アイ!サラマッポ in バギオ

フィリピン人介護者のケアを受けながらの、フィリピンでのインディペンデント・リヴィング…、心の赴くまま、ここに記します。

フィリピンの看護師事情-明日からバギオでも看護師国家試験が・・・。

2009-06-05 19:16:01 | フィリピン人看護師・介護士(Caregiver)

 ここグリーン・バレーは、今日も朝から暴風雨。強い雨がザンザカザンザカ、そして時折ピューッととても強い風が吹いています。南西季節風、低気圧の影響らしいのですが、2日火曜日のお昼過ぎからの雨も今日で4日目です。

 そんな中、あす、あさっての今週末、フィリピン看護師国家試験に約8万人が挑みます。毎年、この6月初めと12月初め(去年は11月末)の2度、看護師の資格試験があります。6月の試験は、看護課程のある大学は、合格率をアップ、その大学のイメージをアップさせるために、新卒業生の上位5割しか受験させないことが多いそうです。3年前の6月には、試験問題漏えい事件が発覚、アメリカはその時の合格者を受け入れないと表明、かなりの混乱と、フィリピンの看護資格試験への信頼が失墜した事件でした。
 では、残りの5割の卒業生は?というと、12月の国家試験に照準を合わせて「リビュー・センター」と呼ばれる予備校で復習をした上で受験が許されるのです。通常、試験前2か月間ほど、そのリビュー・センターで集中して復習、試験対策が行う人が多いのですが、その受講料もばかにならず、大学側とタイ・アップしたビジネスにもなっているようです。
 ただ、昨今は、看護師国家試験の合格率も40%台に抑えられており、年々合格するのが難しくなっていると聞きます。医師などフィリピン国内でちゃんとした身分を持つ高収入の人たちが看護課程を履修し(通常2年)、看護師として欧米へ渡るケースも後を絶ちません。3年前には、約千人の医師が看護師として海外に流出したということでした。アメリカへ看護師として働きに行けば、フィリピンで看護師として働くより、はるかに高収入が望めるからです。
 ちなみに、フィリピン人看護師の国内での初任給は、都市部でも約1万円~1万4千円です。アメリカへ出れば、最低でもその20倍にはなるのです。
 
ここバギオ市は、マニラ、セブ市とともに、北部ルソン島の試験会場ですから、近隣から多くの受験生が集まり、今晩はどこのホテルも受験生でいっぱいでしょう。というか、むしろ再受験者(Re-taker)は、やはり2か月前にはバギオ入りし、友人同士でアパートや家を借り、リビュー・センターに通いながら試験に備える、といった人が多いのです。バギオはマニラやセブが盛夏(サマー・シーズン)である4、5月も涼しいため、勉強するのにもよく、有利なのだそうです。バギオ市は、韓国人を筆頭に、海外から(日本からも)英語留学するのに、気候の面のみならず、環境や治安的にも絶好の場所のようで、いわば学生の集う学園都市とも言えそうです。
 
今、ウチでケアの練習に入っている正看護師は、バギオの南西、バギオから約2時間のパンガシナン州出身ですが、正看護師であっても病院に空きがなく、バギオ市に仕事を探しに来たのでした。今同居している同窓生の親友は、これまで3度受験してパスできず、明日は4度目の挑戦となるそうです。その彼女とともにバギオへ来たのは2か月以上も前ですから、今ウチに来ている正看護師の女性は、その間ずっと仕事を探し続けていたらしいのです。彼女は、1年間の病院勤務経験があるということでしたが、それはボランティア・スタッフとしてで、交通費など支払われた経費は月に約2千円だったそうです。バギオ近郊の病院で、非常勤で働いていた未資格の看護課程卒の女性は、月給約3千円でした。バギオ市にはコール・センターも多く、英語が流暢に話せる看護課程卒の人は、一時的な仕事としてその仕事に応募する人も多いと言います。
 
