ただの映画好き日記

観た映画と読んだ本の自分用メモ。

切り裂きジャック / パトリシア・コーンウェル

2006-12-31 | 本 海外作家


  切り裂きジャック

  パトリシア・コーンウェル 著     講談社 2003.1



  コーンウェルが真犯人を突きとめた!
  7億円の巨費と現代科学を駆使して迷宮入りの難事件を解明する。

  切り裂きジャックとは、1888年にロンドンの下町イースト・エンドで 
  娼婦を惨殺した連続殺人犯のあだ名である。
  現在までさまざまな容疑者が指摘されているが、未解決に終わっている。
  コーンウェルは初めてのノンフィクションにも得意の鋭い推理力を発揮し、
  ジャックの正体をヴィクトリア朝の画家だと指摘した。
  彼の絵画を収集して絵の具を分析し、
  また彼が出したと推定される手紙の紙質を調査して直接証拠の発見に努力している。
  この事件に賭けたコーンウェルの凄まじい情熱をひしひしと感じる。(帯より)






毎年12月発売が恒例となったいたP.コーンウェルの検死官シリーズの新作が今年は発売されないというので、うちの積ん読本だったこの『切り裂きジャック』を読むことにした。
ちょうど(と言っていいのか)、イギリスで百数十年振りに現れた切り裂きジャックも話題になっていたことだし・・・。
といっても、イギリスで5人の売春婦が殺害されたというだけで、本家本元の切り裂きジャックとは全く質が違うのだが。

P.コーンウェルが7億円もの私財をかけて徹底的に調査した切り裂きジャック。
彼女が犯人と断定したウォルター・シッカートは有名な画家だそうだ(私は絵画には全く興味がないのでシッカートなる画家の存在は知らなかったが)。

残念ながら、切り裂きジャックとシッカートの絶対的なDNAの比較はできないけれど、100年以上前の手紙に残された切手の裏の唾液のDNAがどうやら一致するらしい・・・。
ただ、切り裂きジャックの出したとされる手紙が本物であるという確証がないだけに、断定するのはどうかな?とも思った。
帯に書いてある、紙質についても、納得できる材料ではないように感じた。
ついでに言えば、シッカートが有名な画家だったが為に、今も調査ができる絵や手紙が残っていたので切り裂きジャックと断定出来たワケで、これが一般人だったとしたら調査をするにも材料がなかっただろうな~と、出来過ぎな感じがしないでもなく、私としてはすんなりと受け入れることは難しい。

いずれにしても、コーンウェルが切り裂きジャックと断定したウォルター・シッカートなる人物は、かなり病的な人物であったことは間違いないようで、切り裂きジャックの殺害方法も精神的、もしくはDNAの異常さが原因じゃないか?と思う程の残虐さなので、もしかしたら・・・と思わせるふしはあるかもしれない。
特に、5人目の被害者となるメアリー・ケリーの殺害は狂人的を通り越し、人間の仕業とは到底思えないような残虐さである。

文中、「~だろう」「~かもしれない」が多数使われているのは致し方ないが、私としては、ノンフィクションでありフィクションであって欲しかったな~という気持ちがあった。
シッカートが犯人でもいいのだけれど、百数十年が経った今となっては、フィクション色が強い方が楽しめただろう(実際の事件なので楽しんではいけないけれど・・)と思ってしまった。

いずれにしても、切り裂きジャックというのは、単なる精神の異常ではなく、DNAの異常が原因ではなかろうかと、どうしても思ってしまう。

本の全体的な感想としては、読み応えはあったし、P.コーンウェルの熱意は伝わってはきたものの、私の頭には入ってこなかった・・・。
未だ、コーンウェルの調査は継続中のようだけど、果たして、どうしても真相を知りたい人はいるのだろうか?とも思う。




講談社に、「今年は検死官シリーズは発売されないのですか?」と問い合わせたところ、
 
 「お問い合わせ頂きましたパトリシア・コーンウェルの作品ですが、
  2005年12月の『神の手』以降、刊行されておりません。
  また、現在のところは刊行予定もございません。
  講談社文庫等の発売予定は下記URL画面でご確認いただけます。」

という返答を頂いた。
なんとも、味も素っ気もない返答に、発売される予定がないことよりもガッカリした。
発売されないことは仕方ない事であって、ただ、もっと読者(というかファンだ!)の気持ちを汲むような出版社として気持ちを入れた文章は書けないものか!!!と思った。
講談社はやっぱりダメだ。

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