発達小児科医の館

障害児医療理解を求めるために!!小児神経学会社会活動委員・/富山大学医学部診療指導医・臨床教授)

極低出生体重児において脳性麻痺が減少

2007年01月14日 | Weblog
極低出生体重児(1,500g未満)における脳性麻痺の有病率が減少していることを示唆する新規研究結果~


 1,500g未満の極低出生体重(VLBW)児における脳性麻痺(CP)の有病率が減少していることを示唆する新規研究結果が報告された。

本研究はこの種類のものでは現在のところ最大規模であり、
リバプール大学(英国)の研究者らが
16の欧州CP患者登録データをプールして検討を行ったところ・・・

 VLBW児におけるCP有病率が1980年の出生児1,000例あたり60.6例から

1996年には出生児1,000例あたり39.5例に有意に減少したことが明らかになった。また、この減少は、CPの中でも両側性亜型の減少によるものであった!!。


「低出生体重児の周産期死亡率の改善には、脳性麻痺リスクの増加という犠牲を伴うのかというのが、大きな疑問の一つであった。しかし、今回の研究では、低出生体重児における脳性麻痺有病率の有意な減少が実証され、現在では重症の神経学的障害を伴わずに生存率が改善していることが示唆された」と

  本研究の主任研究者Mary Jane Platt, MDはMedscapeに述べた。

この研究は『Lancet』1月6日号に掲載されている!!。

豊富な症例数



以前の小規模研究でも、VLBW児においてCPが減少している可能性が示唆されていたが、今回の研究は、有病率の傾向を正確に把握する統計学的検出力をもつ最初の研究である。

『この研究は、欧州9カ国の16施設で1980-1996年に出生し、出生体重が明らかな小児を対象とした。臨床評価の正確性を確保するため、脳性麻痺小児の年齢は、SCPEデータベース登録時点で4歳以上とした』

母親の人口統計学的特徴と子の性別、体重、出生時の在胎齢を記録した。さらに、多胎妊娠であったか否か、CPの神経学的亜型に関する情報、また、それぞれの子の機能に関する測定結果(IQ、歩行能力、視力、聴力等)のデータを収集した。

適切なケア

調査期間中、合計7,884例のCP患児が出生した。このうち2,103例は、出生体重が1,500g未満または出生時の在胎齢が32週未満であり、これらを研究対象集団とした。

研究の結果、すべての施設において、出生児におけるVLBW児の割合が増加していた。この増加はスウェーデンと英国で最も顕著であり、同割合は1980年の0.5%から1996年には約1%に増加した。

調査期間中、VLBW児におけるCPの有病率は有意に低下した。しかし、出生体重1,000g未満の小児では、17年間の調査期間中に有病率の有意な変化はみられなかった。

さらに、出生体重1,000g未満と1,000-1,499gの小児では片側性痙性CPの有病率がほぼ同じであった、と著者らは報告している。

この研究は、VLBW児におけるCP有病率の減少理由を解明するために設計されたものではなかったが、
VLBW児が適切なケアを受けていることが研究結果から示唆される、とPlatt博士は述べている !!

「この有病率の減少を特定の原因に結びつけることはきわめて難しい。たとえば、人工呼吸を受けない小児との比較において、人工呼吸を受けた小児の脳性麻痺有病率がどの位なのかといった点は不明である。しかしながら、CP有病率の減少をこの研究が示唆しているという事実は、VLBW児が受けているケアが適切であるという自信が持てる」とPlatt博士は述べた。

早産の予防

付随する論説においてケース・ウェスタン・リザーブ大学(オハイオ州クリーブランド)のMaureen Hack, MDおよびDeanne Wilson Costello, MDは、この研究で明らかにされたCPの減少は「有望」であるが、依然として課題が多い、と記している。

「脳性麻痺は重度障害を伴う。SCPE研究では、
 両側性痙性脳性麻痺の小児の35.2%が歩行不可能であり、
 23.5%には重症の精神発達遅滞がみられた。さらに、SCPE研究および[米国の]データでは、極低出生体重児の出生数増加が記録されており、脳性麻痺患児数が増加する可能性がある。したがって、早産とそれに伴う脳障害を予防するため、あらゆる努力をする必要がある」とHack博士らは記している!!

Lancet. 2007;369:7-8, 43-50.






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