前回、2日前の記事にもありますが、7~8年前は、フィリピン人看護師の優秀な人材の海外流出により(これまでに少なくとも約30万人のフィリピン人看護師は海外へ出たといいます。)、将来フィリピンには優れた看護師がいなくなる、と心配されました。そして2002年には「海外の看護職従事に申請するにはフィリピン国内での実務経験2~3年を義務づける」法令改正もなされました。ところが、私が2年前に日本からマニラに戻って来ると、新聞の求人欄でケアギヴァー(Caregiver/介護士)募集の広告に、多くの正看護師が応募してきたのです。もちろん、未資格の看護課程出の人、6か月間のケアギヴァー養成課程を終えた人の応募者の方が多い訳ですが、以前は見向きもしなかった正看護師の人の応募者も多かった、ということです。つまり、都市部では、今は看護師過剰の状態で、海外に出る前に国内の病院で実務経験を積むことさえ難しくなっているのです。
 
現在は、国内の医師不足が深刻化しており、地方へ行けばそれはより顕著だそうです。

 ところで、先日、実家に戻ったジェンさんでしたが、「またしばらくバギオに戻ってもよい。」との連絡がありました。ジェンさんは、今年の12月の看護資格試験を受けるつもりだそうですが、やはりリビュー(復習)は欠かせない、と言います。また、前回は間に合いませんでしたが、日本の介護福祉士の候補者に応募する残された条件である「TESDA(テスダ・技術教育技能開発庁)のケアギヴァー認定証」をバギオ市で取得し、来年度の募集に向けて準備したい、という希望もあるようです。サウジへ行くなら、日本の方が…という話も、きっと家族の間で出たのでしょう。こちらにとってもうれしい申し出ですが、もう少し状況を見て判断したいと思います。



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2 コメント

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日本の受入れ体制 (群青)
2009-06-05 21:04:46
日本とフィリピン間の協定に基づく介護士受入れについて、日本国内(ネット上)で色々な問題がとりあげられている事は、ご覧になっているでしょう。

介護施設現場側の指摘は、来日後の漢字交じり日本語の習得への疑問、来日後研修期間中の受入れ施設側の研修費負担リスク、日本の難関な資格受験への疑問、試験合格後の他施設への転職の可能性、など。
日本国の姿勢を問う声としては、厚生労働省ではなく外務省主導の国際経済対策としての中途半端な受入れ体制に疑問を訴えるもので、結局は来日した280名のほとんどは4年後には帰国してしまうのではないか、という予想。
また、その他には、外国人排斥主義、日本人介護労働力優先主義の声など。
これらはネット上を巡回してみての結果です。

もうひとつは、2005年以前に「タレント」をこよなく愛した方々の声。つまり、試験不合格になった途端に彼女たちがエスケープし夜の蝶と化するのではないかという「期待感」。
後者の層の気持ちはある意味でよく分かり、フィリピン女性をかなり固定概念で見ているような気がします。

比国の看護師国家試験や国外への流出のもよう、初めて読みました。私には貴重なご報告です。
日本国も今回協定のようなものではなく、積極的に、比国内のホスピタリティ素質あふれる専門的人材を得る努力をすべきと思います。
例えば、日本国の資金で、格安の日本語学校や養成学校を比国内に2~3箇所を設置する位のことはやって欲しいものです。
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受け入れ側の問題点は…。 (Isshin -編集人)
2009-06-06 14:46:27
群青さん、こんにちは。
またまた、的確かつ貴重なご意見、ありがとうございます。
外国人看護師と介護福祉士の候補者受け入れに関して、受け入れる日本側の問題点は、ご指摘の通り、はっきりしていると思います。
ネット上でも、いろいろな声があるようですが、今回来日したフィリピン人看護師と介護福祉士候補者が、日本でescapeして「夜の蝶に化する」ということはまずないと思いますよ(^^)。それにしても、2004年法務省の法令改正によって「タレントさん」(ジャパユキさん)の日本入国数が2005年以降、年間「8万人が8千人」と10分の1になったことは、現役や後輩の「タレント」さん、家族にとっても大打撃だったことでしょうね…。

ところで、群青さん。比国のご事情、今回のフィリピン人看護師・介護福祉士候補者受け入れについてもお詳しいようですが、もし差し支えないようでしたらどういう分野のお仕事をされているのですか?
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