。ああは言ったが、どうしよう?)
 大工さんは仕方なくワラ人形を二千個も作って、何やら呪文を唱えました。
 そしてワラ人形にフゥーーーッと、息をかけると、不思議な事にワラ人形はたちまち人間の大工さんになって、あっという間にたたみが六十枚もある大きな家を建てる事が出来たのです。
 大工さんは大喜びで、さっそく娘さんのところへ行くと言いました。
「約束通りに家を建てたから、わたしの嫁になってください」
「本当に?」
 娘さんが行ってみると、そこには大きくて立派な家が建っています。
 中を見ると、ちゃんとたたみが六十枚あります。
「わかりました。あなたの嫁になりましょう」
 こうして娘さんは、大工さんのお嫁さんになりました。

 大工さんとお嫁さんは、大きな家で仲良く暮らしました。
 そして二千人の大工さんたちは、日本中に散らばって、家を建てたり橋をつくったりしました。
 ところが何年か過ぎた頃、お嫁さんが大工さんに言いました。
「今まで黙っていましたが、わたしは天の国に戻らなくてはなりません。実はわたしは人間ではなく、天の国から来た天人(あめひと→天から来た人)なのです」
 すると、大工さんも言いました。
「実はわたしも、人間ではありません。わたしはてんごという大工の神です。それでは一緒に、天の国へ行って暮らしましょう」
 こうして大工の神さまと天人は、天高く登っていきました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → マリモの日
きょうの誕生花 → アリッサム
きょうの誕生日 → 1982年 滝沢秀明 (タレント)


きょうの新作昔話 → 宝の隠し場所
きょうの日本昔話 → 忍術使いのどうぼう
きょうの世界昔話 → ネズミとゾウ
きょうの日本民話 → 大工の神さまと天人
きょうのイソップ童話 → ヒツジ飼いとオオカミの子
きょうの江戸小話 → 手品の種


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3月28日の日本民話 月見草の嫁

2010-03-28 07:35:29 | Weblog

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3月28日の日本民話


月見草の嫁



月見草の嫁
新潟県の民話新潟県の情報


 むかしむかし、ある山奥の村に、一人の若い馬子(まご)が暮らしていました。
 馬子とは、馬を引いて人や荷物を運ぶ仕事をする人です。
 一日の仕事を終えた馬子が、家で一休みをしていると、
 トン、トン、トン。
と、誰かが、家の戸を叩きました。
「はて? 今頃、誰だろう?」
 馬子が戸を開けてみると、そこにはきれいな娘さんが立っていました。
 娘は馬子に、ペコリと頭を下げて言いました。
「どうか今晩一晩、ここに泊めて下さい」
 それを聞いた馬子は、少し困った顔で言いました。
「泊まると言っても、おれは貧乏で、お前さんに食わせる飯もないから」
「大丈夫。ご飯ぐらい、私が何とかします。お掃除も、お洗濯もします。ですから、どうか泊めて下さい」
 そこまで言われると、断る事が出来ません。
「そうか、なら、中に入れや」
 馬子が娘を家に入れてやると、娘はさっそく掃除や洗濯を始めました。
 そしてどこからか持って来た材料で晩ご飯を作ると、馬子に差し出しました。
 それは今まで食べた事がないほど、おいしい物でした。
 すっかり満腹になった馬子は、その場にごろんと横になると娘に言いました。
「うまい飯を、ごちそうさま。おれは仕事が早いから、もう寝るからな。お前は好きな時に、出て行っていいぞ」


 さて次の日の晩、馬子が仕事から帰って来ると、娘はまだ家にいたのです。
「お前、出て行かなかったのか?」
「はい。さあ、晩ご飯が出来ていますよ」


 そして次の日も、そのまた次の日も娘は家を出て行かず、一生懸命に家の仕事をしました。
 そのうちに、馬子は娘がすっかり気に入りました。
「ああ、こんな良い娘が、おれの嫁だったらなあ」
 するとそれを聞いた娘が馬子の前に正座をして、深く頭を下げて言いました。
「あなたさえよければ、どうか私を嫁にして下さい」
「そうか。お前がその気なら、ぜひともおれの嫁になってくれ」
 こうして二人は、夫婦になったのです。


 さて、それからしばらくたった、ある日の事です。
 馬に食べさせる草を刈っていた馬子は、その草の中に、きれいな月見草の花が一本混ざっているのに気がつきました。
「きれいな花だな。そうだ、嫁の土産に持って帰ろう」
 そして、家に帰った馬子が、
「おーい、きれいな花があったぞ」
と、嫁に言ったのですが、 しかしいつもはすぐに出迎えてくれるはずの嫁が、今日は出て来ないのです。
「おかいしな。どこに行ったのだろう?」
 馬子が家の中を探していると、嫁は台所で朝ご飯を作りかけたまま倒れていたのです。
「おい! どうした!? どこか具合でも悪いのか!?」
 馬子があわてて抱き起こすと、嫁は小さな声で言いました。
「・・・あなた。
 実は私は、月見草の花の精なのです。
 毎朝、あなたの働く姿を見ているうちに、あなたの嫁になりたいと思うようになりました。
 そしてその思いがかなって、今日までとても幸せでした。
 ですが、あなたに刈られてしまったので、私の命もこれまでです。
 短い間でしたけれど、優しくして下さってありがとう」
 嫁はそう言うと馬子に抱かれた姿のまま、煙の様に消えてしまったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → シルクロードの日
きょうの誕生花 → たつたそう
きょうの誕生日 → 1975年 神田うの (タレント)



きょうの日本昔話 → 大工と鬼六
きょうの世界昔話 → バイオリンひきのおじいさん
きょうの日本民話 → 月見草の嫁
きょうのイソップ童話 → オオカミと仲なおりしたイヌ
きょうの江戸小話 → ちっとも変わらん


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3月27日の日本民話 早業競べ

2010-03-27 07:01:05 | Weblog

福娘童話集 > きょうの日本民話 > 3月の日本民話


3月27日の日本民話


早業競べ



早業競べ
熊本県の民話熊本県情報


 むかしむかし、ある長者(ちょうじゃ)が、
《日本一、仕事の早い者をやとう》
と、お触(ふ)れを出しました。
 すると長者の家に、三人の男たちが集まって来ました。
「では、お前たちの腕前を見せてもらおう」
 長者が言うと、最初の一人が進み出ました。
「では、わたしから」 
 最初の一人は、十本の梅の木からいっぺんに梅の実を叩き落とすと、それが地面に落ちる前に全部受け取ってしまったのです。
「これは見事、見事じゃ」
 長者が喜んでいると、次の男が進み出ました。
「それくらいの事で、驚いてはいけません。梅の実には雄梅(おうめ)と雌梅(めうめ)があるのに、さっきの男はそれをより分けていませんでしたから」
「ほう、梅の実に雄(おす)と雌(めす)があるとは知らなかった。して、お主はどういう早業を見せてくれるのじゃ?」
 すると、二番目の男は、
ノミを、一升(いっしょう)ばかり集めて下され」
と、頼みました。
 長者は大勢の村人に命令して、一升(いっしょう)ます一杯のノミを集めさせました。
 するとそれを受け取った二番目の男は、いきなり一升ますをひっくり返しました。
 さあ、大変です。
 ノミはいっせいに、ピョンピョンと跳びはねながら逃げていきます。
「ご心配なく」
 二番目の男は近くにいた女の人の長い髪の毛を二本抜くと、跳びはねるノミを片っぱしから捕まえて、髪の毛で一匹一匹をしばりあげたのです。
 あまりの早業に、長者はビックリです。
「こりゃ、たまげたわい」
 しかも二本の髪の毛に、オスとメスのノミをより分けていると聞いて、さらにビックリです。
 すると今度は、三人目の男が言いました。
「いやいや、それくらいの事で驚いてはいけません。第一さっきの男は、ノミを三匹ほど逃がしてしまいました」
「ほう、それならお主は、何を見せてくれるのじゃ?」
 ちょうどその時、長者の屋敷(やしき)の屋根を修理していた大工が、高い屋根から足を滑らせて下へ落ちてしまったのです。
 それを見た三人目の男は、さっと裏山に走って行って竹を切ってくると、その竹で大きなカゴを作り、次にウマ小屋に飛び込んでワラたばを取って来て、大きなカゴに敷き詰めると、屋根から落ちて来た男を大きなカゴで見事受け止めたのです。
「こいつはたまげた。人が落ちてくる間に、ワラたばを敷き詰めたカゴを作って人を受け止めるとは」
 三人が三人とも、すご腕の早業だったので、長者は三人を客人(きゃくじん)として大切にもてなしたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → さくら(桜)の日
きょうの誕生花 → しょうじょうばかま
きょうの誕生日 → 1970年 マライア・キャリー (歌手)



きょうの日本昔話 → 金のナスビ
きょうの世界昔話 → 魔法の笛
きょうの日本民話 → 早業競べ
きょうのイソップ童話 → ロバとキツネとライオン
きょうの江戸小話 → 食わず逃げ


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